「というわけなので、聖星ボーイは我がインダストリアルイリュージョン社のシンクロ召喚専門のアドバイザーになったのデ~ス」
「どういう事だペガサス」
「その言葉の通りデ~ス。
ですから~、海馬ボーイは聖星ボーイから手を引いてくだサ~イ」
広い一室で交わされる男性達の言葉。
デュエルモンスターズの創始者と伝説のデュエリスト達。
自分の周りにいるデュエリストの事を再度確認した聖星は、本当に自分は凄いところにいるのだと改めて思った。
本来なら目立たずこの時代から去るつもりだったのに、シンクロ召喚を開発、発展させるアドバイザーになってしまった。
「う~ん、あの調子じゃもう暫くかかりそうかな」
「俺が直接海馬さんと話さなくて大丈夫なんですか?」
「別に平気だよ。
こういうのはペガサスの方が得意だし。
あ、もしかして聖星君交渉とか得意?」
「いえ、得意ではありません」
明らかに不機嫌な表情となっている海馬と、その海馬と笑顔で言葉を交わすペガサス。
いくら命がけのデュエルを何度も体験している聖星といえども、あの中へ飛び込む勇気などなかった。
「聖星君。
【青眼の白龍】の関連カードとか未来ではない?」
「関連カードですか?」
「うん。
知ってる限りで良いんだ」
どうしてここで【青眼の白龍】が出てくるのだろう。
海馬の相棒が【青眼の白龍】というのは分かっているが、ここでその関連カードをだしてどうしようというのだ。
あれか、もしかしてそれを使って交渉するのだろうか。
聖星はどうしようかと思いながら【星態竜】を見上げる。
「現物があったほうが良いのなら出すが」
「(じゃあ頼む)」
聖星が暮らしていた時代でも確かに【青眼の白龍】のサポートカードは何枚かあった。
遊馬達の世界でも【青眼の白龍】を模したエクシーズモンスターだって存在し、初めて見た時は驚いたものだ。
内ポケットにカードが現れたのを感じた聖星はそのカードを取り出す。
「直接的なサポートカードでしたらチューナーモンスターになりますけど、この2枚があります」
「【伝説の白石】に【青き眼の乙女】?
2枚ともレベル1チューナーなんだ。
効果は…………」
聖星から2枚のカードを受け取った遊戯はテキストをじっくり読む。
短い文章の【伝説の白石】はすぐに読み終え、次は【青き眼の乙女】に目をやった。
そして【青眼の白龍】を特殊召喚する効果に遊戯は海馬を見た。
「うん。
海馬君に見せたらすぐに大金を用意してでも欲しがるだろうね」
相変わらずにこにこと笑っている遊戯は聖星に2枚のカードを返し、時計を見る。
時刻はすでに9時を回っている。
「不動聖星!」
「あ、はい?」
遊戯にカードを返してもらった聖星は突然自分の名前を呼ばれ、思わず海馬を見た。
顔を向ければ修羅と見間違えるほど険しい表情を浮かべた海馬と視線が合う。
射殺されるのではないだろうかと思ってしまうほど鋭い眼差しだが、こんなもの本気で殺しにかかってきた七皇に比べたらまだマシである。
「貴様、俺からの誘いは断っておきながらペガサスの誘いには乗るだと?
どういう事だ?
それなりの考えはあるのだろうな?」
海馬はとてもプライドが高い。
それは自分が持っている財力、権力、思考能力、営業者としての腕が高い事を自覚しているからだ。
その自分の誘いを断る事など、普通ならありえない。
それもデュエリストなら尚更だ。
海馬の言葉に聖星は少し困った表情を浮かべ同じことを繰り返す。
「先程お話しした通り、俺は未来からの人間です。
その自分が関わり、歴史に狂いが生じてしまうと未来が崩壊してしまいます。
海馬さんのお誘いは本当に嬉しいのですが、俺のデュエルモンスターズ以外の知識、特に技術面は未来を狂わせる可能性が最も高いのです。
ですから申し訳ございませんが、俺は海馬さんの会社で働く事は出来ません」
「未来の崩壊だと?
