遊戯王GX~不動の名を継ぐ魔導書使い~   作:勇紅

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第十二話 舞い上がる赤き眼の竜

「う~~!

全然終わんねぇ!」

 

「まだこんなにあるんすか……」

 

「頑張るんだな、翔、十代」

 

制裁デュエルが終わり、十代も退学せずにすんだ。

だが危険人物がいる事を知っているのに学園側に報告しなかった事も事実なので3人は今現在反省文を書かされている。

ちなみに倫理委員会だが杜撰(ずさん)な管理が明るみになったせいで色々問題になっているようだ。

ま、聖星にとっては関係ない事なので深くは知らない。

というか興味がない。

 

「十代、手が止まってる。

早くしないと夕飯まで間に合わないぜ」

 

「だぁああ!

分かってるって、聖星!」

 

反省文なんて一体何を書けばいいのかわからない十代。

彼は片手にPC、片手にシャーペンを握って必死に反省文を書いている。

別に今回の事は以後気を付けますだけで十分だろう!

そう零しながら十代はペンを走らせる。

 

「終わったっす!」

 

「マジかよ、翔!」

 

「羨ましいんだな……」

 

1番最初に終わったのは翔。

彼は両腕を高くの伸ばし、体のコリをとる。

だが次に重苦しい溜息をついた。

 

「はぁ~……

次はお兄さんに連絡しなきゃ……」

 

「丸藤先輩に?」

 

「何でここでカイザーが出てくるんだよ」

 

「それがっすね。

兄貴が聖星君とデッキ調整している間、お兄さんにどうして自分に連絡を入れなかったんだって叱られたんす」

 

少しだけ遠い目をしながら話し始めた内容に3人は納得する。

聖星は友人として十代に何故呼ばなかったのかと尋ねた。

それと同じようにカイザーも翔に問いただしたのだろう。

しかも2人は実の兄弟。

廃寮の事を聞いて誰よりも心配したのは彼だったかもしれない。

 

「ま、カイザーはお前の兄ちゃんだもんな。

凄く心配してくれたんだろ?

よかったじゃねぇか」

 

「まぁ、そうっすけどね……」

 

微笑ましそうに笑う十代に対し翔は苦笑を零す。

 

「でもさ、それと反省文の完成と何が関係あるんだ?」

 

「一応、ちゃんと反省しているのか確かめるためにお兄さんも見てくれるって……」

 

項垂れる翔の言葉に3人は再び納得した。

 

「そういえば聖星君の持っている【E・HERO】って凄く融合条件が緩いっすね。

あんなカードどこで手に入れたんっすか?」

 

「以前住んでいた所でね。

かなり安かったからまとめ買いしたんだ」

 

遊馬達の世界にいた時、見た事もないカード達のためにカードショップへ足を運ぶのは実に楽しかった。

エクシーズモンスターは積極的には買わなかったが、他のカードは知らないカードがあればすぐに買っていた。

それで様々なカードを集めて今のデッキが完成したのだ。

 

「マジか!

どこで売ってたんだ!?

俺もそのカードショップに行ってみたいぜ!」

 

聖星の言葉に当然【HERO】使いの十代は食いつく。

十代としては今すぐ聖星とトレードをして【Zero】、【Great TORNADO】達を手に入れたいのが本音だ。

だがカードを見せられた時笑顔で「譲らないからな」と言われたせいで無理に言えない。

 

「なぁなぁ。

どこのカードショップだよ?

教えてくれよ!」

 

「いや、教えたくてもそこのショップもう潰れているし」

 

「へ?

潰れたって本当の事か!?」

 

「あぁ。

まぁ、普通数十万するカードを千円単位で売っていたんだ。

お世話になったけど仕方ないかなぁ」

 

「嘘だろ~~…………」

 

がくっ、とその場に項垂れる友人に聖星は苦笑を浮かべた。

本当は潰れて等いないのだが異世界にあるカードショップなので十代が行くことは不可能。

聖星もトレードなら十代に譲ってあげても良かったのだが、この世界にはないカードなので渡すわけにはいかない。

だから申し訳ないが諦めてもらうしかない。

 

「ま、運があればどこかで出会えるさ」

 

「よ~し、絶対に見つけてゲットしてみせるぜ!」

 

**

 

それから数日後。

聖星の目の前には何故か取巻がいた。

ここが学舎内なら良いのだが、ここは聖星の部屋である。

そう、イエローの聖星の部屋にブルーの取巻がいるのだ。

 

「お前、ドラゴン族モンスターのカードを持ってないか?」

 

「なんで急に?」

 

「レッドだったお前に負けたせいで成績がやばいんだ。

それで今度慕谷と降格を賭けたデュエルをするんだよ」

 

「あ、だから新しいカードが必要なんだ」

 

険しい表情を浮かべたまま事情を説明され、聖星は頷いた。

実力主義、いや、寮主義といえるこの学園で降格などかなりの事だ。

昇格でも嫉妬を買うがエリート意識の高いここで降格となれば誹謗中傷の的になるだろう。

 

「それで、取巻のデッキってどんな構成になってるんだ?」

 

