元海兵がダンジョンにいるのは間違っているだろうか   作:ルーニー

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なんでこっちは書けて本編が書けないんだろ……。


もしもの世界20

『フィースさんって、戦う時すごく横暴と言うか、すごく荒れている様子ですよね。何かきっかけでもあったんですか?』

 

 月明りだけで照らされている海辺で、コビーは傷だらけで砂の上で横になっていた。つい先ほどまでガープに動けなくなるまで鍛えてもらっていて、終わった後で動けるようになるまで横になっていた中、フィースが両手に水の入った水筒を持って面白そうに笑みを浮かべながらコビーの横に座っていた。

 自身の隣で座っている尊敬する上司であるフィースに、雑用として働いている中で海賊と戦っている最中ではかなり口が悪いことをふと思い出していた。常に礼儀正しい訳では無いし、むしろ自分たちには悪友のように接してくれているフィースだが、こと戦闘になると普段見られないほどに相手を見下すような言動をとるフィースにコビーは強い違和感を覚えていた。

 それに対してフィースは少し目を丸くし、少し考えるように腕を組んだ。

 

『まぁ、ちょっと口にしたくない理由もあるんだが、一応それなりの理由はいくつかある。まずは、俺の方に敵が集まってくるようにって感じの挑発だな。挑発に乗る奴は一蹴できる程度の雑魚か、プライドを持ってる強いやつかが多いからそいつらを俺の方に寄せるためだ。そうすれば味方側の被害は少なくなるし、あと強くなるために経験を多く積めるのも目的に入ってる』

 

 フィースの言葉にコビーはなるほど、とフィースの戦いはほかの人たちと比べてかなり多いことを思い出す。確かに海賊は挑発をすればかなりの確率で怒りで向かってきていたなと思い、それでもって勝ち続けているフィースに強い敬意を改めて抱いた。

 

『あとは、俺にはガープさんみたいな強さはないからな。単純に心を折るために言ってるだけだな』

 

『心?』

 

 フィースの言葉にコビーは不思議そうな声を出す。

 

『今ここでお前が悪の俺と戦ったとするだろ。それで負けたところで諦めるか?』

 

『諦めないです。次は勝つために努力を重ねます』

 

『まぁお前ならそういうだろうな。けど、頭に血が上ったら今後のことを考えずに突っ込んでくる。そんでその時に完膚なきまで負けてしまったら、だいたいは心が折れるんだよ』

 

『?』

 

『簡単に言えば感情の落差によるトラウマ、だな。感情の波って思った以上に心に影響があるんだよ。冷静な時に負けても次に戦う時のためにどうするのかを考えれる。けど、今勝ちたいって思いがめちゃくちゃ強かった時に負けたら、俺はこいつに勝てねぇって心に刻まれるんだよ』

 

 フィースの言葉にコビーは心当たりがあるのか納得したような声を出す。実際に見たわけではないが、捕らえられた海賊の中には悪魔の実の能力を使ったわけではないのに反抗する気力が見られない者がちょくちょく出てきているという話を聞いたことがある。フィースが言っているのはそういう人たちのことなんだろう。

 

『このトラウマ、かなり厄介でな。もう一度立ち向かおうとする気力をめちゃくちゃ削がれるんだよ。俺はこいつに勝てない。俺が勝てなかったら俺じゃないやつが死んじまう。歯向かって死ぬなら、立ち上がらなければいい。そういうことが頭の中に浮かんでくるんだよ。んで、そういうことになったらだいたいは比較的大人しくなる。再犯率もある程度下がるんだよ。まぁそこから立ち直るやつには効果がないのが玉に瑕なんだがな』

 

 まぁあくまで持論だけどな。そう締めるフィースは気まずげに頬をかいて真剣な眼差しでコビーを見た。

 

『頼むからルフィたちには言ってくれるなよ。俺にはあいつらの前ではあぁいうのは見せたくないって兄心があるんだよ』

 

『ルフィさんなら何も言わなさそうですけど』

 

『引くだろ。俺だって兄がこんなことしてたら引くぞ』

 

『自覚はあったんですね』

 

 コビーの言葉に気まずげに視線をそらすフィース。

 

『けどな、こういうことをしてたら気づいたことがあるんだよ。心が折れるようなことになっても、最後に立ち上がるやつらってのは譲れない思いと折りたくない芯がある。それが自分のことなのか、仲間のことなのか、家族のことなのか、誇りのことなのか。どれかはわからないけど、そういうのが自分の中にあるやつらって、絶対に立ち上がってくるんだよ』

