元海兵がダンジョンにいるのは間違っているだろうか 作:ルーニー
「ただいま戻りました〜」
ロキ・ファミリアとの模擬戦を終えて寄り道をすることなくアストレア・ファミリアの拠点に戻る。正直いつまでもここにいるの大丈夫なのかと思わなくはないが、俺のやらかすことを考えたらここに置いておいたほうがいいだろうと判断してここに帰ってくるように言われている。
なんで俺がやらかすこと前提なんだと文句を言いたくなるが、まぁこの世界の常識もわかってない状態で外に出ても迷惑をかけることになるかもしれないと思ったらそうなるもの仕方ないかと文句を押し殺す。
ドアをノックして中から入ってもいいと許可が下りたのを聞き、ドアを開けて中に入る。そのまま応接間に入ると、中央の机にはアストレアさんとアリーゼ、ライラ、輝夜、リューがさっきまで雑談していたのかカップを持って座っていた。
「ロキ・ファミリアはどうだった?」
「フィンとしかやりあってないが、体感少佐クラスぐらいだとは思う。
「すげぇ。何言ってるかさっぱりわかんねぇわ」
机に乗っていたお菓子をいくつか摘まみ、来客用のソファに落ちるように座る。行儀が悪いとリューが睨みつけてくるがそれを無視してお菓子を口に放り込んでロキ・ファミリアでのじゃれあいを思い出す。
フィンの戦いは正直に言うと本部中佐ぐらいならギリギリ何とか相手ができるぐらいにはある。それに俺を見てもなお勝手に動くことはなかった周りの団員を見るに、あそこはフィンたちを起点として軍隊として動くことをメインにしているタイプだろうことは見て取れる。個別の戦いが最も得意というわけではないのだろう。
逆に言えばそれ以上の見どころは今のところはないとも言えるが、あのタイプはセンゴクさんが好みそうなタイプだ。もしここにセンゴクさんがいてスカウトができたと言えばまず自分のところにほしいと言ってもおかしくはない。ガープさんは逆にめんどくさそうに対応しそうなタイプだとは思うがな。
あぁ、だけどあのデカいのは例外だな。あんな自分の信じるモノ以外に従う気がないやつは地位なんてどうでもいいだろうし、最後まで命令に従うわけでもなさそうだし誰も欲しがることはないだろうな。ある意味ロブ・ルッチよりもたちが悪い。
「あとは、あの
「お前本当にヤバいな」
脳裏にあの糸目の
「
「お前本当に外でそんなこと言うなよ?しょっ引かれても知らない人ですっつうからな?」
俺の言葉にライラがドン引きしたかのように顔を引きつらせて言う。そんな俺を、アストレアさんは出来の悪い子供を見るかのような目で俺を見、アリーゼ、輝夜は我関せずと言わんばかりにカップを啜り、リューは俺を犯罪者を見るかのように睨みつけてきている。
んな悪いこと言っているか?とリューの視線を受けて困惑している中、リューの金髪を見てふと脳裏にロキ・ファミリアにいる金髪の女の子を思い出した。
「そういや、あいつらの中に金髪の子がいたけど、大丈夫なのか?たぶんあり方とあそこのやり方とで相性よくはないだろ」
「金髪の子、っていうとアイズちゃん?」
「どういうこと?ロキ様は自分の眷属には深い愛情を持ってるし、アイズに対してはかなり溺愛してるってことで有名よ?」
俺の言葉にアリーゼと輝夜が何を言っているんだと言わんばかりの表情を俺に向ける。あれから溺愛されている?と脳裏にぶん殴りたい糸目が気色の悪い笑い声をあげてあの子を愛でているという想像もしたくない場面が浮かび思わず舌打ちが出たが、強いということを考えてもアストレアさんが何も言わないということは問題にはならない程度なんだろうと自分を落ち着かせるように深く息を吐く。
「あの子、個人で動くのが好きなタイプだろ。指示の下で動くのが苦痛とまでは言わんが息苦しいと感じてんじゃねぇの?」
「……なんでそう思った?」
「あそこ、どちらかと言うと軍の動きをするタイプだろ?俺が生意気な態度取ってたのに誰1人として動かなかったところを見るに、上の命令にはちゃんと従うように教育されてるだろうことは予想がつく。強いやつが好き勝手動くんじゃなく、上の指示に従って行動、人的消耗を抑えるのがメインの動きなんだろうな」
「…………」
「それに対してあの子、アイズって名前だったか?は多分そういうのあまり考えずに前線に出て暴れたいタイプだろ。強くなりたそうにしてたし、前偶然会った時も好き勝手出歩いてるみたいだから集団行動は苦手だと思ってたが、違うのか?」
「…………」
