元海兵がダンジョンにいるのは間違っているだろうか   作:ルーニー

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もしもの世界17

 

「くふぁ……」

 

 ぐわぁ、という音が聞こえてきそうなほどに大きな口を開けてあくびをするフィース。眠気をごまかすように口をまごまごさせながら歩いているフィースの後ろには表面上はキビキビと取り繕っている状態で歩いているリュー、輝夜、ライラが恨めしそうな表情でフィースを睨みつけていた。

 

「…………くぁぁ…………」

 

「フィース、今は巡回をしている最中です。そんな大きなあくびを何度もするのはよろしくない」

 

「一晩中正座させてたやつが言う言葉じゃねぇな」

 

「そのあとで午前中全部自分含めたあたしたちの鍛錬をやり通してるの控えめに言って頭おかしいぞ」

 

「それでも巡回の最中にのんきに大あくびなんて、自分が何をしているのか理解していないんですね。とても精神的に余裕のある生活ができてるようでとても羨ましいですわ」

 

「いやぁ、それほどでもねぇよ」

 

「どこをどう聞いたら褒められたと思うんだお前」

 

 輝夜の言葉に嬉しそうに顔を緩ませて頭を掻くフィースに疲れをにじませながらライラは呆れたような声で突っ込む。輝夜もこのバカに何を言っても無駄だと言わんばかりにため息を吐いて軽く頭を振り、リューは言葉にはしていないが非難するような視線を送っているが、フィースはそれに気づく様子はなくただ顔を緩ませて頭を掻いていた。

 フィースからすれば海軍では非常時には休息はあれど数日寝ずに戦闘が行われる場合もあるために、戦闘もしていないこの程度で疲弊するようなことはないため、遠回しに師であるガープを褒められているようで気分がよくなったのだが、リューたちからすれば眠気しか出していない様子を見て敬意を横に置いて呆れを前面に出していることに気づいていないフィースに、ただただ呆れしかでなかった。

 

 それからも巡回の途中だというのに露店の品物に視線が動き続けているフィースの様子に、リューの非難するような注意や輝夜の突くような言葉遣い、ライラの呆れつつも面白がってその様子を見守っている最中、人の気配がない裏路地を歩いていると唐突に覇気の感じられない声がフィースの耳に嫌に響いた。

 

「やぁ、リオンちゃんじゃないか」

 

 他の裏路地へと通じる道からリューの名が呼ばれた。冴えない男がフィースたちに声をかけてきた。フィースたちはその男に顔を向け、フィースはさっきまでの表情が一転して()()()()()()()()()()()()()()()表情がなくなっていた。

 

「奇遇だね。また街の巡回かい?さすがは正義の眷属だ」

 

「あなたは、神エレン?」

 

 リューがエレンと呼んだ冴えない男は、以前にアリーゼとともに巡回しているときに出会った財布のスリ被害に遭った神だった。リューからすれば偶然出会っただけの男神だったが、会ったこともなかった輝夜とライラはエレンと殺意を何とか抑えようとしているフィースが暴走しないか警戒していた。

 

「あらあら?どなたかしらこの冴えもしない感想に困る男神は?」

 

「あ~。多分アリーゼが言ってたろくに金も持ってない胡散臭い貧乏神だろ」

 

「とても辛辣ぅ!もうちょっと優しくしてくれないとお兄さん泣いちゃうよ?」

 

「とっとと失せてその辺で勝手に泣き喚いてろ。騒音まき散らす害悪としてブッ飛ばして黙らせてやる」

 

「いや本当に辛辣だね?辛辣すぎて本当に泣きそうなんだけど」

 

 さっきまで緩んでいた顔が一瞬で嫌悪感を隠そうと表情が消え、心の底から湧き出てくる怒りを抑え込もうとしているのが声でわかるフィースにエレンはほほを引きつらせていた。フィースの様子にこのままだと本当にエレンを殴り飛ばしそうだと思ったライラはフィースに落ち着くように腰を軽く叩いて前に出た。

 

「んで、本当に何の用なんだ?あんたも言ったようにこっちはパトロール中なんだよ」

 