それがどうしたというのだ。
そんなもの、俺のロードには関係のない事だ」
いや、海馬には関係なくとも未来人の聖星にはとても関係のある事だ。
海馬のはっきりとした主張に聖星は頭を抱えたくなった。
【星態龍】もいい加減この空気に耐え切れなくなったのか、聖星に提案する。
「聖星。
その2枚をこの男に譲ったらどうだ?
武藤遊戯の話が本当だと、この男にとってその2枚はお前の技術以上の価値があるかもしれん」
「(でもさ、この時代にはないカードだぜ。
別に普通のカードなら渡すけど、こいつらはチューナーだ。
まだ正式に製作案すら出ていないシンクロモンスター関連のカードを渡すのは気が引けるんだけど)」
「だがペガサス、そして未来の事を考えるとシンクロ召喚はいずれ世に放たれる。
その時のため、サンプルとして何枚かのチューナーとシンクロモンスターは必要だろう。
何もないところから作るより、完成品がある方がこいつらにとっても助かると思うが」
完成品の存在。
確かに0から作るより、見本がある方がある程度参考になり大いに助かる。
デュエルディスクのデータ読み込み、ソリッドビジョンへの対応。
メモリーチップの埋め込みなど。
山積みとなっている様々な問題が、聖星が持つカード1枚で解決する可能性があるのだ。
そう考えると良い交渉材料だろう。
聖星はソファから立ち上がり、海馬に2枚のカードを差し出す。
「何だ、この弱小カードは」
「(弱小って……)
未来で開発された【青眼の白龍】のサポートカードです」
「何?」
自分の魂と呼べるカードのサポートカードという事で、海馬はさっそく2枚のカードのテキストを読み始める。
海馬の目が【青き眼の乙女】を見た時止まったが、彼は表情を変えずに読み続けた。
読み終えた海馬はこの2枚を己のデッキに組み込んだとき、どのような戦術が出来るのかすぐに考える。
「成程、この2枚を俺に差し出す代わりに貴様から手を引けという事か」
「はい」
「良いだろう、と言いたいところだが無理な話だな」
「え?」
「単純な話だ。
今現在、我が社が開発しているデュエルディスクではシンクロ召喚に対応する事が出来ない。
そのようなプログラムなど組んでいないからな。
だからシンクロ召喚の開発を進めるという事は、そのカードを読み込めるようデュエルディスクも改良しなければならない」
「……その時、俺の知識が必要になる。
という事ですか?」
「そういう事だ。
どの道貴様は海馬コーポレーションに手を貸さなければならん、という事だ」
確かに海馬のいう事は一理ある。
今聖星が使っているデュエルディスクも、いざという時の為にシンクロ召喚、エクシーズ召喚に対応するようプログラムを書き換えている。
だが海馬達にはその方法が分からない。
シンクロ召喚の開発に成功しても、デュエルディスクの開発が出来なければシンクロモンスターの普及など夢のまた夢だろう。
「では聖星ボーイは我が社のシンクロ開発のアドバイザー。
そして海馬コーポレーションのデュエルディスク開発アドバイザーというのはどうでショウ」
「それが妥当ですね……」
「ふん。
今回はこの2枚、そして【ブルーアイズ】のシンクロモンスターを俺に譲る事に免じてそれだけにしておこう」
そう言った海馬は【伝説の白石】と【青き眼の乙女】をデッキケースの中にしまった。
だが聖星は彼の言葉に怪訝そうな表情を浮かべた。
「【ブルーアイズ】の……?
え、どういう意味でしょうか?」
「どういう意味、だと?