俺の疑問にアストレアさんたちは驚いたかのように目を見開いて俺を見てくる。誰も言葉を発さず互い互いに視線を送り合っているというよくわからん状況に首をかしげているとライラが恐る恐るといったように声を出した。
「お前、そんなこと考えれたの?」
「戦いメインとはいえ一応将校だぞ俺は」
強いだけで将校になれるわけがねぇだろ。若干名その毛がないわけではないが、軍を動かすようになるんだから佐官になった時も将校になったときも昇格するための試験や勉強はちゃんとある。得意ではないとはいえ勉強はちゃんとしてきてるんだぞこっちは。
いや、自由人過ぎても強いから海軍大将の座を蹴り続けて海軍中将で居続けられているガープさんとかいるしそうでもないか。とはいえあの人もちゃんと海兵たちの教育を受け持つぐらいには知識があるし運用もちゃんとできる。やろうとしないだけなんだ。ちゃんとやってほしいけど。
「しょーこーってなに?」
「あ?あー、そうか。ここだと軍なんてものはないからわからんか。お前らにわかりやすく例えるとファミリア単位を動かせる偉い人だ。上から数えたほうが早いぐらいには偉い人なんだぞ俺は」
「それ全滅しませんか?」
「失礼だなお前。少佐になってからガープさんが率いてた部隊メインで動かしてたの俺なんだぞ。ボガードさんの補佐ありきとは言え、寝てるか最前線で暴れるガープさんの代わりに指示出してたの俺なんだぞ」
あれはガープさんなりの俺の佐官としての教育を兼ねたものなのだろうとは思う。それはそれとしてガープさん好き勝手動くからこっちの指示が無駄になることが多かったのはどうにかしてほしいとは思ったが。
「それじゃあ、フィースって指揮とかできるって、ことなの?」
「得意じゃねぇけど、まぁ軍艦数隻分の船員への指示はできるぞ。さすがに専門にしてる人に比べたらお粗末ではあるがな。教官もやったことあるぞ。数名しか続けられなくて解任されたけどな」
まぁ基本的にガープさんとともに行動していたのと大規模な海賊なんてそう多くいないからそういう場面はそう多くはなかったが、そういう場面になったらちゃんと指示を出す程度には勉強もしてきている。なんなら指示に従うように教育するのだってやったことはある。
「ねぇ、そういうことができるなら私たちを鍛えることってできない?」
視線を互い互いに合わせていたアリーゼはお願いするかのように、しかし真剣な表情を浮かべてそう言った。渋い表情を浮かべていたが輝夜もライラもリューもアリーゼの言葉を取り消すように言わないあたり俺に鍛えてもらうことに異論はないのだろう。
「いいぞ。言っとくけどキツいからな。途中で投げ出せると思うなよ?」
知らないだろうとはいえ、俺に鍛えてもらおうとするとはな。俺はおろかガープさんの鍛錬にも食いついていたコビーを思い出すな。あいつぐらいの熱意がありそうだし、コビーにやっていた鍛え方でこいつらを鍛えてやるか。
「おかえり。どうだったかしら?」
バベルの塔の最上階。オッタルはフレイヤの部屋に入るなりすぐにまるで処刑を待つかのように膝をつき首をフレイヤへ差し出していた。
「……正直に申し上げますと、私では手も足も出ません」
「……そう。なら、あの子にはちょっかいをかけないほうがいいわね」
オッタルの言葉にフレイヤは軽く目を見開き、軽くため息を吐く。こうして首を差し出すかのように頭を下げてきたということは、オッタルでは手が出せなかったのだろうということは予想できていたのだが、まさか本当にそうだとは思ってもいなかった。
「それで?どこもケガしてる様子じゃないけど、ロキ・ファミリアからエリクサーでももらったの?」
「……いえ。戦うまでもなくわからされました。奴のほうが私よりもはるかに高みにいます。レベルも8、いえ、それ以上あっても不思議ではないほどに」
オッタルの言葉にフレイヤは驚きで目を見開き、同時に言葉を失った。オッタルの言葉を疑うわけではない。いや、そもそも神に対して嘘はつけない。オッタルの戦闘に対する真摯さはフレイヤもわかっているつもりだ。だからこそそのオッタルがかつてのゼウス・ファミリアとヘラ・ファミリアの団長と比類しかねないと判断をするほどの実力者であると言い切るほどだとは思ってもいなかった。
「……そこまでなの?」
「はい。もし奴が私を排除すべきだと思われたのであれば私は抵抗する間もなく肉の塊になっていた。奴はそれほどの実力を持っています」
