遊戯王GX~不動の名を継ぐ魔導書使い~   作:勇紅

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第三話 オベリスクからの挑戦

実技の試験も終わってから数日がたった。

それまでの間はとくにする事もなく近所のカードショップへ行き、どんなカードがあるのか見てみた。

流石は過去というべきか、低レベルモンスターの価値が見いだされる前なので低レベルモンスターが安く販売されていて驚いた。

まるで歴史館にいるような気分になりながらも数日間楽しみ、ついに結果が届いた。

分厚い封筒の中には【合格証書】と入学に関する書類が入っており、【星態龍】と一緒に一通り目を通した。

 

「おい、聖星。

いくつか聞いていいか?」

 

「ん?

あ、このカードはいらない?」

 

「違う。

どうしてお前がオシリス・レッドなんだ?」

 

隣から聞こえた【星態龍】の声に聖星は顔を上げて尋ねる。

今はアカデミアで使うためのデッキを作っており、それにシナジーのあるカードを探している。

【星態龍】は不機嫌なのか若干声が低く纏っている空気が重い。

まぁ慣れている聖星は特に気にする事もなく受け流して答えた。

 

「さぁ。

実技試験とかが悪かったんじゃないのか?」

 

「筆記試験は20番台とはいえ上位、実技試験だって勝っただろう。

しかも【ブラック・マジシャン】を使用したのだ。

オベリスク・ブルーはともかく何故レッドへの配属なんだ?」

 

デュエルアカデミアはエリートデュエリストを育成する関係上、かなり厳しい上下関係がある。

それは成績による寮分けだ。

中等部からの成績優秀者はオベリスク・ブルー、高等部から入学した成績優秀者はラー・イエロー。

そして聖星が配属されたオシリス・レッドは落ちこぼれの生徒が集められた寮である。

 

「まぁまぁ。

受かったんだから良いだろ?

俺はプロを目指すために入学したわけじゃないんだし」

 

聖星はデュエルアカデミアでの学園生活を最後までする気はない。

【星態龍】の力が戻り、時期が合えばすぐに未来に帰るつもりだ。

だからどんな寮に配属されても気にしないし、気にする資格なんてないと思っている。

だが【星態龍】は納得しないようで言葉を続けた。

 

「聖星。

審議会の様子の映像を入手しろ。

お前なら防犯カメラから音声くらい拾うことが出来るだろう?」

 

「え、何で?」

 

「お前がどうしてレッド寮配属になったのか納得いかない。

だから聞いて決める。

もし正当な理由があれば私も何も言わない」

 

「別にそこまでしなくても良いだろ?」

 

「お前はもう少し自分の境遇に不満を覚えろ!」

 

**

 

ようやくアカデミアへ向かう日が来た。

アカデミアに行く方法は飛行機と船の2つがある。

別に入学式に間に合えば良いのでどちらの手段でも良かったのだが、顔見知りの少年によって強制的に飛行機に乗る羽目になった。

 

「なんか意外だな」

 

「ん、何がだ?」

 

自分を飛行機に乗せた張本人である十代は腕を頭の後ろで組んで座っている。

聖星はすぐに窓に集まっている生徒達に目を向けた。

彼らが窓越しに見ているのはこれから自分達が暮らし、様々な事を学ぶデュエルアカデミアが建てられている島だ。

希望にあふれている彼らの姿を見ていると自然と笑みが浮かんでしまう。

 

「十代って熱血少年っていう印象があったから、こういう状況で1番はしゃぐと思ったんだけど……

違うんだな」

 

目を輝かせながら窓に張り付き、彼らと一緒にアカデミアの事を語ると思った。

だが実際は聖星と一緒で椅子に座って島に着くのを待っている。

 

「ん~、確かに俺って熱血だけどこういうところではしゃぐって気にはなれねぇな。

ま、早く島についてデュエルしたいとは思ってるぜ。

その時は聖星、真っ先に聖星にデュエルを申し込むぜ!」

 

「そんなに俺とデュエルしたい?」

 

十代が自分を飛行機に乗せたのは聖星と早くデュエルをしたかったからだ。

彼曰くアカデミアについてから探そうと思ったが運よく見つけたため、逃がさないよう無理矢理引っ張ったらしい。

聖星の問いかけに十代は勢いよく頷き、目を輝かせながら話し始める。

 

「あったり前だろ!

だってさ、ブラマジ使いなんだぜ!

俺、聖星がバーン効果で先生を倒しているところしか見てなくてさ。

しかもブラマジの進化系のカード!

くぅ~~、考えたらわくわくが止まんねぇぜ!」

 

「いや、俺は【ブラック・マジシャン】使いじゃなくて……」

 

「へ、ブラマジが聖星のエースじゃないのか!?」

 

嘘だろ!?

だってあんなレアカードだぜ!??

