【魔導書院ラメイソン】が消えていく。
魔法を学ぶための最高教育機構の姿が消えていくにつれ本来あるべき灯台の姿へと戻っていった。
その様子を見ながら聖星はゆっくりと息を吐き、自分のデッキに目をやった。
「皆、楽しかったか?」
誰にも聞こえないよう、自分達にしか分からないよう尋ねた。
このデッキに眠っているモンスターはまだ存在する。
残念ながらこのデュエルで活躍させることは出来なかった。
それでも対等に渡り合えるデュエリストとデュエルする事が出来たから楽しかっただろう。
「ありがとう……」
「聖星――!」
デッキにお礼を言うと、十代の呼ぶ声が聞こえてきた。
振り返れば今まで見た事がないくらい目を輝かせている十代がいた。
彼はすぐに駆け寄ってきてマシンガンのように喋り出す。
「すげぇぜ、聖星!
まさかこの学園1番のやつに勝っちまうなんてよ!
ってかさ、お前、まだ他に【魔導書】持ってたのか!
え~っと、【魔導書の神判】に【魔導書院ソレイン】だっけ?」
「書院じゃなくて、書庫な」
「そうそう、それ!
くぅ~~!
デュエルしてぇぜ!
ってか、ここでデュエルしようぜ!
あ、でもカイザーともデュエルしたいしなぁ」
「落ち着けって十代。
俺、まだ先輩にお礼すら言えてないんだぜ」
「あ」
聖星の言葉にやっと冷静になったのか、十代は苦笑を浮かべる。
頬を掻きながら振り返るとやはりカイザーは腕を組みながら待っていたようだ。
しかし特に気を悪くした様子もなく、内心ホッとしながら聖星は前に進んだ。
「丸藤先輩。
とても楽しいデュエルが出来ました。
デュエルに誘ってくれてありがとうございます!」
「いや、こちらこそ久しぶりに良いデュエルが出来た。
君とデュエル出来て良かったと思っている」
すっきりしたように晴れ晴れとした笑みを浮かべる2人。
やはり自分の全力でぶつかることが出来る相手がいるというのは良い事だ。
聖星がクラス内で浮いていたのと同じように、カイザーも良い意味でこの学園内では浮いている存在である。
強すぎるのが原因で、殆どのデュエリストはデュエルが終わってもいないのに諦める傾向が強い。
そのため勝手にカイザーには勝てないという雰囲気が生まれ、最後までデュエルを楽しめない場合が多いのだ。
しかし今回のデュエルは満足できる程のものでありカイザーは微笑んだ。
「それで丸藤先輩……」
「どうした?」
名前を呼ばれたと思って聖星を見れば、彼は真剣な表情を浮かべていた。
思わずカイザーも真剣な表情となる。
一体何を言うのかと思考を巡らせると聖星は言い放った。
「丸藤先輩が良ければまた俺とデュエルしてくれませんか?
勿論、このデッキで」
「あぁ」
何だ、そんな事かと思いながら頷くと聖星は嬉しそうに微笑んだ。
その笑みにはどこか安堵が混じっており、聖星も実力が拮抗しているデュエリストとの勝負をもっとしたいのだろう。
すると今まで空気を読んで黙っていた隼人と翔が近寄ってくる。
隼人は素直に聖星へおめでとうと言っていたが、カイザーの弟でもある翔はどう声を掛ければ良いのか分からないようで戸惑い気味だ。
「それにしてもハラハラしたんだな。
【サイバー・エンド】と【サイバー・ツイン・ドラゴン】が並んだ時なんて生きた心地がしなかったんだな」
貫通効果付きのモンスターと複数回攻撃付きのモンスター。
どちらとも敵に回したくないモンスターなのに、それが並ぶ光景などただの地獄、敗北宣言だ。
隼人のこの言葉はアカデミアの殆どの生徒達が同意するもの。
しかし十代と聖星は不思議そうな表情を浮かべて互いの顔を見る。
「そうかぁ?