オッタルの脳裏に浮かぶのは自分にすら反応することができないほどの移動速度、そして触れてもいない壁に大きなクレーターを作るほどの力だった。もしあれが直接自分の体に叩き込まれたのだとすれば、自分は間違いなく死んでいた。避けることもなく、受けきることもできず、ただ血を流し続ける肉の塊になっていたのは想像に難くなかった。
「申し訳ありません。
だからこそ、フレイヤから隙を見てフィースを秘密裏に処理するように命じられたのにそれができなかったオッタルは言い訳をすることもなくただ頭を下げた。
どうしてそうしなければならなかったのか、最初命じられた時は拒否こそしなかったものの、ただ態度が悪かっただけでそこまでしなければならないのかと疑問に思っていたオッタルだったが、あれほどの力を見れば納得せざるを得なかった。あれは間違いなく敬愛する主神を容易に害することができる力だ。
「……いえ、彼の機嫌を損なわせるものではないと分かったことをよしとしましょう」
「それでも、私は何もできなかった。どこの誰かもわからないのに、我々よりもはるかに強い存在など、フレイヤ様にとっても危険な存在となりうる。フレイヤ様から見ても、奴はそれほど危険だったということでしょう」
さらに、フィースは自分が隙を見て命を狙っていたことも察していただろう。そうでなければ最後に自分に確認するように声をかけるわけがない。フィースの底知れぬ実力に、オッタルは恐怖を表情に出すことこそなかったがフィースに対する恐ろしさを感じぬわけではなかった。
「危険。そうね。彼の魂は私たちに対してあまりにも攻撃的すぎたもの。彼の魂は、言うなら海の中の嵐のようだった。津波が海を大きくうねり、業風が空を吹きすさび、轟雷が空気を震わせていた。よほど私たちのことが嫌いなのね、話を進めていくうちにそれも強くなっていくのがわかったわ」
フレイヤが思い出すのはアストレアに呼び出されて初めてフィースを見た時のことだった。最初は礼儀もわからない田舎者だと思っていたのだが、ロキの言葉をきっかけにフィースの魂が自分たちに対して攻撃的になっていくのが分かったときは表情こそ出さなかったものの、まさかあのアストレアが紹介する子が自分たちに攻撃的だったとは思ってもいなかった。
だからフレイヤは、もしかすれば自分の目的の障害になると思いオッタルに可能であれば殺害するように命じたのだ。
しかし、それがまさかオッタルですら手も足も出ない存在だったとは夢にも思わなかった。絶対に処理するように命じなかったのが幸運だったかと自分の判断に喜びすら感じることになるとは、本当に思いもしなかった。
「危険といえば危険だけれど、ロキの子たちやロキ本神にすらも被害がなかったのを見るに無差別に暴力に走るわけではないだけマシと思うべきね」
同時に殺意すらにじみ出ていたのではないかとすら思えるほどの荒ぶり方をしていた魂だったのに、ロキの子やロキを殺さなかったのを見るに理性はあるのだろう。ロキの子の誰かは死んでいてもおかしくはないと思っていたのだが、そこまで分別がないわけではないのであれば余計なことをして自分に被害が来るようなことはしないほうがいいだろう。
「みんなに厳命して頂戴。あの子に手を出すことは決してないように、と」
「御意に」
フレイヤの言葉は絶対だ。フレイヤの言葉を破ってフィースに手を出すようなことがあれば、フレイヤの手足たる眷属が減るようなことになってもおかしくはない。もしフレイヤの言葉を破るようなことをするようであれば、たとえフレイヤの手足が減るようなことになったとしてもより多くの眷属が減るよりはマシだと、自分の手で処分することすらも視野に入れてオッタルは深く頭を下げて肯定する。
「(奴の放った
同時に、オッタルの脳裏にはフィースの放った技がいつまでも繰り返し思い出していた。魔法ではなく、スキルですらない。鍛錬の末に習得したであろうフィースの技術に、最強を冠している身であるにもかかわらず恥であると分かっていてもオッタルは憧憬を覚えていた。
ありえないことだと笑われてもおかしくないようなことを、自分でもできないことをフィースがやり遂げている。レベルが高かったのだとしても、フィースは人の身でそれを成していた。
ならば、それを自分ができないわけがない。できないなど、敬愛する神へ最強を捧げる身にとってはあってはならないことだ。
「(高いな。オレの目指すべき高みは)」
今はまだ至らぬ身だろう。だが、いつかはその高みへ至ってやる。もはや失ってしまった最強を再び神へ捧げるために、オッタルはいつかフィースを打ち倒すことを言葉に出すことなく誓った。