この2枚は【ブルーアイズ】のサポートカードであるのと同時にチューナーモンスターだ。
【ブルーアイズ】のシンクロモンスターが存在すると考えるのが普通だろう」
海馬の中で【青眼の白龍】は絶対的なる存在。
そのサポートカードにチューナーという文字があるのなら、【青眼の白龍】とシンクロして召喚されるモンスターが存在する。
そう考えるのは別におかしくはなかった。
聖星は【星態龍】に目をやり、小さく頷いた。
そして懐から1枚のシンクロモンスターを差し出す。
「確かに【青眼の白龍】を模したシンクロモンスターは存在します。
ですがこれは【ブルーアイズ】専用のシンクロモンスターではありません。
モンスター効果は【ブルーアイズ】のサポートには良いかもしれませんが……」
「……美しい」
聖星が出したカードに海馬は今までの中で最も目を輝かせ、聖星にしか聞こえない程度の声で呟いた。
そこに描かれているのは【ブルーアイズ】の面影を残す銀色のドラゴン。
気高く雄々しい姿に海馬は笑みを浮かべた。
「デュエルディスクの開発についてはまた後日追って連絡する。
その時はアカデミアにいようが貴様に本土に帰ってきてもらう」
「ちゃんと公欠扱いですよね?」
「当然だ。
なんなら今すぐ鮫島と話をつけて卒業扱いにしても構わんぞ。
ただし俺に協力するのならな」
「それはお断りします。
今の学園生活は気に入っているので」
別に【星態龍】の力が回復するまで海馬コーポレーションとインダストリアルイリュージョン社で働くのも面白そうだが、聖星だってまだ友人と遊びたい年頃だ。
十代や取巻、皆とバカな事をやって過ごしたい。
はっきりと言い切った聖星に海馬は「フン」とだけ返した。
そんな会話を聞きながら遊戯は、シンクロ召喚の開発のため聖星はアメリカに行く事になるのだろうか?と考えた。
「では聖星ボーイ、日本の諺には善は急げ、というものがありマ~ス!
ですから~、今すぐ私と一緒にアメリカに来てくだサ~イ!」
「え?」
「(やっぱりね)」
**
それから冬休みの期間、聖星はゆっくり過ごせた気がしなかった。
パスポートは当然偽造し、アメリカに渡った聖星は毎日ペガサスと一緒にシンクロ召喚の書類を作成した。
時にはペガサスミニオンの月行や夜行とテストデュエルをし、充実だったがゆっくりできなかった。
しかし楽しかったのは事実なので良い思い出が出来たと思う。
「で、結局海馬さんの誘いは蹴ったのかよ?」
「う~ん、蹴ったっていうのか?」
「はぁ?」
冬休みを終え、アカデミアが始まった初日。
イエロー寮にいた聖星は当然の如く十代と取巻の2人につかまり、十代のお気に入りの場所である木の下で座っている。
樺山先生に作ってもらったカレー弁当を食べながら簡単に話した。
「海馬コーポレーションに就職するっていう話は断ったけど、デュエルディスクの新しいプログラムを開発する事にはなったんだ。
もちろん、それ相応の報酬は貰うけど」
「嘘だろ!?
断ったのか!?」
「あ~、やっぱり聖星、あの話蹴っちまったのか」
「俺ならすぐに喜んで書類にサインするのに……
不動、お前10年後後悔するぞ」
取巻の言葉に苦笑を零すしかできない聖星。
もし自分がこの時代の人間なら、多少悩み結局は頷いていただろう。
それだけ海馬コーポレーションが魅力なのだ。
どうせ勧誘されるなら未来でされたかったと思いながらカレーを食べる。
すると見慣れた少年がこちらに近づいてきた。
「聖星。
それに十代、取巻も一緒か」
「あれ、大地?」
「どうした三沢?」
現れたのはイエローで一緒に食事をする三沢。
確か今日は新しい数式を思いついた!と言って部屋に籠っていたはずだ。
新学期早々部屋の壁を数式だらけにする友人に苦笑を零したのもまだ記憶に新しい。
「あぁ。
聖星を探していたんだ」
「俺?」
「あぁ」
三沢からの言葉に首をかしげると、三沢と一緒に来た少年が前に出る。
知り合いの聖星はその少年の名前を呼ぼうとしたが、それより先に少年が行動を起こした。
「頼む、不動!
