遊戯王GX~不動の名を継ぐ魔導書使い~   作:勇紅

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第十六話 神のみの世界

「「デュエル!!」」

 

裏路地に響いた遊戯と聖星の声。

デュエルディスクが起動し、互いにデッキからカードを5枚ドローした。

 

「まずは聖星君、君のターンだ」

 

「はい、ありがとうございます、遊戯さん。

俺のターン、ドロー」

 

デッキからカードをドローした聖星は唯一の観客であるペガサスに目をやる。

彼は聖星のデュエルを見定めるように真剣な顔つきでそこに立っている。

自分を新しい鍵だというペガサスの前でのデュエルはやり辛さを覚えるが、遊戯とのデュエルだ。

深呼吸をした聖星はいつものようにデュエルをするよう心掛けた。

 

「俺は手札から魔法カード【グリモの魔導書】を発動します」

 

「【グリモの魔導書】?」

 

「ふむ。

また私の知らないカードですカ」

 

聖星が発動するのは【魔導書】デッキのエンジンであるカード。

これは遊馬達の世界で手に入れ、聖星の時代には存在しないものだ。

当然遊戯とペガサスが知るわけがない。

 

「このカードは1ターンに1度しか発動できず、発動した時デッキから【魔導書】と名の付くカードを1枚手札に加えます。

もちろん【グリモの魔導書】は加えられません。

俺は【セフェルの魔導書】を加えます。

そして【魔導戦士フォルス】を攻撃表示に召喚」

 

「はぁ!」

 

聖星の場が輝き、中から炎の色を持つ女性戦士が姿を現した。

彼女の周りには魔法の文字が浮かび上がり、獅子を模した盾に手を置く。

表示された攻撃力は1500.

 

「そして【セフェルの魔導書】を発動します。

このカードは俺の場に魔法使い族モンスターが存在し、手札の【魔導書】を見せる事で墓地の【魔導書】の効果をコピーします」

 

「聖星君の場には【魔導戦士フォルス】が存在する。

そして墓地には【グリモの魔導書】。

つまり君はもう1枚デッキからカードを手札に加える事が出来る、って事だね」

 

「はい。

そういう事になります。

俺は手札から【ヒュグロの魔導書】を見せ、デッキからフィールド魔法【魔導書院ラメイソン】をサーチします。

そしてフィールド魔法【魔導書院ラメイソン】を発動」

 

デュエルディスクのフィールド魔法ゾーンが開かれ、そこにカードをセットする。

すると周りに光が満ち溢れ大地から巨大な建物が出現する。

 

「【魔導戦士フォルス】の効果発動。

墓地に存在する【魔導書】を1枚デッキに戻すことで魔法使い族モンスターの攻撃力を500ポイント上げます。

俺は墓地の【グリモの魔導書】をデッキに戻し【フォルス】の攻撃力を1500から2000にアップ」

 

「凄い。

1ターン目から攻撃力2000のモンスターを召喚したなんて」

 

【フォルス】の周りに浮かぶ魔法の文字の光が輝きを増し、攻撃力が2000になった。

レベル4モンスターで2000とはこの時代では脅威になるはず。

聖星は決闘王相手の出だしでは良い布陣だと思った。

 

「俺はカードを1枚伏せてターンを終了します」

 

「【魔導書】に【魔導戦士】。

君のデッキは魔法使い族なんだね」

 

「はい」

 

「見た事もない魔法使いか。

うん、楽しくなってきたよ。

僕のターン、ドロー。

僕は手札から【磁石の戦士β】を召喚」

 

遊戯の場に召喚されたのは黄色の体を持つモンスター。

球体の顔を持つモンスターはどこか愛嬌がある。

攻撃力は1700と今の【フォルス】より低めだ。

 

「さらに手札から魔法カード【同胞の絆】を発動!

ライフを1000ポイント払う事で僕の場にいる【磁石の戦士β】と同じ種族のモンスターを2体、デッキから特殊召喚するよ」

 

「【β】の同種?」

 

「うん。

僕は【磁石の戦士α】、【γ】を攻撃表示で特殊召喚する!」

 

場に現れた魔法カードが光り出し、中から灰色とピンク色の戦士が次々へと場に現れた。

灰色の戦士は剣を構え、ピンク色の戦士は磁石の翼を羽ばたかせる。

ライフを犠牲にしたとはいえ一気にモンスターを複数特殊召喚したのは素直に凄いと思う。

 

「1ターンで3体のモンスターか……」

 

しかもただのモンスターではない。

未来ではあの3体が揃うと、武藤遊戯はとあるモンスターを召喚したと伝わっている。

手札にあのカードがあるかは知らないが一気にそろえたという事はそれを意味するだろう。

 

「このカードで特殊召喚されたモンスターはこのターン、攻撃も生贄も出来ない。

けど融合は出来るんだ」

 

「……やっぱり」

 

「場に存在する【磁石の戦士α】、【β】、【γ】を融合し【磁石の戦士マグネット・バルキリオン】を攻撃表示で特殊召喚する!

来い、【マグネット・バルキリオン】!!」

 

遊戯の声に応えるように3体のモンスターは関節部が外れ、1体のモンスターへと組みあがっていく。

【α】の剣と盾を持ち、【γ】の桃色の翼を大きく広げるモンスタは遊戯の前に立ち剣を構える。

特殊召喚された【マグネット・バルキリオン】の攻撃力は3500と表示された。

 

「攻撃力3500.

聖星ボーイのモンスターの攻撃力を上回りマシタ」

 

「行くよ!

【マグネット・バルキリオン】で【魔導戦士フォルス】に攻撃!

マグネット・ソード!」

 

【マグネット・バルキリオン】は大きく剣を振り上げ、【フォルス】に向かっていく。

大きく羽ばたき空から攻撃してくる【マグネット・バルキリオン】に対し【フォルス】は獅子の盾を向けた。

磁石の剣は獅子の盾に突き刺さりそのまま持ち手の【フォルス】を貫いた。

 

「っ!」

 

攻撃表示だった【フォルス】は破壊され、聖星のライフは1500ポイント削られた。

2500になったライフを見下ろしながら聖星は遊戯を見た。

 

「僕はカードを1枚伏せてターンエンド」

 

「俺のターン、ドロー。

スタンバイフェイズ時、フィールド魔法【魔導書院ラメイソン】の効果を発動。

俺の場、または墓地に魔法使いが存在するとき、墓地に眠る【魔導書】をデッキの1番下に戻し、デッキからカードを1枚ドローします」

 

「墓地に存在する【魔導書】の回収だけじゃなく、ドロー効果。

つまりこのフィールドが存在する限り君のデッキに【魔導書】は尽きないって事だね」

 

「はい」

 

まだデュエルが始まって3ターン目だが、彼のデッキは【魔導書】という名のカードが核になっているのは分かった。

 

「(聖星ボーイの墓地に【魔導書】が存在する限り、聖星ボーイは毎ターン2枚のカードをドローする事になりマ~ス。

さ、遊戯ボーイ。

ユーはどうやって彼の実力を見極めますカ?)」

 

自分がデザインした記憶も、作る事を許可した記憶もないカード達。

一体聖星が何を考え、どのようなデュエルを展開するのか全く読めない。

彼の操るカードも気になるが、ペガサスは聖星が自分に隠そうとしている何かも気になった。

そして遊戯の行動も……

 

「(遊戯ボーイは十代ボーイ達とのデュエルを断りマシタ……

バット、聖星ボーイはデュエルに誘ったのは何故カ)」

 