驚いた表情を浮かべたと思ったら、もっと話を聞きたいと言うかのように周りをキラキラと輝かせ始める十代。

純粋に知りたくて仕方がないという反応にあの少年の事を思い出す。

確か【星態龍】のカードを見せた時の遊馬もこんな感じだったはずだ。

ついこの間までの事なのに妙に懐かしくなりながらも首を横に振る。

 

「【ブラック・マジシャン】は俺のデッキのエースじゃない。

俺は【魔導書】と名のつくカードと様々な魔法使い族のカードを使って複数のデッキを作っているんだ」

 

「複数……

って、事は……

まだ別にデッキも持ってるって事か??」

 

「あぁ」

 

「すっげぇ、全部と戦いたいぜ!!」

 

更に目を輝かせた十代は楽しみでしょうがないと雰囲気で語り、それからも聖星に対し話しかけた。

聖星も聖星で自分の一言で表情を変える十代が面白く、ついつい話し込んでしまう。

本当に楽しそうにデュエルについて話す少年達の姿を【星態龍】は優しく見守っている。

 

**

 

飛行機から降りて入学式も無事に終わった。

真っ赤に燃える赤色の制服を着た聖星はリラックスする為背伸びをする。

流石は入学式と言えば良いのか祝辞が長く、その間同じ態勢だったため疲れたのだ。

小学生の頃から思ったが、どうして校長という存在はあれほど長話が好きなのだろう。

 

「おい、聖星。

聖星はどこの寮なんだ?」

 

「僕と十代君はオシリス・レッドっす」

 

「俺もオシリス・レッドだぜ。

っていうか制服見れば分かるだろう?」

 

「あ」

 

「この制服ってそういう意味だったんっすね」

 

入学式が終わったら聖星は十代と水色の髪の丸藤翔という少年3人で外に出ていた。

翔は実技試験で聖星、三沢と一緒に十代のデュエルを見守っていた少年だ。

2人とも制服の色の意味を知らなかったようで聖星の言葉に納得していた。

これではこの学園の上下関係について知らないかもしれない。

少し心配していると視界に見慣れた少年の姿が目に入った。

 

「あ、おーい!

大地!」

 

「やぁ、聖星、1番君」

 

聖星が笑って声を掛ければイエローの制服を着ている三沢も笑みを返してくれた。

彼が着ている制服は黄色である。

成程、彼はラー・イエローの所属になったのだろう。

筆記試験は1番で実技デュエルでも堅実なデュエルをしていたから当然と言えば当然か。

 

「よぉ2番じゃないか。

お前はどこの寮なんだ?」

 

「僕はこの制服を見て通りイエローさ。

……それにしても君達2人がレッドだなんて信じられないな」

 

腕を組みながら怪訝そうな表情を浮かべる三沢は十代と聖星を交互に見る。

筆記試験はともかく十代は実技最高責任者を倒すほどの実力の持ち主である。

それに対して聖星は筆記試験も優秀、実技試験だってノーダメージで試験官を倒した。

三沢が何を言いたいのか理解できた聖星はあっさりと言う。

 

「なんか俺の戦い方が気に入らなかったみたいだぜ」

 

「そうなのか?」

 

「あぁ」

 

レッド寮配属に納得しない【星態龍】を落ち着かせるため仕方なく審議会の映像を探し、審議会を行なった部屋にある防犯カメラの映像を入手し会話を聞いたのだが……

【ブラック・マジシャン】の召喚はともかくバーン効果のみで勝った事がアカデミアの生徒として相応しくないという理由でレッドになったらしい。

詳しくは話さなかったが聖星の説明でだいたい察してくれた三沢は同情する様な眼差しで聖星を見た。

 

「まぁ良い。

君達とはこれから長い付き合いになる。

もし何かあったら相談してくれ」

 

「ありがとうな、三沢」

 

「あ、そうそう。

君達の寮はあっちだよ」

 

そう言って三沢が指差した方は学舎からかなり離れた方角だ。

そしてその先にあったのは……

ネットの画像で予め知っていたが、想像以上に酷く粗末な扱いのレッド寮だった。

 

**

 

「なぁ翔。

デュエルの匂いって普通分からないよな?」

 

「安心して聖星君。

普通の人間なら分からないっすよ」

 

「良かった」

 

同じレッド寮の生徒からこの学園の風潮を聞かされに翔は一気に気分が沈んだ。

しかし聖星は元から知っていたし、十代はそういう性格なのか特に気にもしなかった。

今、荷物を部屋に置いた3人は探検という事で校内を歩いている。

その時十代がデュエルの匂いがすると言い出し今に至るのだ。

 

「あ。

そういえばどうして聖星君の部屋は1人部屋なんすかね」

 

「さぁ」

 

オシリス・レッドの寮では基本的に3人1部屋で生活している。

十代と翔はどんな運命なのか同室で、彼らの部屋にはもう1人前田隼人という少年がいるそうだ。

だが聖星の部屋には同居人がおらず1人部屋という状態になっている。

 

「(元々3人部屋だったのを情報操作して1人部屋にしたんだけどな。)」

 

これも人には言えないのだが【星態龍】が口出ししたのだ。

アカデミアのやり方に苛立っているところに3人部屋だという情報を手に入れ、更に機嫌が急降下し聖星に1人部屋にするよう指示した。

表向きの理由は何らかの拍子で【星態龍】、そしてエクシーズモンスターを見られたら不味いというもの。

本音は記述しなくても分かるだろう。

聖星としては3人部屋の方が楽しそうだったのだが、そう言われてしまえば反論できないので情報操作するしかなかった。

 

「お。

見ろよ、聖星、翔!」

 

自分達の前を歩いていた十代は何かを発見したらしく、2人を手招きする。

そこにはデュエル場がありソリッドビジョン、音響、全てが最新設備である。

翔はこれから使う施設にテンションが上がったようだが、聖星の反応は薄い。

未来人からしてみればこの設備は旧型になるので、翔のようにそこまで感動しないのだ。

 

「よし聖星、ここで俺とデュエルしようぜ!」

 

「は、ここで?

