元海兵がダンジョンにいるのは間違っているだろうか   作:ルーニー

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ワンピース成分が少ないからもっと増やしたいけど、テンション的にそうなるのって誰?ってなるのがダンまち世界。適当なモブを作ってエネルの驚き顔させるか目下検討中


12話

「うわぁ……!すごい……!」

 

 ガヤガヤと人通りの多い入り口。馬車や大きな荷物を持った商人が数多く行き来している中、ベルは目を輝かせて商人たちを眺めている。そんなベルを見ておのぼりさんだなぁ、と微笑ましく思う。

 

「……こんな大都市に入るのもずいぶん久しぶりだな」

 

 じいさんと別れを告げて商人の好意で連れて行ってもらってからはや数日。この世界に唯一ダンジョンのある大都市オラリオにベルと共に着くことができた。今いる道だけでも様々な看板が並ぶ大きな建物が道なりに並んでおり、同時に様々な品物を置いている露店が並んでいるのを見るに、さすが大都市としての名は伊達じゃないと感心した。

 大都市で思い出すのは、かつて海軍にいた時に多く訪れていた様々な島の大都市。海賊の退治だったり補給だったりと入港した理由は様々だが、様々な大都市に入った経験は多い。休暇に大都市に入ることはなく補給が行われている数時間のみ大都市を歩き回ったことがあるが、そこらよりも大きいとすら感じる。

 

「兄さん!あっちに見た事ない食べ物があるよ!」

 

「ん、そうか。ちょうど小腹も空いているし、買ってきてくれるか?」

 

「うん!」

 

 あらかじめじいさんにもらっていたお金をベルに渡し、ピュウっと屋台へ走っていくのを見守る。こういうところはまだ子供だなぁ、とベルのおのぼりさんっぷりに苦笑しながらベルが帰ってくるのを待つ。

 

「すみません!このじゃが丸くんっていうのを2つください!」

 

「あいよ!毎度あり!」

 

 少し離れた場所からでも聞こえるベルと店主のやり取り。ガヤガヤとにぎやかな中でも聞こえるベルの声にテンション高いなぁとまた苦笑が漏れる。

 

「兄さん!買ってきたよ!」

 

 テンションの高いベルが両手に買ってきたものを持ち、片方を俺の方に差し出す。お礼を言ってベルの手から商品を受け取ろうとして、ふと袋に入ったものを見て、思わず首を傾げる。

 

「……これ、コロッケだよな」

 

 こんがりと茶色に揚げられた楕円形の食べ物。十何年も口にしてこなかったが、間違いなくコロッケだ。メンチカツやとんかつの可能性も無きにしも非ずだが、厚みや屋台から感じ取れる匂いから肉の匂いはしない。多分ジャガイモ100パーセントのコロッケだろう。

 

「兄さん?」

 

「ん?あぁ、いや、ありがとうなベル」

 

 少し経っても受け取らないことに疑問に思ったのかベルが心配そうな表情を浮かべる。嫌いなものでも買ってしまったのかもしれないという不安なのだろうけど、特に好き嫌いはない。ベルからコロッケ、じゃが丸くんだったか、を受け取りさっそく口に運ぶ。ベルも俺が食べたことを確認してから同じように口に入れる。中身は予想通りジャガイモだけで作られたコロッケであり、塩で味付けされた素朴な味は、屋台としては十分おいしいものだった。

 

「ソースが欲しいって思うのは贅沢なのかねぇ」

 

「何か言った?兄さん?」

 

「いや、ただの独り言だよ」

 

 コロッケにはソース。塩もシンプルでおいしいことにはおいしいのだが、やはりソースで食べたいものだ。海軍にいた頃はソースで食べていたこともあり、あの濃い味付けが懐かしいとあの頃に思いをはせる。

 懐かしいなぁ。あの頃はガープさんがよく食べることもあって船の上とは思えないぐらいに並んでいたものだ。ガープさんの方針から雑用も将校も関係なく一堂に並んで食べていたものだ。