「…………」
「大丈夫か、フィン」
「……とても、大丈夫とは言えないね」
作戦会議室ともいえる部屋の中、フィン、リヴェリア、ガレスの3人は誰も入ってこないことをロキ・ファミリアの全員に厳命し、さらにはフィースへの接触すらも禁ずる命令を下したうえで話し合っていた。
すでにフィースから受けた攻撃の傷は癒えているとはいえ、フィンの心は荒れに荒れていた。なにせぽっと出の無名の個人1人に対して最強のファミリアの双璧とすら呼ばれているロキ・ファミリア、そしてオラリオ最強の猛者オッタルですらも手も足も出なかったのだ。リヴェリアの話からそれを言いふらすようなことはしないだろうとは言われているが、フィン個人の目的においてはこの状況は最悪と言ってもいいほどだった。
「完敗だ。いや、完敗なんてものじゃない。こっちはなにもできなかったどころか全力で攻めたのに、何も効かなかった。それどころか、彼がその気なら息も切らすことなくオッタルを含めた全員が地面に伏せていたことは想像に容易い。惨敗以外の何物でもない」
深くため息を吐き、それでいて右手は静かに強く握りしめられていた。フィンをはじめロキ・ファミリアは自身の立ち位置を誇りに思っている。そんな中でどこの誰かもわからないような人物に完膚なきまで叩きのめされたとなれば、それまで必死に築き上げてきたものどころか足元すらも崩れていくような感覚すら感じるほどの衝撃がある。
ロキに至ってはいろんな手を使ってでも叩きのめしてやると怒り狂っていたが、ただでさえオラリオ最強のオッタルですら勝てる見込みがない上に
それほどまでにフィースという存在はロキ・ファミリアどころか常識ですらありえないと叫びたくなるような存在だった。正直なところ、ロキが荒れていなければ自分が荒れていたかもしれないとフィンは実感していた。
「……しかし、彼のロキへの態度はあまりにも常軌を逸していた。結果的には手を出していなかったが、それでもあのまま手にかけていてもおかしくはないとすら思えるほどだったぞ」
「まさか神を手にかけようとするとはな。あそこまでロキに対して怒りを露わにするとは、よほどのことをしでかしたのか?」
「いや、初めて会ったときを考えると、彼はロキのことを知らないようだった。あれはロキ単体というより、むしろ神全体へ向けられていると思う。なぜアストレア様は大丈夫なのかはわからないけどね」
フィースの神への憎悪はフィンたちにとって初めて見るものであった。神を疎く思う人はそれなりにいることはあれど、死を望むほどの憎悪を露わにしている人間はそれなりに生きてきたフィンやガレス、リヴェリアでも見たことがなかった。
「不幸中の幸いというべきか、彼はいたずらにこの街を襲うような人間じゃないのは僕たちが生きていることで証明されている。もし彼が闇派閥、もしくはそれに準ずるような人間であったなら僕たちは目障りでしかないだろう」
「それに、そもそも彼はアストレア様の眷属だ。アリーゼたちやアストレア様の目をかいくぐって悪さをするような人間であるのならそもそも眷属にはなれないだろう」
「あれほどの実力を持っていながら誰1人として知らなかったというのもおかしな話ではあるがな」
フィンの言葉はリヴェリアもガレスも肯定できた。アストレアの見る目がないわけがなく、アリーゼたちも街を守る正義を名乗っているうえに実績もある。あそこまで露骨に嫌悪感を露わにしていても眷属にできると判断しているのだからこの街に害を与えようと考えていないのは間違いないだろう。
「問題はあれほどの者が意識を失うほどの傷を与えられる実力者がここにいるということか」
ガレスの疑問にフィンもリヴェリアも黙ることしかできなかった。初めての会合の時、アストレアは重傷を負っていたところを保護したと言っていた。ギルドからの要請がない限りオラリオの外に出ることはまずないこと、そしてそんな傷を負った状態でこの街に入るとなると間違いなくガネーシャ・ファミリアが見逃すはずがないことを考えると間違いなくこの街の中で重傷を負ったのだろう。
つまり、オッタルにすら勝てるフィースに勝てる相手が誰も知らずにこの街に潜んでいるということになる。それに気づいていたフィンは頭が痛くなるが、同時に今の状況を考えるとそう悲観することもないと判断していた。
「幸運なのは彼に重傷を負わせた奴は闇派閥に所属しているわけではなさそうだということか」
「……なぜそう言い切れる?」
