取巻の【レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン】が盗まれた。
その連絡が来た聖星は十代を引っ張ってブルー寮の近くまで来た。
こちらに来る途中ブルーの生徒に睨まれ、絡まれて罵倒を浴びせられたが、今はそんなものに真面目にかまっている時間はない。
【星態龍】が自然発火現象がどうのこうのと言っていたような、と思いながらも聖星は走った。
「取巻!」
「遊城、不動……」
指定された場所に向かうと取巻がすぐに自分達を見つけ、ゆっくりと歩み寄ってくる。
近づけば近づくほど取巻の顔色が悪い事が分かり、2人は心配そうに声をかける。
「取巻、【レダメ】が盗まれたって本当なのか?」
「あぁ」
「一体何があったんだよ」
「見てくれよ、この写真」
気に入らなさそうにPDAを取り出した取巻。
彼はそれを操作してとある画面を2人に見せた。
「なっ……!?」
「酷いな……」
画面に映ったのは自分達の部屋より広い取巻の部屋。
あまり物が置かれていない質素な部屋だが、机の引き出しは全て出され、中に入っていたと思われる物が床に散乱している。
さらには机の上も荒らしたのか教科書やノートまでも散らばっている。
一瞬で何が起こったのか分かる画像に取巻は頭を抱えながら説明する。
「朝飯を食べて戻ってきたらこうだった。
鍵は壊されていて、すぐにデッキと貴重品を確認したら【レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン】だけが抜き取られていた」
「他のカードは無事だったのか?」
「あぁ」
そう言って取り出されたのはデッキケース。
簡単に広げてもらったが、確かに取巻が使っているドラゴン族デッキだ。
何度もデュエルしたことのある2人は【レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン】以外のカードが無事である事に少しだけ安心した。
しかしこれは逆に言えば【レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン】が犯人の狙いという事になる。
「それで、犯人は?」
「クロノス教諭にすぐに伝えて、今探してもらっているところだ」
「けど悠長には待ってられないだろ。
授業だってあるしよ」
聖星の問いかけに取巻は答え、十代が尋ねる。
最近の取巻の戦術は素早く【レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン】を召喚し、手札や墓地に眠るドラゴン族を場に特殊召喚するものだ。
つまり【レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン】が核であり、それが存在しなければ展開力が落ちる事を意味する。
「取巻。
君の部屋ってブルー寮のどのあたり?」
「俺の部屋は1階だが…………
何をする気だ、不動?」
「何って……
セキュリティ会社から監視カメラ映像を手に入れて犯人を特定するだけだぜ」
それがどうかしたか?
さも当然のように言い放った聖星に取巻は開いた口が塞がらなかった。
それに対し十代は「流石聖星だぜ!」と自分の事でもないのに誇らしく言っている。
確かに聖星の技術力が高い事は取巻も知っている。
だが、今回の事は既に学園側に報告済みなので学園側がセキュリティ会社に要請しているはずだ。
それを今聖星が行って何の意味がある。
「カードっていうのは大きさから考えて隠そうと思えばどこにでも隠せるんだ。
それに【レダメ】程のレアカードだったら売り飛ばされる可能性だってあるし、早い方が良いだろ?」
「まぁ、それはそうだな……」
「じゃあもっと詳しい位置を教えてくれ」
PCを取り出した聖星はその場に座り、取巻の部屋の位置を尋ねる。
だいたいの位置を把握した聖星は早速ハッキングを開始した。
目にも止まらない速さでタイピングし、次々とファイアーウォールを突破していく。
「お~……
何が起きてるのかさっぱりわかんねぇけど、何度見てもすげぇな」
「ファイアーウォールってそう簡単に突破できるものなのか?」
「知識があれば簡単だぜ。
それにこういう技術は日進月歩。
突破するための技術なんてすぐに開発されるさ」
この時代では絶対に突破されないと過信されていても、聖星の、いや、遊星の時代の技術では簡単に突破できる。
先日の海馬コーポレーションのサイバー攻撃だってその進歩の結果だ。
すると画面に様々なアングルの映像が映し出された。
「お、出た」
「すげぇ、まだ5分もかかってないぜ」
「それで不動、俺の部屋の前のカメラはどれだ?」
「ちょっと待てって。
今探してるからさ」
次々と切り替わる映像をたった2つの目で見ながら、該当する監視カメラ映像を探していく。
「あれ?」
「ん?
どうした聖星?」
不意に指の動きを止めた聖星。
彼がタイピングを止めた事で映像の切り替わりも終わり、ずっと同じアングルの映像が流れる。
一体何があったのだろうと、全く機械に詳しくない十代が尋ねる。
取巻も聖星の言葉に怪訝そうな表情をしており、聖星を見下ろしている。
十代の問いかけに肝心の彼は一切返答せず、そのまま動きを止めた。
と思えばまたキーボードを探し、別の画面を表示させる。
そこには映像ではなく無数の数字が表示されている。
画面を下にスクロールしながらも別の窓を開いてはそこで作業をする。
「……どういう事だ?」
「聖星?」
「どうした不動。
まさか失敗したのか?」
「過去の記録を見ても……
じゃあこれは…………
……………………内部?