「お前、俺はドラゴン族のカードがないかって聞いたんだぞ」

 

「だってさ、デッキ構成が分からないとどんなサポートカードを勧めれば良いかわからないだろ?」

 

特にドラゴン族はデュエルモンスターズ界の中でも盛んな種族だ。

そのおかげで一口にドラゴン族デッキと言われても様々存在する。

例えば【闇ドラゴン】なら闇属性のサポートカードを勧めれば良い。

【カオスドラゴン】なら墓地肥しのサポートカードだ。

 

「……ほら」

 

「ありがとう」

 

何か言いたそうだが相談している側だし、別に見せても問題はないと判断したのか取巻はデッキを広げる。

やはりモンスターカードが大部分を占めており、魔法・罠カードは少な目だ。

聖星としては真っ先に目についた【山】を抜くことをお勧めしたい。

 

「どうだ?」

 

「なんていうか……」

 

**

 

取巻のデッキの編集は終わり、聖星は降格を賭けたデュエルを行うフィールドへと足を運んだ。

十代も誘ってデュエルを見ようと思ったのだが、隼人曰く昨日は三沢の部屋の片づけがあったためぐっすり眠っている。

だからもう暫く寝かせてほしいとの事。

 

「あ、クロノス教諭に万丈目」

 

会場に入ると観客は誰もおらず、フィールドには慕谷だけではなくクロノス教諭と万丈目の姿もあった。

取巻の話だと慕谷は天狗になり万丈目まで見下しているという。

その彼が何故ここにいるのだろうか。

 

「シニョ~ル聖星でス~カ。

シニョ~ル三沢の応援に来たノ~ネ?」

 

「え?

大地もデュエルするんですか?」

 

「あぁ。

この万丈目様とな」

 

「正確には万丈目の降格を賭けたデュエルを三沢がするんだ。

勝てば三沢はブルー寮。

つまりその落ちこぼれの代わりに三沢が俺達の仲間入りって事さ」

 

「っ、慕谷……!」

 

ふん、と見下すような笑みに万丈目の顔が歪む。

入学当初は万丈目の威を借りていたのに随分とした変わりようだ。

呆れた顔しかできない聖星は必死に微笑んで誤魔化した。

 

「頑張れよ、取巻。

今のお前とそのデッキなら勝てるさ」

 

「当たり前だろ。

負けたら降格なんだ。

絶対に勝ってやる」

 

横を通り過ぎようとした取巻に声をかけたが、相当気が立っているのかかなりピリピリしている。

負ければさらにブルー寮の生徒からバカにされ、同じイエロー内でも浮いてしまうかもしれない。

そんな未来ばかりを想像しているのだろう。

それなら気が立ってもおかしくはない。

 

「よく臆さず来たな、取巻」

 

「ったく、そっちは随分偉そうになったな慕谷」

 

「偉そう?

お前が落ちぶれただけだろう。

今はイエローとはいえレッドの雑魚なんかに負けるんだ。

ま、安心しろ。

中学のころからつるんでいるよしみだ。

お前のようなクズがこれ以上ブルーの中で恥を晒さないよう引導を渡してやるよ」

 

どこが中学からのよしみだ。

慕谷の言葉に聖星は心の中で突っ込みながら取巻に目をやった。

彼は明らかに怒りに満ちた表情を浮かべており、その拳は強く握られていた。

 

「「デュエル!!」」

 

2人が揃うと審判であるクロノス教諭が手を挙げ、開始を宣言する。

同時に2人は声を張り上げデュエルが始まった。

 

「俺のターンだ!

俺は手札から【アステカの石像】を守備表示に召喚!

そして永続魔法【波動キャノン】を発動!」

 

「【波動キャノン】?

慕谷のやつ、バーンデッキ?」

 

場に現れたのは見るからに固そうな岩石族モンスター。

その守備力は2000とレベル4モンスターとしては申し分ない。

そしてその効果は、相手への反射ダメージを倍にするというもの。

嫌な効果を持つモンスターを誰も好きに攻撃したりしない。

だからあのカードを入れる場合、強制的にバトルを行わせるカードを入れるケースが多い。

しかし聖星はもう1枚の永続魔法の名に首を傾げた。

 

「【波動キャノン】か。

確か自分のメインフェイズ時に墓地に送ることで、それまで経過した自分のスタバイフェイズの数×1000ポイントのダメージを与えるカードだったな」

 

「(あぁ。

決まればダメージ量は多いけど、相手にカードを晒しだしているから真っ先に破壊されやすい。

だからあのカードをデッキに入れるデュエリストなんてあまり見たことない。

慕谷のデッキも面白そうだな。)」

 

あの永続魔法をカードの破壊から守る事が出来るカードなどあまり数はない。

せいぜい相手の魔法カードを封じる【魔法族の里】や罠カードを封じる【王宮のお触れ】、【サイコショッカー】、そして魔法、罠、モンスター効果を封じるカウンター罠系くらいだ。

慕谷はどのようなカードを使って守るのだろう。

 

「カードを1枚伏せてターンエンドだ」

 

「俺のターン、ドロー。

俺は手札から魔法カード、【超再生能力】を発動!