「要件済ませてとっとと失せてくれ。こいつらに用があるなら置いてくから消えてくんねぇかな。なんなら天に帰れ。帰り方が分からねぇなら返してやってもいいぞ。死ぬほど痛いがな」

 

「お兄さん君に何かしたっけ?一応神様なんだけど、ここまで辛辣というか嫌われるようなことを君にした記憶ないんだけど」

 

「あ~。そいつ神様が嫌いなんで基本的にそういう態度と思ってた方がいいぞ」

 

「え?これがデフォルトなの?こわっ」

 

 ライラの説明にエレンはさっきまでのヘラヘラした様子から本気で引くような声色でフィースから距離を置いた。手を出すには数歩足を出さなければならない距離まで移動したエレンにフィースは舌打ちを打ち、その様子からマジで殴り殺すつもりだったのかとエレンは顔を青ざめさせて輝夜はアストレア・ファミリアで世話をしている居候が問題を起こす前に本題を終わらせるために口を開いた。

 

「……それで、どうして話しかけてきたのです?」

 

「いやぁ、君たちの正義を見ていて思ったことがあってね。何の見返りも求めない正義なんて、僕から見たら歪にしか見えなくてね。そのうち破綻するんじゃないかって思ってしまうんだよ」

 

「うぜぇなこいつ。邪魔だしブッ飛ばしてもいいか?顎飛ばせば黙るだろ」

 

「え?もしかして殴られる?ははは、そんな冗談……じゃない!?」

 

 この世界では神に手をかける行為は極刑にすらなりうる重罪だというのに、もはや殺る気すらにじませているフィースにエレンは早く本題に入らないと本当に殺されると感じた。

 

「でも、さっき言ったことは本当に思っているのさ。今は元気だからいいけど、心も体も疲れ果てた時、果たして同じことが言えるのか。もしそれが崩れ落ちてしまったとき、どうなってしまうのかとても気になっていてね」

 

「言いたいことはそれだけか。ならとっとと失せろ。どうしても動きたくないってんなら今すぐ空に帰してやる」

 

「待って待って!まだ聞きたいことがあるんだって!というかさっきまでのは前振りだから!今から聞きたいのが本題なんだからもう少し待って!」

 

 もはや殺意を隠そうともせずにパキリパキリと指を鳴らしながら握り拳を作るフィースにエレンはフィースから逃げるようにリューたちの後ろへと移動する。どさくさに紛れてリューたちに触れようものなら殺されかねないと本気で感じたエレンはフィースの異常さに疑問に思いながらも今度こそ聞きたかったことを口にする。

 

「正義って、なにかな?」

 

 エレンの纏う雰囲気が変わった。輝夜とライラ、リューは漠然とではあるがエレンの雰囲気が大きく変わったことにわずかに戸惑いを覚え、覇王色の覇気をわずかに滲ませていたフィースはエレンからほんのわずかに発せられている()()()()()()()()()()()()()()()()()怒りではなく警戒を抱きながらエレンの挙動を見聞色の覇気を交えて見張る。

 

「君たちの正義を聞かせてくれないかい?この下界で是とされている正義がどうなのか、下界で提示できる絶対の正義とは何なのか確信できなくてね。だから正義を司る女神の眷属である君たちに聞きたいんだ」

 

「……いいでしょう。その戯言に付き合ってあげます。答えなど、決まりきっているのだから」

 

 エレンの豹変とは言えない、しかし確実にある変化に気圧されないためにかリューは威嚇するかのような口調で口を開いた。

 

「無償に基づく善行。いついかなる時も揺るがない唯一無二の価値。そして、悪を斬り、悪を討つ。それが、私の正義だ」

 

 それ以外にはない、と断言するリューにエレンは面白がるようにほほう、と声を漏らす。チラリ、とほんのわずかにエレンの視線がフィースへと向いたがリューたちはそれに気づかず、フィースは反応を出すことなくエレンを見ていたことを確認したエレンはまるで演者のように大きく反応を出した。

 