…………他のカメラは……」
「聖星?」
不思議そうな顔をしながら2人に聞こえるか聞こえないかの小声で勝手にしゃべり出す聖星。
その瞳はただ目の前のPC画面しか見ていなかった。
微笑みながら息をするかのようにハッキングを繰り返していた聖星の様子に十代は痺れを切らした。
「聖星!
俺達にもわかるように説明してくれよ!」
「あ、悪い」
「それで、どうしたんだ。
まさか失敗したとか?」
「いや、それはない。
けど映像がないんだ」
「え?」
「盗難が起きたのは今朝だろ?
だからその時間の映像を探したんだけど……
見てくれ」
指さされた部分に映っているのは取巻の部屋周辺を映しだしている映像。
日時は間違いなく今日である。
早送りで流れていく映像には取巻が部屋から出ていく姿が映し出され、彼の姿は早々と消えてしまった。
これ以降犯人が映っているだろうと思うが、次の瞬間取巻が戻って来た。
「は?」
「な……
どういう事だ?」
「時刻の表示を見てくれ」
「時刻?」
聖星が指差した部分には今日の日時が記録されている。
取巻が朝食のため部屋を出た時刻が7時15分なのに、彼の姿が消えたらすぐに7時58分になってしまった。
「え、じゃあ取巻のカードが盗まれる時間だけ映ってないって事かよ!?」
「そういう事。
他のブルー寮の監視カメラ映像やそのセキュリティ会社が担当している学校や会社の映像も調べてみたけどその時間帯だけ録画されてないんだ。
それでセキュリティ会社の記録を調べたらその時間帯、誰かがハッキングさせて機能を停止させている」
「じゃあ意図的って事か?」
「あぁ」
取巻の言葉に頷きながら聖星は口元に手をやる。
逆探知をしようと思ってももうハッキングは終わり、システムは正常に作動している。
いや、そもそもカードを1枚盗むためにここまでするのだろうか?
確かに【レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン】はレアカードで買い手によっては数百万いくだろう。
しかしいくらなんでも大がかりすぎる。
「(けど盗まれる時間帯とハッキングし、システムを乗っ取られている時間帯が一致している。
これは偶然?
そんなわけないよな。
だってあまりにも犯人には都合がいい)」
頭の中で自分の考えをまとめながらどうやって犯人を特定しようか考えた。
運よく犯人につながる痕跡が取巻の部屋にあれば良いのだが、ない場合はどうすればいい。
「(けど犯人が盗んだのは【レダメ】だ。
裏サイトを見ればもう出品されているかもしれない。
問題はそれが「取巻の【レダメ】」かこちら側では確認できない事。
そもそも【レダメ】の発売時期っていつだっけ?
まだ未発売なら確定なんだけど……
って、まだ未発売か。
ペガサスさん【レダメ】の事は知らなかったみたいだし。
っていう事は裏サイトに【レダメ】が出品されていたら確定しても大丈夫。
問題は…………)」
犯人がまだ出品していない、もしくはすでに売却済み。
売却済みなら海馬コーポレーションとインダストリアルイリュージョン社に手伝ってもらって取り戻す事が可能だ。
だが出品されなければ特定は難しい。
様々な可能性が脳裏をよぎるが1つ1つ潰していくことにした聖星はその裏サイトを探ろうとした。
「皆さん、こんなところで一体何をしているんだにゃ~?」
「だ、大徳寺先生!?」
「おっ、驚かさないでください」
背後から気配を一切感じさせず現れた大徳寺先生に十代と取巻は逃げ腰で文句を言う。
今の今まで犯罪行為を見ていたため、第三者の登場は心臓に悪い。
しかも相手は学園側の人間だ。
なんとか聖星を隠そうと振り返った2人の様子に大徳寺先生は首をかしげる。
「ごめんなさいなんだにゃ。
ところで聖星君、そんなにPCを大事そうに抱きかかえてどうかしたんですか?」
「背後からいきなり声をかけられて驚いただけです。
気にしないでください。
それより、大徳寺先生はどうしてこちらに?
授業ですか?」
「聖星君の言う通りですにゃ。
今から錬金術の授業です。
あ、ここで会ったのもついでですにゃ。
聖星君。
今日の授業が終わったら校長室に来てください。
お客さんがお見えになるそうですにゃ」
「お客さん?」
「何でもインダストリアルイリュージョン社の関係者だとか」
インダストリアルイリュージョン社からの客人。
一体誰だろうと聖星は首をひねる。
ペガサスは今アメリカでデュエル大会を主催し、それで多忙のはずだ。
いや、そもそも自分如きのためにペガサスが直接アカデミアに来るはずがない。
それならば誰だ、と考えたところで十代と取巻の驚きの声が聞こえる。
「インダストリアルイリュージョン社!?
聖星、お前海馬コーポレーションだけじゃなくてあのインダストリアルイリュージョン社とまで繋がりが出来たのかよ!?
