元海兵がダンジョンにいるのは間違っているだろうか   作:ルーニー

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 モンキー・D・ガープ。世界的人気漫画ONE PIECEの登場人物の1人であり、主人公モンキー・D・ルフィの祖父でもある、海賊とは真逆の存在である海軍に所属する豪傑だ。中将という立場にありながら好き勝手しているその姿から海軍からも問題児として扱われており、同時に息子と孫が問題ばかり起こしているのに当の本人は知らん顔、孫に関しては海兵にしたかったらしいがそれも失敗しているが、少なくともエースを含めて愛情を持っているのは確かだ、自由奔放な存在として描かれている。少なくとも俺はそう読み取っていた。
 そんな存在が急に目の前に現れた時、俺はどう反応すればよかったのだろうか。

『ガープ中将!彼は栄養失調で倒れていたんです!もう少し声を抑えてください!』

『おぉ!すまんすまん!』

 もう1人一緒に入ってきた白い服の人が注意しても聞いていないのかそれともその大きさがデフォルトなのかさっきと変わらない大きさで謝っていた。

『ふむ。目が開いている、ということは起きているということじゃろう。ほれ、聞こえとるんか?目は見えとるのか?』

 目の前にありえない存在がいるとわかって呆然としていた。そんなところにガープが意識の確認のために目の前で手を振っている。ガープの手は俺の頭をわしづかみにできそうなほどに大きく、目の前に手を持ってこられた時には一瞬掴みかかられるのかと思って体をビクリとさせたが、すぐに見えていることと聞こえていることを伝える。

『おぉ!そうか!何にもない島で倒れているのを見て医務室に連れてきたが、生きとって何よりだわい』

 ブワハハハ、と豪快に笑うガープ。近くにいた人から話を聞くと、俺がいた島の近くを通った時火の光が見えたらしくそれが海賊のものだとまずいということで接近してそして発見されたのが倒れていた俺だった、ということらしい。

『しかし、なんであんなところに1人でおったんじゃ?あの島は誰もいない無人島じゃぞ』

 ガープの疑問に対し、俺は何も答えることはできなかった。気が付いたらあそこにいた、としか言いようがないのだからそういえばいいのかもしれないけど、じゃあその前はどうしていたんだ?と聞かれても答えようがない。どう答えようか悩んでいると、ガープがそれを察したのかそれとも別のことを思っていたのかはわからないけどある提案をしてくれた。

『お前さん、いくところがないのならワシのところに来んか?』

 その言葉を聞いた俺の反応は、よくわからないと言わんばかりの表情だった。けど、この言葉が俺の将来を決定した言葉だった。





4話

 

 山の森の中、生い茂る木々の中に少し空けた広場があった。その広場には丸太がいくつも吊るされており、周りの木々に指ほどの大きさの穴がいくつも空いていた。そんな広場から外れた場所で、樹齢何十年もありそうな大きな木があり、その前で足の調子を整えるように軽く飛ぶ。ザッザッと草を踏む小さな音が風もない空間に小さく響く。小刻みなフットワークで足の調子を確かめ、左足を踏みしめて右足を振り上げた。

 

「『嵐脚』!」

 

 ヒュゴゥッと風を切る音が山の中に響いた。わずかに見える線のようなものが空を走り、木に直撃すると破裂音とともに木に大きな傷ができた。その傷のせいで自重に耐えきれなかったのか、メキメキと音を立てて木が倒れた。

 

「……まだまだとはいえ、ここまでは戻すことができたか」

 

 倒れた木の傷跡を確認する。『嵐脚』が当たった場所から半円状に傷が残っており、表面を削る程度だったころを考えれば未完成とはいえ『嵐脚』の破壊力が上がってきていることが見て取れる。

 

 じいさんに引き取られてから早くも3年が経った。ベルや村の子供たちとの交流も問題なく、村の住人ともなんとかうまくやってきていると自負している。狩りも順調で農業も段々と理解できてきている頃でもあり、同時に六式の勘も徐々に戻ってきていた。

 

「少将の頃ならこれぐらいの木ならまとめて何本も切り倒せるんだけどなぁ」

 

 切り倒した木に持ってきていたのこぎりで薪にできる大きさまで切り分ける。切り分けた薪をひもで1つに括りつけていつでも運べるように背負子に積み上げる。背負子に縛り付けて動かないぐらいになったのを確認して背負子を背負う。去年の冬がかなり寒かったせいで共有の薪の消費が激しく、今からでも薪用に伐採しておかないと今年の冬を超えられない可能性があったから鍛錬もかねて木を伐採している。

 しかし、体が小さくなり、筋力も低下しているせいで六式を最初から習得しなおす必要が出てきたのは今までの苦労が水泡に消えたようでいい気分ではない。理由はわからないがまた違う世界に小さい体で生きているのだから人によっては儲けものだと言うかもしれないが、ガープさんの指導の下鍛えた技が使えなくなっているというのは正直寂しさもある。

 

「『剃』と『指銃』は問題ないとして、『嵐脚』以外には『鉄塊』と『紙絵』、『月歩』がまだ完全と言えないからな」

 

 『剃』と『指銃』は向こうの世界でもトップクラスだった自信があったから、短い時間で満足できるレベルではないとはいえ及第点だと思える程度には仕上がっている。六式の中では『紙絵』が1番苦手であるせいか覇気を使わないと中々習得できないが、『鉄塊』と『月歩』はもうあと少しってところまで来ているし、『嵐脚』ももう少しで形になる。全部が及第点になるのにあと1年もかからないか。

 