「なるほど。つまりそれは巨悪ならぬ巨正でもって悪を討伐するというわけだ。善意を押し付け暴力で以って悪を制する、いわゆる力ずくの正義というわけだ」

 

「っ!違う!正義とはそのようなものではない!」

 

「いやぁ、それが悪いと言っているわけじゃないんだ。それが必要なこともわかるし、小難しいことを並べても万人が受け入れるわけじゃない、世界としてはそれぐらい単純な方がいいのかもしれない」

 

 まるで語るような口調で言葉を続けているエレンにリューたちは言葉を失っていた。それは諭すようなものであり、同時に責めているかのようにすら感じる口調に、まるで心を鑢で軽く削られているかのような錯覚を覚えてリューたちは苛立ちを隠そうともせずにエレンを睨みつけていた。

 

「けど、もしそれを悪が同じ論法を展開したときどうなるのか。少し興味があるんだ」

 

 エレンはそう言い切るとまるで試すかのような笑みを浮かべてリューへ顔を向け、そしてその顔をフィースへと向けた。先ほどまでの荒ぶりが嘘のように静まり返っているフィースは警戒を露わにしながらもエレンが何を求めているのか理解できておらず、その真意を図ろうと意識をエレンへと集中させていた。

 

「君の正義も聞いてみたいね。正義を司るアストレア・ファミリアとともにいるんだ、君も正義を志しているんだろう?」

 

 先ほどまで見せていた怯えが嘘のように消えているエレンに、その違和感に気づいていないリューたちは視線をフィースに送った。エレンは事情を知らないとはいえ、リューたちからすれば違う世界とはいえ人を率いる地位につけるほどの実力者であるフィースの正義が気にならないはずがない。

 はぁ、と()()()()()()()()()()()()()()()()()()軽くため息を吐いたフィースは、それでも師であるガープさんに示した自身の正義を曲げることをしないために口を開いた。

 

「自分勝手な正義」

 

「え……?」

 

 フィースの口から出たのは、リューが期待したものではなかった。むしろ求めていたものとは真逆と言ってもいいほどの正義を口にしたフィースは、何でもないかのように言葉を続けた。

 

「俺は助けたいと思ったら悪党だろうと助けるし、助けたくなかったら正義だろうと助けない。誰かから何を言われようが自分の選択で助けるかどうかを自分勝手に決める。それが俺の正義だ」

 

 音が消えた。そんな錯覚を覚えるほどにフィースの言葉が周辺に響いた。リューはおろか、輝夜やライラすらもフィースの正義に驚きを隠せずに目を見開いてフィースを見、エレンは面白いものを見たと言わんばかりに細めていた目を開いてフィースを見ていた。

 

「そんな、そんなものが正義であるわけがない!正義とは、すべての悪を討ち、すべての善を救う!それが正義じゃないのですか!?」

 

 そして耐えられなくなったリューは、そんな正義があるわけがないと、そんな正義を背負っていたのかと、同じ正義を背負っていたんじゃないのかと、様々な思いがごちゃ混ぜになってただフィースを否定するように叫んだ。

 やっぱりこうなったか、と同じように青い正義を掲げた新兵を何度も見てきたフィースは、現実を見て折れてしまった同僚や部下を見てきたフィースは少し顔をしかめてため息を吐いた。

 

「正義なんてものはな、結局のところトロッコ問題でしかないんだよ」

 

「トロッコ……?」

 

「誰を犠牲にして誰を救うか、だ。死ぬ気で頑張っても、自分のすべてをなげうったとしても、全部を救えるようなことはできねぇんだよ」

 

 声を荒げることもせず、それでいて達観はしていない、そんな複雑さと実感のこもったフィースの言葉にリューたちは声を出すことができなかった。年若くして少将の地位にいたフィースの経験はアストレア・ファミリアの経験を大きく上回っている。詳しい話を聞いたことはないが、それでも神嫌いの理由を知っているリューたちは反論しようと口を動かし、けれど何を言えばいいかもわからず悔し気に口を閉じてしまった。

 フィースの様子に、やっぱり只者じゃなかったかとエレンは口を閉じてしまったリューたちに代わるように口を開いた。

 