歓迎会はどうするんだよ?」

 

確か聖星の記憶が正しければこの後各寮で歓迎会があったはずだ。

しかもあまり時間がない。

それなのにここでデュエルしていたら夢中になって遅れるかもしれない。

流石に入学初日に歓迎会に遅れるなどまずいだろう。

それを心配したのだが十代は満面な笑みを浮かべるだけだ。

 

「こんな凄い場所で出来るんだぜ!

歓迎会なんてあと、あと!」

 

「という訳にはいかないんだな」

 

「え?」

 

自分達の会話に入ってきた第三者の声。

そちらに顔を向けてみればオベリスク・ブルーの制服を着ている生徒が2人いた。

彼らはゆっくりと近寄ってきて聖星達を小馬鹿にするように言う。

 

「ここはオシリス・レッドのドロップアウトボーイ達が来るところじゃないぞ」

 

「そうなの?」

 

「上を見てみろ」

 

言われた通り3人がそちらを見上げれば、オベリスク・ブルーの象徴である【オベリスクの巨神兵】の飾り物があった。

それはこの場がオベリスク・ブルーの専用フィールドだと証明している。

校内でそういう決まりがあるのなら従うしかない。

翔は素直に謝罪し、聖星も軽く頭を下げる。

しかし十代だけは違った。

 

「何かしっくりこないな。

じゃあお前俺と勝負しないか?

それなら良いだろう??」

 

「っ!

誰かと思ったら……!」

 

「万丈目さん、クロノス教諭に勝った110番と【ブラック・マジシャン】使いの23番ですよ」

 

「(あ、やっぱり俺ブラマジ使いって事になってる?)」

 

2人の顔を見た瞬間に目を見開いた男子生徒達の様子で自分と十代が相当有名人だという事が分かる。

別に聖星はブラマジ使いになったつもりはないのだが、訂正するのも面倒なので黙っておく。

すると座席に座っていたのか黒髪の少年が十代と聖星を冷めた目で見てくる。

 

「こんにちは。

俺は不動聖星」

 

「俺、遊城十代。

あいつは?」

 

「っ!!」

 

冷めた目でも別に怖くもないし、一応挨拶しようと思って声をかけたが……

どうやら十代の言葉が気に入らないらしく、少年は十代を睨みつけた。

それに対し目の前にいる生徒達が過剰に反応を示す。

 

「お前、万丈目さんを知らないのか!?

同じ1年でも中等部の早抜き超エリートクラスのナンバー1!」

 

「未来のデュエルキングと呼び声の高い、万丈目準様だ!」

 

万丈目。

聖星はアカデミアに入学するまでこの時代の事を調べたが、その名前で該当するのは万丈目グループという財閥くらいだ。

珍しい苗字だし彼はその財閥の人間なのだろう。

しかしあくまで有名なのは政界、財界の話でデュエル界では殆ど名前を聞いた事がない。

だからついこう言ってしまった。

 

「え、彼ってそんなに有名なのか?

ネットである程度実力のある生徒を調べたけど、全然名前出てこなかったぜ。

出てきたのはカイザー先輩くらいかな?」

 

「貴様っ……!」

 

「うっ……!!」

 

明らかに癇に障ったという表情を浮かべる万丈目に対し、彼らはカイザーという名前を出され言葉に詰まる。

しかし十代は知らないようで首を傾げて聞いてくる。

 

「カイザー?

誰だそれ?」

 

「この学園で1番強いって言われている3年生の先輩だよ。

全戦全勝。

不敗の帝王。

デュエル界でも有名で、卒業したらすぐにプロデュエリストの仲間入り間違いなしって言われているんだ」

 

「そんな強い奴がいるのか!