 

 そういう相手を見たことがあるのか、フィースの言葉は思い出すかのような口ぶりだった。同時にそれを羨むような、敬うかのような雰囲気すら感じるものでもあった。

 

『俺もお前も、いつかは心が折れそうなことになるだろうな。けど、自分の中で絶対に折りたくないモノがあったら、折れても立ち上がれる。お互い早いところそういうのを見つけておこうぜ、コビー』

 

『はい!金言ありがとうございます!』

 

 ヨロヨロと震える腕を額に動かすコビーに、フィースは満足そうに笑う。そろそろ戻るかと言うと倒れているコビーを担ぎ、コビーの部屋がある寮の方へと歩き始めた。コビーは自分で帰りますと慌てていたが、それをフィースは笑って流していた。そして、建物の影に隠れるようにしてもたれかかって話を聞いていたガープがとても楽し気に笑っていたのをフィースの耳にかすかに入っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………クソ酒がよぉ」

 

 ガチャリ、と手に付けられた鎖が揺れて金属音が鳴り響く。寝起きであるにもかかわらず思わず大きく舌打ちをしてのっそりとした様子で寝ていたベッドから起き上がる。

 周りは暗く、今がいつの時間帯なのかもわからない。石でできた壁に囲まれ、そう簡単に折れそうにない太い牢の隙間から差し込んできているカンテラの灯がぼんやりと室内を照らしていた。

 

「フィース、大丈夫なの?」

 

 牢屋の影から顔を出すように俺を心配そうに見る影、アーディはいまだに苛立ちを隠せずにいる俺にわずかに怯えを見せていた。

 

「最悪の気分だ。あのクソ酒全部地面に吸わせてやりてぇぐらいには苛立ちが治まんねぇ」

 

 胸の中の不快感を吐き出すように深くため息を吐き、ガシガシと頭を掻く。ジャラジャラと小気味よく鳴る鎖に触れてみるとかなりの強度であることがわかるが、黒刀に至った刀ほどの強度もない。やろうと思えば能力を使えば1秒も使わずに壊せるが、今はそんな気分にもなれん。

 

「…………」

 

「……なんだ。なんか言いたいのか?」

 

「ううん。その、苛立ちが治まらないって言う割にはそこまで表情が険悪に見えなかったから……」

 

 アーディの言葉にわずかに目じりが上がるが、夢の内容を思い出すと嬉しいやら悲しいやら様々な感情が入り混じる。よりにもよってコビーとの夢を見ることになるとは、あのクソ酒は本当にいい趣味をしたやつが作ったと逆に笑いすらこみ上がってくる。

 

「……まぁ、夢見は悪くなかった」

 

 実際、海軍にいたころの記憶は悪い物じゃなかった。嫌な記憶なんざいくらでも出てくる。けど、それを上回るほどに楽しかった記憶もいくらでも出てくる。ルフィ達と一緒にいた時とは違う、もしルフィ達と会わなかったらあそこにいる誰か、それこそコビーが弟のような存在になっていたんだろう。

 

「裏切り者があんな夢見てもいいのかと思ってな」

 

「フィース……」

 

 だからこそ、後悔はないあの裏切りに紐づいている数少ない心残りが俺に殴りかかってきているかのような鈍い痛みを覚えさせる。

 コビー、ついでにヘルメッポはガープさんが一入に鍛えた弟弟子達だ。俺も一緒に鍛えようとしてボガードさんに止められたこともあって結局最期の時まで鍛えることはなかったのだが、それでもガープさんも俺の弟弟子だと笑って認めていた。

 だからあの裏切りの後で俺と同じことをする不穏分子として処理されている可能性があることを思うと、またガープさんに迷惑をかけてしまうことも相まって申し訳なさが強く出てくる。

 

「バカな感傷だ。弟弟子が夢に向かって努力してるのに、その努力を無に帰そうとした奴が兄弟子にいるんだ。人懐っこいいい奴だけど、こればかりは侮蔑されても不思議じゃねぇよ」

 