なぁ、どんな繋がりだ?
教えてくれよ!」
「不動、まさか海馬コーポレーションを蹴ったのはインダストリアルイリュージョン社に就職が決まったからじゃないだろうな!?
どうなんだ、え!?」
「いや。
昨日話しただろ?
デュエルディスクのシステム開発で海馬コーポレーションに協力するって。
それが縁でインダストリアルイリュージョン社でも仕事を頼まれたんだよ」
「やっぱりお前すげぇな」
「……海馬コーポレーションにインダストリアルイリュージョン社。
これで不動がそのまま就職しましたって言われても俺は驚かないぞ」
「それはそうと、取巻君。
恐らく君も校長室に呼ばれると思うにゃ」
「…………はい」
聖星のインダストリアルイリュージョン社との繋がりで忘れていたが現状は全く変わっていないのだ。
監視カメラ映像が役に立たない以上、現場に残っている犯人の痕跡を頼りにするしかない。
それで犯人が特定され【レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン】が戻ってくれば良いのだが……
もし戻ってこなければデッキ構築を見直さなければならない。
「(だが俺の持っているカードだけで以前のような回転力は出せない。
出すとしたら新しいカードを手に入れないと……
だがそう都合よくカードが手に入るか?
…………不動がトレードしてくれそうな魔法使い族って、他に何があった?)」
大徳寺先生の言葉で現実に引き戻された取巻は顔色を変え、険しい表情を浮かべて黙ってしまった。
そんな取巻を励ますよう、十代は軽く肩をたたいた。
「よし、だったら俺は翔や隼人達と一緒にブルー寮の周りを調べてみるぜ。
時間はまだそんなに経ってない。
もしかすると何か犯人の痕跡が残ってるかもしれないしな」
「俺も探してみる。
時間帯が時間帯だし、目撃者がいるかもしれない。
大地にも連絡して協力してもらうよ。
皆にはろくな説明せずにこっちに来ちゃったし」
「……遊城、不動。
すまない」
**
「で、聖星。
お前は犯人をどう見ている?」
「とりあえず内部犯の可能性が高い。
理由はアカデミア全体のセキュリティ体制が向上し、外部から人が入りにくくなったから。
それとここ数日の島を出入りした人を記録したデータも見たけど、事件発覚の時点でアカデミア内に部外者はいなかった」
【星態龍】の言葉に聖星はすぐに返した。
十代を誘き出すために明日香を人質にとったあの事件。
あれが切っ掛けで倫理委員会等のセキュリティが杜撰だと発覚し、見直されて強化されたのだ。
だから外部の人間が平気でアカデミア内に侵入できるとは思えない。
「おい、聞いたか取巻の話」
小声で聞こえた誰かの声。
足を止めた聖星はそちらに顔を向ける。
見ると複数のブルーの生徒が集まっていた。
「あぁ。
あの【レッドアイズ】のカードを盗まれたんだって?」
「まぁ良いじゃねぇか。
盗まれたのはあいつのカードなんだ。
それにデッキの中にあったカードを盗まれたんだろう?
あいつの管理不足だろう」
「そうそう。
ブルーのくせにレッドに負けて、降格になりかけたらイエローの連中とつるみ始めて。
あげくはエースカードを盗まれるとか。
あいつブルーの自覚ないんじゃねぇの?」
「完璧ブルーの恥さらしだな。
【レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン】だっけ?
あんなレアカード、レッドに負ける取巻には不釣り合いだぜ。
盗んでくれた犯人には感謝しないとな」
廊下に響く生徒達の笑い声。
そういえば以前、取巻が三沢に陰で色々言われていると零していたような気がした。
自分達の輪から外れた取巻を貶す事が娯楽となりつつ彼らにとって、まさに食いつきやすい話題なのだろう。
耳障りだと言いたくなるような言葉に【星態龍】は顔を歪める。
瞬間、聖星が近くの壁を殴った。
「ヒッ!」
背後から聞こえた音にブルーの生徒達は情けない声をだし、慌てて振り返る。
彼らの視界に入った聖星は少しだけ顔を上げ、口元に弧を描く。
「お前は……」
「初めまして、取巻とデュエルで勝った元レッド寮の不動聖星だ」
優しく微笑みながら自己紹介をする聖星に彼らは何かを口にしようとする。
だがそんな事今の聖星が許すわけがなく、ただ聖星は微笑みながら喋り始めた。
「それにしてもさ、随分とおもしろい事言ってるよな。
管理が甘いっていうところは反論できないから置いておくけど。
犯人に感謝?
え、なにそれ?
人のものが盗まれているのによくそんな事平気で言えるよ。
こんな事を平然と言えるような奴があの丸藤先輩と同じブルーだなんて、ブルーの品ってやつも随分と落ちてるねぇ。
エリートとかそういう以前に人として終わってるよ。
うん、取巻が俺達側についたの嫌でも分かる、分かる」
「何だと、イエローのくせに勝手にごちゃごちゃと!」
「ふん。
たまたま這い上がれた落ちこぼれが俺達に意見するんじゃねぇよ!」
思った通りの返答。
今までの彼らの行動パターンを日常生活で嫌程知っている聖星はさらに優しく笑い、その顔とは似合わない低い声で言った。
「じゃあさ、デュエルしようぜ」
「はぁ!?