最初は自分と聖星が話しやすいよう、彼の緊張をほぐす為かと思った。

だが遊戯はもっと別の事を目的としている目をしている。

同時にペガサスは食事の時に感じた違和感を思い出した。

 

「(聖星ボーイがあのドラゴンを懐かしげに見た時、遊戯ボーイもとても驚いていた表情を浮かべたのデ~ス。

その理由がとても気になりマ~ス)」

 

ペガサスは他と異なる表情を浮かべる聖星ばかりに目をやっていたが、不意に目に入った遊戯の表情にも興味を持った。

長い付き合いとは言えないが、特別な関わりを持つ遊戯の驚愕の表情は一体何を意味するのか。

恐らく遊戯はペガサスとは異なる何かを聖星に感じ取ったのだろう。

 

「俺は【セフェルの魔導書】を墓地に戻し、デッキからカードを1枚ドローします。

そして魔法カード【天使の施し】を発動。

デッキからカードを3枚ドローし、2枚墓地に捨てます。

俺が捨てるのは【アルマの魔導書】と【ネクロの魔導書】です」

 

「また新しい【魔導書】。

でもそれを墓地に捨てたって事は…………」

 

聖星が墓地に捨てたのは除外された【魔導書】を手札に戻すカードと、蘇生カード。

しかし遊戯はそのカードの効果を知らない。

だが何のために墓地に落としたのかは容易に想像がつく。

 

「(フィールド魔法【ラメイソン】の効果でドローするために墓地に落としたのかな?

でもさっきの【フォルス】は墓地の【魔導書】を利用するカード。

もしかすると墓地のカードを利用する別のカードがあるかもしれない)」

 

「俺は【魔導剣士シャリオ】を攻撃表示で召喚」

 

「ふんっ!」

 

光の中から現れたのは白馬に乗る若い魔法使い。

彼は自分より攻撃力が高い【マグネット・バルキリオン】に怯む様子もなく剣を構えた。

 

「手札から【グリモの魔導書】を発動します。

デッキから【セフェルの魔導書】を加えます。

さらに手札から魔法カード【ヒュグロの魔導書】を発動。

俺の場の魔法使い族モンスターの攻撃力をエンドフェイズまで1000ポイントアップさせます」

 

「これで【シャリオ】の攻撃力は1800から2800.

でもまだ【マグネット・バルキリオン】には届かないよ」

 

「はい。

それくらい承知です。

手札から【セフェルの魔導書】を発動。

手札から【トーラの魔導書】を見せ、墓地の【ヒュグロの魔導書】の効果をコピー。

これで【シャリオ】の攻撃力は3800です!」

 

場に現れたのは闇を描く【魔導書】。

薄暗い光を放ちながらそのカードは力が満ち溢れる赤い【魔導書】へと姿を変えた。

2つの英知を受け取った【シャリオ】の剣には赤い魔力が宿り攻撃力が3800まで上昇する。

 

「凄い、【マグネット・バルキリオン】の攻撃力を超えた!」

 

2枚のカードのコンボで自分のモンスターの攻撃力を超えた事に遊戯は素直に感心した。

今まで様々なデュエリスト達と戦ってきたが、こうもあっさりと【マグネット・バルキリオン】の攻撃力を超えたのほんの一握りだけである。

海馬コーポレーションの社長である海馬瀬人に唯一無二の親友である城之内克也、そして……

脳裏に過ぎる数々のデュエリスト達を懐かしみながら遊戯は次はどのような戦術を繰り出すのか待ち構えた。

 

「【魔導剣士シャリオ】で【磁石の戦士マグネット・バルキリオン】に攻撃。

この瞬間、リバースカードオープン。

【マジシャンズ・サークル】」

 

「そのカードは!」

 

「(魔法使い族モンスターが攻撃宣言した時に発動できるカードデ~ス。

互いのデッキから攻撃力2000以下の魔法使い族モンスターを1体、攻撃表示で特殊召喚する事が出来マ~ス。

聖星ボーイは魔法使い族デッキ。

遊戯ボーイのデッキにも数多くの魔法使いが眠っていマ~ス。

そんな遊戯ボーイに対して【マジシャンズ・サークル】を発動するとは、聖星ボーイ……

彼は勝負に出たのデ~ス)」

 

「だったら僕はカウンター罠【攻撃の無力化】を発動するよ!」

 

遊戯が発動したのはバトルフェイズを強制終了する罠カード。

チェーン処理によりまずバトルフェイズが終了し、次に【マジシャンズ・サークル】の効果処理に移る。

 

「俺はデッキから攻撃力2000【魔導冥士ラモール】を攻撃表示で特殊召喚」

 

「僕は攻撃力1000の【沈黙の魔術師】を特殊召喚!」

 

輝きの中から現れた2体の魔法使い。

聖星が召喚したのは禍々しいオーラを漂わせ、魂を刈り取るデスサイズを持つ青年。

遊戯は幼いながらも才能を持つ小さな赤と黒の少女を召喚した。

 

「そして特殊召喚された【ラモール】の効果発動」

 

「え?」

 

「【ラモール】は召喚、特殊召喚に成功した時墓地に存在する【魔導書】の種類の数によって効果を発動する事が出来ます」

 

「成程、このために聖星ボーイは【天使の施し】で墓地に【魔導書】を送ったのデ~ス」

 

「3種類の時、このカードの攻撃力は600ポイントアップ。

4種類の時、デッキから【魔導書】を1枚手札に加えます。

5種類の時、デッキから闇属性、魔法使い族、レベル5以上のモンスターを特殊召喚します」

 

今、聖星の墓地には【グリモ】、【アルマ】、【ネクロ】、【ヒュグロ】、【セフェルの魔導書】。

計5種類の【魔導書】が眠っている。

 

「墓地には5種類。

よって全ての効果を発動できます」

 

「えっ、1度に3つの効果を発動出来るって事!?」

 

「【ラモール】、悪夢の覚醒(サイレント・デス)

 

効果名を宣言すると【ラモール】の体が薄暗い紫色に包まれ、攻撃力が2600へと上昇する。

だがこれで終わらない。

 

悪夢の始まり(ナイトメア・クリエイト)

 

【ラモール】の肉体に集まった紫色の光は彼の左手に集中し、1冊の書物となる。

聖星の手にもその書物と同じものが描かれているカードが加わった。

 

「俺が加えたのは【ゲーテの魔導書】です。

そして終焉の呼び声(コール・オブ・ダークネス)!」

 

持っている鎌を大きく振り回した【ラモール】は自分の隣に魔法陣を描く。

その魔方陣の輝きが強くなるとそこから空間が割れ、1体の悪魔がフィールドに舞い降りた。

 

「特殊召喚。

【魔導鬼士ディアール】」

 

「グォオオオ!!!」

 

禍々しい剣を構え、見るからに恐ろしい風貌。

この姿を見て誰がすぐに魔法使い族だと思うだろうか。

その攻撃力は2500.