 あぁ、雑用で思い出した。俺が死んでからコビーやヘルメッポは元気にしているのだろうか。ガープさんが2人を連れてきたとき、久しぶりに原作キャラを見たと内心はしゃいだものだ。ガープさんに言われて『六式』を教えていたが、結局習得できたのはコビーが『剃』を覚えただけだったっけ。それでも1年も経たずに習得できたのだからコビーの才能はすさまじいものだ。もしかしたら覇気も習得できたかもしれない逸材だったかもしれない。ルフィに関わっている人物は逸材が多いなぁ。

 

「……そういえばベル。あの時に言っていた、本音が聞こえてくる感覚はどうだ?」

 

 覇気で思い出したが、ベルは今中途半端ではあるが見聞色の覇気を習得しかけている。意識的に使うのは無理だそうだが、何がきっかけで発動することになるのかわからない今、慎重にならざるを得ない。それこそ、こんな人通りの多い場所でもし暴走してしまったらベルは意識を失ってもおかしくはない。

 

「今は特に何も聞こえないよ」

 

「そうか。だけど、また聞こえてくるようになったら俺に言うんだぞ」

 

「うん」

 

 特に何か気にした様子もなくじゃが丸くんをかじって歩いているベルの表情はとても穏やかに見える。この表情を見るにこっちに気を使って嘘をついている様子はない。ひとまず安心した俺はベルを連れて街の中央へと歩みを進めていた。

 

「じいさんの話だと、確かギルドってところで話を聞いた方がよかったんだったか」

 

 村を離れる前にじいさんから知っていることを聞いておいた。オラリオで冒険者になるには恩恵(ファルナ)なるものを刻む必要があり、それを刻むのが地上に降りてきた神である。その神が自分の恩恵を刻んだ人たちを集めて集団にしたのがファミリアになる。そして、そのファミリアを効率よく教えてくれるのが冒険者を管理しているギルドなんだとか。

 

「……うっさんくせぇよなぁ」

 

 海軍にいた頃もその前の頃も、ろくでもない環境で育ってきたせいで神に対してなんの感情も持っていなかった。神に近い存在と言えば天竜人だが、あのゴミどもは自分以外の人はおもちゃとしか思っていない。そんな存在がいたから神に対してはいい印象はない。

 神と言えば、海軍の元帥だったセンゴクがヒトヒトの実“モデル仏”の悪魔の実を食べたのだから、もしかしたらヒトヒトの実モデル神、なんて悪魔の実があったのかもしれない。神なのに悪魔の実から出現するなんて、なんて皮肉が効いているのだろうか。

 

「ギルドってどんなところなんだろうね」

 

「まぁ、この街の冒険者を仕切っているんだからそれなり以上に大きい場所だろうな」

 

 とても楽しみだ、と言わんばかりに機嫌のいいベルに、冒険者を管理しているんだからそれなり以上に大きい場所だろうと予想する。とは言っても、マリンフォードにある海軍本部のように大きくはないだろう。あそこは数多くの海兵と将校が住む場所でもあったんだからあの大きさを超えられても困るというか、もしそうならなんでそこまで大きくするんだ、という疑問も出てこないわけではないが。

 しばらくベルと歩いて、時々露店でギルドの場所を確認しながら歩いていくと、広場のような場所の前に大きな建物が建っているのを見つけることができた。不特定多数の、それこそ動物の耳を生やしている人や武装している人が多く出入りしているのだからおそらくはあそこがギルドなのだろう。

 

「……そりゃマリンフォードよりかは小さいわな」

 

 確かに大きい建物ではあったが、正直なところ期待していた大きさよりかは小さかった。もっとも、比較しているのが海軍本部なのだから仕方のないことなのかもしれないが。かつて育ってきた海軍本部を思い出し、同時に弟のエースの処刑から始まった戦争を思い出す。エースとルフィは元気にしているのだろうか、と死に別れた弟たちを想いながらベルを連れてギルドの中へと入る。

