元海兵がダンジョンにいるのは間違っているだろうか 作:ルーニー
そういって連れているのは道の整備もされていない、せいぜいが何回か踏みしめられた土が道筋になっている程度の悪路を歩いていた。ガープさんは子供の俺に気を遣うことなく歩いているおかげで常時小走りに近い状態で歩いている。地味にきついから歩くの遅くしてほしいのだけど、当の本人は全く気付いていないのか、それともわざとなのかはわからないがずっと同じペースで歩いている。
しかし、フーシャ村から山に登る。そしてその先の人物に預ける。ということは、つまりは俺もダダン一家に預けられるということなんだろう。現に山登りに適していない山中だというのに大きな家が見えてきた。そこにガープさんは我が物顔で敷地内へと入り、ダダンの名と共に無遠慮に扉をドンドンと叩く。
『誰だ!朝っぱらからやかましいんだ……ががががががガープさん!?』
巨漢、男と言ったら失礼だが、少なくとも普通の女性よりもはるかに大きな女性がタバコを片手に家から出てきた。後ろに頭に布を巻いている男連中もいる。間違いない。ダダンだ。
『ダダン、こいつも預かってくれい』
『またですか!?エースも預かっているのにこれ以上預かれっていうんですかい!?』
『そうじゃ』
『もうやだこのジジイ!』
人通りもなく不便な山の中に住んでいるというのも奇特な人だなぁと思わなくはなかったが、山賊なのだからそうしなければならない人だということに思い至り、そんなところに預けようという考えに至ったガープさんに頭が痛くなった。が、マンガでのエースのことを考えたらそこまでひどい扱いを受けるわけでもないだろうし、どうもガープさんを恐れているらしいから虐待等はないだろうと祈りにも似たことを思いながら頭を下げて丁寧にあいさつする。
『……ガープさん、この小僧どっから誘拐してきたんですかい?』
『誘拐なんぞしとらんっつっとるじゃろうが!』
丁寧にあいさつしただけのつもりだったのに、ここでも村の時と同じ反応されるんですねガープさん。マンガでも結構な自由人だったけど、村長とのケンカの時にも思ったけどあなたどんだけ傍若無人なんですか。ダダンに殴り掛かっているガープさんを見て、思わずため息が出る。こんな人が海軍中将だとは、正直マンガの知識を持っていても信じられないと思えるほどに、モンキー・D・ガープという存在は自由だった。
「誰か!誰かいないの!?」
どこからも光が差さない真っ暗な空間の中、僕と友達は必死になって入り口だった場所で岩を叩きながら大声をあげていた。叩いても押してもビクともしない岩を何とかしようと必死になるけど、でも今あるものじゃどうやっても岩を動かすことはできなかった。
そもそもの始まりはみんなで一緒に探検をしようという話が挙がってきたことだった。近くの山であれば獣もモンスターも出るという話は聞いていないし、お昼時である今から行けば夕方ぐらいに帰ることだってできる場所だから特に文句も異議もなかった。
お昼ご飯にとサンドイッチも持っていき、僕を含めた男の子全員は探検という言葉に心を躍らせ、女の子たちはピクニック気分で一緒に山の中を歩いていた。道中に狼や熊と言った危険な動物もおらず、モンスターなんて危険な存在にも遭うことなく、いい形の枝を剣として振り回したりふざけて決闘ごっこなんてこともしながら山の中を歩いていた。
そんな感じで山の中を歩いていると、山の中腹ぐらいに大きな洞穴があったのをみんなで発見した。大きな洞穴に対して中はそこまで深いものでもなく、動物がいた様子もなく明かりを持ってきたら基地として活用できそうな場所だった。ここをみんなの秘密基地にしよう、とみんなで盛り上がってどこに何を置こうかとみんなで話しているときに、事件は起きたんだ。
洞窟の天井から小さな石が落ちてきた。そう思った次の瞬間にグラグラと地面が揺れ始めたんだ。動くこともできない、というレベルでの揺れではなかったけど、でも急に起きたこともあって僕を含めて誰もその場から動くことができなった。
少しして地面の揺れも収まり、みんなが安心している中で、近くから地響きが聞こえてきた。そして、その音が大きくなってきたと思ったら大きな衝突音と一緒に洞窟の入り口をふさぐほどの大きな岩が落ちてきたんだ。
みんなで転がそうにも子供の力じゃ全然動かすことができないし、声も聞こえるのかどうか怪しいぐらいに隙間がない。誰も潰されることはなかったと思ったら運はよかったのかもしれないけど、でも閉じ込められて洞窟から出られないのだからまずいことには変わりない。他に出口はないのかと思って暗闇に目が慣れたころに探してみたけど、奥がある程度深いだけで他に出入りできるような場所はなかった。
「もう、もうダメなんだぁ……」
ポツリと、女の子が1人吐き出されるかのように呟いた。その呟くを皮切りに、女の子たちが泣き始め、男の子たちも嗚咽を漏らし始めた。
「みんな!あきらめちゃダメだ!きっと誰か助けに来るよ!」
洞窟の入り口が大きな岩で塞がれて真っ暗な中、何とか暗闇に目が慣れてきてわずかに見えるようになった。でも、そんな中でもみんなが暗い顔をして泣いているのが声で分かる。僕だって泣きたい。でも、ここで泣いちゃいけないんだ。こんなことで英雄は泣かないし、どうにかしてみんなを助けることができるんだ。だから、泣いちゃダメなんだ!
