メカ髭なる海賊の襲撃に遭った喧嘩屋一行はこれを難なく撃破。
船は何事もなかったかのように進み続け後に残るは縦に真っ二つに綺麗な切り口に分断されたメカ髭の母船だけ。最早そこには人の気配はない。
「ミョスガルド様、もう大丈夫ですよ。このまま予定通りマリージョアまでお連れします。」
「ありがとう。噂以上の力だな。」
「どうも。」
ホーマーはミョスガルドに報告を終え、一行はそれぞれの仕事に戻る。
しかしその前にブルーレットとビーフは貨物室に向かう。
「ビーフ~さっきの奴ら~多分総長狙いだったわ~」
「そうか・・・あいつの仕業だろうな。」
「でしょうね~。」
「総長・・ホーマーは気づいてるのか?」
「ん~ん、まだ話してもな~い。でもあの子勘がいいから~、薄々気づいてるかも~。」
「話しておいた方がいい、あいつが戻ってきたとなると・・・しばらく休業だ。」
しばらく経つと聖地マリージョアが見えてくる。
世界貴族居住の地とだけあり厳重な警備だがミョスガルドの手引きで一行は難なく上陸した。
「世話になったな喧嘩屋。もし時間があれば寄っていくか?」
デラウェアが怯えた顔でホーマーを見つめる。
それを察したミョスガルドは笑いながら言う。
「はははは!大丈夫だ、他の天竜人のいないところでもてなそう。」
「じゃあ行こう!」
喧嘩屋一の小心者に一行は呆れ何も言いもしない。
「ってかなんかバタついてる?他にも船めっちゃあるけど。」
ホーマーは辺りを見回す。
確かに多くの船が停泊しておりどの船もどうやら世界貴族の船ではない。
「ああ、世界会議があるからね」
「うそ!?今年だっけ!?」
「総長はもう少し新聞読もうか・・・」
「うっせービーフ!」
「世界政府加盟国の王達が集うこの会議は世界にとって重要な時間だ。もし必要なら中に入れるよう手配しようか?貴女達のビジネスにとって良いコネクションができるかもしれない。」
「マジすか!?ミョスガルド様大好き!」
ホーマーは彼の手を取りその場で飛び跳ねる。
これが他の天竜人であれば死罪である。
ミョスガルドの手配により限定された地区のみ自由に立ち入れるようになった一行は各々自由時間とした。
ウイとデラウェアはそのままミョスガルドについていき一緒にお茶をご馳走になるそうだ。
ブルーレット船の点検に、ビーフは食材を探しに。
ホーマーは鞄に大量の名刺を詰め込み城の中へと入っていく。
「ほう、どこかで見たことある顔じゃと思えば。」
その瞬間ホーマーは後ろから声をかけられる。
振り向くとそこには白のスーツを纏った長い鼻の男ともう一人シルクハットをかぶり肩に鳩を乗せた男がいた。
「あー・・・えっと、カク・・さん?ルッチ・・・さん?」
「なんじゃその微妙な反応は。」
「いや・・CP9全員死んだんじゃなかったでしたっけ・・・?」
「生きとるわ!」
「す、すんません!!・・・ってか私のことよく覚えてましたね。」
「サイファーポール就任初日にルッチになぐりかかって危うく死にかけた女じゃぞ?忘れるわけなかろうて。」
「その節は本当に本当に申し訳ありませんでした・・・」
ホーマーは過去に世界政府役人の父の勧めで諜報部サイファーポールに就任したことがあった。
しかし彼女は自らの力量を盛大に見誤り偶然出くわしたCP9の殺戮兵器ことロブ・ルッチに喧嘩を売ってしまったのだ。その後彼女はサイファーポールを解雇された。
ホーマーにとってはこの肩に鳩を乗せた男は黒歴史の象徴でありトラウマなのだ。
「それで、ここで何をしておる。返答しだいではわしらはお前を殺さなくてはならん。」
「あ、いや!ちゃんと許可もらってます!ほら!」
ホーマーは慌ててミョスガルドからもらった手形を見せる。
その拍子に鞄から名刺が落ち長鼻の男カクの足元にひらりと落ちた。
「なんじゃ?喧嘩屋総長・・・?ぶっ!はっはっはっはっは!なんじゃ喧嘩屋って!」
「笑わなくても・・・!ただの賞金稼ぎっすよ、自分喧嘩しかとり得ないんで皮肉も込めて喧嘩屋って名前にしたんす。」
「ほう、喧嘩屋の~。儲かっとるのかこんなので?」
「海軍大将から依頼されることもあるんすよ!あんたらが思ってるよりもデカい仕事やってんだ私は・・!昔のままだと思うなよ!」
つい口調が強まる。
「くだらん。」
シルクハットの男ロブ・ルッチが口を開く。
「格下の海賊相手に暴れて何かを成し遂げたつもりでいるのか?笑わせる。」
「何だと・・・?」
「お前の父親、覚えているぞ。確かアデレードといったか。任務で世話になったことが何度かあった。大した男だったよ。それに比べお前は。」
ホーマーは拳を握りしめる。相手が何を言おうとしているのか分かる。
分かってしまう。それは自分で自分に言い続けてきたことだから。
「父親の面汚しだ―」
身体が動く、止められない。彼女は怒りに任せた拳をルッチに向けて撃ち出す。
鋼と鋼がぶつかり合うような音が響く。
彼女の拳はルッチには届いてはいなかった。カクが何食わぬ顔をしたまま片手でその拳を受け止めていた。
「よさんか。ルッチ、お前もお前じゃ。こんなやつを挑発してどうしようというんじゃ。」
そのまま振り払いホーマーを投げ飛ばす。
彼女は受け身を取り未だ消えぬ闘争心を剥き出しにルッチを睨みつける。
ルッチは氷のような目つきでホーマーを見据える。
張り詰めた空気の中沈黙が続く。
「そうだな、俺としたことが。格下相手に睨みを利かせては人のことは言えないな。」
「わしらは仕事がある。お前もその殺気引っ込めい。それとも本当にわしらと喧嘩をするつもりなのか?」
「・・・・・・くそが。」
ホーマーは憎まれ口を叩き構えを解く。
それを見たルッチとカクは別れの言葉を言うでもなくそのまま彼女の前を通り過ぎていく。
その場に立ち尽くすホーマー、涙がにじみ出てくる。
「くそったれえ・・・」
悔しさ、情けなさ色んな感情がこみ上げて破裂しそうになる。
ここまで歩んできた道も積み上げてきた経験も信念のない彼女にとっては虚無でしかない。
そのことをルッチに見透かされたのだ。
「あほんだらあああああ!!」
彼女は叫びながら走り出す。営業のことも忘れカバンを殴り捨て自分の船に向かう。
「ブルー!出発すんぞ!こんなとこさっさと出るぞ!」
「ど~したのよ~、まだみんな戻ってないわよ~?」
「いいからさっさと全員呼び戻せ。出発だ、遅れたやつは置いてく。」
「・・・・は~い、りょうか~い。」
ブルーレットはすぐさまに電伝虫でクルー達に連絡を入れる。
ホーマーは自室に向かいベッドに倒れこみ声を出さずに泣いた。
枕に顔を押し付けて情けなく負け犬のように泣き続けた。
ToBeContinued