何でテメェなんかと!?」
「さっき言ったじゃないか。
ブルーのくせにレッドの俺ごときに負けたって。
それで馬鹿にしているって事は、君達、取巻より強いんだろう?
その強さに興味があってね。
だからさ、デュエルしよう」
輝くほどまぶしい笑顔なのに目は笑っておらず、声も低い。
普通ならどれ程彼が怒っているのか初対面でもわかる。
しかし彼らはそれを察してはいても、所詮イエローの雑魚としか思っていないため笑い飛ばした。
「ハハハハハ!
運よく取巻に勝った落ちこぼれが、俺達とデュエルだと?
お前馬鹿じゃないのか?」
「そもそも俺達がお前とデュエルして何のメリットがあるっていうんだ!」
「メリット?
あるぜ」
そう言った聖星は【星態龍】に視線で何かを訴えた。
彼のしたいことが分かった【星態龍】は迷うことなく、聖星の内ポケットにとあるものを出した。
聖星はそのままカードを取り出し、3人に見えた。
見せられたカードに3人は同時に息を飲み込んだ。
「君達のなかで1番強い奴が勝ったら、【ブラック・マジシャン】と【黒魔導の執行官】、【混沌の黒魔術師】、専用魔法の【千本ナイフ】、【黒・魔・導】、【光と闇の洗礼】のカードを君達にやる。
ただし負けたらもう取巻を馬鹿にするな。
君達の中で1番強い奴が取巻を負かした奴に負けるんだ。
馬鹿に出来る立場じゃない。
良いな?」
武藤遊戯のエースカードだけではなく、それの関連カードが5枚もついてくる。
しかも【混沌の黒魔術師】の知名度は高いが、かなりのレアカードであまり世の中には出回っていない。
それがこのデュエルに勝つだけで手に入る。
こんなにおいしい話は今後あるのだろうか。
いいや、あるわけがない。
「分かった。
その条件で受けてやる!」
「行けよ、原田!」
「あぁ」
前に一歩出て、勝ち誇ったような笑みを浮かべる緑髪の少年。
名前は原田というようだ。
その表情には絶対に負けないという自信があり、同時にバカを見るような目をしていた。
恐らくたかが取巻のためにレアカードを差し出してくれるなんて、本当にバカなイエローだと思っているのだろう。
考えていることが筒抜けな表情に聖星は笑みを消し、真剣な表情になる。
「「デュエル!!」」
「先攻は君達曰く落ちこぼれの俺からさせてもらうぜ」
「はぁ?
エリートである俺に先制攻撃を許すっていうのか?
どんな守備モンスターを出すか楽しみだよ」
「俺のターン、ドロー」
ドローして手札に来たのはあまり見慣れないカード。
融合、シンクロ、エクシーズ。
それぞれが主流の環境に身を置いた聖星でも、このカードはあまり見た事がなかった。
だがこのデッキにはそれが何枚か入っている。
「(何体呼べるか楽しみだな……)
俺は手札から魔法カード【高等儀式術】を発動」
「【高等儀式術】……?」
「デッキに存在する通常モンスターを墓地に送る事で、そのレベルの合計と同じレベルを持つ儀式モンスターを1体特殊召喚するカードさ」
「な…………
はぁ!?」
「いきなり儀式召喚だと!?」
儀式召喚。
儀式モンスターのレベルと同じ、またはそれ以上になるよう場と手札に存在するモンスターを生贄に捧げる事で召喚する方法だ。
今召喚は肝心の儀式モンスター、儀式魔法が少ないためあまり見かけない。
それは彼らも同じようで、ギャラリーとなっている2人は目を見開いたまま呟いている。
「普通儀式には儀式魔法、儀式モンスター、儀式素材の3つが必要だ。
それを先攻1ターン目にするとしたら手札が半分以下になる可能性がある……」
「あぁ。
それなのにデッキから素材を墓地に送るとか、そんなカードあるのかよ……」
「俺はレベル8の【マジシャン・オブ・ブラックカオス】を選択し、デッキからレベル4の【月明かりの乙女】と【魔導紳士‐J】を墓地に送る」
「【マジシャン・オブ・ブラックカオス】!?」
「デュエリストキングダムで武藤遊戯が使った魔法使い族か!?」
青いカードに描かれる漆黒の魔術師を見せると、彼らは更に目を見開いた。
墓地に送られた2体の魔法使いは半透明な姿で場に現れる。
するとフィールドの中心部に1つの棺が現れ、その周りを8つの器が囲っている。
【月明かりの乙女】と【魔導紳士-J】は8つの光となり、器の真上で激しく燃える。
「光と闇の洗礼を受けし、偉大なる魔術師よ。
儀式より新たに得た魔力を我らに示せ」
赤い炎は青白く、闇を纏う炎へと変わっていく。
すると棺の周りが暗い色をした靄のようなものに覆われ、形が見えなくなっていく。
それと並行するかのように足元が薄暗くなり、呼吸が苦しくなる。
「儀式召喚。
【マジシャン・オブ・ブラックカオス】!」
魔法陣が描かれた棺は光り輝き、重苦しい音を立てながら開いていく。
開いたと思えばその中から光柱が立ち上がり、内側から1体の魔術師が現れる。
魔術師は漆黒の杖を持ったまま静かに場に佇み、無表情のまま原田達を見つめた。
1ターン目から伝説のカードを見る事が出来るとは思っていなかった彼らは上手く言葉を発する事が出来なかった。
「俺は手札から【グリモの魔導書】を発動。
そしてデッキから【セフェルの魔導書】を手札に加える。
さらに手札の【トーラの魔導書】を見せ、【セフェルの魔導書】を発動。
墓地に存在する【グリモの魔導書】の効果をコピーし、デッキから【魔導書】を1枚加える。
俺が加えるのは【ゲーテの魔導書】だ」
ろくな説明もせず、機械のようにゲームを進める聖星。
時々彼らが不思議そうな顔を浮かべたが、カード効果の説明を求められていないので聖星はそのまま続けた。
「カードを2枚伏せ、ターンエンド」
「俺のターン、ドロー!