このターンのエンドフェイズ時、俺が手札から捨てたまたは場と手札から生贄にしたドラゴン族モンスターの数だけデッキからカードをドローする」

 

取巻が発動したのは聖星とデュエルしたときにも使用した速攻魔法。

今の時代では生贄に捧げる、手札のドラゴン族を捨てる方法など限られているためあまりドロー力は期待できない。

 

「俺は魔法カード、【天使の施し】を発動!

デッキからカードを3枚ドローし、2枚墓地に捨てる」

 

「早速手札入れ替えカードか。

相変わらず事故が多いな、お前のデッキは」

 

はっ、と鼻で笑った慕谷の言葉に聖星は首を横に振る。

先ほど記述した通り取巻は【超再生能力】を発動しているのだ。

彼らにとって無駄に見えるかもしれないが、ちゃんと理解している聖星と取巻にとっては無駄ではない。

取巻は【仮面竜】、【サファイアドラゴン】を墓地に捨てた。

 

「そして【グレイ・ウイング】を召喚!」

 

「グォオオオ!!」

 

取巻がカード名を宣言するとフィールドに黒色のドラゴンが現れる。

小柄な【グレイ・ウイング】は咆哮を上げると主である取巻を守るよう慕谷を見下ろす。

その攻撃力1300.

その数値に慕谷は不敵な笑みを浮かべた。

 

「なんだ、たった攻撃力1300か.

俺の場には守備力2000の【アステカの石像】がある。

攻撃したところで700、いや【アステカの石像】の効果で1400のダメージを受けるぜ」

 

「なに勝手に騒いでる。

守備力2000なんてすぐに突破出来るさ」

 

「っ!

まさか手札に【山】や【ドラゴンの秘宝】があるのか?」

 

「いいや、こいつさ。

永続魔法【一族の結束】を発動!」

 

【グレイ・ウイング】の後ろに現れた永続魔法。

そこには5体のモンスターが手をつなぎ、士気を高めている姿が描かれている。

 

「このカードは墓地の種族が1つの時、俺の場にいる同じ種族の攻撃力を800ポイント上げるカードだ。

これで【グレイ・ウイング】の攻撃力は1300から2100だ!」

 

「2100!?」

 

「【グレイ・ウイング】の効果発動!!

手札を1枚捨てることで、こいつはこのターン2回攻撃できる!!

俺は【スピリットドラゴン】を捨てる!

バトルだ!

【アステカの石像】を粉砕しろ!」

 

取巻の言葉に【グレイ・ウイング】は高く飛び上がり、【アステカの石像】を踏み潰す。

まさかこうも簡単に【アステカの石像】を突破されるなど考えてもいなかった。

 

「【グレイ・ウイング】!

慕谷にダイレクトアタック!!」

 

「ぐぁあ!」

 

【一族の結束】の効果で攻撃力を800ポイント上げている【グレイ・ウイング】は勢いよく慕谷に突撃する。

自分を貫く攻撃に慕谷は膝をついた。

これで彼のライフは1900となる。

 

「カードを1枚伏せる。

エンドフェイズだ

【超再生能力】の効果によりデッキからカードを3枚ドローする」

 

「くっ……

取巻の分際で……」

 

「ターンエンド」

 

「俺のターン!」

 

先ほどまで見下した笑みを浮かべていた慕谷だが、2ターン目でいきなり2000以上のダメージを与えられたせいかその顔は歪んでいる。

対して取巻は少しだけ肩の力が抜けたのかゆっくりと息を吐いている。

 

「俺は魔法カード、【悪夢の鉄檻】を発動!」

 

取巻の周りに禍々しい円が描かれ、その円から無数の鉄の板が現れる。

鉄の板は取巻達を閉じ込めるかのように檻を形成した。

 

「これで俺達は2ターンの間、互いに攻撃できない!

モンスターをセットしてターンエンド!」

 

「俺のターン!

手札から速攻魔法、【サイクロン】を発動!

【悪夢の鉄檻】を破壊する!」

 

「カウンター罠、【神の宣告】!

俺はライフを半分払い、お前のカードの効果を無効にして破壊する!

これで【悪夢の鉄檻】は破壊できない!」

 

フィールドに突風が吹き荒れ、その風は一か所へと集まる。

小さな風は雷を纏いながら大きく成長し取巻を閉じ込める檻を粉々に吹き飛ばそうとした。

だが目の前に2人の女性を連れた老人が現れ、その老人が手を上げると【サイクロン】は消えてしまう。

その事に取巻は大きく舌打ちした。

いくら慕谷のライフを1900から950までに減らしたとはいえ、攻撃できないのは痛い。

このままでは無駄にターンを費やし【波動キャノン】が多くスタンバイフェイズを迎えてしまう。

 

「【サファイアドラゴン】を召喚。

カードを1枚セットしてターンエンドだ」

 

「グォオオ!!」

 

【グレイ・ウイング】の隣に現れたのはドラゴン族の中でも攻撃力が高い青い竜。

攻撃力も【一族の結束】の力を借りて2700までなった。

しかし【悪夢の鉄檻】があるためその破壊力を発揮できない。

 

「取巻のやつ、苦しそうだな」

 

「ふん。

せっかくお前にデッキの相談をしたんだ。

もっとマシなデュエルをして欲しいものだ」

 

「無茶言うなって。

見てみると慕谷のデッキはバーンデッキ。

下手したらロックも入ってるかな?

