元海兵がダンジョンにいるのは間違っているだろうか   作:ルーニー

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お気に入りが1000人いったので死蔵させておこうかなと思っていたONE PIECE世界の話を出します。本編には何らかかわりのないものなので見なくてもいいよ!


おまけ
本編とは全く関係ないお話


 海軍の船が穏やかなフーシャ村に停泊している。海軍自体が来ることは珍しい、とまではいわないが平和な海とすら言われている東の海(イースト・ブルー)ではそれほどないことだ。それも英雄とすら呼ばれている人物の船が泊まることがあることは滅多にないことだ。

 物珍しそうな表情を浮かべている村民を前に、ガープは珍しいことに神妙な表情を浮かべている。複雑そうな表情、とも言えるほどに珍しい表情をしたガープは、箱を部下に持たせてフーシャ村の中をただ静かに歩いていた。

 誰もガープの前を通ろうともしない中、村の途中で大柄な女性がこん棒を片手に怒り狂った表情でガープを迎えた。

 

「どの面下げてここに来やがったガープ!」

 

 女性、ダダンは手に持っていたこん棒をガープへと殴りつけた。ガープもそれをよけることなく頭で受け、地面へと倒れた。海兵は驚きと怒りで武器を持って応戦しようとするが、それをガープが知り合いだと言って止める。

 

「テメェ、あの戦争の現場にいて、なんでフィースが死ぬことになってるんだ!」

 

 前々から処刑を宣言されていたエースが生きているということに安堵したが、しかし新聞にはフィースの活躍が書かれていなかった。正確には、フィースが大罪人である海賊エースとルフィの兄弟であったこと、そしてエースとルフィをかばって死んだということだけが書かれていたのを、発見してしまった。

 

「あの野郎は世話になったからって、毎年様々なものを私たちに送ってくれていた。部下のためにと様々な嗜好品を送ってくれた。私のためにと見た事のないタバコを送ってくれもした。こんな山賊にも優しかった、そんな野郎が、どうして兄弟をかばって死ななくちゃいけないんだ!」

 

 ボロリ、とダダンの目から涙があふれてくる。最初はガープから押し付けられた迷惑な子供だと思っていた。ガープから頼まれた手前引き取りはしたが、最低限の食事と最低限の寝る場所を与えただけで勝手にしていろ、という放任主義で見ていた。

 けど、フィースはそんな中でも感謝していたのがダダンたちにはわかった。洗濯物や食事の準備、家の掃除を引き受けてくれた。狩りができるようになってからは一定量の肉を分けてくれていた。

 そんなフィースが、サボが死んでからふさぎ込んでしまったのをエースとルフィも一緒になって心配もした。そして何を考えたのか海軍に入ることを決意してガープに連絡を取り、一家全員に挨拶をしてそのまま海軍に入った。海軍として活躍をして新聞に載れば一家そろって喜んだ。最年少で少将まで上り詰めたとニュースに流れれば一家で盛り上がったりもした。それほどまでにダダン一家はフィースたちのことを大切に思い、同時にフィースたちを家族だと思っていたのだ。

 

「エースとルフィが心配だよ。あの野郎たちの目の前で死んだんだから、あの野郎たちのことを想うと、胸が張り裂けそうだよ……!」

 

 涙を流しながらダダンはエースとルフィを想う。息子のようにも思っていた子が死んだのを見て、遠くにいる自分がこんなにも悲しいのだから目の前で兄弟を亡くした2人は自分よりももっと悲しいに違いない。それこそ、伝聞でサボが死んだと聞いた時よりも悲しんでいる。

 

「……エースとルフィがどこにおるのかはワシにもわからん。じゃが、間違いなく生きてはおるじゃろう」

 

 ガープの心情は、正直なところホッとしているところがあった。海賊として暴れているものの、片や実の孫、片や長い時間孫と同じように育てた、家族が生きているとなれば祖父として安堵できる。しかし、それでも、手塩にかけて育ててきた孫同然のフィースが兄弟を救うためにその命を落としたとなれば、戦争が終わってからもガープは1人泣いたこともあった。

 

「今ワシにできるのは、フィースの弔いだけじゃ」

 

 ガープは後ろにいる海兵は箱を、棺を見る。人一人が簡単に入る大きさの棺は中を見ることはできなかったが、しかしガープの表情を見ただけでその中に誰がいるのかはダダンは察することができた。

 

「他の連中がうるさかったが、なんとか持ってくることができた」

 

 この場にいるのは裏切り者となった今でもフィースを慕う者ばかりだ。時を同じくして雑用をしていた者、鍛錬を共にした者、上司として面倒を見たもの、部下として従っていた者。いずれかの者もフィースを慕い、尊敬していた者ばかりだ。

 

「……フィースの遺体を、どうやって持ってこれたんだ」

 

「なに。()()()()の願いだ。遺体を持ってくることぐらいわけはない」

 

 フィースの願い。まだ伍長にもなっていない一般兵だったころだ。その時に雑談としてガープに対して言っていたのだ。もし俺が死んだときに体が残っていたのしたら、骨を埋めるなら第二の家族のダダンたちのところが、ガープの故郷がいいと。お前は死なんわい!とガープはそれを笑っていたが、まさかこんなことになるとはとガープもその時は思っていなかった。

 

「海軍の裏切り者となったフィースはその遺体は海軍として処理はされんようになった。だからワシが違う場所へ遺体を埋めると、そう言ったら勝手にしろと言われたわい」

 

 実際はそれ以上の弾劾にも似た責任の押し付けや怒号もあったのだが、ガープの知らんの一声でそれすらも無視してここまで来た。あのマリンフォード頂上戦争にて多くの海兵が失われ、その中にフィースを含めた少将や中将クラスの海兵すらも命を落としている。その中で海軍の英雄とも言われているガープに責任を持たせて除隊、もしくは処刑なんてことをすれば海軍の戦力が大きく低下するのは目に見えている。それほどまでに英雄という名と今までの功績は大きなものであるし、同時にガープの実力が大きなものであることを示している。だから配下から裏切り者が出ようとも、好き勝手やっていようともガープは海軍に居られるのだ。

 それを知るはずもないダダンはあふれる涙を抑えるように目を抑えた。

 

「……そうかい。フィースが、ここがいいって言ったのかい」

 

 ダダンの押さえた目から涙があふれてくる。家族同然にも思っていたフィースが、同じく家族と思ってくれていた。それを知って嬉しいと思う反面、やはりフィースの死は悲しいものだ。

 

「……それで、どうするんだい。埋める場所はもう決まっているのかい」

 

「フィースが、エースたちと兄弟の契りを交わした場所。あそこがいいだろう」

 

「なんでそんな場所を知っているんだい」

 

「フィースから色々と聞いておってな」

 

 そうかい、とフッと諦めにも似た笑みを浮かべるダダン。どうして場所まで知っているのかを聞きたかったが、どうせフィースにしゃべらせたんだろう。そう思い、ダダンは道を開けた。ガープもそれに礼を言い、部下を引き連れてダダンの住む山へと足を進めた。

 音もなく棺が運ばれていく様を見て、ダダンはフィースの冥福を祈る。せめて、あいつの救った兄弟たちの味方でいる。そう心に誓い、ダダンは手を合わせた。

 

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