攻撃力3800の【シャリオ】、2600の【ラモール】、2500の【ディアール】。

本来なら一斉攻撃を仕掛けたいのだが遊戯の発動した【攻撃の無力化】の効果により既にバトルフェイズは終了している。

 

「(【マグネット・バルキリオン】を破壊して、【ヒュグロの魔導書】の効果でデッキから【魔導書】をサーチするつもりだったけど上手くいかないなぁ。)

俺はカードを1枚伏せ、ターンエンドです」

 

「僕のターン、ドロー」

 

デッキからカードをドローした遊戯は互いの手札の枚数を確認する。

聖星は2枚、遊戯は3枚。

そして自分の場に存在する【沈黙の魔術師】を見下ろした。

 

「僕は手札から【天よりの宝札】を発動するよ。

互いに手札が6枚になるようデッキからカードをドローする。

僕達の手札は互いに2枚。

よって4枚ドローだ」

 

「分かりました」

 

「そしてこの瞬間、【沈黙の魔術師】の効果発動」

 

「え?」

 

遊戯の言葉にカードをドローした聖星は【沈黙の魔術師】を見る。

彼の場に存在する幼い魔術師は光に包まれ、可愛らしい少女からミステリアスな女性へと成長した。

そのレベルは4、攻撃力は3000となった。

 

「え、どうしてレベルと攻撃力が?」

 

「【沈黙の魔術師】は相手がカードを1枚ドローする度にレベルを1つ上げ、攻撃力を500ポイントアップする効果を持つ。

今、君がドローしたのは4枚。

よってレベルは4となり攻撃力は2000ポイントアップしたんだよ」

 

これで遊戯の場には攻撃力3500と3000のモンスターが揃った事になる。

それに対し聖星の場には攻撃力が1800にまで下がった【シャリオ】と2600の【ラモール】、2500の【ディアール】。

 

「行くよ、聖星君。

【マグネット・バルキリオン】で【魔導剣士シャリオ】に攻撃!

マグネット・ソード!」

 

再び磁石の翼を大きく広げた【マグネット・バルキリオン】は天空に舞い、【シャリオ】に己の剣を振り下ろす。

同じように剣を使う【シャリオ】は反撃しようと構えるがそれより先に聖星が動いた。

 

「リバースカード、オープン。

速攻魔法【ゲーテの魔導書】を発動」

 

「このタイミングでの速攻魔法!」

 

「【ゲーテの魔導書】は発動時に除外する【魔導書】の枚数によって効果を変えます。

俺は墓地に存在する【ヒュグロ】、【ネクロ】、【グリモの魔導書】を除外します。

そして3枚の【魔導書】を除外した時、俺は場に存在するカードを1枚除外できます」

 

「場に存在するカードの除外!?

じゃあ君が除外するのは……!」

 

「【マグネット・バルキリオン】には消えてもらいます」

 

【シャリオ】に向かっていく【マグネット・バルキリオン】だが、彼らの間に漆黒の歪みが生まれる。

その歪みからは僅かな風が吹き、次第に周りを飲み込むほどの強風が発生した。

【マグネット・バルキリオン】は逃れようと羽ばたくがそのまま歪みへと吸い込まれた。

 

「凄いね、聖星君。

攻撃力3500の【マグネット・バルキリオン】をこんな形で倒すなんて。

でもまだ僕の場には攻撃力3000の【沈黙の魔術師】が存在する。

【沈黙の魔術師】、【魔導剣士シャリオ】に攻撃!」

 

「はっ!」

 

「サイレント・バーニング!」

 

【沈黙の魔術師】は大きく杖を振り上げ、【シャリオ】を攻撃する。

攻撃対象になった【シャリオ】はその攻撃によって砕け散った。

一瞬で破壊された仲間に【ディアール】は険しい表情を浮かべ、【ラモール】は眉ひとつ動かさず真っ直ぐと前を見ている。

これで聖星のライフは1200削られ、1300となる。

 

「うわぁ……

まだ4ターン目なのにもうライフがこれだけ?」

 

相手が1ターンで攻撃力の高いモンスターを召喚し、攻めてくる事は十代やカイザー相手で慣れているつもりだった。

しかし聖星も【強制脱出装置】や【ゲーテの魔導書】、【一時休戦】等でその攻撃をかわしライフを守っている。

だから余計にたった4ターンしかたっていないのにライフが削られた事に驚いたのだ。

 

「(丸藤先輩とも十代達とも違う。

やっぱりキング・オフ・デュエリストは凄い!)」

 

改めて彼は他のデュエリストとは違うのだと、再認識した聖星は尊敬の眼差しで遊戯を見る。

聖星の視線に気づいた遊戯はただ微笑みカードを手に取った。

 

「僕はカードを2枚伏せてターンエンド。

さ、聖星君。

次はどんなカードを見せてくれるの?」

 

「それは見てからのお楽しみですよ、遊戯さん。

俺のターン、ドロー」

 

「この瞬間、【沈黙の魔術師】はLv5になり攻撃力は3500にアップ!」

 

「俺もスタンバイフェイズ時にフィールド魔法【魔導書院ラメイソン】の効果を発動します。

墓地に存在する【セフェルの魔導書】をデッキに戻し、カードを1枚ドロー。

そして【沈黙の魔術師】はLv6になり攻撃力は4000ですよね?」

 

「うん。

そうなるよ」

 

「オ~ノ~。

攻撃力4000とは神である【オベリスクの巨神兵】に匹敵しマ~ス。

聖星ボーイ、ユーはどうやって【沈黙の魔術師】を倒すのですカ?」

 

聖星の手札が増えていくにつれ【沈黙の魔術師】の攻撃力も上昇する。

だが今は相手モンスターの攻撃力より手札を増やすことが優先となる。

8枚ある手札を全て見ながら聖星は小さく頷いた。

 

「俺は場に存在する【魔導鬼士ディアール】を生贄に捧げ、【魔導皇士アンプール】を召喚」

 

悪魔の姿をした魔法使いは光に包まれ、代わりに金の装飾がされている衣服をまとう男性が現れた。

彼は威厳ある顔で【沈黙の魔術師】を見た。

その瞳は【沈黙の魔術師】を見定めるような眼差しで、彼は隣にいる【ラモール】にも目をやった。

 

「【魔導皇士アンプール】の効果発動。

俺の魔法使い族と墓地に存在する【魔導書】を1枚除外し、このターンのエンドフェイズ時まで貴方の場のモンスターのコントロールを得ます」

 

「え!?」

 

聖星の口から放たれた【アンプール】の効果に遊戯は目を見開く。

【アンプール】は持っている杖を高く上げ、何やら呪文を唱え始めた。

すると彼の足元に漆黒の歪みが生じ、その中から1冊の書物が現れる。

 

「俺は【魔導冥士ラモール】と【ゲーテの魔導書】を除外します」

 

呪文の詠唱は続き、指定された2枚のカードは紫色の光に包まれていく。

【アンプール】の宝石は輝きを増し、それに呼応するよう彼の周りを舞う魔法の文字が光っていく。

それを警戒するように見ていると【沈黙の魔術師】の足元に魔法陣が描かれる。

 

「【アンプール】、犠牲の円舞(サクリファイス・ワルツ)

 

「っ!?」

 

魔法陣は【沈黙の魔術師】を引きずり込み、聖星の場へと召喚した。

 

「【沈黙の魔術師】!」

 

「これであなたの場にモンスターは存在しません」

 

遊戯のライフは3000.

【沈黙の魔術師】の攻撃力は4000.

