「君達は本当に素晴らしいねぇ」
どこかの荒野、そこには二つの存在が立っていた。
一つはスーツを身に纏い、背丈は人と変わらない姿だった。
もう一つは姿こそは人間だが白い騎士の姿に片手には恐竜を思わせる剣、もう片方には狼の砲台が各々一体化している存在だった。
その余りにも違う存在だが、白い騎士はボロボロになりながら、スーツの男に向けて睨んでいた。
「君達は僕がこれまで見てきたどの個性にもない特徴を持っている。
無数の姿を持つその個性、何よりも全く別の存在が一体化するなんて、聞いた事がない。
良かったら、僕の仲間にならないか?」
「「断る!!」」
男は親しみを込めたように手を指し伸ばすが、白い騎士から二つの声が響きながら、そのまま剣で振り払い、男に向けて、砲台を男に向ける。
「残念だよ」
そう言って、男を中心に巨大な力を発動させた。
あまりにも強すぎる圧迫感が白い騎士に襲い掛かるが、それでも白い騎士は倒れない。
「行くぜ、相棒!」
「勿論だ!!」
白い騎士から鳴り響く二つの声は互いに支えるように叫びながら、目の前にいる男に向かっていく。
「・・・・夢か」
だが、白い騎士の戦いが始まる直前、居眠りをしていたアグモンは起き上がった。
アグモンが普段から活動している事務所は小さな事務所であり、有名なヒーローが働いているとは思えない程に小さかった。
それでも、体格の小さなアグモンにとっては十分な程の大きさであり、仕事の依頼から報告書、客の対応室など、事務所として最低限の機能は揃っていた。
「さて、仕事に行くか」
そう言いながら、あくびをしながら、移動用のコートを身に纏いながら、アグモンは事務所の入り口に立つ。
「行ってくるぜ」
そう言ったアグモンの目の前にあったのは今よりも若い頃のアグモンと狼の毛皮を身に纏ったアグモンと同じぐらいの体格の存在が事務所の前で記念写真を撮っていた姿だった。
アグモンはゆっくりと目的地まで歩きながら、時折見かける子供達やファンの子との交流を行っていると
「あら、先輩」
そう声をかけたのは、チャイナ服を思わせるヒーロースーツを身に纏い、爪の髪飾りをしている女性だった。
アグモンと比べても高い身長を持つ彼女はアグモンを見かけ驚いている間に
「んっあぁリューキュウだぁ!!
久しぶりぃ!!」
パトロールの途中だったのか、知り合いであるヒーローのリューキュウに手を振る。
「あっあぁ、そう言えば、そういう事ですね」
「何が?」
その言動に違和感を持って、笑みを浮かべていたが、気付かないふりをしているアグモンはわざとらしく首を傾げる。
「いっいえ、それよりも先輩はどこに?」
「これから子供達と一緒にパンを作りに行くんだぁ。
楽しみだなぁ」
そう言いながら、アグモンは笑みを浮かべているが、目を閉じている為分かりにくいが、知り合いの前でキャラを演じているアグモンの目は死んでいた。
「そっそうですか」
そう言いながら、リューキュウは少し目を離してしまう。
だが、ふとリューキュウの目に映ったのは空を飛ぶ何かだった。
その何かはゆっくりと近くの建物に近づくと、同時に身体が膨れ
「きゃああぁ!!」
「「っ!!」」
爆発した。
建物が爆発した事によって、周りの市民は悲鳴を上げ、ビルは倒れ始めた。
「リューキュウ!」
「はいっ!!」
1秒にも満たない程に素早く、彼らは建物に向かって走り始め、その姿を変えた。
「アグモン進化!グレイモン!」
「はぁ!!」
アグモンは瞬時にグレイモンへと姿を変え、リューキュウも先程まで人だった姿から龍へと姿を変え、倒れてくるビルを支えた。
ビルの大きさは巨体を誇る二人が支えるのがやっとな程の大きさでであった。
「ぐっ、これを支える時間はそれ程長く保てないっ!?」
「あぁ、けど俺達が支えないと、被害が大きくなるっ!!」
そう言いながら二人は巨大なビルを支えながら、周りに次々と集まってくる消防士にヒーロー達が来るのを見る。
「けどっこのままじゃっ」
「リューキュウ、お前は避難を手伝えっ!
その間は持たせてやるっ」
「でもっ先輩一人でこれを支えるのはっ」
「なぁに、プルスウルトラっ!
