元海兵がダンジョンにいるのは間違っているだろうか   作:ルーニー

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妄想マシマシは楽しいです。

なお、プロローグではダンまち要素はないもよう


プロローグ
プロローグ


 煙が充満していた。剣と剣がぶつかる甲高い音や銃声が鳴り響き、雄叫びや悲鳴が至る所から上がっている。まさに戦争が行われているところだった。どこに行っても生きるか死ぬかの、そんな中に、あいつらはいた。

 赤犬がルフィに、そしてルフィをかばっているエースに向けてマグマの拳が襲い掛かろうとしていた。誰も救えない。誰も助けられない。そんな状況下であったにもかかわらず、しかし、そのマグマの拳はエースに当たることはなく、割り込んだ俺の胸を貫いた。

 

「ガフッ……!」

 

 中将に褒めてもらえたほどに鍛えに鍛えた剃で間に入り、六式の1つである鉄塊に武装色の覇気を重ねた、俺の中でも最強の護りである『金剛鉄塊』で赤犬の拳を防ぐ。けど、俺の最強の守りすらも貫いて、赤犬の手が俺を串刺しにしている。肉を焦がす臭いと音、そして痛みだけが脳に充満していた。

 足が震える。気を抜いてしまえば気を失ってしまいそうなほどの激痛が脳をかき回す。けど、意識の糸を手繰り寄せて意識を失わないように踏ん張る。そうしなければ、俺の兄弟たちの命が危ない。

 

「貴様……!海兵が、海賊をかばうのか!」

 

 激昂。マグマの腕の持ち主である赤犬の表情がみるみる怒りで満ちていく。上司からの殺気すら覚えるその怒りを受けたが、しかし俺の心は何も感じなかった。

 

「お前……!」

 

 俺に守られたエースとルフィは唖然としていた。体を貫かれた赤犬の手を見て言葉が出てこないのかただ茫然と眺めているだけだった。

 

「兄弟を守ることに、理由がいるのか?」

 

「貴様……ッ!」

 

 手が貫いている胸に武装色の覇気を纏う。同時に無事な右腕にも武装色の覇気を纏わせる。無茶な纏わせ方だが、もうこの先もない俺がやろうがやらまいが変わらない。

 

「ぬ、ぬけっ……!」

 

 攻撃の危機にさらされていることに気付いた赤犬は貫いた腕を抜こうとするが、武装色で固められた胸から腕を抜くことができずにいた。その隙を見逃すはずもなく、武装色の覇気を纏った腕を赤犬の顔へと叩き込んだ。

 

「『金剛獣厳』ッ!」

 

「ゴァ!」

 

 右腕が直撃すると同時に胸の武装色を解除する。マグマに変化したままの腕に血がついていたが、マグマによってすぐに蒸発していく。殴られた赤犬は『金剛獣厳』の威力に耐えられず後方へと吹き飛ばされていく。

 

「……ガフッ」

 

 遠くへ殴り飛ばすことができたことにわずかでも安堵してしまったのがいけなかったのだろう。わずかに気を緩めただけで口から血が湧きだし、足に力を入れることができずにその場に倒れ込んだ。

 

「フィース!」

 

 倒れた俺にエースとルフィがそばに走り寄ってきた。傷口はマグマで焼けたのか血が出ることはなかったが、臓器が傷ついたことによって口から血があふれ出てくる。

 

「おい、フィース!しっかりしろ!おい!」

 

 エースが必死な表情をして俺の肩を叩く。けど、貫かれた胸のほうの痛みがひどくてあまり触れられているという感覚がない。

 

「……ケガぁ、ないな。兄弟」

 

 血反吐を吐き出しながらエースたちが無事であるかを確認する。息をするのも苦しい。肺に空気を送る管に大きなダメージがあるのか呼吸をするたびに胸に激痛が走る。

 

「しゃべるな!傷が開くぞ!」

 

 傷口が開くも何も、もう傷は焼け付いて血を出すことすらままならない。不幸中の幸い心臓には大きな傷がないからまだ生きていられるが、でも残った時間も残り僅かだけだろう。

 

「もう、俺はダメだ」

 

「何言ってるんだ!意識をしっかり保て!」

 

「フィース!フィース!」

 

 ルフィが俺の肩を掴んで揺さぶる。傷が痛むからやめてほしいところだけど、それを伝える気力ももはやない。それに、どうしてかエースとルフィの顔がにじんでよく見えない。死ぬのが嫌で俺が泣いているから見えなくなっているのか、それとも死期が近いから見えなくなってきているのか。まぁ、もうすぐ死ぬ身としては、もはやどうでもいいことなんだけどな。

 

「ルフィ、エース、サボ。俺は、お前たちに何かしてやれたのかな」

 

「フィース……?」

 

 あぁ、俺の人生は後悔してばかりだったなぁ。()()()()()のにサボを救うことはできず、悩んだ末に海軍に行ったのに守れるものも掌の中だけ、さらには恩人であるガープ中将には最後の最期まで迷惑をかけた。

 

「ありがとう。俺、この世界に生きていて、お前らと出会えて本当に楽しかった。もしガープさんに会えたら伝えてくれ。育ててくれてありがとう。そして、顔に泥を塗ってごめんって」

 

 ゆっくりと、しかし力の限りエースとルフィを抱きしめる。血がなくなっていて冷たくなってきているのか、2人の体温がとても温かく感じる。けど、この温かさを感じている時間はない。

 

「さよならだ。俺の分まで生きてくれよ、エース、ルフィ」

 

 最期の力を振り絞り、エース達の胸に手を置く。間違っても自然(ロギア)系のエースの体を貫通しないように手のひらに覇気を纏わせる。

 

「『獣厳』!」

 

 本当に、最期に打てる技だった。力が抜けていく体に鞭を打ってエースたちの体を白ひげの船の方へと押し出す。死にかけていた俺が相手だったという油断もあったのだろう。指銃の速度で押し出された2人は勢いよく飛んでいき、海賊の誰かのそばへと飛んでいった。

 

「……あぁ。これで、さよならだ」

 

 フラリと力なく倒れる。もう、体を起こす力もなく、指を動かすことすらできない。 痛みも徐々に感じなくなってきた。あぁ。後悔はたくさんある。でも、いい人生だった。意識を失う直前にエースとルフィの声が聞けて良かったと、本当にそう思うよ。

 エースたちと一緒に海賊をやっていた。そういう未来もあったのかもしれない。もしかすると説得を重ねて海軍として共に海賊を倒していたのかもしれない。そんな未来も、もしかすればあったのかもしれない。でも、そんな”もし”はもうとうの昔に過ぎ去った、もはや語るのも無粋な”もし”だ。俺はエースたちと袂を別った、でも、兄弟を救うために海兵として生きると決めたんだ。そこに

後悔はない。

 あばよ、兄弟。()()()()()()()この世界では、2人とも長い時間を生きてくれよ。それが、異物として入り込んだ俺の最期の望みだよ。

 




この後ワンピ世界では一面に『海軍少将フィースの裏切りか』という記事が発行される妄想。
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