「君は救うものは選ぶと言ったけど、彼女のようにそれを正義と認めない人のほうが多いと思うけど?」

 

「だからなんだ?正義は1つじゃないんだから当たり前だろうが」

 

「……え?」

 

 フィースの言葉にリューは思わず声が漏れ出てしまった。正義は1つだけであり、それは絶対唯一で不変のものだと信じていたリューにとって、それは自身の信念に大きなひびが入るほどに大きな衝撃だった。

 

「尊敬できる正義もあれば否定したくなる正義もある。人の数だけ悪があるが、同じように正義も人の数だけある。それら一切合切全部を否定されて押し付けられる正義が正しい正義ってんなら、俺は悪でいるほうがいいし、なんならそれを悪としてその正義をブッ飛ばすだけだ」

 

 ()()()()()()()()()。とても正義に身を置いていたものとは思えない言葉にリューたちは絶句した。リューと輝夜は目を見開いてフィースに視線を送り、ライラも同じく目を見開きフィースの正気を疑うように睨みつけていた。

 

「……なるほど、ね。それが君の正義なんだね」

 

 対してエレンは面白いものを見つけたと言わんばかりに口角を大きく上げる。細い目からわずかに見える瞳には好奇と()()が含まれていたのをフィースは感じ取った。

 

「いやぁ、ありがとうね。とても参考になったよ~」

 

「ならとっとと失せろ。5秒以内に失せなかったら2度と外に出られないような面にしてやる」

 

「なんでそれ嘘じゃないの……?わかった、わかったよ!わかったからその握った拳おろして!」

 

 さっきまでの雰囲気が消え、再び情けない姿を見せてこの場を去るエレンにフィースは不愉快そうに舌打ちをする。ただの神じゃない。何かを企んで接触してきていたのだと感じ取ったフィースは殺意や憎悪ではない、面倒なものを見つけた不快感を吐き出すようにため息を吐く。

 

「……どうして、正義は1つだけではないのです?」

 

 エレンの姿が見えなくなり、アストレアやガネーシャに言うべきことができたとフィースが脳内整理をしている中、リューがひねり出すかのようなか細い声が漏れ聞こえてきた。フィースがリューのほうを見ると、リューを落ち着かせるようにリューの肩に手を置いている輝夜と、今にも武器を取りそうな手を抑えるライラと、そしてリューが今にも泣きだしそうな表情を浮かべてフィースを睨みつけていた。

 

「正義は唯一無二で、悪を打ち倒すものであるはず!世界が違うといえど、その背中に背負った正義は悪を打ち倒すものじゃないのですか!?あなたの正義は、正義は、そんな上っ面なものが正義なわけがない!正義は、正義は!決して壊れるはずのない、唯一無二のものではないのですか!?正義は善なる人たちを救えるものではないのですか!?」

 

 まるで堰き止めていたものが壊れたように言葉が出てくるリュー。今にもフィースに掴みかかりそうな勢いに輝夜とライラはリューを強く抑えているが、フィースはある意味で重症なリューを見てこの場にセンゴク元帥もしくはつる大参謀がいないことに嘆きすら覚えたが、それでも諭せるのは自分しかいない現状に頭が痛くなりそうになりながらも口を開いた。

 

「誰かを救えるのはいいことだが、どんなに頑張っても結局救えるのは自分の周りだけだ。自分の手の中にないものは救えないし、手に余るようなら救えるものも救えなくなる。多くを救うのか少数を救うのか、同じ数でもどちらを救うのか、仲間を救うのか知りもしない誰かを救うのか。どちらかを選ばなくちゃならなくなる時は絶対に来る。その時お前はどっちを救うのか選ぶことはできるのか?」

 

「…………」

 

「それに、お前の正義は全部の悪を討つってんなら、食うに困ってる幼い子どもが動くこともままならない家族と生きるために人を殺して金品を奪っていても、お前は何の感情を持つことなくその子どもを討つんだな?」

 

「そ、れは……!」

 

