元海兵がダンジョンにいるのは間違っているだろうか   作:ルーニー

22 / 53
 目が覚めると、見た事のない天井が目に映った。栄養不足が祟ったせいかしばらくの間自分の身に何が起こっているのか理解もできずボウっとしていたが、徐々にここがあの島じゃないということを理解していった。身の回りを確認すると立派なベッドに寝かされており、机といくつかのベッド、そして棚がいくつかあるのが見えた。

 ここは、どこなんだ。助けられたのか?でも、あんな場所からいったい誰が?それに、さっきから感じているこの振動はいったいなんだ?

 次々と疑問が思い浮かぶが、しかし答えてくれそうな人物は誰もいない。
 腕をあげてみる。やせ細った腕は振るえているが、確かに動く。じんわりと、目頭が熱くなっていくのがわかる。生きている。あのいつ死ぬかわからない場所から、俺は生き延びたんだ。
 扉の外から木の床を革の靴で歩いてくる音が聞こえてきた。その足音は荒々しく歩いているせいか遠くからでもよく聞こえてくる。靴の音が徐々に大きくなっていき、そしてこの部屋の扉の前で止まった。

『どうじゃ!目は覚めたか!』

 扉を破らんばかりに開き、豪快な笑い声と共に現れたのは、どこか見覚えのある白髪混じりの老人だった。これが、俺の命を救ってくれた英雄との初めての邂逅だった。



3話

 じいさんに拾われてから早くも数週間が経った。孫として紹介されたベル、じいさんに似ても似つかないかわいらしい子供だった、とも仲良くなれ、農業や狩りの手伝いも特に問題なく進めることができていた。

 農業は知識がないせいで教わりながらの作業だったが、狩りに関してはエースたちとの狩りで慣れていたこともあり、あの山にいた動物たちと比べてはるかに弱い動物しかいないから見聞色の覇気も使えることもあって1人でも狩ったりもできた。とはいっても、子供化に伴って六式が軒並み使えないか弱体化しているから、手製の石器ナイフで狩ることになっているのは我ながら情けないと思わなくはないが、狩りは六式の訓練にもなっているから主に狩りをしている。

 さらに、ここに住む間はじいさんの言う通りちょっとした農業の手伝いや狩りを行っていれば衣食住を保障してもらえ、さらには鍛錬をする時間までもらえている。満足いくレベルの六式になるまでまだまだ時間はかかりそうだが、鍛え方も効率のいい動き方も覚えている。元に戻るのにそう長い時間を必要とはしないだろう。

 

「フィース、そろそろご飯にせんか」

 

 見晴らしのいい山の中、六式の1つである『剃』の鍛錬をしていると、じいさんがご飯で呼びに来てくれた。空を見上げるといつのまにか日が高く上がっていた。『剃』だけで結構な時間がかかっていたことに若干の驚きがあった。

 

「わかった。汗流してから行く」

 

 あらかじめ家の近くの井戸から汲んでおいた水を丁寧に浴びる。井戸水特有の冷たさが汗と共に体を流れる。体を動かしてできた熱が水によって冷やされていく感覚は、いつ浴びても心地いいものだ。

 

「しかし、そんな体を鍛えて冒険者にでもなるつもりなのか?」

 

 水を浴びている俺にじいさんは呆れ半分、興味半分とばかりに聞いてきた。狩りや農業以外で日中やっていることと言えばほとんどが鍛錬だ。子供の姿である俺が同じぐらいの子供たちと一緒に遊んでいないことも気には欠けてくれているのだろう。

 

「冒険者、になるのは、よくわからん。英雄にもなれると思ってないしなろうとは思わないしな」

 

 冒険者。この世界では海賊や海軍というものは存在せず、代わりに化け物、というかそのままモンスターと呼ばれる普通の人間じゃ1匹倒すのに何人もの大人が必要となってくる化け物に対し、神と契約してそういった化け物たちと1対1で戦えるようになったのが冒険者である、という説明は受けた。

 正直神が地上に降りてきたというのも嘘くさいし、モンスターと呼ばれている化け物がいるというのも信じがたかった。しかし、覇気で確認しても嘘ではないと判断できたし、向こうの世界でも化け物クラスの動物が至る所に存在していたからもしかしたらそういう存在もいるのだろう。やっぱりあの手の化け物を相手にしていた海賊や海兵って相当人間離れしていたんだろうな。俺もその一員に入っていたのは、誇っていいことなのかどうなのか。

 

「つまらんのう。男なら英雄になってハーレムを目指す!ぐらい言わんか」

 

「俺の中の英雄像それじゃないし。というかそれベルに言うのホントやめない?あの子英雄イコールハーレムって真に受けちゃってるんだけど」

 

 冒険者になる人の中には英雄伝の中にある英雄に憧れて冒険者になる人も多くいるらしい。英雄に憧れるのはよくわかるのだが、俺にとっての英雄は、俺の命を救ってくれた清々しいまでの自由奔放なあの英雄だ。その気持ちはよくわかる。

 しかし、別に他の人の英雄像に口出しをする気はないのだが、寝る前にじいさんがよく話している英雄がほとんどがハーレムのことを強調しているのだ。じいさんがハーレムはいいぞ、とベルに言い聞かせているものだからベルもそれを本気にしている。英雄の話になるたびに、英雄ってすごいよね!ハーレムっていいみたいだね!と毎回興奮気味に話してくるのはどうかと思う。英雄はともかくハーレムの話はさすがにどうにかするべきだろう。

 

「なんじゃ、フィースは女に興味ないのか?女はいいぞ。話していて楽しいし慕ってくれているのは気分がいい。なによりやわこくて気持ちがいいのがたまらん!ハーレム最高!」

 

「ジジイマジでそれはベルには言うなよ」

 

 覇気を使うまでもなく本気で言っているのがわかる。だからこのじいさんは性質が悪い。男女の性差について早いうちから教えておくことに異議はないのだが、ことあるごとにハーレムを推すのは本当にどうにかならないのだろうか。

 




ぶっちゃけベルきゅんと絡ませると文字数が足りなさすぎるので何話か名前だけしか出なかったり。すまぬ……すまぬ……
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。