俺は逆にわくわくして燃えるけどな~
聖星もそうだろ?」
「あぁ。
どうやってあの2体を倒そうかって、凄く考えた。
あ、でも除外したのに何回も戻ってきた時は肝が冷えたかな」
聖星の記憶が正しければ、まだこの時代に除外ゾーンに存在するカードを活用するカードは少なかったはずだ。
だから除外すればある程度は相手の戦術を狂わせることが出来ると思った。
しかしカイザーはちゃんと除外された時の対策も打っており、流石帝王としか言いようがなかった。
「でも、お兄さんが負けるなんて……
僕まだ信じられないや」
「おいおい……
翔、お前の中でカイザーはどれほど強い印象なんだよ」
「だって、お兄さんは完璧なんだよ。
負けたところなんて一度も見た事ないし……」
翔の言葉に隼人は強く頷く。
筆記の試験ではオール百点。
実技でも相手に隙を与えない戦術で完璧に圧倒している。
そんな彼を知っているからこそカイザーの敗北に驚いているのだ。
あまりにも大袈裟すぎる気がする聖星と十代はカイザーを見ると、彼は微かに苦笑を浮かべていた。
**
それから聖星達は時間も時間という事で、その場で解散となった。
十代達はすぐにレッド寮に戻り、聖星は途中までカイザーと共に林の中を歩いていた。
自分の全力のデッキであそこまで戦えるデュエリストとの会話は途切れる事はなく、別れるまで有意義な時間を過ごすことが出来た。
「う~~、楽しかった~~!」
部屋についた聖星はすぐにベッドに寝転がり、上機嫌に【星態龍】を見上げる。
宙に浮かんでいる【星態龍】ははしたない!と口にしているが特に気にせず勝手に喋る。
「どうしよう【星態龍】。
俺、まだあのデュエルの熱が冷めてないや!
あ~、寝れない!」
「良かったじゃないか。
私もあの男があそこまで出来るとは思わなかった」
楽しくて仕方がないと語る聖星に【星態龍】は優しい眼差しを向けた。
デュエルを振り返れば【星態龍】でさえ驚くような展開の繰り返しだった。
聖星が負けるとは思っていなかったが、次々と出てくる【サイバー・エンド】達に終始ハラハラしていたのは秘密である。
「それにしても……
十代や丸藤先輩を見てて思ったんだけどさ、この時代のデュエリストって凄いよな」
「は?」
突然の言葉に【星態龍】は首を傾げ、聖星を見下ろす。
確かに十代やカイザー達はとても強い。
カードを信じ、愛しているからデッキが応え、デュエルの流れをものとしている。
しかしそれは聖星の時代、遊馬達の世界でも同じはずだ。
今更どこに凄いと思うところがあるのだろうか。
そう疑問符を浮かべていると聖星は今までのデュエルを思い出しながら楽しげに語りだす。
「この時代の人達って、かなり融合重視のデッキだろ?」
「あぁ」
十代は【E・HERO】。
カイザーは【サイバー】、確か万丈目に明日香も融合を使っていたはずだ。
シンクロが中心の聖星の時代では、融合を使う人はあまり見かけない。
理由は単純に融合素材を揃えるよりシンクロ素材を揃える方が楽だからだ。
「初手で正規融合の素材と【融合】のカードが揃うのって凄いよな。
十代なんてさ、モンスターカードの同名カードは1枚しかいれてないんだぜ。
そんなデッキでよく毎回手札に揃うよな」
今日のデュエルでカイザーは初手に【パワー・ボンド】も含めて4枚揃っていた。
十代は初手に【フレイム・ウィングマン】や【サンダー・ジャイアント】の素材と【融合】が揃っている。
聖星だったらあんな事は絶対に出来ないと断言できる。
「そういえば決闘王の武藤遊戯という男も【融合】を使っていたな」
「えっと、【有翼幻獣キマイラ】、【竜騎士ガイア】、【超魔導剣士-ブラック・パラディン】だっけ?」
「あぁ」
歴史の教科書に武藤遊戯に関する項目があるが、それを何度読んでも彼のデッキ構築は理解できない事が多かった。
十代のようにカテゴリが統一されているのならまだサポートカードを共有できるため戦える。
だが上記に挙げたカードは種族もカテゴリもてんでんばらばらである。
統一感がないカードをピンポイントで引き、その場で融合。
今考えてもどんな引きだと思ってしまう。
「融合、か……
【融合魔導】ってのも面白そうだよな!」
「は?」
突然起き上った聖星は【星態龍】を見上げ、目を輝かせながら言い放つ。
一体何を言い出すんだ、と口にしようと思ったがそれより先に聖星はベッドから飛び降りた。
そして一直線にデッキケースの山に向かい、持っているカードを広げ始める。
「【融合魔導】って、軸は誰にする気だ?