 コビーは罵倒すらもままならないような好青年だ。もしかしたら今でも俺の都合を考えて悪く言わないでくれているのかもしれない。けど、それは俺にとって都合のいい妄想でもしかない。本当のことなんてわからず、後悔する気のない裏切りに後悔をしてしまいそうで、そしてコビーの未来を壊しているようで吐きそうになる不快感が込み上がってくる。ヘルメッポは、まぁ、なんだかんだ上手いことやってるだろうし心配はそこまでする気になれんな。俺やガープさんに真っ正面から文句言えるぐらいには肝あるし。

 

「……でも、正直意外だった」

 

「なにがだ?」

 

「フィースって粗暴だけどこういうことはしないも思ってたから」

 

 アーディの言葉に思わず首を傾げる。自分のことながら天竜人と子どものことになると自分でも制御できないほどの激情に襲われているし、何よりガープさんほどではないにしてもかなり好き勝手してきた自覚はある。

 まぁここにいる間さほど好き勝手してないのもあるからかと思い、こうなった原因に心当たりがあるし特に隠すことでもないから思い出すように顔を上げながら口を開いた。

 

「俺も(クズ)とか子どものことになると簡単に頭に血が上るのはどうにかしたいと思ってんだけどな。医者に診てもらった事もあったけど矯正できなかったよ」

 

「何か原因でもあったの?」

 

「子どもと昔の俺を無意識に重ね合わせてしまっているがゆえのトラウマに対する防衛反応かもしれないだとさ。もしくは他人の出来事を自分のことのようにして発狂しているクソ野郎か」

 

 いつの間にかいた無人島で何もできずに死にかけて、ルフィ達と色々やって不確かな物の終着点(グレイ・ターミナル)の大人達から暴力を受けて、天竜人にサボを殺されて。

 ガープさんに助けられ、文字通り命と着ていたもの以外何もなかった俺に兄弟が出来て、何者でもない俺を兄として慕ってくれて。

 それ以外に何もなかった俺にとってはそれを失うのが何よりも怖かった。それこそ、無人島で死にかけていたときと同じぐらいには恐怖を感じていたんだろう。

 

 それに、見聞色の覇気で意を強く感じ取るせいか家族を失う悲しみをより深く感じてしまうのと、それと俺の経験と記憶が良くない混ざり方をしたせいで沸点が低いんだろうって言われたんだったか。

 ……よくよく考えたら自分のことじゃないのに無駄にキレるって限定的とは言えやってること天竜人と大差ないのか……?…………何とかして矯正しないとダメだな。

 

「……んで、ギルドとやらが来ると言われてから二度寝できる時間すらもあるぐらいには待たされてるわけなんだが、まだ来ねぇのか?」

 

 あまり考えたくないことが頭をよぎり、それから目をそらすように話題を変える。今日ギルドのお偉いさんが来るというのは聞いていたんだが、待っても待っても連絡もよこさずに全然来やしねぇ。なんか偉そうな野郎そうだな、ネズミと同類か?

 思い出したくもねぇ面を思い出して思わずしかめっ面になる俺に、アーディは苦笑いを浮かべて頬を掻いていた。

 

「えっと、私も詳しくは聞いてないんだけど準備に手間取ってるみたいだよ?」

 

「ふぅん?事務処理が大変なのか?」

 

「どちらかと言うと君に対する方々からのいろんなお言葉が原因かな」

 

「どこにも暇人はいるんだな」

 

「あまり否定できない言葉なんだけど、この騒ぎの原因のフィースに言われるのは癪だなぁ……」

 

 両手を頭に組んで壁に背中を預ける。ジャラジャラと手についている手錠の鎖が胸の前で小うるさく鳴って鬱陶しさを覚えたが、まぁ別段やることもないから三度寝に移ろうかと目をつむる。アーディがもうすぐ来るはずだから寝ないで、と文句を言うがそれを無視して深く息を吐いて本格的に寝る体勢にした瞬間、カツカツと遠くから石畳を靴が叩く音が複数聞こえてきた。

 

「やっと来たか。囚人相手とはいえ連絡もよこさず時間も厳守できないのは社会人としてどうなんだ?」

 

「囚人がそれを言うの?」

 

 俺の軽口にアーディもやれやれと軽く息を吐いて首を横に振る。徐々に近づいてくる足音が牢屋内に響き、そしてその足音は俺の牢屋の前に着いた。閉じていた目を開くと、そこにはイかした仮面をつけたガネーシャさんと武装を身に着けたハシャーナ、シャクティ、そしてその後ろから偉そうな足取りでヒョコヒョコと出てきた人に思わず目を見開いた。