このままダイレクトアタックが決まれば聖星の勝ちである。

 

「(けど決闘王なんだ。

この攻撃があっさり通るか?)」

 

聖星は【沈黙の魔術師】から遊戯の足元に存在する2枚の伏せカードを見る。

 

「(怖いのはあの伏せカード……

攻撃モンスターを破壊する罠か、それとも速攻魔法か。

でも、怖くはない。

俺の手札には魔法使い族モンスターに魔法か罠の耐性効果をつける【トーラの魔導書】がある)」

 

仮に遊戯がどんなカードを発動しても、聖星の攻撃は止められないはずだ。

小さく頷いた聖星は宣言した。

 

「【沈黙の魔術師】でダイレクトアタック。

サイレント・バーニング」

 

【アンプール】の術により体を操られている【沈黙の魔術師】は一瞬だけ険しい表情を浮かべ、唇を噛みしめながら杖に自分の魔力を集める。

彼女は大きく杖を上げ、遊戯に向かって攻撃した。

自分に向かってくる仲間の攻撃に遊戯はすぐに宣言する。

 

「罠発動、【聖なるバリア‐ミラーフォース‐】!」

 

「(やっぱり)」

 

「これで聖星君の場のモンスターは全滅だよ!」

 

遊戯が発動したのは相手の場の攻撃表示モンスターを問答無用で破壊する強力なカード。

透明な壁が遊戯を守るように包み込み、【沈黙の魔術師】の攻撃を跳ね返す。

弾き返された攻撃は聖星のフィールドに降り注ぎ【アンプール】と【沈黙の魔術師】を破壊しようとする。

 

「そうはさせません。

速攻魔法、【トーラの魔導書】を発動します。

このカードはこのターンのエンドフェイズまで、魔法使い族モンスター1体に罠か魔法の耐性をつけさせます。

俺は【沈黙の魔術師】に罠カードの耐性をつけます!」

 

「ホワット!?

これでは【沈黙の魔術師】は【ミラーフォース】の効果を受け付けまセ~ン!」

 

彼女の前に現れた書物は勝手にページがめくれ、【沈黙の魔術師】に魔法をかける。

これで【沈黙の魔術師】は破壊されず、攻撃が通る。

勝利を確信した聖星は安心したように口元に弧を描く。

それと同時に遊戯の口元も弧を描いた。

 

「甘いよ、聖星君」

 

「え?」

 

「僕の場にはもう1枚伏せカードが存在している」

 

「まさか……

このタイミングで発動できるカードなんですか!?」

 

「罠発動、【精霊の鏡】!!」

 

ゆっくりと表側表示になり発動された罠カード。

描かれているのは鏡を持つ青色の女性。

カードの中から現れた彼女は自分の持っている鏡を聖星の場へと向けた。

 

「【精霊の鏡】?」

 

「相手が発動した魔法効果を鏡の中に封印し、僕が自由に使う事が出来る。

悪いけど【トーラの魔導書】の魔法効果は僕が使わせてもらうよ」

 

「なっ!?

それじゃあ【沈黙の魔術師】は効果で破壊される…………」

 

「うん」

 

聖星の場に存在した【トーラの魔導書】は鏡の中へと吸い込まれていく。

これで【沈黙の魔術師】を守っていた魔法はなくなった。

空から降り注ぐ攻撃は【沈黙の魔術師】と【アンプール】を直撃し、彼等を破壊する。

 

「マジかよ……」

 

聖なる光の攻撃にフィールドのカードが全て消え去り、残されているのはフィールド魔法のみ。

一気に形勢を逆転したと思えば、やはり聖星の窮地には変わりがなかった。

無意識に唇で弧を描いた聖星は微笑む。

 

「流石決闘王。

そう簡単に勝たせてくれませんね」

 

「仮にもキング・オブ・デュエリストだからね。

そう簡単に終わらせる気はないよ」

 

互いに笑う遊戯と聖星。

実に楽しそうにデュエルをしている青年と少年の姿に自然とペガサスも笑みを浮かべてしまう。

しかしすぐに表情を変え、2人の場を見渡した。

 

「流石は遊戯ボーイデ~ス。

こういう場合も想定して魔法効果を封じる【精霊の鏡】を伏せていましたカ。

これで聖星ボーイの場にモンスターは存在しまセ~ン。

……さて、どうしますか聖星ボーイ?」

 

「俺は魔法カード【一時休戦】を発動します。

互いにデッキからカードを1枚ドローし、次の貴方のエンドフェイズまで互いに受けるダメージを0にします」

 

「ダメージを?

戦闘ダメージだけじゃなく効果ダメージも0にするの?」

 

「はい」

 

聖星が頷くと遊戯は何かを考えるかのように黙り込む。

 

「ターンエンドです」

 

「僕のターン、ドロー。

僕はモンスターをセット、カードを2枚伏せてターンを終了するよ」

 

今聖星の場にモンスターは存在しないが【一時休戦】の効果でダメージを与えることは出来ない。

だから遊戯は自分の場を整えてターンを終了した。

 

「俺のターン、ドロー。

スタンバイフェイズ時、【魔導書院ラメイソン】の効果により墓地に存在する【アルマの魔導書】をデッキに1番下に戻しドローします」

 

墓地から回収された速攻魔法。

遊戯は真剣に聖星と聖星が持つカードを見ながら、カードがドローされる姿を見る。

 

「手札から永続魔法【魔導書廊エトワール】を発動。

【魔導書】を発動する度に魔力カウンターを乗せ、その数×100ポイント俺の魔法使い族の攻撃力を上げます」

 

「つまり君が【魔導書】を発動する度に君のモンスターは強くなるって事だね」

 

「はい。

さらに【魔導老士エアミット】を召喚」

 

淡い水色の魔法陣が場に現れ、その中から魔法の文字と共に1人の老人が現れる。

長い髭を持つ老人は年齢など感じさせないほど背筋をピンと伸ばし、自分の杖を地面につけた。

その攻撃力は1200と頼りない数値だ。

だが遊戯は決して侮る様子など見せずしっかりと前を見ている。

 

「手札から魔法カード【グリモの魔導書】を発動。

デッキから【セフェルの魔導書】を手札に加えます」

 

デッキから【セフェルの魔導書】を加えると【エアミット】の周りに浮かぶ文字が輝き始める。

その様子を注意深く見ると攻撃力が1200から1600になる。

 

「【エアミット】の攻撃力が400も上がった?」

 

「【魔導老士エアミット】の効果です。

彼は【魔導書】と名の付く魔法カードが発動する度に攻撃力を300、レベルを2つ上げます」

 

「そっか。

それに【グリモの魔導書】が発動された事で【エトワール】に魔力カウンターが乗り、さらに100ポイントアップしたんだね」

 

「はい」

 

つまり、聖星が【魔導書】の効果を発動する度に【エアミット】は攻撃力を400ポイント上げるという事になる。

 

「そして手札の【ネクロの魔導書】を見せ、【セフェルの魔導書】を発動。

墓地に存在する【グリモの魔導書】の効果をコピーし、デッキから【ヒュグロの魔導書】を加えます」

 

再び発動された【魔導書】。

紫色の書物は赤色の書物に代わると、今度は【エアミット】自身の効果が発動しさらに攻撃力が400ポイント上昇し2000となった。

しかもデッキから加わった赤色の書物の効果は相手にとってかなり厄介なもの。

 

「手札から【ヒュグロの魔導書】を発動。

【エアミット】の攻撃力を1000ポイントアップします。

そしてバトルフェイズ。

【エアミット】で裏側守備モンスターに攻撃」

 

長年鍛えぬいた事で身に着けた魔力の力と【エトワール】、そして【ヒュグロの魔導書】の英知を授かった【エアミット】。

彼は低い声で呪文を唱え始める。

すると周りに浮かんでいた文字の輝きが増し、【エアミット】はその光を杖の宝石に集めてモンスターを攻撃する。

 

「(攻撃力は【エトワール】と【エアミット】自身の効果も含めて3400、普通のモンスターなら耐えられない)」

 

勢いよく向かっていく魔力は裏側守備のモンスターを貫く。

だがそのモンスターは砕け散ることなどなく、表側表示となってその可愛らしい姿を露わにする。

真っ白で無駄なものがなく、可愛らしい姿のモンスターの姿に聖星は目を見開いた。

 

「え?