俺は【魂を削る死霊】を守備表示で召喚」
光と共に現れたのは紫の衣服をまとったアンデッド族モンスター。
【魂を削る死霊】はそのまま膝をつき、防御しているのか巨大な鎌を盾にしている。
守備力はたったの200だが効果がこの時代では強力なのでデッキに入れているのだろう。
目を細めた聖星はそのままデュエルディスクのボタンに触れた。
「召喚成功時、永続罠【真実の眼】を発動する」
「……は?」
聖星が発動したのは赤い目が描かれているカード。
エジプトの壁画に描かれていそうなデザインに原田達は顔を見合わせる。
「【真実の眼】ってどんな効果だ?」
「確か相手の手札を公開させるカードだったはず」
そう、彼の言う通り【真実の眼】は一方的に相手の手札をピーピングする効果を持つ。
しかも永続罠のため1ターンだけの効果ではないのだ。
効果を思い出した原田は顔を歪めながらバカにするように怒鳴る。
「なっ、俺の手札を覗き見るってか!?
そんな卑怯なことしないと俺には勝てないって事か?
流石雑魚らしい考えだぜ」
卑怯。
その言葉に聖星はゆっくりと微笑み、首を横に振りながら優しく説明する。
「別に見なくても勝てるぜ。
ただ負けた後見苦しく手加減してやったんだ、って言われたくないからな。
手札を公開していたら手加減していたのか、していないのかはっきり分かるだろう?」
そう、こいつらは無駄にプライドが高い。
彼らは自分のプライドや面目を保つためなら、手加減をしてやったんだと見苦しくも叫ぶだろう。
そうさせないためにこのカードを発動した。
優しい口調で言われた原田達の顔は赤くなり、カードを握る手に力がこもっているのが目に見えて分かる。
「(えっと手札は……
【リビングデッドの呼び声】、【黄泉ガエル】、【雷帝ザボルグ】、【ゴブリンゾンビ】、【氷帝メイビウス】……
あれ、こいつもしかして【アンデット帝】?)」
【帝】の名を持つモンスターは強力な効果を持つものが多い。
しかしその効果を発動するためには生贄召喚が必要で、不死の名を持つアンデッド族は特殊召喚に長けている。
生贄要員をそろえるには良い種族だろう。
だが、この時代ではステータスが重視されているためサーチ能力が高い【ゴブリンゾンビ】を採用しているとは思わなかったのが聖星の素直な感想だ。
手札を確認した聖星は場で鎌を構えるモンスターを見下ろす。
「(【魂を削る死霊】……
戦闘では破壊されない効果を持つ厄介な相手。
けどカード効果の対象になったら破壊されるデメリットを持つ。
【魔導書】では【ゲーテの魔導書】で攻撃表示、または除外するくらいしか対処法はないか……)」
「俺はカードを1枚伏せて、ターンエンド」
原田の手札から【リビングデッドの呼び声】が消えていく。
伏せられたのは間違いなくそのカード。
【魂を削る死霊】が効果で除去された事を想定して伏せたのだろう。
「(けど【魂を削る死霊】のために【ゲーテの魔導書】は使いたくないなぁ。)
俺のターン、ドロー。
あ」
【ゲーテの魔導書】は発動するためにコストが必要となる。
いくら次のターン【帝】の召喚を防ぐためとはいえ、【魂を削る死霊】のために使うのは少し気が引ける。
だが今ドローしたカードだったら抵抗感もない。
「俺は墓地に存在する【月明かりの乙女】と【怪盗紳士‐J】を除外し、【カオス・ソーサラー】を特殊召喚する」
先程墓地に送られた2体が再び姿をあらわし、歪みの中に吸い込まれていく。
そして淡い光と暗い光を両手に持つ魔術師が姿を現した。
その攻撃力は2300.