というより聖星、お前は【融合】デッキに慣れていないだろう」
「軸は【覇魔導士アーカナイト・マジシャン】にしようかなぁ」
「シンクロを使う気か」
「へ、【沼地の魔神王】は?
あ、そっか。
【アーカナイト・マジシャン】の融合素材は魔法使い族シンクロモンスターと魔法使い族モンスターだから使えないんだ。
まいったなぁ……」
真っ先に思い浮かんだのは魔力カウンターを取り除くことで効果を発動する魔法使い族。
しかし【星態龍】の言うとおり融合素材にシンクロモンスターの魔法使い族が指定されているため、この時代では使えない。
融合素材代用モンスターを使用すれば良いと思うかもしれないが、属性や種族のようにカード名で指定されていない融合素材の代わりにはならないのだ。
「【スカルビショップ】は狙いすぎか?」
「……誰だ、そいつ」
「こいつ」
ほら、と差し出された1枚の融合モンスター。
禍々しい大剣とドクロの盾を持つ男性の姿が描かれており、攻撃力は高いが特になんの効果も持っていない。
聊か不安は残るが、まぁネタとして狙うのなら問題はないだろう。
「好きにしろ」
「あぁ」
融合素材がともに悪魔族なので、まともな【魔導】デッキにはならないだろうなぁと予想は出来る。
だが聖星本人は楽しそうなので良しとしよう。
瞬間、【星態龍】の背中に冷たいものが走った。
「っ!?」
【星態龍】は一瞬で表情を一変させ、とある方角を睨みつける。
その表情は険しく、いつも以上に目と目の間に皺が寄っている。
人間で例えれば眉間に皺が寄る、と言えば良いだろう。
【星態龍】の様子に聖星は怪訝そうな表情を浮かべて同じようにその方角に顔を向ける。
「どうした、【星態龍】?」
「……鳥の羽ばたく音が耳障りなだけだ」
「何だよそれ」
心配そうに尋ねてくる聖星に対し【星態龍】はそれだけを言って、その場にとぐろを巻く。
それ以上言う意思はないようで聖星はもう1度その方角を見た。
「(あっちの方角、なにかあったっけ?)」
【星態龍】は鳥の羽ばたく音と言い訳をしていたが、分かり易いほど態度が急変した。
だから何かあるのは分かるのだがそれが何なのか予想がつかない。
聖星がその方角を見ているのに対し【星態龍】は先ほど感じた違和感を思い出す。
体中の血が急激に冷え、腹の底から嘔吐が湧き上がる感覚。
「(間違いない、今のは闇の力……
闇のゲームか……)」
いきなり現れた膨大な力。それは【星態龍】にとってあまり関わりたくない力である。
闇の力は正しき力の場合もあるが、大抵は何かを壊す力である。
それがゲームとなればなにかしら賭け事が行われている。
命、肉体、記憶、精神、未来、友人、家族……
上げればきりがないくらい様々なものが思い浮かびあがる。
「(このアカデミア内で誰か闇のゲームをしているのか。
だが誰が?)」
確かにこのアカデミアには精霊の力が濃いというのは来た当初から分かっていた。
だが、まさか禁断のゲームまで行われているなど全く思わなかった。
【星態龍】は気付かれないよう聖星を見る。
いくら遊馬達の世界で命懸けのデュエルをした彼といえども、闇のゲームはあまりにも危険だ。
「(これは早く力を回復させないとな……)」
そして未来に帰る。のんびりと学園生活を傍観する気だったが、この学園に危険があるというのなら早く立ち去った方が良い。
【星態龍】は面倒だとため息をついた。
**
それからデッキを完成させた聖星は満足げに眠りについた。
朝にもなったので起床するとPDAが煩く鳴り響く。
誰だと思って名前を見ると珍しく隼人の名前が表示されていた。
「隼人?