 

「うわ。松ぼっくりが服着て歩いてら」

 

 ボフッ、と空気が吐き出される音が4()人分聞こえた。ハシャーナ、アーディ、ガネーシャさんは肩を震わせて顔を背き、シャクティは何でもないかのようにしているが我慢しているかのように少し体を震わせている。そして松ぼっくりは何を言われたのか理解できなかったのか少し呆然としていたが、言われたことを理解すると同時に顔を真っ赤にしてこっちを睨みつけてきた。

 

「き、貴様、この私を松ぼっくりだと……!?」

 

「松ぼっくり以外何があんだその体はよ。こっちにも風船とかリンゴみてぇな体つきの奴とかいたが、お前みたいにちいせぇのは見たことねぇな。なんでそうなるまで食ってるのにデカくなってねぇんだお前。あれか?まだ成長できてないからか?それとも落ちてから間もないからか?松ぼっくりだけに」

 

「こ、の、クソガキ……!」

 

 顔を真っ赤にしてこっちを睨みつけてくるが、松ぼっくりが睨んできたところで大した脅威や恐怖は全く感じない。ウォーターセブンで会った時のチョッパーのほうがもっとマシだとすら思えるほどに覇気を感じないそいつは、顔を真っ赤にしたまま荒々しく咳をして再び俺を睨みつけてきた。

 

「いいか、私はギルドの長であるロイ……」

 

「お前の名前なんかどうでもいいから早く本題に入ってくれ松ぼっくり。こちとら二度寝できたぐらいには待たされたんだから暇で暇で仕方ねぇんだよ」

 

「このクソガキャあああああ!今この場で処刑してやろうか貴様ァ!」

 

「ハハッ。顔真っ赤。面白っ。顔に着火して火事起こすなよ、ここ空気の流れよくねぇんから窒息しちまうよ」

 

「~~~~~~~~~~~~ッッッ!!」

 

 俺の小馬鹿にした物言いに声にならない叫びをあげてさらに顔を赤くする松ぼっくり。その後ろでは必死になって笑いをこらえようとしているハシャーナに、逆に俺にドン引いているアーディとシャクティ、ガネーシャさんだったが、この程度で顔を真っ赤にするとはよほどいいご身分だったのだろう。

 

「貴様にどう責任を取らせようかと思っていたが、これはアストレア・ファミリアにも責任を追及すべきことだなァ……!」

 

 だからこそこいつがこういうことを言うのは簡単に予想できた。アストレア・ファミリアには悪いことしたなぁと割と本当に反省はしているが、まぁあの行動をとったことについては特に後悔する気はない。するとしてもやりすぎて世話になった人たちに迷惑をかけたことぐらいか。

 

「一応聞くが、なんでアストレアさんに責任が行くんだ?世話になってたとはいえ新参者が勝手しただけだぞ」

 

「そんな詭弁が通じると思っているのか?どんな形であろうと貴様を匿っていたアストレア・ファミリアに責がないわけではない。むしろ貴様の手綱を握れていなかった時点で大きな責があるのは明白だろう」

 

 ごもっともなお言葉だ。ここにきて間もない新参者が好き勝手した上にその内容が大量虐殺だ。その責任がアストレア・ファミリアに行くことに不思議はないし、行かなかったら逆に癒着を疑うぐらいにはやらかしている自覚はある。いや、マジで悪いことしたな。謝りに行っても許してくれねぇだろうなぁ、絶対。

 まぁ、だからと言ってその話を出されてムカつかないかどうかは別の話ではあるが。

 

「なら俺程度を止めることができなかったお前はよっぽど能がないんだな」

 

「……なに?」

 

「あそこを壊滅させたのは俺1人だけでしかやってねぇんだ。しかも隠そうとしてねぇ上に堂々とクズを引きずっていたのに止めることはおろかあそこまでたどり着くことを阻止することすらもできてなかったんだ。ファミリアを管理しているってのにちゃんとした指示もできねぇとは、ずいぶんとまぁ緩い指示を出しているんだなギルドとやらは」

 

 自分の非を棚に置いて鼻で笑うように口を動かす。そもそもあそこにいる連中はカスが多すぎた。リリに対する態度だけじゃなく、暴れた後で俺を利用しようとしていたあのカスを見るに、証拠があるわけじゃないが何かしらに手を染めていたのは身内でも多くいた経験で予想できる。