「理由は単純だ。僕たちが手も足も出ない彼に勝てるほどの強者を奴らが利用しないわけがない。まず間違いなく僕たちに手をかけるように仕向けたうえにその強さを誇示するような行動を起こす。なのにそんな行動は今まで見たことがない。闇派閥にいるとするならまずありえないことだ」
「彼以上の実力者だぞ。闇派閥程度が手綱を握れるわけがない。今までそいつが表に出ていなかっただけじゃないのか?」
「だが、それを匂わせるような行動は一切ない。隠しているのだとしても、僕たちを圧倒できるような存在をそう簡単に隠せるはずがない。闇派閥の下っ端が威嚇に使うために存在を仄めかすことをしないはずがないだろう」
フィンの言葉には否定できる要素がほとんどなかった。闇派閥に所属しているのはほぼ全員が力を誇示するような卑劣な性格をしている。そんな中でオッタルにすら勝てる実力者を、たとえ行動を促すことすらできなかったとしてもその存在を匂わすことすらもしないとなると、フィースを倒せる存在は闇派閥には存在していないだろうと予測はできた。
「来たばかりで闇派閥に合流していないだけなのではないか?」
「それも考えられるが、けど僕はそうはならないと思っているよ。もし本当に闇派閥に合流するような人間であるのなら、どうして彼と戦ったのに街に甚大な被害がない?」
「……どういうことだ?」
「奴の実力は上澄みなんてものじゃない。ゼウス・ファミリア、ヘラ・ファミリアがいない以上彼は間違いなくこの街最強の存在だ。それほどの実力者が保護されなければならないほどの傷を負わせられる実力者との戦闘で大規模な破壊跡が起きていないのはおかしいだろう」
「……彼がそうならないように配慮したのでは?」
「彼がそうしたとしても相手がそうするとは限らない。むしろそうしないほどに戦闘を小さくできるのなら、それは奴の相手もこの街を破壊する意思がないということになるだろう」
「なるほどのう。確かに闇派閥であればそんなことを考慮するはずもない、か」
フィンの言葉にガレスとリヴェリアは納得してそれ以上追及するようなことはなかった。それ以上に判断する材料が少ない今深く話し合ったところで結論が出ないこともあり、ひとまずは警戒はしつつも必要以上に過敏になる必要はないと判断した。
「とはいえ、彼ほどの実力者が重傷を負うほどの相手がこの街にいるのにそれが誰なのかわからない状況にあるのはマズい。リヴェリア、すまないがどういう相手だったのか奴から聞き出してくれないか」
「……一応、気まずい相手ではあるんだがな」
「僕たちよりもずっと友好的に接することはできるだろう?」
「そもそもワシは話したことすらもないしのう。この中では適任ではあるな」
「……わかった。私も知らなければならないとは思っているからな。なんとかして聞き出すように努力はしよう」
「助かるよ」
「それだけじゃなく、アイズのこともある。彼の強さを知ってからその秘密を知ろうとしているのはあまりよろしくない。初めて会ったときのことやアイズの話を考えると彼は子どもに対して寛容だろうことはわかる。あまり褒められたことではないが、アイズがいるだけである程度態度も柔らかくなるだろう」
警戒を解くことはないが、それでもある程度フィースがこの街に害する危険人物ではないことを共有できたフィンたちは、それでもフィースのことを知らなければならないと確信していた。
フィースのロキ・ファミリアへの態度を考えると団員の感情を考えると今までのことは水に流そうとはとても言えない。しかしそれでもある程度の交流はしなければならない以上、たとえ褒められたことではないとしても、たとえ後ろ指をさされようが使える手は使うしかない。
フィンは自身の名誉が多少傷つけられることになったとしても、フィースのことを考えればそれは挽回できると思い今は屈辱に耐える時間だと己を律していた。心の中で黒い炎のような怒りが焚いていると感じながら。
インフルにかかってしまって投稿が遅れました。申し訳ない。
フィースは力を得ることについては否定せず、それを使い熟すように努力しないことを侮蔑するタイプです。冒険者を侮蔑するなら悪魔の実を食べた能力者も侮蔑することになりますからね。
冒険者の力は神が関わっているため嫌悪感が強いと言うだけです。しかも知らずに殺すようなことになるよりはとアストレアとガネーシャから神のあり方を教えてもらっているので冒険者は神の手駒、あるいはトロフィーとして扱われていると思って余計に神を侮蔑、憎悪してます。知らなかったら殴り殺しててもおかしくないですね。