どうしたんだ?」
「大変なんだな、聖星!
翔と十代が倫理委員会に連れていかれたんだな!!」
「は?」
倫理委員会?
隼人の口から放たれた名前に聖星は思い出す。
確かこの学園のセキュリティの管理、そして過ちを犯した生徒達への厳しい処罰を任されている委員会のはずだ。
そんな彼らが何故十代と翔を連れて行ったのか理解できなかった。
「隼人、翔と十代の奴何かしたのか?」
「……昨日、廃寮に行ったんだな」
「それだ……」
廃寮とはかつてアカデミアの特待生の生徒のために用意された寮の事だ。
今は誰も使っていないため立ち入り禁止区域となっており、近づく事は良くても中に入った場合厳しく罰せられる。
最悪退学になってもおかしくはない。
「で、でも、十代のPDAに廃寮に来いっていうメールが来て……」
「廃寮に?
何で?」
「来ないと、彼女の身は保証しないって……
縛られた明日香さんの写真つきだったんだな」
「へ?」
隼人のとんでもない発言にまた思考が止まってしまう。
詳しく話を聞いてみるとこうだ。
レッド寮までの帰り道明日香からメールが来て、そのメールには捕らわれた明日香の写真があり、廃寮にまで来るようにと書かれていた。
ちなみに教師達に知らせれば明日香の命はないという決まり文句も書いてあったそうだ。
それで十代は翔、隼人を連れて廃寮まで向かい明日香を助けるためタイタンという男と闇のゲームをしたという。
こんな事ならすぐに別れるんじゃなかったと頭を抱えた聖星はため息をつく。
「分かった。
十代のPDAは今どこにある?」
「ここにあるんだな」
「メールは残ってるよな?」
「あぁ」
「だったらそれを倫理委員会に提出しよう。
十代達が廃寮に行ったのは人命救助だ。
それを話せばすぐに解放されるはずだぜ」
というより、解放されなければおかしい。
隼人と落ち合う約束をした聖星は明日香の名前を探し、彼女に電話をした。
やはりここは被害者である彼女の証言が重要だ。
彼女の事だからちゃんと証言してくれると思うが、被害に遭った次の日に証言できるか心配だ。
「もしもし、聖星?」
「明日香、おはよう。
あのさ、隼人から聞いたんだけど……
大丈夫か?」
「あ……
えぇ、平気よ。
気絶させられただけだし特に怪我もしていないわ」
「じゃあ、悪いけど……
今から倫理委員会に行く事って出来るかな?
無理そうなら通話越しで証言してもらうけど」
「……ごめんなさい、聖星。
何の話かしら?」
「あ、ごめん」
今の時点で明日香は十代達の事を知らないようだ。
随分と焦っているなと自覚した聖星は先ほどの事を話す。
2人が倫理委員会に連れて行かれたと聞いた瞬間明日香の表情が歪み、申し訳なさそうなものへと変わった。
「……そう、分かったわ。
私もそっちに行くから」
「本当に大丈夫?
さっきも言ったけど、通話越しって手もあるけど」
「平気よ」
いつものように笑った明日香だがやはり疲れの色が見える。
それでも彼女は行く気のようで聖星は申し訳なさそうに笑った。
**
「「退学ぅ!!?」」
集合した聖星達はすぐに査問が行われている部屋に向かった。
辿り着いたと同時に2人の驚きの声がドア越しにまで響いてきた。
その内容に聖星達は顔を見合わせ、勢いよく扉を開けた。
「ちょっと待ってください!」
中には巨大な画面が複数存在し、鮫島校長、クロノス教諭、他にもアカデミアの関係者の姿が映っていた。
十代と翔は彼らの映像に囲まれているような形で立っている。
2人は驚いた表情で聖星達を見たが、特に十代はまるでお化けでも見るかのような目で聖星達を見た。
そこまで大袈裟に反応しなくても良いだろうと思っていると1人の女性が声を張り上げた。
「誰だ、お前達!
今は査問中だ!
