元海兵がダンジョンにいるのは間違っているだろうか 作:ルーニー
フーシャ村は、知っていた通り、そして聞いていた通り平和な村だった。のどかな雰囲気を漂わせ、村人全員が満たされていると言わんばかりの表情を浮かべている。街の入り口を見るだけでここかいい村なんだということがわかる。
ガープ、もといガープさんから養子の申し出を受けてはや数週間。立派な海兵になるんじゃぞ!と言われて引き取られてからもう数週間が経っていた。どうしてガープさんが俺を引き取ろうと思ったのかはわからない。文字通り何もない俺には渡りに船であったからガープさんの提案に乗せてもらったが、しかし、本当にどうしてどこにでもいそうな俺を助けてくれたのか。本人に聞いてもそれっぽい回答が返ってこなかったからあきらめるしかないのだが、本当にどうしてなのか気になる。
『なんじゃ、また来たのかガープ』
村の大きな家の前から呆れたような声が聞こえた。ガープもその声が聞こえたのか、大笑いしながら俺を連れてその声がした方へ歩く。そこには帽子をかぶった初老の男性が椅子に座ってガープさんを見ていた。その表情はどこか呆れのようなものがあり、さっきの言葉を鑑みるについ最近もこの村に来ていたのだろうか。
『何、ちょいと新しい
『またお前は……待て。新しい孫?』
村長が俺の方をマジマジと見る。マンガでは特に何も思わなかったが、この村長中々に厳つい顔をしている。急に睨みつけるように見つめてきた村長に思わず体が震えたが、村長はそれを見て体を震わせ始めた。
『……お前がどういうことをしようが関係ないとは思っていたが、よもや誘拐をするとは!』
『誰が誘拐なんぞするか!相互理解の上でじゃ!』
『貴様の言う相互理解があてになると思っとるのか!』
どうしてか俺を確認すると同時にガープさんとけんかを始める村長。何がどうしてこうなったのかと言いたかったが、ガープさんのあの傍若無人っぷりを考えたらそう考えるのも仕方ないことなのかもしれない。とにかく、目の前で起こっている不毛なケンカを止めるべく、2人の仲裁に入るのだった。
空気が切れる音と共に木々が倒れる。枝が折れる音と倒れた際に大きな音が何度も鳴ったが、斜めに切ったおかげである程度一定方向に倒すことができた。平行、とまではいかないがある程度並んでいる木々を見て満足した俺はまとめて細かく切るために木々を並べる作業を始めた。
1年前までは1本の木を半分ぐらいまでしか削ることしかできなかった『嵐脚』も、今では木々をまとめて切り倒す程度にはなった。しかし派生技を使うにはまだまだ鍛錬が足りていないことにげんなりとしながら木々を細かく分ける作業に入る。『嵐脚』が満足できる程度に完成してからのこぎりや斧といった刃物を持っていく必要がなくなったから楽なのだ。
六式も満足いくレベルまで習得しなおせた俺は薪を背負って気分よく山を下りて行った。得意な『剃』や『指銃』は派生技を使えるようにはなったが、まだ派生技を出すにはまだまだ鍛錬が足りていない。しかし、基本的な六式の技を出す分には何も問題ない。このまま鍛錬を続けていけばもう少しで派生技も使えるようになれる。そう確信できるほどに六式は完成できたのだから気分は上々だ。
ここまで来るのにじいさんに引き取られてから4年もかかった。いや、青年になりつつあるとはいえ子供の体で4年しかかからなかったと思えば早い方か。海軍にいたころはもっと体が成長していたのにもう少し時間がかかっていたことを考えればずっとはやい。やはり慣れというか一度習得したものを再習得するのにそう時間はかからないということか。
「……フィース、また積んでる薪の量増えてねぇか?」
「鍛えてるからな」
たまたま通りすがった年上の友人から半分諦められたような表情を浮かべられながら薪の量について聞かれる。背負子に乗っている薪は背負子に乗せきれずに縄で無理やり括り付けている状態であり、縄が切れるかほどけるかすれば薪の雪崩が起こるほどの薪を背負っているのだからそういう表情も仕方ないだろう。が、向こうの世界基準でいえばこの程度ならば余裕で持っていけるのだから、向こうの世界の常識は今思えばおかしかったのだろうか。
「……そういやフィース、お前ガキども見てねぇか?」
「ガキども?」
ガキども、で思い起こせるのはベルとその同い年の子供たちのことぐらいだ。多分外れてもなく、やんちゃ盛りで村の人たちにも迷惑をかけている、とまではいかないがそれなりに好き勝手に行動を起こしているのだから大人たちもハラハラとしながら見守っている対象の子供たちのことだろう。
「いや、道中は見てないけど。何かあったのか?」
「朝っぱらから何かこそこそとやってるのを見かけてな。そん時は特に気にもしてなかったんだが、さっきから誰も見かけないのが気になってな」
そういえば子供の声があまり聞こえない。そう思って見聞色を使って確認してみるが、確かにはしゃいでいるような人は村のどこにも感じない。静謐とは言わないが静かな村だ。
「どっかに冒険と称して村の外で探索でもしてるんじゃないのか?」
「それぐらいならいいんだけどな。山に入ったとなると狼やら熊やらと遭遇する可能性がある。そうなるとガキどもは獣の腹の中に入ることになる」
「なるほど。それは怖いな」
「だから山に行っていたお前に確認したんだが、そうか。見てないか」
村中の気配を探ってみているが、どこにも子供らしい気配がない。それどころかベルの気配もない。四六時中、とは言わないが家族として一緒にいることの多いベルとじいさんは何となく、という程度ではあるが判別はつく。それなのにベルの気配を感じない。ということは、ベルも一緒に外に出ているということだろうか。
「……ちょっと気になってきたし、探してくるわ」
「いいのか?確かにお前は人探すの上手いけどよ、手間にならねぇか?」
「子供を探す程度ならそこまで手間じゃないさ」
六式の鍛錬と一緒に覇気の鍛錬も欠かさず行ってきていた。そのおかげか武装色の覇気は1秒もかからずに全身を纏うことができるようになったし、見聞色の覇気は範囲が広がり誰がどこに、とはさすがにわからないがどこに何人いてどういう行動をしているのかぐらいはわかるようになった。どこに行ったのかはわからないけど、村人に聞いたり歩き回って探せば見つかるだろう。それに今はもう夕方だ。帰るのにいい時間になってきているのだからそろそろ帰ってきていてもおかしくはない。
背負っていた薪を下ろし、村人たちにベルたちがどこに行ったのかを確認するために村中を歩くことにした。『剃』で探し回るほどのことではないしな。
短くて本当に申し訳ない。
しかも短いうえにストックもなくなりました。これから不定期更新になります(今までもなってたとは言ってはいけない