偉大なる航路前半の海、エンドツー島。喧嘩屋ホーマーの故郷であったが海賊により住人は滅ぼされ今では無人島となっている。いや無人ではない。
廃墟と化した町の中に賑わう声が響く。火の灯りと酒の匂い、焼ける肉の香ばしい香り。男も女も入交じり宴にふけっている。そしてこの宴の中心に座する男。
白い長髪を前から後ろに流し、細身ながらも鋼のような筋肉、そしてそれを見せびらかすかのように上半身は何も纏わずただ黒いワークパンツを履くのみ。
彼の名はジハード。バウンティプレゼンターを名乗る彼は人に懸賞金をかけ海賊に狙わせる更にそのハンティングの成否をパトロンである世界貴族に賭けさせている。
世界政府に引き渡されること5回、しかしいずれも世界貴族の手引きで脱走しており彼自身の懸賞金も今では4億となっている。
「ボスが帰ってきてよかったっすよ!やっと業務再開って感じっすね!」
「あの喧嘩屋の連中の居場所もとりあえず流しといたんで今頃あいつら海賊に狙われてますよ!」
「ボス!お客さんです!!」
宴の中に海賊たちが入ってくる。しかし宴はそのまま続く。
客を迎える姿勢とは到底思えないが互いにそのことは気にしていない。
「海賊に懸賞金を払ってくれるってのはてめえらか?」
船長と思われる男がジハードの前に立つ。争うつもりなど毛頭ないはずだが殺気を漂わせ手には銃を持っている。アウトロー同士の会合ではいつ殺し合いになってもおかしくはない。故にこの男の立ち振る舞いは正しいと言っていい。
男は鎖でつながれた今にも死にそうな海兵をジハードの前に差し出す。
「特務部隊隊長モリブデン准将だ。裏懸賞金2億ベリー。さっさと払ってもらおうか。」
ジハードは一言も喋らないまま部下に目配せしアタッシュケースを持ってこさせる。
そして中を開けて見せる。
「おお!偽札じゃねえだろうな?」
「その場合はいつでもクレームどうぞ?」
部下が臆することなくケースを男に渡す。
「確かに頂いた。またよろしく頼むぜ。・・・一つ聞いていいか?そいつはどうなるんだ?
立ち上がることも喋ることすらできない海兵を見てジハードは無言のまま笑い出す口が裂けそうなほどに口角を上げて目を見開きただ笑っている。
それを見た海賊たちはその不気味さに言葉を失う。
船長の男もその手下達も最早何も言わずその場から逃げ出した。
「・・・・・・・ええなあ。」
ジハードがつぶやく。暗く低く悪意に満ちた声で。
「モリブデン准将あいつらに何されてん・・・教えてーや。」
しかし瀕死の海兵は喋ることもできない。
「ああ!喋られへんの!?舌抜かれたん!?ちょ見して!」
ジハードはモリブデンの口に手を突っ込み下の有無を調べる。
「・・・なんや普通にあるやん。ほな喋れよお前!」
手を引き抜き顔を蹴り飛ばす。そして頭を片手で掴み持ち上げる。
「明日からお前天竜人の奴隷やでえ~。聞こえてんのか~?」
しかし海兵に反応はない。
「ボス今の蹴りで死んじゃいましたよ。」
「うそお!?そんなことあるうっ!?」
部下たちはジハードを指さしてゲラゲラと笑う。
外道の集う海賊界隈ではこんな残酷な光景は珍しくはないがこの一団は一際異質さを感じさせる。
ジハード、この男こそ世界の癌、闇であることは間違いなかった。