デュエルしてみてー!」

 

「俺もいつか挑むつもりさ」

 

例え未来人だとしても聖星はデュエリスト。

この学園最強と呼ばれる生徒がいるのなら同じ学生として1度でもいいからデュエルしてみたい。

等と考えているとオベリスク・ブルーの2人が笑い始める。

 

「これはとんだ大ばか者だ!」

 

「オシリス・レッドの落ちこぼれが、カイザーと戦うだなんて……

身の程知らずなっ!!」

 

ワハハハハ、とお腹を抱えながら笑う彼らに聖星は冷や汗を流した。

別に格下の自分達の発言に笑うのは構わないが、それ以上笑わない方が良いと言えたらどれほど良かったか。

しかしそんな事を言ったらますます笑われるのであえて黙る。

そして聖星は自分の背後で漆黒の炎を燃やしている【星態龍】を視界に入れないよう精一杯前を向いた。

 

「Be quiet!」

 

馬鹿笑いの声を遥かに凌ぐ声で響いた万丈目の声。

彼の言葉に先程まで馬鹿みたいに笑っていた生徒達は大人しくなる。

 

「諸君はしゃぐな。

そいつら、お前達よりやる。

23番は1ターンでライフ4000を削り切り、110番は入学試験で手を抜いていたとはいえ一応あのクロノス教諭を破った男だ」

 

「ふっ、実力さ」

 

「その実力、ここで見せて欲しいものだな」

 

「良いぜ」

 

互いに不敵な笑みを浮かべながら言葉を交わす十代と万丈目。

万丈目は弱者を狩る猛獣の目。

十代は強者に挑む戦士の目をしていると言えば良いだろう。

背後に見える闘志に聖星も自然と不敵な笑みを浮かべるが、翔だけが不安そうな表情で聖星の裾を引っ張った。

 

「あ、聖星君、止めた方が良いっすよ」

 

「そうか?

面白い展開になってきたと思うけど。

……それに俺も十代と万丈目のデュエル、興味あるし」

 

さっきまで歓迎会に遅れる事を心配していたのはどこの誰だっけ?

心の中でそう叫んだ翔は完璧にデュエリストの顔になっている聖星の言葉に顔を引きつらせた。

同時に誰でもいいからここを通ってほしいと心の底から願った。

 

「貴方達、何してるの?」

 

翔の願いが通じたのか落ち着いた少女の声が聞こえ、そちらに振り替えるとオベリスク・ブルーの女生徒が立っていた。

背筋をピンと伸ばし腕を組んでいる美少女。

彼女は険しい表情で聖星達を凝視している。

 

「天上院君。

なぁに、この新入り達が世間知らずでね。

学園の厳しさを少々教えて差し上げようと思って」

 

「そろそろ寮で歓迎会が始まる時間よ」

 

「っ、引き上げるぞ」

 

少女の言葉に万丈目は気まずそうな表情を浮かべ、その場から立ち去っていく。

2人の少年達も万丈目の言葉に従い慌てて彼の後を追った。

彼らの姿が見えなくなったのを確認し、少女は聖星達に向き直る。

 

「貴方達、万丈目君の挑発に乗らない事ね。

……あいつらろくでもない連中なんだから」

 

「まるで前例があるような言い方だな」

 

「ま、色々とあるのよ。

色々とね」

 

「ふぅん」

 

あまり見たくない生徒間のどろどろとした事情を見てしまった気分だ。

万丈目達が去った方角を見ている間、十代が彼女に俺に気があるのか?と発言し少しだけこの場の空気が和んだ。

肩の力が抜けたのか彼女は可愛い顔で教えてくれる。

 

「オシリス・レッドでも歓迎会が始まるわよ」

 

「そうだ!

寮に戻るぞ!」

 

「あ、待ってよ兄貴!」

 

慌てて走っていく十代と翔。

だから先程聖星が歓迎会は良いのか?と言ったのだ。

聖星はしょうがないぁ、と困った笑みを浮かべ2人を追いかける。

すると十代が振り返り彼女の名前を聞いた。

 

「天上院明日香」

 

「俺は遊城十代、よろしくな!」

 

「俺は不動聖星。

よろしく、明日香!」

 

**

 

歓迎会にはギリギリ間に合い、聖星は一通り食べ終えて部屋に戻った。

流石は学園内でも酷い扱いのオシリス・レッドというべきか、夕飯の内容はお世辞でも歓迎会に相応しいと言えなかった。

簡素すぎる夕飯に聖星は顔を引きつらせ、今後ここでどんなメニューが出るのか心配になった。

 

「明日から授業か……

どんなデッキで行こうかな」

 

「学園内では【ブラック・マジシャン】使いとして通っているようだ。

もう【ブラック・マジシャン】使いで通せばいいと私は思うが?」

 

「それはそれで面白そうだけど、こう……

たくさんの【魔導書】デッキを作って楽しみたいんだ。

前の世界ではあまり楽しいデュエルは出来なかったからな……」

 

異世界で経験したのは命や世界を賭けた正真正銘の決闘。

ダメージは実体化し、負ければ命を失ってしまう。

自分の目の前でも大勢の仲間がバリアンとのデュエルで敗れ、命を奪われた。

特に仲の良かった凌牙が敵に回りⅣ達とデュエルした時の絶望感は今でも忘れられない。

寂しげな瞳で語る聖星の言葉に【星態龍】は何も言えなかった。

 

「あの世界では皆を護るために酷いカードも使った。

だから今回は自分が考え付く限りの【魔導書】デッキで思う存分楽しみたいんだ」

 

「……好きにすればいい」

 

ふっ、と姿を消した【星態龍】。

彼の姿が見えなくなったのを確認した聖星は再びデッキと向かい合った。

すると机の上に置いてある生徒手帳が震え始める。

 

「こんな時間に何だ?」

 

アカデミアの生徒手帳には通信機能があり、様々な連絡に利用されている。

画面を見れば表示されたのは映像つきのメールの受信画面だ。

開けばあの場所で出会ったオベリスク・ブルーの生徒が映る。

一体何の用だと思えば0時にアンティルールのデュエルを行なおうという誘いだった。

随分と嫌なお誘いである。

 

「アンティルールって禁止されてるだろ。

彼、生徒手帳読んでないのか?」

 

「知った上での誘いだろう」

 

「やっぱり?」

 

「乗るのか?」

 

「ま、短い学園生活の中で良い刺激にはなるんじゃないのか?