それに対して取巻は単純にモンスターで殴って勝つビートダウン。

魔法カードや罠カードで動きを封じ込められたら戦い辛いって」

 

聖星は慕谷のデッキを知らない。

十代と一緒に万丈目達とデュエルしたときも彼はただ1人傍観者だった。

月一テストでも取巻とデュエルをしている間に彼のデュエルは終わった。

この時代はビートダウンが主流でロックやバーンをメインとしたデッキなどあまり見ない。

だから勝手に慕谷もビートダウンだと思い込んでいた。

 

「(もし取巻があいつのデッキはロックバーンだって教えてくれたら別のアドバイスをしたんだけどなぁ)」

 

「俺のターンだ!

俺は【ステルスバード】を反転召喚!」

 

「【ステルスバード】?

ここでセットしてたんだ」

 

慕谷のターンに入ると伏せられていたモンスターが表側表示になる。

そのモンスターは青色の鳥。

反転召喚された【ステルスバード】は大きく青い翼を広げて羽ばたいた。

するとその時生じた風が刃となり取巻を襲う。

 

「うっ!!」

 

刃は見事に取巻に直撃し彼のライフを1000ポイント削る。

これでライフは3000.

 

「【ステルスバード】は反転召喚に成功したとき、相手に1000ポイントのダメージを与える。

そして【波動キャノン】を墓地に送る。

【波動キャノン】は2回のスタンバイフェイズを迎えた。

よってお前に2000ポイントのダメージだ!!

食らえ!」

 

「ぐあっ!!」

 

場に残されていた【波動キャノン】は煙を吹き出しながらエネルギーをため込む。

すると勢いよく2つの波動を放ち取巻のライフを2000ポイント奪った。

 

「【ステルスバード】は1ターンに1度、裏側守備表示にできる。

俺はこれでターンエンド!

次のターン、お前のバトルは封じられている。

攻撃しか能のないお前は終わりだなぁ、取巻」

 

「ふっ、それはどうだろうな」

 

「何?」

 

「よく見ろよ、慕谷」

 

不敵な笑みを浮かべながら言い放った言葉。

慕谷はゆっくりと目だけを動かし、自分たちの場を見渡す。

特におかしいところなどない。

それなのに何故取巻はそんな事を言ったのか。

 

「お前、伏せカードがないだろ?

つまり次のターン、俺が【悪夢の鉄檻】を破壊するカードを発動しても防げないって事だ」

 

「っ!!」

 

取巻の言葉に慕谷はハッとする。

だがもう自分はエンド宣言をしてしまったためカードを伏せることはできない。

悔しそうに唸る慕谷を見て取巻は自分の手札を見た。

 

「(とは言ったものの、まだ条件が揃ってない……

このドローに賭けるしかないか)

俺のターン、ドロー!」

 

勢いよく引いた取巻。

彼は自分がドローしたカードを見て笑った。

 

「俺は【グレイ・ウイング】を除外し手札から【レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン】を攻撃表示で特殊召喚!」

 

「【レッドアイズ】!?」

 

黒色の爬虫類に近いドラゴンは光となって消え、代わりに漆黒の闇が広がる。

その闇が歪みを生じ、その中から1体のドラゴンが現れる。

そのドラゴンは金属に近い漆黒の皮膚を持ち、体中に燃えるように赤いラインが引かれている。

 

「グォオオオオ!!!!」

 

歪みから出てきた【レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン】は大きく息を吸って気高い咆哮を上げる。

その咆哮はフィールドだけではなく会場全体を包み込む。

【レッドアイズ】の名を持つ巨大なドラゴンの登場に対戦相手の慕谷だけではなく見物している万丈目やクロノス教諭まで言葉を失った。

 

「【レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン】はドラゴン族の中でも屈指のモンスター。

俺の場のドラゴンを除外する事で特殊召喚出来る。

攻撃力は海馬瀬人が持つ【青眼の白龍】には及ばないが、こいつは墓地と手札に眠るドラゴンを呼び覚ます能力を持つ最強のドラゴンだ!」

 

「手札と墓地の……!?

なんでお前がそんな強力なモンスターを持ってるんだ!?」

 

「あいつは今までそんなカード使ったこと無かった……

どこで手に入れたんだ?」

 

取巻の言葉の意味が理解できた慕谷と万丈目はこの数年を思い返す。

数年間共に過ごしただけはあり取巻が持つモンスターは大体知っている。

しかしこんなモンスター等見たことがない。

もし昔から持っていたのならデッキに入れているはず。

それなのに今まで見た事がないということは、つい最近手に入れたという事。

問題はどこから手に入れたか、だ。

慕谷の叫びに取巻はチラッと聖星を見た。

そして先日の事を思い出す。

 

**

 

「なんていうか…………

遅い?」

 

「は?」

 

自分のデッキを見せたとき聖星はそう言った。

少しだけ首を傾げた聖星の言葉に取巻は自分のデッキを見る。

 