即刻退室しなさい!」
「そうはいきません。
私と前田君も、あの廃寮にいましたから」
「何!?」
明日香の堂々とした言葉にこの場にいる教師達が目を見開く。
とくにクロノス教諭の表情は素晴らしく、一瞬で顔が真っ青になってしまった。
まぁ優等生である明日香が退学になってもおかしくない場所にいたと知ればそうなるだろう。
「天上院君。
それは本当の事かね」
「はい、鮫島校長。
それに遊城君と丸藤君が廃寮に入ったのは私を助けるためです」
「助ける……!?」
「どういう事だ!?」
一気に騒がしくなり、隼人は十代のPDAを取り出す。
明日香はそれを見ながら前を向いて昨日の事を話した。
「昨晩、私は森の中を歩いていたら突然大男に襲われ、廃寮まで連れていかれました」
「それで、十代宛てに明日香さんを返してほしかったら廃寮までに来いっていうメールが届いたんだな」
「しかも教師達に助けを求めたら明日香の身は保証しないという事まで書いてあります」
明日香の口から語られた真実に誰も言葉を発することが出来なかった。
鮫島校長は厳しい顔つきになり、クロノス教諭は相変わらずの真っ青、倫理委員会の女性は眉間に皺を寄せていた。
「嘘を言え!
退学になりそうな遊城十代以下2名を庇うためにそんな虚言を……!」
いや、どうしてそうなる。
現にここには明日香のPDAから送られたメールだってある。
時刻も昨晩だし画像だってちゃんと残っている。
彼女の言葉に明日香は反論しようとするが、先に聖星が訪ねた。
「あの、廃寮に監視カメラってありますよね?」
学生手帳に明記されている通り、廃寮は立ち入り禁止だ。
その校則を違反した生徒達を見つけるため、そして安全を守るために監視カメラが設置されているはず。
そうでなければ誰がいつ廃寮に入ったかなんて分かりやしない。
「それがどうした?」
「その監視カメラに明日香と明日香を浚った男の映像が映ってなかったんですか?
仮にたまたま犯人は映ってなくても、十代と翔がここに連れてこられたって事は2人の姿は映っていたって事。
その時の2人の表情を見れば嘘か嘘じゃないかすぐにわかりますよ」
なんたって大切な友人の命がかかわっているのだ。
興味本位で廃寮に入ったのか、それとも本当に人命救助のために入ったのか。
表情を見れば一目瞭然だと言い張る聖星に教師達は口を閉ざす。
さらに聖星は言葉を続けた。
「確かにすぐに先生達に伝えなかった十代達にも非はあります。
けど十代達が廃寮に入ったのは人命救助です。
それなのに彼らだけを咎めるのはおかしいですよ。
咎めるべきは部外者の侵入を許した、アカデミアのセキュリティを任されている倫理委員会では?」
「っ!!」
聖星の言葉に教師達の顔が倫理委員会の代表である彼女に向かう。
先程まで十代達を処罰するために厳つい表情を浮かべていたが、矛先が自分達になってしまうと険しい表情へと変わった。
だが聖星が言った事は別に間違ってはいない。
すると鮫島校長は目を伏せて言い放つ。
「事情は分かりました。
今回の事はさらに詳しい事情を聴いたのち、改めて審議したいと思います。
放課後、天上院明日香君、遊城十代君、丸藤翔君、前田隼人君は校長室に来てください。
勿論そのメールも持ってきてください」
「分かりました」
彼の言葉に明日香は深く頭を下げ、それに釣られるよう聖星達も慌てて頭を下げる。
そのまま部屋から退室すると翔と十代がその場に座り込む。
「はぁ~~!