俺にデッキを組む極意を教えてくれ!」
「は?」
いきなり頭を下げられ、なんだかデジャヴと思った聖星。
三沢と一緒にこの場所に来たのは同級生の神楽坂だ。
あいさつを交わす程度の仲、さらに細かく言えば苦手な部類の彼に何故頭を下げられなければならない。
それにデッキを組む極意とは何だ。
困った聖星達は助けを求めるよう三沢に目をやる。
「彼は神楽坂。
俺達と同じイエロー寮の生徒だ。
十代と取巻は初対面だと思うが……
神楽坂がどんなデッキを組むか聖星は知っているだろう?」
「あぁ。
確かコピーデッキだっけ」
「コピーデッキ?」
コピーデッキとはその名の通りとあるデッキのレシピを模倣して構築したもの。
当然同じ構築になるのだから回し方は大体同じになってしまう。
まぁ、同じデッキでもデュエリストによっては違うプレイングを見せてくれる場合もあるのである意味面白いデッキだ。
「情けない話だが俺は強いデッキを組もうと思えば何故か無意識のうちに誰かのデッキに似てしまう。
そしてそのデッキでデュエルすると勝率がいまいちなんだ。
いや、連敗と言ってもいい」
「無意識に?
そんなのってあるのか?」
神楽坂をあまり知らない十代は怪訝そうな表情を浮かべてしまう。
自分の好みのデッキに構築してしまうならわかるが、誰かのデッキに似るなど聞いた事もない。
当然の疑問に三沢が答える。
「神楽坂は記憶力が良すぎるんだ。
そして研究熱心な性格も災いしてか、無意識のうちに名高いデュエリストのデッキを組んでしまう」
「へぇ~、なんか面白そうだな」
「面白いだと!?
さっき連敗だって言っただろ!」
「うわ、わりぃ」
「で、コピーデッキって今まで誰のデッキを組んできたんだ?」
真剣に組んでいるのに負けてしまう。
傍から見れば神楽坂の性質は面白そうだが、本人からしてみれば勝てなければ意味がないのであまり良くない。
癇に障ったとでもいうように怒鳴る神楽坂だが取巻の言葉に自分の記憶を呼び起こした。
「クロノス教諭に城之内克也、インセクター羽蛾、ダイナソー竜崎に……」
次々と上がる有名人の名前に皆はそれぞれのデッキを想像する。
どれもこれも大会で高評価を得ているデュエリスト、そしてクロノス教諭は実技担当教師であるため高いプレイングを要するデッキの使用者である。
「だが不動。
お前は1つのカテゴリに縛り、様々なデッキを作っては勝っている。
だから頼む。
デッキを組む極意を教えてくれ!」
「いや、そんな事言われても……」
再び頭を下げられ、聖星は言葉に詰まる。
別にデッキを組むなんて、その時使いたいカードを決め、それに【魔導書】を組み込んでいるという実に単純な作業だ。
神楽坂がいう極意など聖星は持っていない。
「う~ん、神楽坂ってさ、そのデッキを組んで、何度か回してる?」
「回す?」
「例えどんな強いデッキで、効果を記憶していてもすぐに扱えるわけじゃない。
……まぁ、稀に例外もいるけどさ。
どのタイミングでどのカードを発動するかなんて、実際にデッキを動かさないと分からないだろ」
「それなら何度もやった!
何度もやって、その時に最適なプレイングをしている!」
「じゃあ慣れてないから負ける、ってわけじゃないのか」
聖星だってテストデュエルで勝っているが、最初からそのデッキを完璧に扱えたわけじゃない。
ある程度扱い方を分かっているカードを組み合わせ、十代や翔、明日香達と試しにデュエルをしてプレイングを覚えた。
時にはあまりに回らず、連敗記録を更新したことだってあった。
神楽坂は負けてすぐに別のデッキを構築し、慣れないままデュエルしたのかと思ったが違うようだ。
どうしようか、と考えていると聖星はある事に思い至った。
「じゃあさ、いっその事神楽坂が知らないカードでデッキを組んでみるか?」
「は?」
「だってさ、神楽坂が誰かに似たデッキを組むのは、そのデッキレシピを覚えているからだろ。
だったら、名前も効果も知らない初めて見るカードでデッキを組んだらどうだ?