【マシュマロン】!?」

 

「そう。

僕が伏せたのは【マシュマロン】。

【マシュマロン】は戦闘では破壊されない効果を持っているんだ。

そしてこの瞬間、【マシュマロン】のもう1つの効果が発動するよ。

裏側守備のこのカードと戦闘を行ったモンスターのプレイヤーは1000ポイントのダメージを受けるんだ」

 

「っていう事は……」

 

遊戯の場に存在する【マシュマロン】はその顔に似合わない生意気な笑みを浮かべ、聖星に向かってくる。

しかも可愛らしい口を大きく開け、物騒な鋭い歯を見せてきた。

反射的に目をつむったが【マシュマロン】は聖星に噛り付き、彼のライフを奪う。

 

「(うわ、やっば。

あとライフたったの300か)

俺はカードを1枚伏せて、ターンを終了します」

 

「僕のターン、ドロー」

 

ゆっくりとカードを引いた遊戯はそのカードを手札に加える。

そして別のカードを掴んだ。

 

「僕は手札から【沈黙の剣士】を召喚。

そして永続魔法、【マシュマロンのメガネ】を発動。

このカードがある限り、聖星君は【マシュマロン】以外のモンスターに攻撃する事は出来ないよ」

 

場に現れたのは【マシュマロン】が描かれているおもちゃのような眼鏡。

その眼鏡は【エアミット】に勝手に掛けられる。

魔法の宝石を嵌めこんだ服を着る老人がおもちゃのような眼鏡を掛けている姿など、かなり言葉にしがたいが……

はっきり言うと似合わない。

 

「僕はこれでターンエンド」

 

「この瞬間、リバースカード、オープン。

速攻魔法【サイクロン】を発動します。

【マシュマロンのメガネ】を破壊させてもらいますよ」

 

雷と轟音を伴いながら発生した【サイクロン】は遊戯の永続魔法を飲み込んでいく。

【マシュマロンのメガネ】が破壊された事で、【エアミット】は元の威厳のある顔を見せてくれた。

 

「あちゃ……

これで【マシュマロン】を攻撃対象にされなくなっちゃったね」

 

「ですが遊戯さんの事です。

その伏せカードにまだ何かあるんですよね?」

 

「それは見てからのお楽しみだよ」

 

「はい。

俺のターン、ドロー。

スタンバイフェイズに移行し、【ラメイソン】の効果発動。

【セフェルの魔導書】をデッキの1番下に戻してカードを1枚ドローします。

【魔導老士エアミット】で【沈黙の剣士】を攻撃」

 

「リバースカード、オープン!

【時の飛躍-ターン・ジャンプ-】!」

 

「【ターン・ジャンプ】?」

 

「このカードは僕達の場の時を3ターン先へと飛ばすカード。

よって、このカードの効果により時が進み【沈黙の剣士Lv0】は【Lv3】となり攻撃力が1000から2500にまでアップ!」

 

「なっ!」

 

今、【エアミット】の攻撃力は2400.

時が急に加速し、それに合わせて成長した【剣士】は少年から逞しい青年へと姿を変える。

肩に担いでいる大剣も相応しい程立派になり、向かってくる【エアミット】に対し剣を構える。

 

「はぁっ!!」

 

「くっ!?」

 

一気に足に力を入れた【沈黙の剣士】は素早く動き、敵である魔導士を切り裂く。

無念の表情を浮かべた【エアミット】はそのまま爆発し、聖星のライフは300から200になった。

これでもう後がない。

 

「……俺はモンスターをセットしてターンエンドです」

 

ゆっくりと宣言する聖星。

流石にライフが0に近くなり、焦りの色が見えてきた。

負けたくないという感情が伝わってくる目に遊戯は少しだけ笑う。

 

「僕のターン、ドロー!

そしてこのスタンバイフェイズ時、【沈黙の剣士Lv3】は【Lv4】になる!

よって攻撃力は3000だよ!」

 

遊戯のフェイズが移行すると同時に【沈黙の剣士】は光に包まれ、更に逞しい青年へと姿を変えた。

沈黙の名に相応しい凛々しい表情は今の聖星にとってどれほどの脅威だろう。

 

「そして【マシュマロン】を生贄に……」

 

「え?」

 

遊戯がモンスターの名前を宣言すると【マシュマロン】が姿を消す。

すると遊戯の場に暗雲がゆっくりと集まり、とても低い音がゆっくりと響き始める。

次第に音は激しくなり暗雲から勢いよく雷の雨が降ってくる。

 

「現れよ、【デーモンの召喚】!」

 

「グォァアアア!!」

 

雷は一か所に集中し、目に突き刺さるような黄色の光の中から悍ましい姿の悪魔が姿を現す。

召喚された悪魔は大きく両腕と翼を広げ、大きな咆哮を上げた。

 

「【デーモンの召喚】……

本物だ」

 

デュエルキングダムで活躍したレベル6で最高の攻撃力を誇る悪魔族モンスター。

名前と映像に残っている姿しか知らない聖星は敵として立ちはだかる悪魔に目を輝かせた。

 

「行くよ!

【デーモンの召喚】で裏側守備モンスターを攻撃!

魔降雷!!」

 

裏路地に響いた攻撃名に【デーモンの召喚】は目を光らせ、体中に雷を纏う。

その雷は激しい音を立ててフィールドを舞い、裏側守備モンスターに命中する。

表になったのは1人の男性で、守備力がたったの200しかないためあっさりと破壊された。

 

「この瞬間、【魔導術士ラパンデ】の効果発動。

このカードが墓地に送られた時、デッキからレベル3の【魔導】と名の付くモンスターを手札に加えます。

俺は【魔導召喚士テンペル】を手札に加えます!」

 

「でも、君の場にモンスターは存在しないよ!

【沈黙の剣士】でダイレクトアタック!!」

 

「手札から【速攻のかかし】の効果発動」

 

「手札からモンスター効果!

それにダイレクトアタックのタイミングって事は……」

 

「はい。

相手がダイレクトアタックしてきたとき、攻撃を無効にしバトルフェイズを終了します」

 

遊戯の攻撃宣言に【沈黙の剣士】は大きく大剣を振りかざし、切りかかろうとする。

だがどこからかスクラップで作られたかかしが現れ、聖星を守るようにその一太刀を受ける。

かなりの衝撃なのか、火花が散り、【沈黙の剣士】は反動で遊戯の場まで戻る。

その時の彼は仕留めきれなかった悔しさからか、微かに表情が変化した。

 

「……はぁ、何とかしのげた」

 

バトルフェイズは終わり、これ以上戦闘が行われることはない。

後は遊戯がバーン系のカードを使ってこない事を祈るだけだ。

 

「(遊馬はライフが削りきれなかったら容赦なく【ガガガ・ガンマン】を召喚してライフを0にしてくるからなぁ。

あ、でもそんなカードがあったら初めから使ってるか)」

 

しかし自分のライフは残り200.