「唯一無二の絶対的な正義なら、全部の悪を討つってんなら討つと言わなきゃならねぇぞ。正義が1つだけなら程度の差はないし、悪にも程度は存在しなくなる。それが絶対だってんならお前はそれをしなくちゃならないぞ。正義がそれだけしかないってんなら、それをしなかったお前に正義はあるのか?」

 

 そこまで言ってフィースはしまったと顔をしかめる。リューの言った正義は、いわば徹底的な正義だ。エースの死因でもあった赤犬ことサカズキ大将と同じ正義と言ってもいいだろう。嫌っていたと同時にその心情を知っていたサカズキ大将の掲げた正義と似た正義を掲げているリューに、ある意味で正義に狂っていたサカズキ大将と同じことになるんじゃないのかと不安がよぎったのだ。

 サカズキ大将は家族の命を海賊に奪われ、2度と同じ犠牲を出してなるものかと心をマグマのように滾らせて些細な悪ですらもそのマグマで飲み込んでいった。それができたのは長い年月で煮えたぎった復讐心によるものであり、それをリューが同じようになるのか、なったとしてもその所業を後悔することになってしまわないか。老婆心にも近いそれを感じたフィースはそれを防ぐべく否定的な言葉を畳みかけるように言ったのだが、まだ年若い少女に言う言葉じゃなかったと頭を抱えそうになった。

 実際、リューの顔色はすこぶる悪くなっていった。真っ青になった顔に立つことで精いっぱいと言わんばかりにフラフラとしているのを輝夜とライラが支えているほどだ。非難するように睨みつけてきている輝夜とライラにフィースは気まずげに視線をそらして顔をしかめる。

 

「……まぁ、偉そうに講釈垂れたけど、俺も憧れた人の正義を真似てるだけだし、なんなら組織の掲げた正義を家族を助けるために裏切った人間だ。偉そうに言えるような立場じゃねぇよ」

 

 深くため息を吐き、そして心の中をリセットさせるためにあえてリューの頭を掴むように置いて髪を強くかき混ぜるように撫でまわす。反射的に蹴り飛ばすように足が動いてしまったが、それを何でもないように受け止めたフィースはリューの目を覗き込むように強く見る。

 

「けどな、これだけは覚えておけ。いつか必ず自分の掲げている正義が揺らぐことになる。なんでかまではわからねぇけど、それでも自分の正義を疑うことになるときはどうしても来ちまう。だから、正義にこだわるなとは言わねぇ。けど、世界にはどんな正義があるのか、その正義はどういうものなのかを知ることは絶対に欠かすな。正義を捨てるほどの後悔を、背負った正義に押しつぶされるようなことには絶対になるんじゃねぇぞ」

 

 フィースはまだ若い。若いが、少将という地位はフィースに歳不相応の経験をもたらしていた。その中でも正義の重さに潰れていった新人は数多くいた。リューはその中でもサカズキ大将に憧れた新人に似ていたために、あの悲劇の二の舞にならないためにも強くリューの目を見た。

 フィースの目を見たリューは何かを言いたそうに口をまごつかせていたが、何を言うべきなのかもわからずついには口を閉じて視線を落としてしまった。

 

「……なぁ、フィース。お前の正義って、どこから来たものなんだ?」

 

 視線が下に落ちて暴れることなくゆっくりと膝をついたリューを支えるように肩を貸しているライラは、話題を変えるようにフィースに疑問を出す。輝夜もしゃがみ込んだリューに表情を出すことはなかったが心配そうに肩に手を遣りながら視線をフィースへと向けた。

 それを聞いたフィースはわずかに自罰的な笑みを浮かべ、けれどすぐに自慢げな笑みを浮かべて空を見上げた。

 

「俺の正義。自分の想う行動こそ正義をだと断言するデカい背中に、自由の中にある強い正義を背負っているあの背中に憧れない奴はいないさ」

 

 誇るように、それでいて謝るような声色でそう言ったフィースの表情は、空を見上げていたのとわずかに漏れ出ていた太陽の光で隠されて見ることはできなかったが、ライラと輝夜は見てはいけないと思い視線を外した。

 

 

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