「遅いって、どういう意味だよ?」

 

「いや、そのまんま」

 

「はぁ?」

 

明らかに意味が分からないという表情を浮かべたが、聖星は特に説明もせず取巻のデッキを何度も見た。

モンスターカードが半数あり、残りの半数は魔法と罠が同じ比率で入っている。

別に1ターンに2体もモンスターを召喚できないわけではないが、やはり通常召喚がメインのせいか遅く感じられる。

 

「取巻って例えばさ、相手が【サファイアドラゴン】以上に強いモンスターを出したときどうやって対応しているんだ?」

 

「そんなの【山】や【ドラゴンの秘宝】で攻撃力を上げて倒すに決まってるだろう」

 

「…………」

 

他にも【死者への手向け】等の破壊カードもある。

【シールド・クラッシュ】に【聖なるバリア―ミラーフォース―】。

ドラゴン族のサポートカードとなると【竜の逆鱗】、【超再生能力】、【山】、【スタンピング・クラッシュ】、【ドラゴンの秘宝】ぐらいだ。

 

「(別に回せない事もないけど、【レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン】があったほうが安定するよな。

魔法・罠カードも【山】と【ドラゴンの秘宝】はいらないし、それを入れるくらいなら【一族の結束】を入れたほうが良い。

レベル4のモンスターで攻撃力が高いのは【サファイアドラゴン】と【スピアドラゴン】くらいか……)」

 

次々と思い浮かぶサポートカード。

それに聖星自身、元の時代でドラゴン族をよく使っていた。

だからどのように動かせばいいのかだいたいは見当がつく。

問題はこの時代にないカードを取巻に譲っても良い事かだ。

聖星が使うことに関してはあまり問題ない。

どうせ使用するのはこの学園内での話だし、幸いにもカード数があまりにも膨大なためこの世には全カードを把握するサイトや書籍が存在しない。

だから使ったところで【魔導書】が異世界のカードだとばれないのだ。

仮にばれそうになってもとっとと未来に帰れば良い。

だが取巻に渡してしまえば、まだ生まれていない、または異世界のカードをこの時代に残す事になってしまい今後何かを引き起こすかもしれない。

 

「(いや、でも父さんの【シューティング・スター・ドラゴン】の事を考えると別に渡しても大丈夫か?

確かあれってデュエル中に手に入れたって父さん言ってたよな。

ジャックさんの【スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン】だって公式に作られたカードじゃないらしいし。

もしかして問題ない?)」

 

様々なことを考えたが、父と父の友人の事を思い出して杞憂だったのかもしれないと思い始めた。

初めて聞いたころはただの冗談だと思ったが、遊馬とアストラルがカードを創造して普通に使ったのを見て冗談ではなく事実だと気付いた。

その理論からいくと別に平気な気がしてくる。

 

「で、何か良さそうなカードは思い浮かんだか?」

 

「……浮かんだっていえば浮かんだけど。

仮にそのカードを譲るとして、取巻はどのカードで俺のカードをトレードするつもりなんだ?」

 

「不動が出すカードによる。

今のところ俺が出せる最高のカードはこいつだな」

 

懐からデッキケースを取り出した取巻は1枚のカードを見せる。

それを見た瞬間聖星は「あ」と小さく零した。

カードの色はあまり見ない青で、描かれているのは全身黒ずくめの魔法使い。

 

「【マジシャン・オブ・ブラックカオス】……」

 

「どうだ。

魔法使い族使いとしては喉から手が出るほどほしいカードだろ?」

 

「あぁ。

よくこんなレアカード持ってたな」

 

「たまたまだ。

まぁ、儀式カードを持っていないから宝の持ち腐れだけどな」

 

武藤遊戯が使ったといわれる伝説の魔法使い族モンスター。

【星態龍】に頼めば普通に出してもらえるが、こんな形で本物をお目にかかれるとは思わなかった。

普通なら家宝にして大事にするだろうが、それを手放そうとしてまでドラゴン族が欲しいのだろう。

 

「分かった。

じゃあ俺はこのカードを出すよ」

 

相手が【マジシャン・オブ・ブラックカオス】を出すというのなら、聖星は出すものを決めた。

ついでにおまけも渡そう。

 

「俺が出すのは【レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン】」

 

「【レッドアイズ】!??

かなりのレアカードじゃないか!」

 

「攻撃力は2800で場のドラゴン族を除外するだけで特殊召喚出来る。

つまり1ターン目から出すことが可能って事。

他にも墓地からドラゴン族モンスターを特殊召喚出来る。

たとえ戦闘で【マテリアルドラゴン】を破壊されてもすぐに特殊召喚できるし、手札で召喚できない上級モンスターを瞬時に特殊召喚できる」

 

「なんて出鱈目なカードなんだ…………」

 

最悪手札で腐っている低レベルドラゴン族が一瞬で上級モンスターに変わる。

しかも攻撃力もほとんどのモンスターを蹴散らせる事が出来る数値。

そしてもう1枚は永続魔法のカード。

 

「何だこれ?」

 

「墓地の種族が一種類の時、場に存在する同じ種族のモンスターの攻撃力を800ポイント上げるカードだ」

 

「800!?