 それをどういうわけか何事もないと判断して何もしていないのは海軍でもよくあったと言わざるを得ないが、それを無視できるほどガープさんの顔に泥を塗るようなことをする気はない。

 

「まさかそれにギルドの責はないとでもいうか?闇派閥が好き勝手している中で1人しか動いていない俺程度を止めれずにいたギルドってのは、街の人々を守ろうとせずに腹にため込むことに集中していたんだなぁ?まぁ仕方ないよな、なにせ芽すらも出ていない松ぼっくりが頭にあるんだからな」

 

 目の前にいる松ぼっくりの表情が消えた。真っ赤にしていた顔は逆に顔色がよくなっていき、けれどその額には油と脂肪がたっぷりと乗っているにも関わらず薄暗くてもわかるほどに大量にかつくっきりと血管が浮かんでいた。

 

「……それが最期に言いたい言葉か?」

 

「クズ共に何のお咎めもしないギルドの長の言葉がそれか。お里が知れるな。いや、お前で察せられるお里がかわいそうか」

 

 もはや表情がなくなったとすら言えるほどの激情を浮かべている松ぼっくりに鼻で笑いながら挑発する。この後どうするか軽く悩んでいたんだが、もうここまで来たら脱獄して賞金首として適当に闇派閥を狩って行くかと手を手錠の鎖に動かそうとすると、聞き取りづらさを覚える男の言葉がやけに強く響いた。

 

『待て、ロイマン』

 

 ゆらり、と空間から突然全身をローブで隠した何者かが現れた。誰も気づかなかったのか突然現れたそいつに驚きの声すらも誰も出すことができず、シャクティ、ハシャーナ、アーディはガネーシャさんを守るように武器をそいつに構えた。

 

「お、お前は……」

 

『私はウラノスからの使者だ。私の言葉はウラノス様からの言葉だと思ってもらいたい』

 

 ガネーシャさんの絞り出すような言葉に答えたその言葉は誰もが信じることができずに全員の視線がガネーシャさんに向かう。まるで吟味するかのように短く唸ったガネーシャさんは、そのまま嘘はないと言うようにゆっくりと首を横に振った。

 ガネーシャさんの様子に誰もが驚きで目を見開いてローブの男を睨みつける。ローブの男はそれなりの実力者であるシャクティの圧に怯える様子もなく、淡々とした様子でローブの中にあるであろう顔を松ぼっくりの方へと向けた。

 

『ウラノス様からの言葉だ。この件については私が全責任を持って対処する。ファミリアはもちろん、ギルドに所属する者でも私の許可がないものがフィースを罰することを禁ずる、とのことだ』

 

「え、は、はぁ!?ウラノス様!?」

 

「……嘘では、ない。何を考えているんだウラノスは……?」

 

 そして、その口から出された言葉に松ぼっくりの顎が落ちるんじゃないかと思えるぐらいには開いて再びガネーシャさんへと顔を向ける。松ぼっくりほどじゃないがそれでも驚愕した様子のガネーシャさんは松ぼっくりの驚愕の叫びに反応して嘘がないことを伝える。

 正直俺も相当驚いてはいた。()()()()()()()()()()()()()()()()終わった後で何かしらあるんだろうとは思っていたが、まさかあんなことをした俺にありえないんだろう沙汰を決定したと言ったんだ。これで驚かないわけはない。

 

『それと、ソーマ神からの伝言だ。ソーマ・ファミリアとしてこの者を訴えはしない、とのことだ。ゆえにギルドから出せる罰則は最低限のものになることと知れ』

 

「な、なぜ……!?」

 

 さらに続けられた言葉には俺も声を漏らしそうになるぐらいには驚きを隠せずにいた。人に興味がなかっただろうが、まさかあんなことをした俺に対して何もしないんだろうなとは思っていたがそれをギルドに対して宣言するとは欠片も思っていなかった。あいつの中で何があったんだ?

