その日、アグモンは児童養護施設に向かっていた。
仕事の内容は簡単に言うと子供達と一緒に遊ぶ事だった。
親がいなくなったばかりの子供達は心の傷が深く、彼らを励ます事もアグモンの仕事の一つである。
「そのはずだったのに」
そう言いながら、目の前に立ちはだかる敵に向けて睨みつける。
この施設に入ると、目の前にいるのは子供達や職員だけではなく、銃を構えた黒服の男達だった。
「おっと、大人しく着いてこいよ、アグモンさんよ」
「ぐっ!」
その言葉に従うしかなかったアグモンはゆっくりと動き出す。
人質の子供を一人捕らえている敵と、それを囲むように3人の敵とボスだと思われる一人の敵。
計5人の敵がアグモンと人質を連れながら、ゆっくりと施設の上の階へと目指していきながら、上の階へと行く度にアグモンは同時に悟る。
(こいつら、俺を戦わせないようにしている)
施設に入った瞬間にロックがかかり、職員と子供達だけでは脱出は不可能な密室になっていた。
そしてアグモンが例え人質を助けた後にグレイモンに進化すれば、その大きさで一瞬で建物は崩れてしまう。
(逆転の手は残されている。
だけど、その為にも今は時間を稼ぐしかない)
そう言いながらアグモンは目の前にいる敵に向かって睨む。
「お前達の目的は僕なのか」
「その通りだ。
俺達はある目的の為にあんたを殺しに来た」
そう言いながら、敵のボスだと思われる人物はアグモンに向けて銃を向けた。
「それでこの建物か?」
「あぁ、お前が戦う時には巨大な姿にならないといけない。
この建物の中ではそんな事はできないだろ」
そう言いながら、敵のボスは笑みを浮かべながら見つめる。
「なぜ、僕を殺すというんだ?」
「ある方からの命令でね。
お前と相棒が再び手を組まれたら厄介だから、その前に始末しろと言われた」
「っ!?」
その言葉を聞き、アグモンは大きく目を見開いた。
「まさかっ!!」
「どうやら、察したみたいだな?
これで晴れて、俺もあの方に認められる訳だ」
「テロリストが認められるとはな。
ウォルフラムだったか、お前は」
「ほぅ、ヒーローに知られているとは光栄だな。
まぁ、死ぬのは変わりないけどな」
そう言い、銃の引き金を引こうとした時だった。
「っボス大変です!!
捕らえられていた人質が逃げ出しましたっ!!」
「なにっ!!」
その一言にウォルフラムはすぐに窓の外を見る。
そこには人質と共にヒーローだと思われる集団が避難していた。
「僕ばっかりに気を取られていたようだね。
悪いけど、時間稼ぎをさせてもらったよ」
そう言い、アグモンはウォルフラムに向けて言う。
「はっだからどうしたっ!!
人質がいないだろうと、この建物内でお前は個性は発揮できない」
「さぁ?
それはどうだろうね?
それに僕は今、これまでにない程に怒っているから」
アグモンはそう言い、鋭い目でウォルフラムを睨みつける。
「っ!!」
瞬間、ウォルフラムは身に感じた寒気と共に、周りにある鉄柱を操り、アグモンへと攻撃した。
「アグモン!ワープ進化!!」
その一言と共に、アグモンに襲いかかる全ての鉄柱が切り裂かれ、同時に現れたのはアグモンと同じ黄色の鎧を身に纏った、龍だった。
「ウォーグレイモン」
大きさはアグモンに比べれば大きく、人と同じ大きさで、グレイモンやメタルグレイモンを知る者達からしたら、驚きしかなかった。
だが、その存在と対面しているヴィラン達はその存在を見た瞬間から、冷や汗が止まらなかった。
「なっなんだ。
お前っとにかく人質をっ」
ウォーグレイモンの出現はその場にいた全員が驚きを隠せずにいたが、そんな彼らの驚いた瞬間を狙うようにウォーグレイモンの姿は消える。
「なっどこにっ!!」
ウォルフラムはすぐに周りを見渡していると、彼の横に何かが通り過ぎた。
その正体を確かめる為に見ると、そこに倒れていたのは、人質を取っていたはずの部下だった。
そしてその人質は今、ウォーグレイモンが窓を突き破り、一瞬で他のヒーローに任せていた。
「頼めるか」
「っ分かりました」
ウォーグレイモンからの言葉にヒーローが頷くと同時にまた一瞬で動く。
「っ!!」
その事実を知ると共に、振り返るとウォーグレイモンは既にこちらに向かっていた。
「ちっヒーロー一人で戸惑うかよ!!」
同時に先程突き破った場所に入ったウォーグレイモンに対してそう言い残りの部下が襲い掛かる。
巨大化し暴走させた紫色の拳と腕を刃物に変える個性を持つ二人の敵がウォーグレイモンに向かって襲い掛かる。
だが、ウォーグレイモンは腕に装着されている爪を使い、その刃物の軌道を逸らし、同時に爪が外れた事によって現れた手で紫色の敵の拳を受け止める。
「「なっ!!」」
「・・・・」
そのまま、流れるような動きで二人の敵を蹴り払い、壁に叩きこむ。
「なっなんなんだよっ!!