 中は人の出入りが多かったこともあってにぎやかだった。換金しているのだろうかジャラジャラとお金の擦れる音が聞こえる場所には大勢の人が並んでおり、逆に受付の方にはあまり人は並んでいなかった。

 

「ようこそギルドへ。どのようなご用件ですか?」

 

 受付まで近づくと、俺とベルに気が付いた受付嬢がこちらに顔を向けて対応を始める。

 

「冒険者になるためにファミリアに入りたいんですが、2人入ることのできるファミリアはありませんか?」

 

「……2人、となりますと、そちらの方も?」

 

 受付嬢が視線をベルへと移す。まぁ、まだ子供と言っても差し支えのない年齢だからそうなるのは仕方ない。冒険者がどういったことをしているのかは厳密にはわかっていないが、じいさんの話でダンジョンに入りモンスターと戦うのが主だということは聞いている。そんな危ない場所に子供を入れるのも、ギルドとしてはあまり許容したくはないのだろう。

 

「えぇ。僕とこの子の2人です。それで、どこか新人を募集しているファミリアでもありませんか?」

 

「……今から確認いたしますのでお待ちいただいてもよろしいでしょうか」

 

「えぇ。よろしくお願いします」

 

 書類を取りに行くためか受付から離れていく受付嬢。ここには数多くのファミリアがあることから調べるのにも時間がかかるだろう。そう思ってベルを連れて受付の近くにある椅子に座ろうとするが、ベルは受付嬢のほうを見ながら頬を膨らませていた。

 

「……なんか、僕の方を意外そうな目で見てきた気がする」

 

「仕方ないさ。ある程度鍛えたとは言ってもお前はまだ子供なんだから」

 

 そういうことをしているからそう見られるんだよ。そう言いたくなったが、言ってしまえばもっと拗ねてしまいそうだったから苦笑を浮かべて頭をなでておく。言いそうになった言葉は心の底にしまっておこう。

 ベルを連れて椅子に座り、受付嬢を待つこと十数分。ファミリアのピックアップも終えたのか受付嬢が受付に戻ったのを確認し、ベルを連れて受付まで戻る。

 

「こちらが現在新規の受付をしているファミリアになります」

 

 そういって渡された資料は30を大きく超えていた。海軍にいた頃のものと比べて厚い紙で記入してあるものだから受け取った際の分厚さは想像できるだろう。

 

「……結構な量だな。これ全部が新人を募集しているファミリアなんです?」

 

 ペラペラとベルにも見えるように紙をめくっていく。ベルはこんな神様もいるんだ、と目を輝かせていたが、俺としては探索系、商業系と分かれているファミリアから厳選し、さらに『六式』を披露しても問題なさそうな関係を作れそうなファミリアを探さなければならないことから頭を抱えそうになる。

 

「えぇ。新人を受け入れてくれる可能性のあるファミリアはそれがすべてです。冒険者、ということでしたが念のため商業系のファミリアも入れておきました」

 

「……いや、助かります」

 

 商業系、というからにはあまりダンジョンには入らず武具や道具の作成が主になるファミリアなのだろう。生活に使う分の道具程度なら作ることもあるが、命を預ける物を作るとなるといささか勝手がわからない。それに俺もベルもダンジョンの探索をメインとしたファミリアに入りたいのだから商業系は選択肢としては優先順位は下がる。探索系のファミリアを全部当たってから選択肢として考えたほうがいいだろう。

 

「とりあえず、全部見ていけばいいのかな?」

 

「それはあまりしないほうがいい。これだけの量だ。ファミリアを探して確認を取るだけでも日が暮れてしまう。所持金は心もとないんだから無理はしないほうがいい」

 

「あ、そっか」

 

 もともとじいさんからは田舎からどこから出てきたんだと思うほどの金額をもらってはいる。しかし、それもあくまで田舎が基準になってしまう。都市部での宿や食事代を考えればまだ余裕のあるうちにファミリアに入りたいのが心情だ。