それにこれから作るデッキのテストの相手には丁度いいと思うしな」

 

まだ0時までには時間がある。

それまでの間、彼と戦うためのデッキを作ろう。

そう決めた聖星はすぐに持っているカードを広げ、デッキを編集しようとした。

すると誰かがドアをノックする音が聞こえ、そちらに顔を向けた。

 

「おい、聖星。

起きてるか?」

 

「十代?」

 

扉を開ければ十代が居て、一体どうしたのだと尋ねれば彼の元にも万丈目からメールが届いたのだという。

成程、標的は注目の的となっている自分達2人で今後目立った行動をしないよう叩き潰す気か。

聖星も先程来たメールの事を話すと十代が言う。

 

「何だ、聖星にも来てたのか!

じゃあ一緒に行こうぜ」

 

「十代。

一応言っとくけど、この学園でアンティルールは禁止されている。

更に時間外に施設を使用するとなると……

下手したら退学だぜ?

それを知ってでも行くのか?」

 

「え?」

 

聖星の言葉に十代は一瞬で固まる。

どうやら知らなかったようで、背中にいる【星態龍】が盛大にため息をついている音が聞こえた。

しかし流石は十代といえば良いのか彼は不敵な笑みを浮かべる。

 

「ふっ。

デュエルを挑まれて逃げるわけにはいかないだろう」

 

「……本当、十代ってデュエルが好きだなぁ」

 

自分もデュエルバカという自覚はあるが、ある程度の危機管理能力とやらは持っている。

今回は無事に終わらせることが出来る確信はあるが、無理そうなら絶対に手は出さない。

だが十代にとってそんな事など関係ない。

デュエルの為なら行く。

そういう男のようだ。

 

「分かった。

俺も行く」

 

「そうこねぇとな!」

 

**

 

それから0時が迫り、聖星は十代、翔の3人で指定された場所を訪れた。

すでにその場所には万丈目達3人が待っており、不敵な笑みを浮かべて十代と聖星を見る。

 

「よく来たな、110番、23番」

 

「どうせ暇だしな」

 

「デュエルと聞いちゃ、来ない理由はないぜ」

 

十代は万丈目と、聖星は自分を呼び出した少年と視線を交えそのままデュエルフィールドに立つ。

聖星と対戦するのは取巻太陽という少年。

彼は見下した笑みを浮かべながら言う。

 

「繰り返すようだが、このデュエルはアンティルールだ。

俺が勝った時はお前の【ブラック・マジシャン】を頂く!

オシリス・レッドにあのレアカードは宝の持ち腐れだからな!」

 

「折角盛り上がっているところ悪いけど、別に俺は【ブラック・マジシャン】使いじゃないぜ」

 

「何!?

【ブラック・マジシャン】を持っているのにか!?

だがお前が【ブラック・マジシャン】を持っているのは事実。

さぁ、構えろ!」

 

「言われなくても」

 

「「デュエル!!」」

 

互いに表示された4000のライフポイント。

聖星と取巻は同時にデッキからカードを5枚引いた。

右側のデュエルフィールドでは聖星と取巻、左側では十代と万丈目がデュエルをしている。

傍観者である翔は心配そうに2人を交互に見た。

 

「先攻は俺だ、ドロー!

俺は手札からフィールド魔法【山】を発動!」

 

「【山】?」

 

って、何だっけ?と真顔で言いそうになった聖星は慌てて言葉を飲み込む。

ドラゴン族モンスターに影響を与えるカードだったと小学生の時本で読んだ気がする。

しかしあまりにも曖昧すぎるため頭をひねった。

そんな聖星の様子に取巻は見下すように笑う。

 

「何だ、【山】も知らないのか?

仕方ないな。

落ちこぼれのお前にこの俺が直々に特別授業だ。

フィールド魔法【山】はフィールド上に表側表示で存在するドラゴン族・鳥獣族・雷族モンスターの攻撃力・守備力は200ポイントアップさせるカードだ」

 

「それだけ?」

 

「はぁ?

それ以外に効果があるわけないだろう?

