「ほな、いくでえ・・・」
ジハードが取り出したのはガラスでできた30ml試験管。
ふざけているわけではない、その証拠にホーマーはそれを見た途端に防御態勢に入る。
「鉄塊 布陣!」
コートの裾を翻し自身を守る盾のように構える、そして覇気により硬化させる。
更に自分の肉体を六式の体術、鉄塊により硬め衝撃に備える。
「ジャムセッション!」
ジハードが叫ぶのと同時に試験管の口から轟音と共に光線が放たれる。
光線は一直線にホーマーに襲い掛かりそして直撃する。
「っっっっ!!」
耐える、鉄塊で硬めていなければ耐えきれない衝撃。
そして光線は縮み消える。
「剃!」
彼女はその機を逃さずに突進する、一気にジハードとの距離を詰めようと動く。
しかし読まれていた。ジハードは超人的な速度で接近する彼女を見逃すことなく既に新しい試験管を構えていた。
「ジャムセッション!」
ホーマーの動線上に光線が待ち受ける。
自身の速度が仇となり回避は間に合わない、ならば当たりに行くしか道はない。
ぶつかるのならば最低限のダメージにそしてそれを最大限に活かす。
「こん・・・なろおっ!!」
コートを覇気による硬化で鎧とし光線にぶつかりにいく。しかし光線の衝撃が体を駆け巡る前に彼女は体を捻らせて衝撃を受け流すように光線の軌道上から逃れた。
ジハードに隙が生まれる、彼はこの一撃で彼女を吹き飛ばすつもりでいたからだ。
「嵐脚 死鎌!」
ホーマーが渾身の力を込めた回し蹴りが放たれる。
脚がジハードにと届いてはいないが、この技は蹴りではなく蹴りから発生する斬撃が本体だ。
そして彼はそのことをよく理解している。
ジハードは上半身を限界にまで反らし放たれた斬撃をかわす。
彼の背後の木や岩,廃屋、地面さえもが鮮やかな断面に断たれる。
「かっかっかっか!おまアホか!!こんなん食ろたら死んでまうやろお!!」
ジハードが大笑いしながら叫ぶ。とても正気とは思えないがホーマーは最初からこの男が正気だとは思っていない。
「殺すつもりでやってもてめえは死なねえからなジハード!」
「せやったら俺もそのつもりでやらな不公平やなあ!」
ジハードはすぐに態勢を立て直しホーマーに接近する。
不規則な軌道で近づいてくる彼をホーマーは目で追いながら身構える、しかし先の蹴りの隙が大きい。
この態勢では十分な迎撃ができない。
そして最大まで接近したジハードはホーマーの頭を片手で掴む。
「っぐ・・・っ・・!?」
「このままグシャってしたろか?」
「っ!触んなこの根暗野郎!!」
ホーマーはそのまま拳を撃ち出す。
頭を潰されるというプレッシャーが彼女を反射的に動かした。
しかしそれはこの男の思惑通り。
ジハードはその拳をどういうわけか試験管の口で受け止める。
当然試験管は砕け散る、はずが一切の損傷がない。
「しまっ・・・!」
それを見たホーマーに焦りが見える。
ジハードは悪意に満ちた笑顔で
「ジャムらせてもろたで。」
そしてそのまま至近距離で試験管から光線が放たれる。
もはや回避する術はない、彼女は頭を掴まれ光線の衝撃を全身で受けるしかできなかった。
「どうやぁ?自分のパンチの威力は。この至近距離やったら体硬めても効くやろ。」
激痛がホーマーの全身を駆け巡る。声さえ出ない。
思考が定まらずグラグラと地震の中にいるようだ。
「訊いとんねん!!答えぇ!!」
ジハードはホーマーの頭を掴んだまま地面に叩き付けすぐさま持ち上げ再び叩き付ける。
「ほらどないしてん!!はよなんとかせんとホンマに殺してまうぞぉっ!かっかっかっか!」
叩き付ける、何度も何度も、悪意と殺意を込めて彼女の頭を地面に叩き付ける。
「かっかっかっか!ジハード選手華麗なドリブルゥゥゥゥ!!」
渾身の力を込めて本気で頭を砕くつもりでジハードは彼女の頭を地面めがけて―
「こっちのセリフじゃボケぇ・・・・」
