海の中をうごめく影がストライフトリガー号を取り囲む。影はどうやら一つではない。四方を囲み船と並走している。そしてその姿を現す。
水飛沫と共に浮上したのは潜水艇。その船体には主張するように髑髏が描かれている。前方を遮る潜水艇は他の船より一際大きくハッチが開いたかと思えば中から鉄の塊を顎に接着した男が現れる。
「情報通りいやがったぜ!!」
男は拡声器を使い喧嘩屋の船に向かい叫ぶ。
「俺の名はメカ髭!おとなしく船止めて降参しな!さもねえと船ぶっ壊して全部バラバラにして、えっと、とにかく降参しろ!ははははは!」
喧嘩屋一同、メカ髭の降参要請に対しうんざりした顔をして準備運動を始める。
「船は4隻。どうする?」
腕を伸ばしながらデラウェアが言う。
「とりあえず分担しましょ~、時間短縮よ~」
「ブルーの案採用!後方デリ!右ウイ!左ビーフ!前方のでっかいのはブルー!」
「ホーマーお前は?」
「留守番!舵もいるだろし。」
「僕はそれでいいけど。」
「私も異議なしでーす。」
「じゃ、そんなわけで・・・」
「おお」
「ん~」
「よーい・・・・」
「ドン!」
全員が声をそろえ開始の合図を口にする。
一瞬で甲板から姿を消し各々が喧嘩を始める。
「メカ髭様!奴ら乗り込んできました!」
「構わねえ!やっちまえ!」
後方からストライフトリガー号を追う船には航海士デラウェアが乗り込んだ。
二振りの剛剣を逆手に持ちダガーのように構える。
しかしメカ髭の手下達は銃を向け容赦なく発砲する。
銃弾がデラウェアの身体を貫く・・・
ことはなかった。
鈍い音と共に銃弾は弾かれ床に落ちていく。
「かゆいかゆい!」
「なんだこいつ!?」
「覇気使って防いだんだ!気をつけろ覇気使いは厄介だぞ!」
手下たちが警戒を強め刀を抜く。中には刀に武装色の覇気を込めるものもいる。
「お前らなんかに覇気は使わねえよ俺ぁ。」
デラウェアの身体は膨れ上がる。筋肉が膨張し耳は尖り眉間から鋭い角が飛び出す。
「サイの身体にちんけな弾はねえだろお前ら。」
ウマウマの実 古代種 モデル エラスモテリウム
肉体を単純に強化する動物系悪魔の実
その力は覇気がなくとも恐ろしく強大。
「こいつ動物系の能力者だ!」
「よっしゃいくぞおおおっ!」
デラウェアは勢いよく剛剣を振り回す。
防ごうにもその速度、質量、筋力の前には防御は成立しない。
受け太刀した者は漏れなくその勢いを受け止められずに弾き飛ばされてしまう。
「どうしたどうしたぁ!」
「くそ!抑えつけろ!!」
手下達が一斉にデラウェアへ飛び掛かる。
「キリがねえな。だったら派手にやってやろうじゃないの!」
デラウェアの眉間から伸びる鋭い角に覇気がこもる。
「覇気使わないって言ったじゃねえか!」
「うるせえ細かいツッコミすんな!」
頭を振り下ろし角を床に叩きつける。
「犀核弾刀!」
角から解き放たれた覇気が辺りに衝撃波となり拡がる。
飛び掛かった手下達は衝撃をくらいその場で身体が潰れるほどの圧力に気を失う、それに留まらずそのまま吹き飛ばされ海へと落ちていく。
それだけの衝撃を受けた敵船もただでは済まず船は崩れていく。
手下たちは逃げまどい最早戦闘どころではない。
「ぎゃああああ沈む!」
「浮き輪!浮き輪ああ!」
「だーはっはっはっは!見たかこの俺のパワーを!・・・・・ぎゃあああああ!沈む‼助けてくれえええ!」
悪魔の実の能力者は海に入ると力が抜けてしまう上に泳ぐこともできない。
デラウェアはそのことを知らないわけではなかったのだが、あまりにも迂闊な戦い方だった。
「デラウェア兄さん!」
「うわウイ!お前いつの間に!」
「いや一緒にいたじゃん!なんでみんな私に気づかないの!?」
「お前持ち場は!?」
「もう片付いた。だから手伝いに来たんじゃん。」
「いつの間に!?ってかそれよりも助けてくれ沈んじまう!」
「はいはい。」
ウイはほぼ海に浸かっているデラウェアの手を掴み宙に飛び上がる。
そのまま彼と共に自船に戻っていく。
少し時を戻し、左舷に張り付く敵船。
乗り込んだは料理人ビーフ。
甲板に降り立った瞬間手下達は動きを止めた。
乱れた黒髪と乱れた黒ひげ飛び出たお腹と見るからに野暮ったいその姿に手下達は笑いさえこみあげてくる。
「なんだこのおっさんは!うひゃひゃひ―」
だが次の一瞬笑い声をあげた手下はビーフに頭を掴まれ床に叩きつけられていた。
「まだ引き金をひかないのか君たちは。」
手下達が呆けている間にビーフは次の一撃を繰り出す。
「獣厳」
弾丸のような速度で撃ち出されるその拳は一撃で敵を沈める。
「このおっさん何なんだ!やばいぞ!ぐおあっ!?」
刀を構えようとした瞬間にその手下は宙に打ち上げられていた。
「月歩」
その真上に待ち構えるようにビーフは空を蹴り上がっていく。
そしてそのまま拳を振り下ろし
「獣厳」
手下は隕石のように甲板へと落下する。
ビーフはその上に着地し身構える手下達を見回す。
「ほら、早くかかってきな。料理が冷める。」
時同じくして前方の母船ではブルーレットが船の中を所狭しと暴れ回る。
ボールのような体をそのまま本当にボールのように転がし次々と敵を轢いていく。
覇気を纏い転がりくるその巨体はまるで戦車のよう。
「おほほほほほ~!とめてごらんなさ~い!」
「メカ髭様!被害状況がとんでもないです!包囲していた船も全部墜とされ、この船ももうあのオバハンのせいでボコボコです!」
「そんな・・馬鹿な・・・」
「う~酔ったわ~」
ブルーレットが動きを止める。
それを機と捉えたかメカ髭は改造された右腕から刃を出し彼女に向かって飛び掛かる。
「くらえやババアー!!」
「あ~?」
刃を彼女の喉元めがけて突き出す。
「邪魔~」
彼女はハエを追い払うくらいの感じでメカ髭をはたき倒す。
「ぐ・・・・!おおっ・・・!」
「あんた達~、どうして私たちのこと知ってたの~?」
「!?」
メカ髭の表情が凍り付く。
「あんた達~狙いは天竜人じゃなくて~総長が狙いなんでしょ~?」
「な・・・!?な、なんでそれを・・・」
「つまり私達のことを~誰かに聞いた~ってこと~?」
「それは・・・」
「誰?」
ブルーレットの顔から笑みが消える。
メカ髭は恐怖に慄き動けないでいた。
「まあいいわ~あとは総長の判断に任せるから~」
「なに・・?」
ブルーレットは背を向けてメカ髭の船から離脱した。
一体何をしようというのか。メカ髭は立ち上がり辺りを見回す。
バラバラになっている他の船、辺りに転がる手下達の無残な姿。
そして正面には喧嘩屋総長がこちらを見据えている。
船頭に立ち何かを口ずさんでいる。
聞き取ることは当然できない。
しかしその表情から読み取れるのは気持ちのいいものではない。
そして、
「嵐脚 死鎌」
ToBeContinued