決闘王が削ろうと思えば削りきれる数値だ。

次に自分のターンが回ってくれば逆転できる手はあるが、このまま押し切られたら不味い。

バーンカードがない事を願いながら遊戯を見る。

 

「(まだ、何か策があるって顔だね。

さしずめさっき手札に加えた【魔導召喚士】にかけているのかな?)

僕はこれでターンエンドだよ」

 

聖星のターンに移った。

自分に回ってきたターンに聖星は小さく頷き、デッキに指を置く。

 

「俺のターン、ドロー!

スタンバイフェイズ、墓地に存在する【ヒュグロの魔導書】をデッキに戻してカードを1枚ドローします」

 

遊戯のライフは3000、場には攻撃力2500の【デーモンの召喚】と3000の【沈黙の剣士】が存在する。

さらには【トーラの魔導書】の効果を封印している【精霊の鏡】。

自分の場には【ラメイソン】しか存在しない。

どうにかして流れを変えたい聖星はモンスターを1枚掴む。

 

「俺は手札から【魔導召喚士テンペル】を召喚します」

 

光の中から現れたのは綺麗な顔をフードで隠す女性。

 

「手札から魔法カード【グリモの魔導書】を発動します。

デッキから【セフェルの魔導書】を手札に加えます。

そして【セフェルの魔導書】の効果を発動。

【ネクロの魔導書】を見せ、デッキから【ヒュグロの魔導書】サーチ。

さらに【テンペル】の効果発動!」

 

「(やっぱりね)」

 

「【魔導書】を発動したターン、このカードを墓地に送る事でデッキからレベル5以上の闇または光属性の魔法使い族モンスターを特殊召喚します」

 

「えっ、一気に上級モンスターを召喚するの!?」

 

「【テンペル】、カオス・ゲート!」

 

このターン発動された【グリモの魔導書】が彼女の前に現れ、【テンペル】の足元に魔法陣が広がる。

それは瞬く間に、神聖な輝きを放ちフィールドを照らす。

【テンペル】がその輝きの中に消えると、さらに輝きは強くなり、魔法陣から強烈な光柱が立つ。

 

「特殊召喚」

 

光はゆっくりと球体へと形を変え、その中から純白の翼が姿を見せる。

聖なる翼は静かに広がり、純白の羽が風により舞い上がる。

まるで天から天使が舞い降りてきたような幻想的な演出に遊戯とペガサスは言葉を失った。

純白の翼、衣に身を纏いし魔法使いは静かに【デーモンの召喚】と【沈黙の剣士】を見下ろす。

 

「【魔導天士トールモンド】」

 

名前を宣言された【トールモンド】は宝石のように綺麗な瞳を遊戯達に向ける。

その攻撃力は【魔導】の名を持つ魔法使い族モンスターの中で最高の2900だ。

 

「【魔導天士トールモンド】。

そのカードが君の切り札なんだね」

 

「はい」

 

類稀な才能を持っていた少年は戦いに身を投じた際、闇に堕ち、多くの命を奪った。

それだけではなく自らの命さえも危機に瀕してしまう。

それを助けようとしたのがあの黒いカード達。

結果、彼は助かり聖なる力を持つ魔法使いへと進化した。

 

「このカードでこのデュエル、終わらせます!」

 

「君の全力、見せてもらうよ!」

 

「はい!

【トールモンド】の効果発動。

このカードが魔法使い族の効果、または【魔導書】の効果で特殊召喚に成功した時墓地に存在する【魔導書】を2枚手札に加えます。

俺は【グリモの魔導書】と【セフェルの魔導書】を選択」

 

両手を前に出した【トールモンド】。

すると2冊の書物が墓地から回収され、聖星の手札に加わる。

 

「これで終わりじゃないですよ。

【トールモンド】の第2の効果!

この効果で【魔導書】を加えた時、手札の【魔導書】4種類を見せる事でこのカード以外のカードを全て破壊します!」

 

「なっ!?」

 

「全体破壊効果デスカ!?」

 

「ディヴァイン・クリア・フィールド!!」

 

聖星は手札にある4種類の【魔導書】を見せる。

すると【トールモンド】の周りに【ネクロの魔導書】、【ヒュグロの魔導書】、【グリモの魔導書】、【セフェルの魔導書】が浮かび上がりそれぞれが武器へと変わる。

4つの武器は淡い光を放ち、それを軸に光の波導が放たれた。

絶えず放たれる波導に【デーモンの召喚】と【沈黙の剣士】は粉々に砕け散り、【魔導書院ラメイソン】は崩れ落ちる。

そしてフィールドには【トールモンド】しか残らなかった。

 

「遊戯ボーイの場のカードが全て破壊されましタ……

それに聖星ボーイの手札にはあのカードが……」

 

「俺は【ヒュグロの魔導書】を発動し、【トールモンド】の攻撃力を2900から3900にアップ!」

 

「っ!」

 

「バトル!

クリア・ノヴァ・バースト!!」

 

聖星の宣言に【トールモンド】は遊戯に向かって手を向ける。

そして自分の魔力を集め、彼のライフを奪おうと光線を放った。

英知によって強化された光は遊戯の姿をかき消すように勢いよく向かっていく。

 

「クリクリ~」

 

「え?」

 

不意に聞こえた精霊の声。

聖星は少しだけ目を見開き、遊戯を見る。

すると茶色の毛玉が現れ、遊戯を守るように手を広げた。

 

「クリ―――!!」

 

突如場に現れた【クリボー】は【トールモンド】の攻撃を受け止め、爆発する。

その時生じた煙が充満するが、すぐに晴れていき笑っている遊戯が目に入る。

 

「……そんな、まさか手札に【クリボー】が?」

 

「そうだよ。

僕は【クリボー】を墓地に送り、【トールモンド】からの戦闘ダメージを0にしたんだ。

これで僕のライフは削られないよ」

 

遊戯の説明に聖星は言葉を失った。

折角遊戯に勝つチャンスを掴んだというのに、結局ダメージを与える事が出来なかった。

しかし状況は明らかに聖星が優位。

その事実があるおかげかあまり動揺せず、聖星はへにゃっと笑う。

 

「でしたら俺はカードを2枚伏せてターンエンドです」

 

「僕のターンだ」

 

ゆっくりとカードを引いた遊戯。

彼はそのカードを優しく見つめ、聖星へと視線を移す。

 

「それにしても場のカードを全て破壊する【トールモンド】。

そんなモンスターを召喚されたら、普通対抗できないよね」

 

「そんな……

遊戯さんは【クリボー】で攻撃を防いだじゃないですか」

 

「ううん。

僕が防いだのはあくまで攻撃。

効果までは防げていないよ」

 

今まであのモンスターと戦ったデュエリスト達はどう対処してきたのだろう。

ダイレクトアタックを受け、次のターンで破壊したのか。

それとも何も出来なかったのか。

自分は運よく手札に【クリボー】がいたから助かったが、いなければ負けていた。

 

「その効果を防ぐ事が出来るとすれば、どんなモンスターがいるかな?」

 

「モンスター、ですか?」

 

「うん」

 

遊戯からの優しい問いかけに聖星は考える。

この時代で【トールモンド】を封じ込めるカード。

真っ先に思い浮かんだのは取巻が使う【マテリアルドラゴン】だ。

だから、そう答えようと思い唇を動かそうとした。

 

「【スターダスト・ドラゴン】だったら防ぐ事が出来ただろうね」

 

「…………え?」

 

聖星はゆっくりと遊戯を凝視し、彼の口から放たれた言葉を頭の中で繰り返す。

 

「遊戯さん……?」

 

今にも消えてしまいそうなか弱い声で呼ばれた遊戯はまっすぐに聖星を見ながら言葉を続ける。

 

「【スターダスト・ドラゴン】は自身をリリースする事で破壊効果を無効にし、破壊する。

そうだったよね?」

 

優しく尋ねられた言葉に聖星は上手く言葉が出なかった。

ここはシンクロ召喚がまだ生まれていない時代。

そして【スターダスト・ドラゴン】はカードとなっていない時代だ。

それなのに何故目の前の人物は【スターダスト・ドラゴン】の効果を知っており、さらには未来で使われている言葉を口にした。

突然の事に理解が追い付かない聖星は思わず【星態龍】を見た。

【星態龍】も【星態龍】で驚いており、めったに浮かべない表情を浮かべている。

 

「遊戯さん、どうしてそれを知っているんですか?