よくそれでアカデミアの入学試験を突破出来たな」

 

ま、オシリス・レッドの君には相応しい等と勝手に語りだす取巻に聖星は心の中で首を横に振った。

そして同時に思う。

時代の流れって怖い。

 

「(俺の時代で攻撃力・守備力200を上げるために【山】なんて使わないしなぁ。

使うとしたら【竜の渓谷】に【ハーピィの狩場】とか……

それに攻撃力をどうにかしたいのなら【強者の苦痛】とか使えば良いし。

この時代じゃ【山】が現役だったんだ。)」

 

変なところで感動しているとソリッドビジョンによってフィールドが文字通り山へと変わる。

さて、先ほど取巻はドラゴン族、鳥獣族、雷族モンスターの強化のためのカードと言った。

という事は彼のデッキはそれ等3種族のどれかがメインと考える方が良いだろう。

 

「さらに俺は【サファイアドラゴン】を攻撃表示で召喚!

カードを2枚伏せターンエンドだ!」

 

「俺のターン、ドロー。

俺は手札から【魔導戦士ブレイカー】を召喚。

召喚成功時に【ブレイカー】の効果発動。

このカードに魔力カウンターを1つ乗せる。

これで【ブレイカー】の攻撃力は300ポイントアップだ」

 

【魔導戦士ブレイカー】は元々の攻撃力が1600の魔法使い族モンスター。

しかし召喚成功時に魔力カウンターを乗せる効果のお蔭で実質攻撃力は1900である。

力がみなぎるのか【ブレイカー】の周りに紫色のオーラが溢れだし、攻撃力が1600から1900へと上昇した。

 

「ふん、浅はかだな!

罠発動、【奈落の落とし穴】!」

 

「あ」

 

「これで【ブレイカー】はゲームから除外される!」

 

取巻が発動したのは攻撃力1500以上のモンスターを問答無用で破壊し、しかも除外してしまうというやっかいな罠カード。

【ブレイカー】が立っていた場所が歪み、底無し沼のようになり【ブレイカー】は飲み込まれてしまう。

 

「あちゃぁ……

迂闊だったなぁ。

カードを2枚伏せてターンエンドだ」

 

【魔導戦士ブレイカー】は乗っている魔力カウンターを取り除くことで場の伏せカードを破壊する効果を持つ。

折角その効果を使って伏せカードを破壊しようと思ったのに。

仕方なく聖星はカードを伏せてターンを終了した。

 

「俺のターン!

俺は手札から速攻魔法【サイクロン】を発動!

お前の伏せ左側のカードを破壊させてもらう!」

 

「対象となったカードを発動。

罠カード、【強制脱出装置】。

悪いけど【サファイアドラゴン】には手札に帰ってもらうぜ」

 

「何っ!?

くっ、それなら俺はもう1度【サファイアドラゴン】を召喚だ!」

 

聖星の罠カードで手札に戻された【サファイアドラゴン】は再び取巻の場に現れる。

再び召喚された【サファイアドラゴン】は青玉の翼を大きく広げて威嚇するように唸りだす。

 

「【サファイアドラゴン】でプレイヤーにダイレクトアタック!」

 

「ぐっ!」

 

バトルフェイズに移行し、【サファイアドラゴン】が聖星に向かってくる。

美しい竜から放たれた攻撃は聖星を貫き、その時の衝撃で体がぐらつく。

これで聖星のライフは1900まで削られた。

 

「ふん。

やっぱり落ちこぼれのオシリス・レッドだな。

こんな攻撃も防ぎきれないのに俺達ブルーに逆らうなんて生意気なんだよ!」

 

聖星のライフを見て高笑いを始める取巻。

まだまだライフと手札はあるため勝つ可能性は十分にある。

それなのに勝利を確信するのは早いんじゃないのか?等と思いながら聖星は苦笑を零した。

 

「俺はターンエンドだ!」

 

「俺のターン、ドロー」

 

ゆっくりとカードを引く聖星。

さて、いい加減反撃に出ないと次のターンで終わってしまう。

入学初日のデュエルが反撃せずに一方的な敗北など笑えない。

加わったカードと手札を見比べながら聖星はカードを発動した。

 

「俺は手札から【名推理】を発動」

 

「【名推理】?」

 

「相手はレベルを1つ宣言する。

そして俺はデッキからカードをめくり、最初に出てきたモンスターカードのレベルが宣言されたレベルだったらめくったカードを全て墓地に送る。

けど違った場合はそのモンスターを特殊召喚できる」

 

「っ!

つまり1枚で高レベルモンスターを呼べるって事か……」

 

「そういう事」

 

微笑みながら肯定した聖星に取巻は険しい表情を浮か、実技試験を思い出した。

彼のデッキが魔法使い族で固まっているのはすでに明白。

しかも彼は【ブラック・マジシャン】を使用していた。

それなら自分が宣言すべきレベルは1つ。

 

「俺はレベル7を選択する!」

 

「分かった。

まずは1枚目」

 

ゆっくりとデッキからカードをドローする聖星。

めくったカードを確認した聖星はそれを取巻に見せる。

 

「【ゲーテの魔導書】。

魔法カードだ」

 

「(モンスターじゃない)」

 

「2枚目は魔法カード【アルマの魔導書】、3枚目は魔法カード【グリモの魔導書】、4枚目はフィールド魔法【魔導書院ラメイソン】」

 

次々とめくられるのは魔法カード。

4枚もめくったのにモンスターカードが出ないため取巻は聖星のデッキ構築を疑った。

もしかすると魔法カードばかり入れてモンスターカードがないデッキなのかもしれない。

だとしたらなんてデッキバランスの悪い構築なのだろう。

これだからレッドはと思い口を開こうとしたら聖星が笑った。

 