限界のその先だぜ。
それに俺はまだまだ本気じゃないからなぁ!!」
その言葉と共にグレイモンは大きく叫ぶ。
「グレイモン超進化!!」
その言葉と共に、ビルを支えていたグレイモンの身体は光り始め、大きく変化していた。
その姿は先程までのグレイモンと比べて、身体の半分以上が機械へと変わっており、特に左腕は巨大な機械の腕が特徴的な姿、メタルグレイモンへと姿を変えた。
「メタルグレイモン!!」
共にビルを支えていたリューキュウも、その姿に驚きを隠せなかったが、目を合わせた瞬間に頷き、その場を離れた。
同時に支えを無くしたビルは倒れていくが、メタルグレイモンは左腕を構える。
「トライデントアーム!」
メタルグレイモンの叫び声と共に、左腕から伸びた爪はビルへと突き刺さる。
その勢いは先程まで崩れ落ちそうだったビルを瞬く間に支える程の力を持っていた。
「今の内に避難をっ」
メタルグレイモンが支えているのを確認すると、リューキュウを始めとした多くのヒーローや消防士達はその場にいた市民の避難を始めた。
ビルの中でも崩壊している部分や破壊が必要な部分も、ビルを支える必要のなくなったリューキュウの力によって次々と救出が行われていく。
その時間は僅か10分という短時間だったが、その間もメタルグレイモンは巨大なビルを一人で支えていた。
「避難、完了しました」
「待ってたぜ、その一言っ!!」
その言葉と共にメタルグレイモンの胸元が開くと
「ギガデストロイヤー!」
その言葉と共に胸元のハッチから現れたミサイル、ギガデストロイヤーが発射された。
ギガデストロイヤーはそのまま倒れそうになっているビルへと当たると同時に、その破壊力によって、瞬く間にビルを焼き尽くした。
その威力は強く、爆発による熱風が周りに襲い掛かるがリューキュウ達はその身体を使って、熱風から市民を守る。
そして熱風が収まったのを見計らって、見てみると、そこには先程まで倒れそうなっていたビルは跡形もなく消えていた。
「本当にこれはあんまり使いたくなかったけどな」
そう言ったメタルグレイモンの言葉に同意するようにリューキュウも見つめる。
ビルの崩壊事件から数時間後、やっと後処理も終え、アグモンはコートを着ながら、自宅へと戻っていた。
「やっぱり、完全体になると、筋肉痛になっちまう。
なるべく成熟期で済ませたいのになぁ」
そう言いながらアグモンは先程までの事件後から続いている筋肉痛に悩みながら、歩いていく。
「あら、お疲れ様ですアグモン先輩」
「今はプライベートだからヒーローの名前を言わなくても良いぞ」
「そうですか?
では八神先輩、お疲れ様です」
そう言ったリューキュウこと、龍間の姿は仕事を行っていた時のヒーローの姿とは別に身元がバレない程度の変装を行っていた。
「そう言えば、八神先輩は今夜は予定はありますか?」
「んっ?
特にはないけど?」
「でしたら、久しぶりに一緒にどうですか?
私も久しぶりにあの店のハンバーガー食べたくなったので」
「別に良いぜ?」
そう言いながら、八神はこれから向かうハンバーガーに思いを寄せながら、歩き始める。
「それにしても本当に立派になったな。
まさかあんなにじゃじゃ馬だったお前が今では立派になって」
「インターンの頃の話は辞めてください。
私も若かったのですから」
そう言いながら頬を赤くしながら、龍間は答えた。
「それにしても、本当に懐かしかった。
メタルグレイモンですか」
「そう言えば、インターンの時の事件もメタルグレイモンになっていたな」
そう言いながら、彼らはインターンの頃に起きた事件を振り返りながら、笑みを浮かべる。
「その、やはりまだ引きずっているんですか」
「まぁな。
それに、あいつが戻ってくる場所を守らないといけないから」
そう言いながら八神は呟く。
「サイドキックはやはり」
「あぁどうもなぁ?
事務処理とかは一人でなんとかできるけど、どうも仕事は一人かあいつとのサイドキックじゃないと身が入らないというか」
そう言いながら、八神はコートから取り出したココアシュガレットを咥えながら呟く。
そんな哀愁漂う姿に龍間はただ一緒に歩く事しかできなかった。
「先輩あの「おっついたぜ」っ」
そう話しかけようとしたが、目的の場所へと辿り着いたのか八神は話を無意識に遮ってしまう。
「どうしたんだ?」
「・・いえ、なんでもありません」
そう言いながら、龍間は笑みを浮かべるしかなかった。
アグモンの進化系統は
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ウォーグレイモン
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シャイングレイモン
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ビクトリーグレイモン
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ブリッツグレイモン
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エンシェントグレイモン