「でも、ここに来るって誰にも言ってない……」
「どうしてこんなことに……」
「お前がここに秘密基地を作ろうって言ってからこうなったんだろ!」
「なんだよ!お前だって何も言わなかっただろうが!」
誰が誰かが何とかわかるほどに真っ暗な中なのに、ここに秘密基地を作ろうと言った2人がケンカを始めてしまった。それに釣られて他の子たちも大声で泣き出したりしてしまい、どう頑張っても収拾がつかない状況になってしまった。
ケンカを止めようにも僕の言葉なんて全く聞く耳持たない。泣いている声もケンカの助長になっているのか収まる気配が全くない。みんながみんな混乱の窮地にあるのだと嫌でもわかってしまった。こんな状況、僕じゃ救えない……。誰か、助けてください……!
神に祈るように岩のほうを見ていると、かすかにだけど音が聞こえた。何か穴を穿つかのような、そんな音がかすかに聞こえてくる。落ち着いて音のする方を確認すると、落ちてきた大きな岩からかすかに音が聞こえてきた。連続して聞こえてくるその音は徐々に大きくなっていき、そして大きな岩に指の大きさの穴と一緒に空気を切って何かが飛んでいくような音がした。
「やっと穴が開いたか。おい!そこにいるんだろ!誰か返事できるか!」
開けられた穴からはわずかな光と一緒にフィース兄さんの声が聞こえてきた。どうやってこの穴をあけたのか、どうしてここにいるのがわかったのか、そういう疑問も全部浮かぶことなく、ただ助けが来たことがうれしかった。
「フィース兄さん!」
「ベル!どこにも入り口がないのに中から気配がすると思っていたけど、大丈夫なのか!」
僕の声を確認したからかフィース兄さんはみんなの状態を確認する。ここにいるみんなに大きなケガもないし、岩でつぶされてもいない。もしかしたらケンカの最中にけがをした子がいるかもしれないけど、でも生死に関わるようなケガをした子は1人もいない。真っ暗な中だけど誰1人欠けてもいないし、大きなケガも負った子は誰もいない。
「みんなケガもなくて大丈夫!でも、この岩が落ちてきたから出られないんだ!」
「他に出入口はないってわけか」
こっちの状況を確認できたからか、ちょっとの間フィース兄さんは考えるように黙った。誰もこの状況から脱せると思っていなかったこともあって外にいるフィース兄さんの声が聞こえなくなったことに不安がよぎったけど、でも考えがまとまったのか全員に聞こえるように声を出してくれた。
「ベル!この洞窟に奥行きはあるか!危ないから全員出来る限り下がって伏せてろ!」
もうすでに村の人たちをここに呼んでいるのか、それとも何かここから脱出できる方法があるのか。どっちなのかはわからないけど、フィース兄さんの言う通り、ここにいた全員が暗闇の中でできる限り岩から離れ、頭をかばうように伏せる。少しの間音も何も起きなかった。頭を伏せていた子たちも疑問気に頭をあげていた。
「六式究極奥義、『六王銃』ッ!」
でも、フィース兄さんは僕たちを救ってくれた。僕たち全員が必死になって押してもびくともしなかった岩が大きな破壊音と共に砕け、パラパラと岩のかけらが僕の目の前に落ちてきたのがまぶしい光の中でも見えた。
「ふぅ。感覚で撃ったけど『六王銃』を使えてよかった。けど、やっぱ少将のころに比べて威力もかなり落ちてるか」
閉じ込められてからまだそこまで時間は経ってないと思う。でも、久々に見えた光が、夕暮れの赤い光が洞窟の中で輝いていた。その光の中にフィース兄さんが手を振っていた。
「大丈夫だったか、みんな」
夕日の光が陰になっていて顔の表情はよく見えなかった。でも、わずかに見えたフィース兄さんの笑みはとても安心できて、みんなで泣きながらフィース兄さんに集まっていた。フィース兄さんは泣きながら囲んでいるみんなにちょっと苦笑気味に頭をなでていた。そんなみんなのピンチをさっそうと現れて助けてくれるフィース兄さんが僕の中の英雄像とどこか重なっていたように感じた。
わざわざ岩を壊すだけなのに『六王銃』を使う必要があったのか?と言われたら全く必要ないんですけど、『獣厳』だと殴った際に大きなかけらが子供たちに飛んでいく可能性が高いし、『嵐脚』だと貫通して子供たちに『嵐脚』が飛んでいく、『指銃』は威力が低いのと岩を壊すのに時間がかかりすぎる。だから内部に衝撃を伝える『六王銃』なら子供たちへの被害も少ないんじゃないかなぁ、という考えで『六王銃』を使いました。オリジナル技使うよりもこうした方が見栄えもいいですしね。
という言い訳はともかく、ぶっちゃけ『六王銃』を使いたかったから使っただけです。だってここ逃したらいつ使うことになるのかわからなくなるんだもん。仕方ないじゃん←。どうでもいいけど究極って聞くとゲシュペ〇ストキックを思い出すのは私だけですかね。
え?ワンピースのことを考えたら大きな岩程度持ち上げればいい?主人公のカッコよさを盛り上げるために書いたのに、それをいっちゃぁおしめぇよぉ。
あとなんとなくアンケート取ってみましたけど、予想以上に主人公死後の世界を要望する人がいらっしゃることに驚きました。ぶっちゃけ細部が変わるだけで大本はほとんど変わることないんです。期待していただいている方には、いるかいないかは置いておいて、大変申し訳ないですけど書くほど変わった部分はないんです。アンケート取っておいてなんですがホント申し訳ないです。