終わった~~~!」
「……僕、生きた心地がしなかったっす」
やましい事はなかったといえど、あれほどの大画面に権力者達が映り重苦しい中での退学宣言。
十代はともかく気の弱い翔にはかなり精神的苦痛だっただろう。
未だに顔が真っ青な翔を気遣うよう隼人は声をかけている。
「十代、翔君。
私の為に本当にごめんなさい……」
2人と同じ目線まで屈み、明日香はそのまま頭を下げた。
彼女の言葉に2人は目を丸くして気にしてないとでも言うように笑った。
「気にすんなって。
別に明日香が悪いわけじゃないだろ」
「そうっすよ。
明日香さんが無事でなによりっす」
「十代、翔君……」
2人の笑顔に明日香もやっと笑い、もう1度だけ謝罪した。
自分のせいで十代達は危険な目に遭い、さらには退学になりそうだったのだ。
明日香自身気が気ではないだろう。
彼女の心境を察しながらも聖星は十代に尋ねた。
「それで、十代」
「ん、何だ?」
「何で俺に言ってくれなかったんだ?」
「へ?」
「何ですぐに俺にも言ってくれなかったんだ?って聞いてるんだ」
自慢ではないが聖星は武術に自信がある。
十代から変質者の話を聞けば飛んで行っただろう。
自分がいればタイタンという男が武力で解決しようとしても安心だ。
その意味合いを込めて聞くと十代はあっけらかんに言う。
「だってよ、そしたら聖星まで危険な目に遭うじゃん」
「じゃあ翔と隼人、自分は危険な目に遭ってよかったんだ?」
「いや、翔と隼人はメールを見たときその場にいたし……」
「とにかく、今後こういう事があったらすぐに呼べよ。
良いな?」
人の事は言えないが、十代は色々とトラブルに巻き込まれやすい。
クロノス教諭を実技試験で倒し、ブルーである万丈目さえも下し、イエローの昇格を断った。
このアカデミア内であり得ない事を次々に成し遂げ、色々な連中から睨まれている。
メールの内容を思い出しながら聖星は頭を抱える。
「(メールを送った奴は十代を指名していた。
つまり最初から十代を狙っていた可能性があるって事だよな……
あぁ、大丈夫かなぁ)」
正直に言って心配だ。
警備システムに問題があると言った以上、今後はこのような事がないよう警備も厳しくなるはず。
だから部外者がそう簡単に入ってこないと思うのだが、やはり心配だ。
聖星がそんな事を思っているとは露知らず十代は呑気に翔達と雑談していた。
**
十代達が鮫島校長に事情を話し終えた翌日。
イエロー寮で三沢と一緒に食事をしていると十代が慌ててやってきた。
レッドの生徒の登場に一瞬だけ場が騒がしくなったが、聖星と十代が友人なのは皆知っているためすぐに静かになった。
「聖星!」
「十代、どうしたんだ?」
息を整える暇もなく聖星に迫る十代。
迫力ある彼の声に三沢は後ずさるが聖星は動じずに返す。
きっと十代の事だから宿題を教えてくれとか、そういう内容だろう。
せめてヒントくらい教えるかと思っていると十代の口から出た言葉に箸を落としてしまう。
「頼む、俺とタッグを組んでくれ!!」
「え、何の?」
「制裁デュエルのタッグ」
「え?」
END
ここまで読んで頂きありがとうございました。
はい、タイタンとのデュエルは止めました。
明日香を誘拐したというメールを見て聖星も一緒についていくという事にしても良かったのですが、そうなってしまえばカイザーも一緒についてくるという。
そしたら何故かカイザーvsタイタンになってしまって。
しかもワンキル。
あれ、どこで書き間違えた?と思い直してこうしました。
だってカイザーが先輩だからという理由で聖星と十代にデュエルを譲らないから……
アニメでは明日香とカイザーが灯台で落ち合っていましたが、まさか明日香、襲われてすぐにカイザーと会っていたのでしょうか…?
何それ明日香マジ強い。
そしてスターターデッキを買いました。
新しいルールブックを読んだのですが…
ペンデュラムモンスターの扱いにいまいち理解がついていけません。
召喚に関しては大丈夫なのですが、破壊された時がえ?となってしまいました。
え?エクストラデッキからの特殊召喚?
え、どうなってんのこれ。
アニメを見て勉強しろって事ですね分かります。
それとマスターガイドも買いました。
じっくり読んだのはカードの世界観の部分という。
それにしてもエンディミオン王…
まさかとは思いましたがやはり【魔導書】達に総攻撃をしかけたのは貴方様でしたか。
これはネタデッキに良いじゃん。
植物+【魔導書】書いたから、【蟲惑魔】+【魔導書】書いてみたいです。