生贄なしに召喚した上級モンスターに原田は焦る。
「な、なんだ、そのモンスターは!?」
「このカードは墓地に存在する光属性と闇属性モンスターを除外する事で特殊召喚されるモンスターだ。
そして戦闘を放棄する代わりに、相手の場のモンスターを1体除外する効果を持つ」
「何!?
だ、だが【魂を削る死霊】は効果の対象になった時破壊される……
墓地にいるこいつを蘇生させれば、次のターンに【帝】を召喚してやる!」
「え?」
「何だ、まさかもう俺の伏せカードを忘れたのか?
俺の伏せカードは【リビングデッドの呼び声】だぞ」
「次のターン、原田が【魂を削る死霊】を蘇生させ、【雷帝ザボルグ】を生贄召喚するって事さ。
そこまで頭が回らないのか?」
原田と一緒にいる細目の少年の言葉に聖星は首をかしげる。
成程。
つまり彼らは【魂を削る死霊】が対象になった瞬間、破壊されて墓地に送られ、【マジシャン・オブ・ブラックカオス】の攻撃宣言時蘇生し。
さらに次のターンに生贄召喚すると言いたいのだろう。
やっと理解できた聖星は無表情で返す。
「いや、それ無理だけど」
「はぁ?」
「何言ってんだ、こいつ?」
「どうやらギリギリイエローのこいつには俺達の高度なプレイングが理解できないようだな」
3人の言葉に聖星は頭の中を整理する。
迷宮兄弟とデュエルした時、あり得ない方法で【闇の指名者】を使っていた。
その時今の時代と未来ではカードの裁定が違う事を知った。
もしかすると【魂を削る死霊】の自壊タイミングも違うのだろうか。
しかし納得できない聖星は自分の知識を述べる。
「そうじゃなくて、【魂を削る死霊】は効果の対象になった瞬間に破壊されるわけじゃない。
例えば【月の書】だったら効果解決時に【魂を削る死霊】は裏側守備表示だから、場には存在しない扱いになる。
だから破壊されないんだ。
それと同じように除外の効果の対象になっても、効果解決時に除外ゾーンに存在するから破壊効果は使えないぜ」
そう言い終えると、3人は無言となってしまった。
ハハハ、と笑い飛ばそうとしない様子だと聖星の言っているような場面に遭遇した事でもあるのだろうか。
「(……え、こいつら本当にエリートなの?
こんなの小学生でも常識の話だろ)」
未来で通っていたアカデミアの授業では注意点として担任から教えてもらった記憶がある。
「俺は【カオス・ソーサラー】の効果発動。
【魂を削る死霊】を除外する」
待っていました、と言わんばかりに【カオス・ソーサラー】は歪んだ笑顔を見せながら呪文を唱える。
すると【魂を削る死霊】の背後に黒い歪みが現れ、その中に【魂を削る死霊】は吸い込まれていった。
破壊される様子も、墓地に送られた演出もないため聖星の言った事が正しい事が分かった。
「そんな、マジかよ……!?」
「これで場には使えない【リビングデッドの呼び声】だけ。
【マジシャン・オブ・ブラックカオス】でダイレクトアタック」
「ぐわっ!」
宝石が埋め込まれた杖を原田に向けた【マジシャン・オブ・ブラックカオス】。
淡い光が宝石に集められ、眩い光となって原田のライフを奪った。
これで彼のライフは4000から1200へと削られる。
「俺はカードを1枚伏せて、ターンエンド」
「くっ、俺のターン!
ドロー!」
攻撃の衝撃で吹き飛ばされた原田は苛立った様子で立ち上がり、荒々しくカードをドローする。
その時引いたのは運良くドローカードの【強欲な壺】である。
原田は唇で弧を描き、同級生の2人も握り拳を作った。
「よし、魔法カードだ!」
「これで原田のライフは【真実の眼】のもう1つの効果で1200から2200になる!」
原田の手札を公開している【真実の眼】にはもう1つの効果がある。
それは手札に魔法カードがある場合、スタンバイフェイズ毎にライフが1000ポイント回復する効果だ。
聖星の場には攻撃力2300以上のモンスターが存在するため、2200になったとしてもダイレクトアタックで終わってしまう。
しかし引いたのが新たにカードをドローする【強欲な壺】だ。
希望に満ちた表情の原田に笑みを浮かべた聖星は容赦なくカードを発動した。
「【真実の眼】の効果発動時、リバースカード、オープン。
【闇のデッキ破壊ウイルス】を発動」
「【ウイルス】カードだと!?」
「モンスターを潰しに来たか!」
「いいや、違う。
このカードは【死のデッキ破壊ウイルス】とは違い、魔法か罠カードを宣言して破壊するカードだ」
「何!?」
海馬が使うウイルスカードは問答無用で攻撃力1500以上のモンスターを破壊する【死のデッキ破壊ウイルス】を使っていた。
あのカードの発動コストは攻撃力1000以下の闇属性モンスターで軽かった。
だがこのカードのコストは攻撃力2500以上の闇属性モンスターである。
「俺は攻撃力2800の【マジシャン・オブ・ブラックカオス】を生贄に捧げ、場と手札に存在し、相手ターンで数えて3ターンの間ドローしたカードを全て確認し、宣言したカードを破壊する。