頭が地面に衝突する寸前、ホーマーは両足を地面に突き立てた。
頭から血をダラダラと流しているにも関わらずホーマーは逆らうように姿勢を高く持ちあげていく。
「てめえ・・・まだ・・」
ジハードは彼女を抑えつけようと力を込める、体重をかけて彼女の頭を地に伏せさせようと。
しかしホーマーは崩れない。頭を掴んだ手の指の隙間から彼女の血まみれの目が覗く。
「殺すんだったらさっさと殺せよ・・・ぐだぐだ遊ぶんだったら先にこっちが殺しちまうぞジハードォッ!!」
ホーマーは自分を拘束する腕を掴み頭から引き剥がそうとする。当然ジハードは抵抗する。
彼の手がホーマーの頭をがっちり掴んでいる以上いくら引き剥がそうとしても寧ろダメージを負うのはホーマーの方である。
がしかし、彼女とて喧嘩屋を名乗る暴力の権化、そう簡単には引き下がらない。
彼女はそのままジハードの腕を掴んだまま雑巾のように捩じり出す。
大した痛みを与えるわけではない、だがジハードは即座に危機感を覚える。
彼女の腕力、握力、そして覇気、それらが合わされば人の腕など捩じ切れてしまう。
ならばその前にこの女の頭を握り潰してやろうとジハードの握力が強まる。
腕が捩じ切れるか、頭が先に潰れるかのチキンレース。
人の体から出るはずのない大きな軋む音。
そしてついに
「くそっ・・!!」
ジハードが手を離した。
すかさずホーマーは彼を背負い投げし地面に叩きつける。
「いってぇなクソ!」
地面を転がって距離を取り受け身を取り起き上がるジハード。
しかし正面にホーマーの姿はない。
どこにいるのかと辺りを見回す隙さえ与えず右後方よりホーマーが殴るかかる。
「甘いっ!」
振り向きもせず試験管で拳を受け止める。
「懲りへんね~!また同じことやるんか!?」
「使わせねえ!!」
続けて何度も殴る、蹴る。ジハードに光線を撃たせる暇を与えないように。
だがジハードはその連撃をかわし時に試験管で受け止める。
ホーマーが息切れし始めた頃、彼女は一歩下がり呼吸を整え身構える。
「お前俺の能力忘れたわけやないやろな。こんなに詰まってもうたで?」
試験管が膨張し赤く光り今のも爆発しそうになっている。
「ジャムジャムの実の詰め込み人間。衝撃をものに詰め込む、だろーが。」
「なんや覚えてるやん。せやったらこんだけ詰めさせたらあかんのとちゃう?あ、お前もしかして破裂させんの狙ってるやろ!アホやね~、俺の詰め込める容量は無限やで?かっかっかっか!」
「試したことあんのかよ。」
「あ?」
ホーマーは怯まない。笑みさえ浮かべている。
その勇姿にジハードは苛立ちを見せる。
「ほなやれるもんならやってみろぉ!!」
ジハードが試験管の口を向ける。
が光線が撃たれる前にホーマーが蹴りをジハードの顔面目掛けて放つ。
彼はそれを首を倒しかわす。
すかさずホーマーはジハードの真上に飛び落下しながら踵落としを繰り出す。
ジハードは腕を交差し受け止める。
「なるほどなあ!ええやろ!どこまで詰め込めるか試したろやんけ!その代わり死んでも知らんぞぉ!かっかっかっか!」
ホーマーの連撃が再開する。何度も何度も攻撃する。しかし目論み通りに試験管に攻撃を吸収されてしまう。そのうえ一向に限界が来る気配はない。ジハードの能力のキャパシティは想像以上に高い。
そしてついにホーマーは攻撃を止める。
「はぁ・・・!はぁ・・・!はぁ・・・!」
「はいはいお疲れさまでした~!これ何発分やろなあ・・・?」
ジハードは試験管を手の中でクルクルと回す。
「こんだけの威力や、お前の身体はバラバラになってまうで・・・かっかっかっか!」
赤く点滅する試験管。ホーマーの覇気を込めた渾身の鉄拳を何度も受け止めたその試験管は強力な爆弾の様。体力を消耗したホーマーにどうぶつけるかを楽しそうに思い浮かべている。
「ほな、さいなら。」
試験管から極太の光線が放たれた。
ToBeContinued