なっ、これ1枚で場のモンスター全部800も上がるのか!?」

 

「あぁ。

だから【山】と【ドラゴンの秘宝】を抜いて、代わりに【ナイト・ショット】を入れていれる事もできるし」

 

「【ナイト・ショット】?」

 

「え?」

 

知らないのか?と思わず呟いてしまったが、聖星はすぐに思い出した。

確か【ナイト・ショット】は遊馬の世界で手に入れたカードだ。

自分の時代になかったからこの時代にないのも当然の話。

仕方ないと思いながら聖星は魔法カードを入れているケースを取り出す。

 

**

 

あれから聖星に見せてもらったカードは取巻にとっては宝の山のようなものだ。

自分が見た事も聞いた事もない強力なカードがたくさんあった。

特にドラゴン族の豊富さには驚き、喉から手が出るくらい欲しかった。

どれ程譲ってほしいと言っても聖星は首を横に振るだけ。

絶対に相応しいカードを用意してトレードしようと決めた取巻は宣言する。

 

「【レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン】の効果発動!

墓地から【サファイアドラゴン】を特殊召喚する!

さらに魔法カード、【巨竜の羽ばたき】を発動!」

 

「しまった……!」

 

「場のレベル5以上のドラゴン族モンスターを手札に戻すことで、場の魔法・罠カードを全て破壊する!!」

 

今取巻の場にはレベル10の【レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン】が存在する。

【レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン】は咆哮を上げて大きく翼を羽ばたかせる。

鋼の翼によって生み出される突風により【悪夢の鉄檻】は粉々に砕け散っていく。

そのまま飛び去った【レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン】は取巻の手札に戻っていく。

 

「そして蘇生した【サファイアドラゴン】を除外し、【レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン】を再び特殊召喚する!」

 

「グォオオオ!!!」

 

「また現れたか……!」

 

「行くぞ慕谷!!」

 

「っ!!」

 

「【サファイアドラゴン】で裏側守備の【ステルスバード】を攻撃!!」

 

通常召喚で呼ばれた【サファイアドラゴン】は口から炎の息吹を出して【ステルスバード】を焼きつくす。

炎に身を包まれた【ステルスバード】は奇声を発しながら破壊された。

これで慕谷の場にカードはない。

しかもライフは950という数値。

信じられないとでも言うかのように慕谷は言葉を発せなかった。

 

「止めだ!

【レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン】で慕谷にダイレクトアタック!!」

 

「うわぁあああ!!」

 

取巻の言葉に【レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン】は口を開けてエネルギーの球体を作り出す。

かなりの熱さで空気がじりじりと焼けているのが分かる。

そして放たれたエネルギーは慕谷を包み込んで爆発した。

 

「勝負、あったノ~ネ!

勝者はシニョ~ル取巻!

よって、シニョ~ル取巻の降格は取り消しになるノ~ネ」

 

「……良かった……」

 

「良かったな、取巻。

おめでとう」

 

「……不動」

 

試合終了の言葉に取巻は心底安心したような表情を浮かべた。

聖星が声を掛ければ肩の荷が下りたのか、少しだけ微笑んできた。

レアな表情だなと思いながら聖星は茶化すように言った。

 

「けど、途中はダメだと思ったぜ。

だって相手が君の苦手なロックバーンなんだ」

 

「は?

俺があの程度の状況逆転できない本気で思ったのかよ?」

 

心外だ、とでも言いたげな取巻の言葉に聖星は微笑んだ。

さて、取巻とのデュエルも終わった。

次は万丈目と三沢のデュエルがある。

一体どんなデュエルを見せてくれるかと思うと楽しみで仕方がない。

 

「あ、聖星!?」

 

「あ、十代」

 

「何で聖星がここにいるんだよ?

さっきから何度も呼んだんだぜ!」

 

「え、マジ?」

 

慌ててPDAを見た聖星だが、着信履歴には数件ほど十代の名前が載っていた。

すると遅れて翔に隼人、三沢が姿を現した。

しかし彼らの表情には焦りの色があった。

 

「で、何でお前がここにいるんだよ?」

 

「取巻のデュエルを見てたんだ」

 

「へ?」

 

「前にも言っただろう。

誰かさん達とデュエルしたおかげで立場が悪いって。

それで慕谷と降格を賭けたデュエルをしたんだよ」

 

今終わったと言えば十代は残念そうな表情を浮かべる。

十代も慕谷のデッキは知らないので、彼のデュエルが気になるのだろう。

相変わらずだなと思いながら三沢に目をやる。

 

「大地。

次は君の番だ。

相手は万丈目だけど頑張れよ」

 

「え?

聖星、三沢の相手って万丈目なのかよ!?」

 

「そうだけど?」

 

知らなかったのか?と表情で尋ねると十代は一瞬で表情を変えた。

それはいつも見るような楽観的な顔ではなく、怒りを込めたものだ。

十代はすぐにクロノス教諭の傍にいる万丈目を睨みつけた。

 

「万丈目!