俺は魔法カードを宣言」
「なっ!?」
【闇のデッキ破壊ウイルス】から無数の塵のようなものが溢れ出し、【マジシャン・オブ・ブラックカオス】が咳き込む。
すると彼は苦しそうに膝をつき、そのまま粉々に砕け散った。
だがそれだけでは終わらず、散らばった破片は髑髏の形をしたウイルスとなり原田の手札に感染する。
指定された魔法カードは紫色に変わり、ドロドロとなって溶けていった。
「そんな……」
「これじゃあ原田は新たにカードをドロー出来ない……」
「くっそ、俺は【ゴブリンゾンビ】を守備表示に召喚。
……ターンエンドだ」
「俺のターン、ドロー。
俺は【カオス・ソーサラー】の効果で【ゴブリンゾンビ】を除外」
守備表示となり刃を構えていた【ゴブリンゾンビ】は【魂を削る死霊】と同じように歪みに吸い込まれていく。
前のターンと同じように原田の場はがら空き同然となってしまった。
だが聖星の場に攻撃できるモンスターは存在しない。
「手札から魔法カード【天使の施し】を発動。
デッキからカードを3枚ドローし、2枚墓地に捨てる」
ゆっくりとデッキからカードを引いた聖星。
攻撃可能なモンスターが引ける事を願いながら、聖星はカードを見る。
そして小さく頷いた。
「俺は儀式モンスターの【救世の美神ノースウェコム】と通常モンスターの【コスモクイーン】を墓地に捨てる。
そして【ゲーテの魔導書】を見せ、墓地に存在する【ノースウェコム】を除外して【ネクロの魔導書】を発動。
このカードは手札の【魔導書】を魅せ、墓地に存在する魔法使い族を除外する事で、墓地に眠る別の魔法使い族モンスターを特殊召喚する事が出来る」
「なっ……!」
「墓地に眠る【マジシャン・オブ・ブラックカオス】を特殊召喚する。
還ってこい、【マジシャン・オブ・ブラックカオス】!」
「はぁっ!」
「くっ……!」
再び場に現れた黒魔術師。
威厳あるその姿のモンスターに原田は一歩下がった。
手を打ちたくても何もできない。
聖星が宣言すれば原田の敗北は決まってしまう。
屈辱で歪んでいる顔を見ながら聖星は静かに宣言した。
「【マジシャン・オブ・ブラックカオス】でダイレクトアタック」
「うわぁああ!!!」
フィールドに広がる闇の波動。
それを一身に受けた原田はその場に崩れ落ちる。
ライフが減っていく音が響き、ライフポイントが0になった。
聖星は無表情のままデュエルディスクの電源を切り、彼を見下ろす。
すると原田が勢いよく顔を上げ叫んだ。
「くっ、こんなのまぐれだ……!
まぐれに決まっている!」
「そうだ!
そもそもお前が【真実の眼】なんていう卑怯なカードを使うから、原田の手札に【強欲な壺】がある事が分かったんだ!
もしお前がそれを知らなければドロー次第では原田が勝っていたかもしれない!」
やはりこうなったか。
無駄にプライドの高い奴の相手は疲れる。
せっかく言い訳が出来ないように【真実の眼】を使ったのに、まさかそれを卑怯と叫ぶとは予想外である。
「じゃあデッキトップ2枚を捲ってみろよ。
それでこのデュエル、彼が勝てるのか分かるだろう?」
聖星の言葉に原田はすぐに2枚捲った。
捲られたカードは相手モンスターを破壊する【地砕き】とアンデッド族を蘇生する【生者の書-禁断の呪術-】だ。
そのカードを見た瞬間、聖星は吐き捨てた。
「無理だね。
どのみち彼は勝てない」
「何だと!?」
「俺が最初から伏せていたもう1枚の伏せカードは【トーラの魔導書】。
このカードは魔法使い族に魔法カードか罠カードの耐性をつけるカードだ。
【地砕き】を発動したとき、俺が【マジシャン・オブ・ブラックカオス】に魔法カードの耐性をつけてしまえば破壊されない。
【生者の書】は墓地にアンデット族モンスターが存在しないと意味がないから発動条件を満たしていない。
そんな手札でどうやって勝つんだ?」
【地砕き】は相手の場に存在する守備力が1番高いモンスターを破壊する魔法カード。
だがその効果は決して過信できるものではない。
守備力の高いモンスターが魔法カードへの耐性があった場合、破壊することは出来ないのだ。
どのみち勝てなかった事実に原田はさらに顔を歪める。
「取巻に勝った俺に、君達の中で1番強い奴は負けたんだ。
君達3人にあいつを馬鹿にする権利なんてない。
それどころか俺が攻撃力2800のモンスターを複数体並べても、それ以上の攻撃力のモンスターを場に出した取巻の方がよっぽど強いさ」
聖星が攻撃力2800の【椿姫ティタニアル】と【桜姫タレイア】を並べた時、取巻は諦めずに装備魔法を使い攻撃力4000以上のモンスターを出した。
【レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン】がなくてもあれ程のデュエルを見せてくれたのだ。
吐き捨てるように言った聖星は背中を向けその場から立ち去ろうとする。
だが、不意に足を止めて振り返った。
「それと……
【真実の眼】が卑怯だって?