だって【スターダスト】はっ……」

 

「高校生の時、1度【スターダスト・ドラゴン】と戦った事があるんだ」

 

「え?」

 

衝撃の言葉に聖星はさらに困惑する。

それに対し遊戯は懐かしむような眼差しで聖星を、いや、聖星を通して何かを見る。

 

「その時、僕は未来に生きるデュエリストと友達になった。

とても君に似ているデュエリストだよ」

 

自分に似ている人物、そして【スターダスト・ドラゴン】との戦い。

この2つの要素に聖星はすぐに彼の後姿が思い浮かんだ。

 

「貴方は、父と会ったことがあるんですか?」

 

「……そう。

君は遊星君の息子さんなんだね」

 

納得したかのように遊戯が微笑む。

これは聖星の言葉が正しい事を意味している。

遊星が過去に行った事があるという事実を知り、聖星はさらに困惑した。

幼い時ダークシグナーやイリアステルの事は聞いたが、まさか遊星が自分と一緒でタイムスリップを体験していたなど聞かされなかった。

 

「ワンダァフール!!

何という事でショウ!」

 

「え?」

 

横から聞こえたペガサスの声に思わずそちらに向く。

すると彼は子供のように純粋に瞳を輝かせ、聖星を見つめている。

 

「ユーは只者ではないと思っていましたが、未来人だったのデ~ス!

先程遊戯ボーイが使用したリリースという言葉を聞く限り、デュエルモンスターズは発展したのですネ!

一体どのように発展したのか気になりマ~ス!

このデュエルの後、是非聞かせてくだサ~イ!!」

 

一気にテンションが上がり、一方的に喋るペガサス。

どう返せば良いのかよく分からないが、彼は自分の立場を疑わず信じてくれたので安心した。

普通なら遊戯の言葉をバカにするか否定するだろう。

随分と器が大きい人だと思いながら小さく頷く。

 

「ねぇ、どうして聖星君はこの時代にいるの?

もしかして……

未来で何かあったの?」

 

「え?」

 

真剣な声で尋ねられた言葉に思わず素っ頓狂な声を出してしまう。

遊戯と遊星が出会ったとき、それはペガサスが殺され歴史が変わるという一大事だった。

その時ともに戦った遊星の息子が未来から来たのだ。

もしかすると、と考えてしまう。

遊戯の気持ちを一切知らない聖星は不思議そうな顔を浮かべた。

 

「何か……?

特に何もありませんよ」

 

「世界の滅亡も?

遊星君に何か危機が迫っているわけでもないの?」

 

「え?

どうして世界の滅亡が出てくるんですか?」

 

「…………詳しい事はデュエルが終わった後に話すよ。

今はこのデュエルを楽しもう」

 

「あ、はい」

 

先程までの探るような雰囲気はなくなり、遊戯は微笑んだ。

少しだけ気になるが後で説明してくれるのなら今聞く必要はない。

聖星は遊戯の手札を見る。

 

「僕は手札から【浅すぎた墓穴】を発動!

互いに墓地からモンスターを1体、守備表示で特殊召喚する。

僕は【沈黙の剣士】を守備表示で特殊召喚!」

 

「俺は【魔導皇士アンプール】を守備表示で特殊召喚します」

 

遊戯が魔法カードを発動すると2人の場に亀裂が走る。

そこから互いのモンスターが特殊召喚され、【沈黙の剣士】は地面に剣を突き刺し膝をついた。

それに対し【アンプール】は王座に座る。

 

「さらに手札から魔法カード【死者蘇生】を発動!

現れよ、【沈黙の魔術師】!」

 

「はっ!」

 

黄色い光の中から現れたのは黒の女魔術師。

レベルが下がっているためまだ幼い姿で遊戯の前に立つ。

進化する能力を持つ白の剣士と黒の魔術師が揃い、遊戯が何をしようとしているのか考える。

 

「聖星君」

 

「はい」

 

「僕のデッキにも【トールモンド】によく似たモンスターがいるんだ。

君にその子を見せてあげるよ」

 

「え?」

 

【トールモンド】に似ているモンスター。

今と先程の状況を思い出しこれから召喚されるモンスターの効果を考えた。

 

「僕は【沈黙の魔術師】と【沈黙の剣士】を生贄に捧げ……」

 

幼い2人は暗い歪みの中に吸い込まれていく。

一瞬で消えたモンスターは歪みの中で合わさり、新たな影が歪みの中で動き回る。

それは人の姿ではなく何かの生き物の影だ。

漆黒の歪みはそのモンスターを召喚するため大きく開き、中から赤い宝石を無数につけた巨大なドラゴンが現れる。

 

「【破壊竜ガンドラ】を生贄召喚!」

 

「グワァアアアアアアア!!!」

 

「っ……!」

 

召喚された【ガンドラ】は大きく口を開き、遊戯のために戦えるのが嬉しいのか体が震えるほどの咆哮を上げる。

逞しい肉体に美しい宝石が身につけられた姿は美しさではなく、どこか畏怖を覚えるような威厳がある。

【ガンドラ】は敵である【トールモンド】と【アンプール】、聖星の伏せカードを見下ろした。

 

「【破壊竜ガンドラ】、デストロイ・ギガ・レイズ!!」

 

遊戯の言葉に【ガンドラ】は巨大な尾を振り回し、翼を羽ばたかせる。

空中に浮かびあがり全てを見下ろすと漆黒の皮膚に埋め込まれた赤い宝石が1つ1つ輝き始める。

 

「グワァアアアアアアア!!!」

 

宝石全てからその輝きは放たれ、流星群のように聖星の場に降り注ぐ。

轟音と共に次々と繰り出される光は【トールモンド】と【アンプール】だけではなく、聖星のカードまで貫いた。

 

「そんな……」

 

フィールドに残されたのは数多の羽と無残な姿になった玉座。

先程まで自分を守っていたモンスター達の遺したものしかその場にはなかった。

だがそれもすぐに消えてしまう。

 

「【破壊竜ガンドラ】はライフを半分払う事でこのカード以外を全て除外する。

そして【ガンドラ】の攻撃力は除外した枚数の数×300ポイント。

今、【ガンドラ】が除外したのは聖星君の場の4枚。

よって攻撃力は1200.」

 

「俺のライフは200……

俺の負けですね」

 

デュエルディスクに表示されている数値を見て聖星は笑い、自分に言い聞かせるように呟いた。

手も足も出なかったといえば良いのだろう。

まともにライフを削られた気がしない。

【アンプール】でモンスターを奪っても、その一手先を読まれていた。

【トールモンド】で一掃しても今度は逆に一掃された。

このデッキで全力を出して負けたのだ。

 

「(もし、あっちのデッキだったらどんな展開になってたんだろうな)」

 

【魔導書の神判】を使っていたら、もっと優位に進めていただろうか。

もしもの可能性を考えながら、聖星は遊戯を見る。

視線が交わると遊戯は戦士の顔をし高らかに宣言する。

 

「行け、【ガンドラ】!