「(何?)」

 

「5枚目……

モンスターカード【魔導鬼士ディアール】。

レベルは6だ」

 

「なっ、7じゃない!?」

 

「宣言したレベルじゃない。

よって【魔導鬼士ディアール】を特殊召喚。

出番だぜ、【ディアール】」

 

聖星の声と同時に彼の場に紫色の魔法陣が描かれる。

魔法陣の中央が輝きだし、そこから1体のモンスターが現れた。

巨大な翼に2本の角。

逞しい肉体だが禍々しいオーラを身にまとい、人とはかけ離れた外見をしているモンスター。

悪魔の外見をしている彼は大きく両腕を広げ、召喚された喜びを表すように叫びだす。

 

「グゥォオオオオ!!!」

 

ホール内に響く【ディアール】の雄叫び。

ここ最近全くデュエルに出していなかったから出られて本当に嬉しいのだろう。

別に精霊が宿っているわけでもないのに、愛着がある故聖星は勝手にそう思った。

聖星は小さく頷き、高らかに宣言する。

 

「よし、行くぜ。

【ディアール】で【サファイアドラゴン】に攻撃」

 

【ディアール】の攻撃力は2500で【サファイアドラゴン】より400ポイント高い。

剣を振り上げた【ディアール】は【サファイアドラゴン】に向かってジャンプする。

 

「さらにリバースカードオープン、【マジシャンズ・サークル】。

魔法使い族の攻撃宣言時発動する。

互いにデッキから攻撃力2000以下の魔法使い族モンスターを特殊召喚する」

 

「なっ、そいつ魔法使い族なのか!?

だが罠発動、【聖なるバリア-ミラーフォース-】!」

 

取巻の反応は尤もだろう。

聖星も初めて【ディアール】のカードを見た時魔法使い族という表記に驚いた。

まぁそれなら【魔草マンドラゴラ】にも同じような事が言えるが。

 

「悪いけど【ディアール】は破壊させない。

手札から速攻魔法【トーラの魔導書】を発動。

【トーラの魔導書】はフィールド上の魔法使い族1体に魔法、または罠の耐性を与えるカードだ。

俺は【ディアール】に罠の耐性をつける。

よって【聖なるバリア-ミラーフォース-】の効果では破壊されない」

 

「なっ!?」

 

【ディアール】が大きく剣を振り下ろすと【サファイアドラゴン】を神秘的な結界が守る。

しかし【ディアール】の目の前に1冊の魔導書が現れそれが結界を打ち破った。

 

「そして、チェーン処理により【マジシャンズ・サークル】の効果が適応される。

俺はデッキから攻撃力2000の【魔導冥士ラモール】を特殊召喚」

 

【ディアール】が剣を下ろす動作を止めると、聖星の場に巨大な鎌を持った紫色の魔法使いが現れる。

彼は冷たい瞳で取巻を見つめ【ディアール】以上の禍々しさを放っている。

 

「特殊召喚に成功した【ラモール】の効果発動。

このカードは墓地の【魔導書】の種類の数によって効果を得る」

 

「何、何だその効果は!?」

 

「3種類以上の時、このカードの攻撃力を600ポイント上げる。

4種類以上の時、デッキから【魔導書】を1枚手札に加える。

5種類以上の時、俺のデッキから闇属性のレベル5以上の魔法使い族モンスターを1体特殊召喚する。

俺の墓地には【ゲーテの魔導書】、【アルマの魔導書】、【グリモの魔導書】、【魔導書院ラメイソン】、【トーラの魔導書】……

5種類の【魔導書】が存在する。

よって【ラモール】の全ての効果が発動する」

 

「3つの効果が同時に発動するだと!?

ふざけるなっ!!」

 

聖星と取巻の会話の中【魔導冥士ラモール】は大きな鎌を振る。

そして自身の攻撃力が2000から2600に上昇し、自分の隣に紫色の魔法陣を描く。

その魔法陣から1枚の魔法カードが現れた。

 

「俺はデッキから【トーラの魔導書】を手札に加える。

そしてレベル8の【魔導獣士ルード】を特殊召喚」

 

魔法カードを追いかけるように現れたのは獅子の顔を持つ魔法使い。

手に持っているのは2匹の動物が描かれている盾。

表示された攻撃力は2700だ。

 

「そんな……

攻撃力2500以上のモンスターが3体も……」

 

「行くぜ。

【ディアール】はそのまま攻撃」

 

やっとの攻撃宣言に【ディアール】は再び剣を振り下ろし【サファイアドラゴン】を引き裂いた。

【サファイアドラゴン】は粉々に砕け散り、取巻のライフは4000から3600へと減少する。

 

「【ラモール】と【ルード】でダイレクトアタック!」

 

「うわぁああ!!!」

 

自分に向かってくるモンスターの攻撃。

取巻は反射的に目を瞑り、その攻撃を受けた。

そして彼のライフは0へとカウントされ、聖星の勝利が確定した。

 