俺はゲームのルールとこのカードの効果に従ってデュエルをした。
相手の手札の情報を得るのだって立派な戦略の1つだ。
自分達が使わないからって、卑怯扱いするな。
カードを作ったペガサスさんに失礼だろ」
**
それから聖星はすぐに校長室に向かった。
授業後すぐに来るように言われていたが、彼等とのデュエルのせいで余計な時間を費やしてしまった。
相手は怒っていなければいいのだが……
そう考えながら聖星は深呼吸をして校長室に入る。
「失礼します」
「おや、聖星君。
待っていたよ」
扉が開き、真っ先に声をかけてくれたのは鮫島校長。
彼に軽く頭を下げると視界に見慣れた青年達が映った。
その人達の姿に聖星は納得したのか、微笑みながら手を差し出した。
「お久しぶりです。
夜行さん、月行さん」
手を差し出したのは顔が瓜二つの長髪男性。
1人は優しく微笑み、快く聖星の手を握ってくれた。
それに対しもう1人はため息をつきながら握ってくれる。
「お久しぶりです、聖星さん。
聖星さんもお元気そうで安心しました」
「お久しぶりです。
授業が終わり次第校長室に来るように伝えられているはずですが。
今まで貴方は何をしていたのですか?」
彼らは独身であるペガサスが跡継ぎのために引き取った孤児の2人。
特にペガサスミニオンと呼ばれる孤児達の中でかなりの実力者だ。
明らかに呆れた表情を浮かべるのは双子の弟天馬夜行。
笑顔を浮かべるのは兄の月行だ。
夜行の厳しい言葉に聖星は苦笑を浮かべ、正直に言う。
「すみません。
少しデュエルを……」
「客が来ている事を知っての上ですか?
全く貴方という方は……」
「まぁ良いじゃないか夜行。
彼はまだ子供だ」
「確かに子供ですが仮にもシンクロ召喚プロジェクトのアドバイザーですよ。
きちんとその自覚を持っていただきたい」
友人を侮辱され、デュエルをしていたと言えば夜行もこんな態度はとらないだろう。
だが言う必要はないと判断し、夜行と月行を見比べながら尋ねた。
「それで、どうして2人がアカデミアに?
俺に何か用でもあるのですか?」
「ペガサス様からの言伝を伝えに来ました」
「至急、私達と共にアメリカのインダストリアルイリュージョン社に来るように、とのことです」
「え?
何か問題でもあったんですか?」
「はい。
詳しい事は飛行機の中で話します」
そのまま夜行は聖星に複数の書類を渡す。
そこには公欠届と大きく書かれており、鮫島校長を見た。
目が合うと彼は微笑んで頷いてくれる。
「君の事はペガサス会長から直接聞いています。
デュエルモンスターズの新しい召喚法を我が校の生徒が開発したというのはとても誇らしい事です。
聖星君、新しい事を企画するのは大変だと思いますが頑張ってください」
「分かりました。
ありがとうございます」
「では、聖星さん。
すぐにその書類に署名捺印をし、荷物をまとめてください。
30分後に出発します」
「え?」
夜行からさらっ、と言われた言葉に聖星は固まる。
いくらなんでも30分後は無理があるのではないか?
そう言いかけたが無言の圧力で「道草をくった貴方が悪い」と目で訴えられ、聖星は小さく頷いた。
「(十代と取巻にはメールで伝えるか……)」
END
月行、夜行の登場を予想していた人挙手
夜行は邪神の影響はあったとはいえRの暴走っぷりのせいで性格がキツイお兄さんにしか思えないんだよね。
コンプレックスとかいろいろ抱えていたから性格が歪んでそう。
まぁ、流石に子供の聖星には見せないと思いますけど。
月行は安定の穏やかなお兄さん。
【真実の眼】と【闇のデッキ破壊ウイルス】は書いていて疑問に思ったんですけど…
スタンバイフェイズ時に【真実の眼】のライフ回復効果が発動した場合、チェーンして【闇のデッキ破壊ウイルス】を発動して魔法カードを破壊してもライフは回復すると考えているのですが、それで良いのでしょうか?
だったらドローフェイズに【闇のデッキ破壊ウイルス】を発動しろ、と言われそうですが聖星は発動タイミングをよく間違えるの(【神判】を相手スタンバイで発動しない等)で、チェーンブロックを組むときに発動させました。
今回のデッキは儀式魔導書です。
当然高等儀式術は3積みですよ。
この時代は3積みOKだったはず。
罠カードは【真実の眼】、【闇のデッキ破壊ウイルス】、【強制脱出装置】のみです。