それならコピーデッキにならないし、神楽坂に何が足らないのか分かるかもしれないだろう?」
神楽坂は記憶力もよく、頭も良い。
実技の成績はお世辞にも良いとはいえないが、筆記や理論だったら自分や三沢と張り合えるくらい凄いのだ。
だからその記憶力、理論、理解力を駆使し、全く知らないカードでデッキを組めば何か分かるかもしれない。
そう提案したが神楽坂は戸惑い気味だ。
「だ、だが、俺の知らないカードなんてそうあるわけがない。
俺が研究熱心なのはお前も知っているだろ?」
「大丈夫だって、俺、神楽坂や大地、先生も知らないカード沢山持ってるからさ」
「え?」
楽しく微笑みながら言う聖星に三沢と神楽坂は怪訝そうな表情を浮かべる。
そして聖星の持っているカードを見た事がある十代と取巻は互いに目を合わせ、小さく頷いた。
**
「何だ、この量のカードは!?」
あれから昼食を食べ終え、皆は聖星の部屋に移動した。
部屋についた聖星はベッドの下からトランクケースを1つ取り出し、その中身を皆に見せた。
そこには未来で発売されたカード、遊馬達の世界で手に入れたカード、そして【星態龍】が出してくれたカードがある。
三沢と神楽坂はそのカードを手に取り、1枚1枚穴が開くくらい見つめた。
「何てカードの数なんだ。
それにどれもこれも俺が知らないカードばかり……
聖星、どこでこんなカードを?」
「以前住んでいたカードショップでね。
安かったから大量購入したんだ」
「そうか」
ちなみにここにあるカードの一部はペガサスが近々こっそり流通させる予定のものもある。
ペガサスはシンクロモンスター以外のカードにも興味を持ち、一部を見せたのだ。
「やっぱ聖星が持ってるカードってすげぇな。
見てるだけでワクワクしてくるぜ!
なぁ、取巻!」
「何で俺に言うんだよ」
改めて見てもこのカードの量には圧倒され、十代は目を輝かせる。
聖星がここにあるカードを使う事がないというのが残念だが、やはりあまり見ないカードと対面するのはとても心が躍る。
相変わらずの十代に聖星は微笑み、神楽坂に向き直った。
「じゃあ神楽坂。
俺とゲームしよう」
「ゲーム?」
「まず、君はこのカードの中から1つデッキを作る。
デッキを作るって言っても、魔法・罠カードは自分のカードを使っても良いぜ。
けど最低限モンスターカードはこのトランク内のものしか使っちゃ駄目だ」
「どうして魔法・罠は俺のカードでも良いんだ?」
「全部知らないカードで組んだ方が1番効果は良いと思うけど、それじゃあ【死者蘇生】、【大嵐】、【ミラフォ】が使えないから少し不便だろ」
なんたって【強欲な壺】や【死者蘇生】は今のデュエリストのデッキでは必須に近いカードだ。
特に【強欲な壺】など、デッキに入っていなければデッキとは呼ばないと世間一般で言われている。
それにデッキに投入する魔法・罠カードは汎用性の高いものを除けば、デッキに組み込むモンスターカード等に対応する物が多くなる。
「それが前準備。
次にゲームの説明。
その組んだデッキで、デッキに入れた俺のカードと同じ枚数分デュエルする。
それでデュエルに勝ったら、デッキの中から1枚神楽坂に譲る。
負けたら負けた回数分、十代のテスト勉強を手伝う」
「はぁ!?