「ふぅ、終わった」

 

デュエルが終わり、ソリッドビジョンが消えた。

デュエルディスクにセットされているカードをデッキに戻した聖星は取巻に顔を向ける。

彼は呆然と立ち尽くしており聖星を見ていない。

 

「……そんな……

…………ブルーの俺が……

…………レッドなんかに……」

 

「えっと……」

 

小声で繰り返される言葉に声を掛けようか迷う。

今までなら笑顔で相手と言葉を交わしていたが、どうもそれが出来る様子ではない。

どうしようかと迷い、助けを求めようと翔へと振り返ると……

 

「凄いよ聖星君、オベリスク・ブルーに勝っちゃうなんて流石っす!!」

 

「……これが彼の実力」

 

目を輝かせる翔と目を見開いている明日香がいた。

彼女の姿に聖星は不思議そうな表情を浮かべてここに来た時の事を思い出す。

自分達も3人、万丈目達も3人で来ていて彼女の姿はどこにも見なかったはずだ。

 

「えっと、何で明日香がここにいるんだ?」

 

「えっ、えぇ。

丁度通りかかってね……

それより凄いじゃない。

……問題は十代ね」

 

「え?」

 

聖星に声を掛けられ現実に引き戻された明日香は答える。

そしてゆっくりと十代達の方に目を向ければ、劣勢に立たされている十代の姿が目に入った。

一目見て不利な状況に思わず心配したが、彼の表情を見てその必要はなくなった。

どうやら十代は劣勢になればなるほど燃えるタイプのようで逆に闘志に燃えている。

 

「次に十代が引くカードによって勝敗が決まるな……」

 

「そうね」

 

十代の意気込みは十分だ。

だがあの状況を逆転するカードを引けるかどうか、まだ彼のデュエルをよく知らない聖星には判断がつかない。

デュエルを楽しみデッキを信じる十代と、他人を見下しデュエルを楽しんでいない万丈目。

勝利の女神はどちらに微笑むのか気になるところだ。

すると外から誰かの足音が聞こえてきて、明日香の表情が一変した。

 

「まずい、ガードマンが来るわ!」

 

「えっ!?」

 

「アンティルールは校則で禁止されているし、時間外に施設を使っているし、校則違反で退学かもよ!」

 

「十代!!」

 

明日香の言葉に聖星も声を張り上げる。

万丈目も事のヤバさを理解しているようで、取巻達を連れて帰ろうとする。

当然デュエルバカの十代は引き留めたが、万丈目は十代の実力はまぐれだと言い張り帰ってしまった。

 

「兄貴、見つかっちゃうよ!」

 

「さぁ、こっちよ!」

 

「う~~、嫌だ!

俺はここを動かない~~!!」

 

「兄貴っ!!」

 

「いい加減にしなさい!!」

 

面白くなってきたデュエルを中断されたせいか、十代は絶対に動かないと駄々をこねる。

しかしこのままでは見つかってしまい最悪退学処分だ。

翔と明日香は頑なに動こうとしない十代に頭を抱えた。

見ていられない聖星は仕方なく十代の肩に手を置き、素直に謝った。

 

「十代。

ごめんな」

 

「は、何だよ聖星?」

 

瞬間、聖星が十代の腹に拳を叩き込む。

同時に十代の苦しそうな声が漏れ、明日香達の方から小さな悲鳴が聞こえた。

十代は気絶したのかその場に力なく倒れ、聖星は彼を担ぎ上げて明日香達に振り返った。

 

「さ、明日香。

案内してくれ」

 

「え、えぇ」

 

聖星の言葉に明日香は小さく頷き、道案内をする。

そんな2人を見ながら翔は呟いた。

 

「……聖星君、意外と暴力的なんすね」

 

その後十代が目を覚ましたのは朝食前で、彼はすぐに聖星の部屋に突撃した。

いくらあの場から逃げるためとはいえ痛かった事を訴える十代に聖星は何度も謝った。

そして朝食後にデュエルするのなら許すと言われ、そのままデュエルの約束をした2人である。

おい、それで良いのか十代。

2人の会話を最後まで聞いていた【星態龍】と翔の心がシンクロした瞬間である。

 

END

 




ここまで読んで頂きありがとうございます!
聖星は口で説得するのではなく、武力で説得(笑)するタイプです。
それに遊星に鍛えられている設定なのでかなり強いです。
遊星のように相手が複数いても勝てます。
まぁデュエルだったら遊星のように1ターン3キルは出来ません。


今回聖星が使ったデッキは一応【闇属性魔導書】です。
モンスターは全て闇属性に統一しているので【魔導書士バテル】も【魔導教士システィ】も入っていません。


あと明日はPRIMAL ORIGINの発売日ですね!
新規カードに魔導書がないのは寂しいですがゴーストリック、エヴォルカイザー、エヴォルド、エヴォルダー、幻獣機のために買います。
後個人的にはアンティーク・ギアの新カード登場に驚きましたね。
ま、マジかっ…!!
これでクロノス教諭のデッキにさらなる夢がっ…!とわくわくしています。
では失礼いたしました。


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