まさか三沢のカードを捨てたのはお前か!?」

 

「なっ!?」

 

「何ですトーネ!?」

 

「どういう事だよ、十代?」

 

「三沢のカードが海に捨ててあったんだよ。

あまりにもタイミングが良すぎるだろ!」

 

今回のデュエルでは三沢が勝てばブルー寮への昇格が決まり、プライドの高い万丈目にとっては格下の寮へ降格する事を意味する。

両者にとって重要なタイミングでの一方のデッキの紛失。

十代の言うとおりあまりにもタイミングが良すぎる。

取巻は自然と表情が険しくなり、聖星も信じられないという表情で万丈目を見る。

しかし当の本人は下らないと言うように吐き捨てる。

 

「何の言いがかりだ?

どうして俺が……」

 

「本当に言いがかりかしら?」

 

万丈目が言葉を発しようとすると、入り口から明日香が入ってくる。

彼女の隣にはカイザーも一緒にいる。

 

「明日香、カイザー」

 

「私、見てしまったの……」

 

どうして君が?と視線で問えば明日香は戸惑うように言葉を放つ。

それは昨日の夜、万丈目が海にカードを捨てたというものだ。

彼女の言葉に皆の視線はさらに厳しくなるが万丈目は「自分のカードを捨てた」と言い放つ。

よくこんな状況でそんな言葉が出てくるものだと聖星は怒りを通り越して呆れてしまった。

 

「ふん。

俺を泥棒呼ばわりした責任は取ってもらうぞ」

 

万丈目は三沢に目をやると、次にクロノス教諭に目をやってあり得ない事を持ち出してきた。

 

「いかがでしょう?

このデュエルで負けた方が退学になると言うのは」

 

「なっ!?

無茶苦茶だ!」

 

「っていうか、大地は万丈目が泥棒とは一言もいってないだろう?

普通責任を取るのは十代のはずだぜ」

 

「煩いぞ、聖星!

貴様は黙ってろ!」

 

「いや、そのデュエル受けます」

 

「なっ!?」

 

「大地……!」

 

背後から聞こえた三沢の言葉に十代と聖星は思わず振り返る。

彼はデッキを捨てられたというのに特に焦った様子もなかった。

 

「デッキならあります。

その条件受けましょう」

 

「何を言ってるんだ、お前……?」

 

「大丈夫だ。

捨てられたデッキは調整用のデッキだからな」

 

「え?」

 

「見ろ!

俺の魂を込めた命のデッキを!」

 

不敵な笑みを浮かべた三沢は勢いよく上着を脱ぐ。

するとそこには6つのデッキケースがあった。

そのデッキはそれぞれデュエルモンスターズの属性をイメージしたデッキだという。

まさかのデッキに万丈目は気に入らなさそうに顔を歪めて自分のデッキ突き出した。

 

「そんなこけおどし、この俺の恨みの炎で焼き消してやる!」

 

「これがこけおどしかすぐにわかるぜ、万丈目!」

 

「「デュエル!!」」

 

**

 

聖星達がデュエルを見守る中、ついにデュエルの決着がついた。

万丈目は攻撃力2800の【炎獄魔人ヘル・バーナー】で三沢を追いつめたが、万丈目の言動で炎属性のアンチデッキである水デッキを使用した三沢に軍配が上がった。

これにより万丈目はデュエルアカデミアから退学になる。

 

「ではシニョ~ル三沢。

貴方ニ~ハ、オベリスク・ブルーへの昇格を認めるノ~ネ」

 

「申し訳ありませんが、そのお話はお断りさせていただきます」

 

「なっ、何でス~ト!?」

 

このデュエルは三沢の昇格を賭けたデュエル。

彼が勝てば三沢はエリートクラスであるブルーへの仲間入り。

それに彼の性格なら十代のように好きな色だという理由で残るとは思えない。

 

「ブルー寮に行く時はこの学園で1番になってからと入学式の時に決めました」

 

クロノス教諭にそう言った三沢は十代と聖星を見た。

 

「クロノス教諭を倒した十代と、カイザーを倒した聖星。

君達2人を倒すのが先だ!」

 

ビシッ、と2人を指差した三沢は堂々と宣言した。

彼の言葉に十代と聖星は不敵に笑う。

 

「おう!

俺もお前といつかデュエルしたいと思っていたんだ!

今すぐやろーぜ、三沢!」

 

「俺も、筆記試験1番の君とデュエルしたかったんだ。

十代の後で頼めるか?」

 

「いや、今は無理だ。

このデッキはあくまで調整用。

君達と戦うデッキは俺の部屋の壁が数式で埋め尽くされた時だ!」

 

6つのデッキは全て調整用。

その言葉に万丈目はさらに悔しそうに顔を歪め、聖星達は嬉しそうに口元に弧を描く。

万丈目で三沢が見せてくれたプレイングは実に素晴らしいもの。

それを超える戦術を編み出すデッキで聖星達に挑んでくる。

その日が楽しみで仕方がない。

 

「じゃあ、俺もそのデッキに応えるよう最高のデッキを作るか……」

 

三沢に相応しい【魔導書】デッキ。

一体何が良いかな、と思いながら早速デッキ構築を考える。

 

「あ。

そうだ、十代」

 

「何だよ?」

 

「ほら」

 

聖星はデッキケースを取出し、中から3枚のカードを十代に見せる。

そのカードに十代は目を見開いた。

 

「【エアーマン】に【Great TORNADO】、それに【Zero】じゃねぇか。

どうしたんだよ急に」

 

「その3枚ならトレードしても良いかな、って思ってさ」

 

「えぇ、この3枚を!?」

 

「あぁ。

ただし、あとで君のカードを何枚か貰うからな」

 

「オッケー、オッケー!