何でそれで俺が出てくるんだよ!?」
「この数か月で学んだけど、俺1人じゃ十代の赤点は避けきれても平均点は無理だ。
十代だけじゃなくて翔と隼人、俺自身の勉強もあるし……
それに神楽坂は俺より頭良いから良い助っ人だと思うぜ」
仮に聖星のカードでデッキをくみ上げても、それはあくまで聖星のカードである。
いつか聖星に返さなければならない。
流石の聖星もデッキ丸ごと神楽坂に譲るのは抵抗があるので、このようなゲームの報酬として渡すことにした。
「だが不動。
組んでいきなりゲーム開始は酷くないか?」
「取巻の言う通りだ。
知らないカードばかりで組んだデッキは扱いが難しい。
最初は負けてもおかしくない」
「分かってるって、取巻、大地。
ゲームの対戦相手は俺、十代、取巻、大地を除いた生徒が対象だ。
俺達4人は神楽坂がデッキに慣れるための練習相手。
勿論、もう慣れたって自信がついたら俺達4人をゲームの対戦相手に変更しても良い。
それでどうだ?」
神楽坂。
そう聖星が問いかけると神楽坂は顔を下に向ける。
そしてゆっくりと口を開いた。
「確かに知らないカードでデッキを組めば、コピーデッキではない俺だけのデッキを作る事が出来る……
だが、それで強いデッキを組めるのか?」
「組める、組めないかはやってみないと分からないだろう」
というより、このカードの枚数でデッキが組めない方がおかしい。
一応シンクロやエクシーズには頼らない、関連性がないカードばかりを【星態龍】に出してもらった。
強いか弱いかは神楽坂のプレイング技術、知識次第だ。
運も必要となってくる場合もあるが、運をあまり必要としないデッキだって組もうと思えば組める。
聖星の言葉に神楽坂は頷き、トランクケースにあるカードに向き合った。
「よし、まずはカードの効果を全部覚えてやる!」
「何か面白そうだな。
俺もデッキ組むの手伝うぜ、神楽坂!」
「俺もだ。
それにこのカード達を一通り見てみたいしな」
「本当、不動ってどうやってこんなにカードを手に入れているんだか……」
神楽坂がカードを手に取るのと同じように、十代達も聖星のカードを見る。
このカードはあのコンボに使える、あのカードと合わせたら逆転できる。
口々に自分の考えを出しながら皆は神楽坂のデッキ構築を進めていった。
「よし、一先ず完成したぜ!」
「やったな、神楽坂」
「あぁ!」
昼から構築を始めたというのに、外はすっかり暗くなっている。
それほどデッキ構築が難航したのだ。
元々神楽坂は誰かのデッキを真似て構築していたので、0から構築するというのが苦手だった。
何を軸にするのかが決まらずそれだけで2時間近くは時間を費やした。
「じゃあ、まずはテストデュエルだな」
「はいはいは~い!
だったら俺がやる~!」
十代は大きく手を上げ、自分自身を指さした。
真っ先に名乗り上げるなど十代らしいが聖星は微笑みながら告げる。
「十代。
悪いけど、それは明日だ。
もう夜だし、門限が近いぜ」
「えぇ~!?
マジかよぉ!?
折角あのデッキと戦えると思ったのに…………
神楽坂!
明日、朝一番にお前にデュエルを申し込むからな!」
「あぁ、来い、遊城十代!」
初めて組んだ誰にも似ない、オリジナルのデッキ。
早く試したくて仕方がない神楽坂と、それの最初の対戦相手になりたい十代。
闘志を燃やす同級生を聖星は微笑みながら見つめる。
そして今回カードに関して協力してくれた【星態龍】はため息をついた。
「聖星。
いくらペガサスがお前のカードを世に放っても良いと言っても、流石にこれは……」
「(…………うん、俺もやりすぎたとは思う。
でもコピーデッキしか組めない神楽坂が知らないカードでデッキを組むと、どんなデッキが出来るのか興味が出てね)」
「そうか……」
END
デュエル無いんかい!!!
すみません、まだ神楽坂のデッキが頭の中でまとまっていなくて……
カイザーは真剣に考えたデッキだから、デッキは応えてくれると言っていたので、この方法で組ませれば神楽坂勝率上がるんじゃね?と思ったからです。
次回は十代と神楽坂のデュエルです!
執筆はデッキを決め次第するので、少し更新が遅くなるかもしれません!
では失礼いたしましたー!
……RAGING MASTERS買い損ねた。