マジックマン・サイドショー・サイドは知る人ぞ知る傭兵である。
赤いモジャモジャの髪に鉤鼻、紳士風の装いはしているがどうも安っぽくところどころにほつれも見える。傍らにはスティックハンマーが、ゲートボールでもするんだろうか。
彼は賞金稼ぎの島ドクターティースのバーのカウンターで一人酒を飲んでいる。
「あんたがマジックマン?」
ホーマーは隣に立ち声をかける。
「いかにも。私がマジックマン・サイドショー・サイドだ。」
「あんたを雇いたい。」
「そうやって今まで私を雇おうとした賞金稼ぎが何人ここを訪ねてきたと思う?」
「私が初めて?」
「・・・・・・・・・・・そうだ。ほら紹介状見せなさい。」
マジックマンは機嫌悪そうに酒を飲み干しホーマーから紹介状を奪う。
「・・・喧嘩屋、あー聞いたことあるぞ。バウンティプレゼンターにやたら狙われている賞金稼ぎだな?それが何故この私を雇うというのだ?あー分かったぞ、バウンティプレゼンターから守ってほしいのだろう。いくらブローからの紹介状があってもそんなつまらない仕事をこの私に頼むというのは失礼だとは思わないかね?」
まくしたてる様に早口で言われホーマーの顔から生気が消える。小馬鹿にしたような口調もさることながら人を拒絶するような態度が鼻につく。
怒っているわけではない、ただただうんざりしてしまったのだ。
「・・・・・・・・・・」
「ん?どうしたのかな?分かったならさっさと去りなさい。ここは子供の来るところじゃない。しっしっ。」
しかしここで怒ってはどうしようもない。
噂が本当なら対最悪の世代戦の武器となる。
あの四皇と戦い生還した傭兵などそうそういない。
「・・・白ひげと戦ったことがあるって本当か?」
「ほう!聞きたいか!」
いきなりテンションが上がるマジックマン。ホーマーは一瞬 あ、無理だコイツ と思ってしまうがグッと堪える。
「あれは何年か前のこと、私が一人で新世界の海を彷徨っていたときだった・・」
マジックマンの話が延々と続く、途中で何度も何度も口を挿みたくなったがその度に堪える。
「そこで白ひげが最上大業物12工 薙刀むら雲切を私に・・・!」
まだ話が続く。この時点でいくつかの矛盾点を彼女は発見しているのだが突っ込まないように堪えている。そもそも突っ込む隙がないが。
「私は絶体絶命の危機を迎えた・・・そこに火拳が現れたのだ・・・!」
ホーマーは理解した。こいつはとんでもない嘘つきだ。
少し不安になってきた。今からでもブローから紹介料返してもらおうかなと思い始める。
「かくして私は白ひげを追い返すことに成功したのだ。どうかな?私の武勇伝、ますます私を雇いたくなったろ?」
「・・・・あ、いや。・・・・」
ホーマーはうんざりし過ぎて顔が老けてしまった。
「やっぱいいです・・・」
ホーマーはよろよろと踵を返しバーから出ていく。
流石に我慢の限界だった。
こいつを仲間にするのは無理だと。
「・・・・・・・これでいい。もう私は誰の力にもなれない。もう・・・」
そこにホーマーと入れ違いで男たちが数人入ってくる。男たちはマジックマンを取り囲む。
ただ事ではない様子、男たちは彼に銃を向ける。
「いい加減にしてくれないか。私はね今過去に浸っているんだよ・・・!」
その間に外でホーマーはブルーレットと合流する。
老けたホーマーを見てブルーレットは驚愕する。
「総長~!どうしたの~!?」
「いや、なんかさ。そこまで仲良くない人の自慢話聞かされて退屈したことない・・・?」
「あるけど~・・・」
「それだわ。」
その時バーのドアが吹き飛び、続けて男たちが吹き飛ばされてくる。
誰も彼も気絶しており全身傷だらけだ。
ついでに顔も老けていた。
「うわ、なんだ!?」
「あれ、なんだ君はまだいたのか。」
「・・・やっぱりあんた本当にマジックマンなんだな・・・」
ホーマーはその姿を見て確信する。
やはりこの男が必要なのだと。
「マジックマン・サイドショー・サイド!頼む!麦わらの一味とやり合うのに力を貸して欲しい!」
ホーマーは改めて頼み込む。
しかしマジックマンは悲し気に笑むばかりで。
「私が四皇とやり合った男だからかい?本気でそんなこと信じているのか?こんな傭兵が四皇とやり合ったと?」
「・・・正直信じてない!けどあんたのもう一つの噂が本当なら、本当なら私たちの目的を達成するのに大いに助かる!」
「・・・・・・・・」
マジックマンは黙り込む。
「マジックマン・サイドショー・サイド。あなた~本職は悪魔の実の研究家でしょ~。」
「・・・・昔の話さ。私は目的を達成できなくなった時点でその肩書を捨てたのだから。」
「だったら、もう一度挑戦すりゃいい!あんた食いたかったんだろ?あの悪魔の実を!」
「もしかしたら~チャンスがまたできるかも~」
「・・・なるほど私のことを大分調べたようだな、恐れ入ったよ。つまりこういうことか?麦わらの一味と戦うのに私の悪魔の実の知識を借りたいと。その代わり私にはあの悪魔の実を手に入れるチャンスを・・か。」
ホーマーは握手を求めマジックマンに手を差し出す。
迷っていることは最初から分かっていた。誰だって迷う、努力してもその成果は保証されないから。
それならば今のままでいい何もしない、そうやって人は足を止め自分を偽る。
本当は、本心では今すぐにでも抜け出したいのに。
しかしこの物語は前へと進む。
彼らは前へと進む。
「よろしく頼むよ喧嘩屋ホーマー。」
ToBeContinued