メイン以外だったら何だって良いぜ!」

 

十代は3枚のカードを聖星から受け取り、嬉しそうに笑う。

よほど嬉しいのか何度もありがとうと言ってくる友人に聖星は微笑んだ。

すると取巻が勢いよく聖星の腕を引いてきた。

 

「いてっ、どうしたんだよ取巻」

 

「どうしたんだ、じゃないだろ不動!

今の三沢の言葉は本当なのか!?」

 

「え、何が?」

 

自分に迫ってくる取巻に対し聖星は不思議そうに首を傾げる。

聖星の言葉に取巻は頭を抱えそうになった。

周りを見ればクロノス教諭だけではなく明日香まで目を見開いてカイザーと聖星を交互に見ている。

そんな彼らの心を代弁するよう取巻は叫んだ。

 

「お前がカイザーに勝った、って事だよ!」

 

「あぁ、勝ったぜ。

流石アカデミアの帝王だよな。

1ターン目から【大嵐】を使われて【魔導書】全部破壊されてさ。

しかも、俺の戦術が悉く裏目に出ちゃうんだぜ。

【一時休戦】を使用すれば【パワー・ボンド】のデメリット効果を無かったことにされるし、【ゲーテの魔導書】で除外したら【異次元からの帰還】とかで帰ってくるし」

 

「……あり得ない」

 

自分の叫びに聖星はたいした事のないように返す。

そのまま聖星はあの時のデュエルを思い出しながら微笑んだ。

取巻はいつものように微笑む彼の言葉に何も言えなくなる。

 

「亮、今の話……

本当なの?」

 

「あぁ。

彼の全力のデッキは実に面白い。

次にデュエルする時は必ず勝ちたいものだ」

 

【魔導書】を操る聖星に驚異の逆転劇を披露してくれる十代。

今年は本当に面白い1年が入学してきた。

整った顔に似合った綺麗な笑みを浮かべながらカイザーは聖星を見る。

その目に宿る闘志に明日香は本当の事なのだと再認識した。

 

「あ、そうだ!

せっかくだからよ、カイザー!

ここで俺とデュエルしてくれ!」

 

「何を言っているのデス~カ、ドロップアウトボ~イ。

シニョ~ル丸藤と戦いたけれ~ば、予約しなければならないノ~ネ!」

 

「え、それ本当かよ!?」

 

「十代、残念だけど本当だぜ。

俺が予約した時は2か月待ちだったかな」

 

「えぇ~…………」

 

学園一の男と呼ばれるカイザーとのデュエルに2か月も要するなど、十代は上手く言葉が出なかった。

肩を落とす友人に聖星は苦笑を零した。

するとカイザーが十代に歩み寄ってくる。

 

「俺は構わない。

どうする、遊城十代?」

 

「え!?

そんなの決まってるだろ!

楽しいデュエルをしようぜ、カイザー!!」

 

十代の顔は輝きだし、すぐに不敵な笑みになった。

そんな後輩にカイザーも笑いデュエルディスクを構える。

聖星からもらったカードを全てデッキに入れ、フィールドに上がる。

 

「「デュエル!!」」

 

END

 




十代とカイザーのデュエル?
そんなの書いていたら私の心のLPが0になります。
それに早くセブンスターズ編に行きたいので。
セブンスターズ編ではオリ主が洗脳されて敵側になるパターンを見た事がありますが、それも面白そうだなぁと思ってます。
けどそうしたたらそれまで誰がメインになるのか…


カードを譲る件についてですが、実際そこまで問題はないと思います。
流石にシンクロモンスターやエクシーズモンスターなら問題になると思いますが、【シューティング・スター・ドラゴン】や【スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン】の事を考えると「いや、これ行けるんじゃね?」という結果になりました。
【レダメ】と【マジシャン・オブ・ブラックカオス】が釣り合わない?
まぁ、聖星も遊戯王の住人って事で許してください。


聖星の持っているカードは基本的に【星態龍】が出してくれますが、中にはZEXALの世界で買ったカードもあります。
次は【サイコショッカー】か…
え、SALは飛ばす気満々ですが何か?

追記
また再びアンケートを取りたいと思います。
今後、とある理由で伝説のデュエリストとのデュエルを書こうと思っています。
その人物ですが。
①武藤遊戯。
②海馬瀬人
③城之内克也
④孔雀舞
の中から1人です。
この人が良い!というのがあれば、活動報告にアンケートを設置しますのでそちらに投票してください。
コメント欄に投票されたものは無効とさせていただきます。
では、皆様の貴重な意見をお待ちしております。

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