 酒カスのことはともかく、俺に対して事実上の無罪とすら言える沙汰を言い渡した理由はなんとなくわかった。わかった俺は、まさかあれと同じようなことになるとはと思わずため息を吐いた。

 

「司法取引、ってか?ここから出す代わりに命令通りに動けと」

 

『そう受け取ってもらって問題ない』

 

 ローブの男の肯定にまたため息を吐く。俺に王下七武海のような、犯罪者として扱うのはやめる代わりに言うことを聞けということだというのは理解できた。こんなのがまかり通るのはいいのかよと思わなくはないが、これがまかり通れるぐらいには治安が悪いんだろうと察せれるし、なによりこれに関しちゃ向こうも変わりねぇどころの話じゃねぇから俺がどうこう言える立場でもねぇかと何度目になるのかわからないため息を吐く。

 

「わかった。しばらくはお前らの使いっ走りになってやる。戦闘に関しては専門だしな、それなり以上には戦ってやるよ」

 

 まぁ、こいつはぶん殴りたくなるぐらいには気に食わねぇが俺のやったことは確かにマズかった。書類上では闇派閥でもないファミリアを1つ潰したんだし、それをやらかした俺に何のお咎めもないのは管理を謳う者からすれば今までできていた管理を壊す火種でしかない。やらかしておいてなんだが、別に好き好んで混乱を起こしたいわけじゃないからここで大人しく指示に従ってもいいか。

 

「だが、全部の言うことを聞くと思うなよ?」

 

 それはそれとして、仲間や家族でもねぇ奴に俺がなんでも言うことを聞くなどと思われるのは気に食わない。これでも海軍では将校だった身だ。加盟国が相手ならまだしも、傲慢な奴が頭になっている非加盟国相手に下手に出る事のマズさぐらいはわかっている。

 それに少将としてのプライドもあるしガープさんの弟子としてのプライドもある。外様な上に俺の常識は通用しないことはわかっているつもりだが、それでも分かっていない奴が相手だが将校を軽んじる奴の言いなりになる気はない。

 ガシリ、と両手と両足についている錠の鎖の()()()()()()()()()()()()()。握りしめた空間にまるで布を握りしめたかのようなしわにも似たものが浮かび、金属の悲鳴にも似た甲高い音が牢屋内に響いた。

 

「な、何をしている!?」

 

 松ぼっくりが悲鳴を上げるがそれを無視して握っている手首を軽くひねる。甲高い金属のひしゃげる音が一瞬だけ大きく響いたと聞こえた瞬間、空間を握っていた場所に近い鎖がまるでクッキーを砕いたかのように砕けた。

 

「な、て、手錠を!?」

 

「バカな!?あの手錠はアダマンタイトで作られた特注品だ!そう簡単に壊れるようなものではないのだぞ!?」

 

 悲鳴にも似た叫びがシャクティから上がる。へぇ、金属については硬そうぐらいしかわからねぇが、こいつが壊れるのは相当にマズいことなのか。それじゃ牢屋をブッ壊すわけにもいかねぇか。

 

「俺に言うことを聞かせたいがために首輪をつけたいなら相応の覚悟をしろ。着けた首輪に爆弾仕掛けんなら、その見えもしねぇ首が地面に落ちる覚悟をな」

 

 ギチィ、と鍵のついた扉に指を付ける。”鉄塊”をかけた上に武装色の覇気でより硬くした指に力を込め、鍵の部分に瞬間的に殴るように力を込める。

 

「元々ガープさんのところにいたのは力を付けたかったのはその通りだが、同時にガープさんへの恩返しもあった。けど今はもうガープさんはいない。だからもう俺は自由にやらせてもらう」

 

 バガン、と鍵の部分が大きく歪んで鍵が壊れる音が牢屋内に大きく響いた。同時に弾かれるように扉は開き、その先でシャクティが苦虫をかみつぶしたような表情を浮かべて槍を構えて穂先をこっちに構えていた。松ぼっくりは腰を抜かしたのか床に座り込んでいてフードを目深く被った男は警戒を顕わにして構えを取り、アーディとハシャーナはガネーシャさんを守るようにそれぞれ構えて俺を見ていて、ガネーシャさんは仮面の上からでもわかるほどの驚愕を浮かべていた。

 

「悪いが俺を止めれる奴はここにはいねぇぞ。せいぜい使い方を間違えんなよ」

 

 ニィ、と我ながら凶悪な笑みを浮かべたものだと分かるほどに目が据わったまま口角を上げる。それを見た松ぼっくりは、ただ悲鳴を上げることしかできずに後ずさることしかできでいなかった。




「子どもがイジメられてる!つまりこいつは僕をイジメてるんだギャオーン!!」を素でやってる現代だと割とどころではなく許されないタイプのオリ主である。
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