リーダー、どうなっているんだよ!!
アグモンの奴は、この建物だったら勝てるはずじゃなかったのかっ!!」
「そんなの俺だって知るかっ!!」
目の前で起きている事に未だに追いつかないウォルフラムと最後の部下はそのまま目の前にいるウォーグレイモンを見つめる。
「悪いが、さっさと終わらせてもらう」
「ちっこのまま終わらせてたまるかよっ!!」
そう言い、最後の敵はそのまま水かきのある手が巨大化させ、突風をウォーグレイモンへと向ける。
だが、ウォーグレイモンはそれを読んだように、その手の中に小さな火塊を作り出し、投げる。
「ガイアフォース!!」
その言葉と共に放たれた一撃は突風を振り払い、壁へと叩きつける。
「ちっ」(まさか、こんな切り札を隠していたとはなっ!仕方ない、ここは撤退するしかない)
「逃がすと思っているのか?」
「逃げるさ。
あんたがヒーローならば、なおさらな!!」
その言葉と共にウォルフラムは手元のスイッチを押す。
同時に地面を大きく揺れる程の爆発が、起こり、グレイモンはすぐに音がした方向を見た。
窓から見えた物、それは建物の上が爆発し、その建設物が避難している人々へと降り注ごうとしていた。
「どうする、ヒーロー」
「っ!!」
目の前にいる敵を放っておけないと考えるウォーグレイモンだが、それよりも人命を第一に考えた瞬間、建物の壁をぶち破り、その手を構える。
同時のその手には先程と同じように炎の塊が集まりだすが、ウォーグレイモンが上に掲げた瞬間、その大きさはウォーグレイモンを遥かに超える巨大な物へと変わる。
「ガイアフォース!」
同時に投げたガイアフォースは市民に迫っていた全ての瓦礫を飲み込みながら、消滅する。
「皆っ、大丈夫かっ!!」
「アグモン」
ウォーグレイモンはすぐに避難していた人々の元へと向かい、周りを見渡す。
怪我人などはおらず、皆、ウォーグレイモンの姿に驚きでそれ所ではなかった。
「っ」
安全を確認したウォーグレイモンはすぐに敵がいた方向を見つめが、既に敵の姿はなかった。
「逃げられたか」
そう言いながら、ウォーグレイモンはその手を強くに握りしめるが、そんな彼に対して、子供は手を握った。
「アグモン、助けてくれてありがとう!!」
そう笑みを浮かべた子供の姿を見て、ウォーグレイモンは
「うんっ、皆が無事で良かったよ」
そう言いながら、ウォーグレイモンは光に包まれると共に、アグモンへと姿が戻る。
そうして、避難していた子供達の相手をしながらも、警察、ヒーローと連携して、敵のその後の情報を探った。
だが、まるで突然姿を消したように、その後の追跡はできずにその日の捜査は終わった。
しかし、アグモンにとって、その結果自体に何か確信を持ったように、とある場所に向かった。
アグモンの進化系統は
-
ウォーグレイモン
-
シャイングレイモン
-
ビクトリーグレイモン
-
ブリッツグレイモン
-
エンシェントグレイモン