デストロイ・ギガ・レイズ!!」

 

場を破壊しつくした絶対なる破壊竜は赤い眼を一瞬だけ輝かせる。

それに連動するよう宝石も再び赤く光り、【ガンドラ】は逞しい腕を広げる。

【ガンドラ】を中心に再び放たれた光は全て聖星に向かっていった。

 

「うわぁああ!!!」

 

赤い光に包まれていくなか、ライフポイントが0へとカウントされた。

激しい破壊音と無機質な計算音が聞こえなくなるとデュエル特有の雰囲気はなくなり、【ガンドラ】が姿を消していく。

その光景を見守り、何もなくなったのを確認した聖星は遊戯に目を向けた。

 

「ありがとうございます、遊戯さん!

俺、このデュエル凄く楽しかったです!

遊戯さんのモンスター達も見れましたし、遊戯さんの戦術も見れた。

負けたのは悔しかったですけど……

でも楽しかったです!!」

 

「うん。

僕も君の魔法使い達と本気で戦えて楽しかったよ。

でも、次は全力の君と戦いたいな」

 

「え?」

 

「だってさっきの君、顔にそう書いてあったよ」

 

クスクスと笑う遊戯の言葉に聖星はぽかん、と口を開ける。

カイザーの時も思ったが、やはり実力者は相手が全力のデッキで戦っているのかいないのか分かるのか。

やはり武藤遊戯は凄いと感動しながら聖星は強く頷いた。

 

「それで、遊戯さん……

さっき父さんが遊戯さんの時代に来たって話なんですけど」

 

「うん、本当の事だよ。

ちょっと長い話になるけど、聞く?」

 

「はい」

 

目を細めた遊戯は聖星から空へと視線を移し、数年前のあの日を思い出した。

祖父と共に見に行ったデュエルイベント。

楽しい日になるはずだったのに、突然現れたドラゴン達の手によって破壊活動が行われた。

しかしいつの間にか時間を遡り、遊星、そしてもう1人の青年と共に悲劇を繰り返さないため共に戦った。

 

「その時遊星君はパラドックスに【スターダスト・ドラゴン】を奪われ、僕達の前に敵として立ちふさがったんだ」

 

「……【スターダスト】が?」

 

守りを司る純白のドラゴン。

父と共にフィールドを駆け抜ける【スターダスト】が、いくら敵の手に渡ったとはいえ、多くの人々の命を奪ったという事実に聖星の声は震えていた。

どのモンスターよりも破壊が似合わない【スターダスト】の姿に遊星はさぞかし怒り狂っただろう。

 

「オ~、ノ~……

あの時の大会はとても胸騒ぎがしたのデ~ス。

まさかそんな事が起こっていたとはアンビリ~バボ~。

遊戯ボーイも酷い人デ~ス。

そんな大事な事があったのを何故私に教えてくれなかったのですカ?」

 

「ごめん、ごめん。

だってペガサス、子供達に囲まれていて話しかけるタイミングがなかったし」

 

「そうですカ……

ところで聖星ボーイ、遊戯ボーイ。

先程ユー達の会話で出てくるシンクロ召喚とは一体何の事でショ~カ?」

 

「聖星君、説明を頼めるかな?」

 

「はい。

シンクロ召喚とはチューナーモンスターと、非チューナーモンスターのレベルを合計し、それと同じレベルを持つシンクロモンスターをエクストラデッキ……

あ、この時代じゃ融合デッキですね。

そこから特殊召喚する方法です」

 

ペガサスは聖星の言葉を一文字一句聞き逃さないよう真剣な顔で聞いている。

流石はデュエルモンスターズの創始者なのか、その顔は先程までとは違い鋭い。

だがどこか子供のような純粋さを含んでいる。

口で説明した聖星は本物があった方が分かりやすいだろうと思い、ポケットから1枚のカードを取り出す。

 

「これがシンクロモンスターです」

 

「ホワット!?

何と美しいカードデ~ス!

これがシンクロモンスター、ビューティフゥル!!」

 

ペガサスに差し出したのは【星態龍】のカード。

今、聖星が持っているシンクロモンスターといえば彼しかいない。

自分自身をペガサスに持たれた【星態龍】は聖星の肩に現れ、まじまじと自分を見るペガサスを複雑そうな顔で見ている。

 

「……聖星。

別のカードを出すから早く私のカードを戻してくれ。

あんな子供のような目で見られるのはどうも居心地が悪い……」

 

「(照れるなって)」

 

「照れてなどいない」

 

すぐに否定した【星態龍】は自分の周りを光らせ、聖星のポケットに勝手に何枚かのカードを入れる。

どうやら本気でペガサスから離れたいようだ。

まぁ、あんなに見られたら居心地が悪くなるのも当然か。

しょうがないなぁと思ってカードを取り出そうとすると、ペガサスに手を握られる。

 

「聖星ボーイ!」

 

「はい?」

 

「やはりユーはあの赤い竜が言っていた通り、デュエルモンスターズの未来を切り開いてくれるボーイデ~ス!

是非っ、シンクロ召喚の開発のため我が社に協力して欲しいのデ~ス!!」

 

「え?

俺がですか?」

 

「イエ~ス!

まだミーはシンクロ召喚を全て理解はしていまセ~ン。

バット、ユーはそれを理解していマ~ス。

シンクロ召喚の開発には、誰よりも理解している聖星ボーイの力が必要デ~ス。

ですから~、是非協力してくだサ~イ!」

 

そういえば、赤き竜は自分がデュエルモンスターズの可能性を切り開く存在だとペガサスに予言していた。

自分のような平凡な学生がそんな大きなプロジェクトに関わっても大丈夫なのだろうか、という心配はある。

しかしペガサスの言う通りこの時代でシンクロ召喚の1番の理解者は聖星だ。

覚悟を決めた聖星はペガサスを見上げる。

 

「俺でよろしければ、是非協力させてください」

 

END

 

 




Q何故【浅すぎた墓穴】で表側守備表示で特殊召喚したし
AアニメでレベッカVSレオンでは表側守備表示だったから…


【呪符竜】を使ってほしいという要望があり、なんとか入らないかなぁと試行錯誤を繰り返したのですが…
こんな結果になってしまいました(´・ω・`)
申し訳ございません…


最近ARC-VでLDS組が熱いです。
特に真澄ちゃんがストライクゾーン。
アニメで北斗君をいじる姿に、是非聖星の嫁にっ!!!となってしまった。
いや、別に聖星は遊星のようにドMじゃないしっ…!
ただ真澄ちゃんの皮肉を笑顔で受け流す聖星を書きたいだけだし。
だが恋愛描写なんて私には無理だorz


あと、今は幻竜族という種族が存在します。
聖星は未来で使っていたデッキを【ジャンク竜星】にしたいんです。
本編から数十年たっている、っていう設定なので新たに種族使いされてもおかしくないかなぁと。


さて次回はどうしようか。
ついうっかりエクシーズ召喚の事も話すか、それとも黙ったままにするか。


ちなみに題名は【トールモンド】の全体破壊効果イメージです。
別に【トールモンド】は神じゃないけど。

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