 積んだ薪が木々や枝にぶつからないように移動しながら山を下る。水分を多分に含んでいる木は重いのだが海軍での下っ端時代で課せられていた鍛錬を思えば全然軽いものだ。重心を狂わせない訓練として木々や枝に触れないようにわざとフラフラと歩く。これはいろんな姿勢から『嵐脚』を放つのにいい訓練になる。

 

 ザザァ、と強く風が吹いた。枝と葉がぶつかり合う小気味いい音が山の中に響き、風に耐えられなかった葉が何枚も風に乗って飛んでいくのが見えた。少しの間風で舞っている葉を眺めていたが、葉を避けることよりも指銃を鍛えることができるのではと思い至り両手を構える。

 

「『指銃・撥』」

 

 空気を切る音とともに風に舞っていた葉が不規則に動く。パシッ、パシッと葉に当たる音が風の音の中で響いているが、葉に何かが当たっているというだけで葉が不規則に動いている以外には異変はなかった。

 

「くそぅ。『指銃』なら木でも簡単に穴開けられるけど、『指銃・撥』だと空気砲程度の威力しか出ないか」

 

 ビスッ、ビスッと指から空気を押し出す音が聞こえるが、少将の時に空気をねじ切るような音が出ていた時のことを思えばかなり弱体化している。『指銃』は合格できる威力だが、発展形の技になると威力や速度が落ちてしまう。これも完成までは時間の問題ではあるが、今できないという不満は解消できないのが歯がゆい。

 

「まだ鍛錬が生ぬるいってことなのか、ねっ」

 

 バシンッと大きく葉がはじかれて地面に落ちる。葉の表面には満遍なく叩かれた跡があり、汁がにじみ出ていた。

 落ちた葉を踏みしめ、気落ちしながら重心を狂わさない訓練に戻しながら山を下る。山を下って村に着くと日も落ちて黄昏になっている。途中ですれ違う村人たちに声をかけながら村の中央まで移動して背負った薪を共有場に置く。かなりの大きさの木だったこともありそれなり以上の量があったおかげか、背負子に縛ってあった分が全部なくなるころには共有場の薪もそれなりに詰まっていた。

 

「お前、よくあんな量を持てるよな」

 

「まぁ、慣れだよ」

 

 たまたま近くにいた村人に背負子に縛ってあった薪の量について談笑する。ギリギリを持とうと思えば今回持ってきた分の3倍ぐらいはもってこいというと苦笑を買ったが本心だったりする。

 村人との談笑を終え、背負子をもって帰路につく。夕方だったからか特に村人とすれ違うこともなく、すぐに家に着くことができた。

 

「じいさん、共有場の薪追加しておいたぞ」

 

「おぉ、すまんな」

 

 背負子を倉庫にしまい、首の関節を鳴らしながら家の中に入る。家にはじいさんがテーブルに座っており、その正面に顔立ちの整った男性が座っていた。

 

「やぁ。君が数年前に拾われた男の子かい?」

 

 テンガロンハットをかぶり、人懐っこい笑みを浮かべている。これだけ見ればただのイケメンというかもしれないが、それを上回って感じるのはとてつもない胡散臭さ。海軍の少佐以上になれば武力ではなく知力で上がってきている者もいるが、その知力で上がってきた連中特有の、あるいはそれ以上の胡散臭さを感じた。

 

「……顔を合わせた瞬間にそんな胡散臭いものを見るような表情するかい?」

 

「……いや、失礼。お客人に対する態度じゃなかった」

 

 とは言ったもの、勘とはいえ胡散臭さを感じている男に対して無警戒でいるわけもなく、見聞色の覇気を全開にして警戒する。じいさんの様子では知り合いのようだが、ネズミ大佐に会った時よりも胡散臭いと感じる男なんて警戒するに値する。

 

「まぁ、話も終わっているし、この子も警戒しているみたいだしそろそろお暇とさせてもらうよ」

 

「あぁ。すまんな、ここまで来てもらって」

 

「なに。いつものことさ」

 

 話は終わっていたのか、男は帽子をかぶり直して荷物を背負い、胡散臭い笑みを浮かべて席を立った。

 

「それじゃね、フィース君」

 

 胡散臭さ増し増しの小憎たらしい笑みを浮かべながら手をヒラヒラと振って扉を閉める。見聞色の覇気で男の動向を確認していたが、特に他の用事はないのか村から出て行った。

 

「……なんだったの、あの胡散臭いの」

 

「わしの古い知り合いじゃ。なに、悪い奴ではないさ」

 

 古い知り合いなのに名前を出さない、ということは言いたくない、ということだろう。見聞色でも言いたくないという感情を感じる。

 さて。見聞色でもじいさんがそう思っているというのはわかるけど、ああいう手合いは信用ならん。ネズミ大佐の時もそうだったが、海軍の中でもああいう手合いに何度面倒なことやらされてきたことか。

 

「ほれ。もうすぐベルも帰ってくる。夕飯の準備をしようじゃないか」

 

「……はいよ」

 

 とりあえず、今はあの胡散臭い男のことは放っておいて夕飯の準備をする。あの胡散臭い笑みが何となく脳裏に浮かんだが、それを振り切るように首を振った。

 

 






ちなみに見聞色の覇気については某ガンダ○のニュータ○プと同じものという感じで使っております。厳密には違うんだろうけど、マンガを見てるとほぼ同じじゃん、と思ったので扱いについてはニュー〇イプに似せてます。

あと思った以上に主人公の死後について気になるって言っていただけていることに驚いてます。とりあえず細々と書いてはいるんですがいつ掲載できるかはわかりませんので、よろしければ気長に待っていただけたらなと思います。
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