 

「あと、『六式』を見せても問題ない場所を探さないとな」

 

「え?戦う時に使うんだから見せても問題ないんじゃないの?」

 

 ベルの言うとおり、『六式』は戦うために作られた戦闘の技術だ。モンスターに使わずにどこで使うのか、というのがベルの考えだろう。

 ベルの考えのそれは間違っていない。もともとが多種多様な種族の海賊、それこそ悪魔の実を食べた能力者すらも討伐することも視野に入れた体術なのだからモンスターを倒すために使ったところで何の問題もない。けど、俺が考えているのはそういうことではない。

 

「確かにそうだけど、『六式』を教えてくれって言われたらはい分かりましたって言えるのか?」

 

「……あ、そうか」

 

 俺の言葉にベルは納得するようにうなずいた。同じファミリアにいるということは、自分の手札を見せるということになる。戦闘における『六式』の利便さは派生の多さゆえに体術の中でも群を抜いていると自覚できる。そんなものを目の前にして教えてくれ、と言う冒険者が出てくるのは目に見えている。現に海軍では俺を含めて『六式』を教えてくださいと教官に教えを乞うた人数は多かった。ここでもそうなってしまえば何人も脱落すること必至の鍛錬が始まるのだ。

 ベルも自身の行ってきた鍛錬方法と期間を考えれば納得もしてくれるだろう。『六式』は努力と才能、両方が必要になる体術だ。死ぬほど努力して1つを覚えられたら十分だと言えるそれを習得しているベルにとっても、あの鍛錬を続けることはなかなかに苦痛なようだ。

 

「ただでさえ人を選ぶ鍛錬を何年もした上で才能あるやつが習得できる技術だ。そう何人も面倒を見れるほど、俺はお人よしじゃない」

 

 これが海軍少将としての任務であるならやらなくはないが、もうそんな縛りもない。今はベルを『六式』使いにするだけに集中したいのだ。誰が好き好んで他人にも等しい相手に何年もかける必要がある『六式』を教えなくちゃいけないんだってのもあるが。要するにめんどくさい。

 しかし、同時に大手の方が外部からの圧力から守ってもらえるかもしれないという考えもある。『六式』の強さは独占したいと思うはずだから守ってもらえる可能性が高く成る以上、大手に参入することを視野に入れるべきなのかもしれない。けど、それはそのファミリアの力として『六式』を教えなくちゃいけなくなる可能性も高いことになる。何度も思っていることだが同じファミリアとはいえ、ほぼ他人に『六式』を教えるのは非常に長期間の鍛錬が必要だし、なにより面倒だ。気に入った相手でもない限り鍛錬を見ることなんてしたくない。

 

「となると、人が少ない方がいいか。ベルの鍛錬も考えたら規則のない、新規のファミリアが好ましいかもしれないな」

 

 ベルはまだ『六式』を修めきっていない。習熟度もまだであるし、習得していない技もある。まだまだ鍛錬が必要なのだからそれに使う時間を費やす必要がある。そういった自由な時間を豊富にとれるファミリアはどこかを考えれば、まず人数の多いファミリアでは無理だろう。人数が多いということはそれだけ規則が多い、ということなのだからベルに割ける時間も少なくなるということになる。

 

「ベル。どこか行ってみたいファミリアとかあるか?大手のファミリアとかでもいいぞ」

 

「……う~ん。『六式』のことをあまり見せられないって言われたら、正直どこがいいのかわからなくて……」

 

「……そうだな。鍛錬のことを言う前に聞くべきだったな」

 

 まず初めにベルの意見を聞いておくべきだったか。そう後悔しながら紙の束の中から商業系のファミリアを抜いていく。念のためその中でも人数の少ないファミリアは記憶しておいて受付嬢へと返却する。

 

「……ま、とりあえず新規のところに行って、よさげな神だったらファミリアに入れてもらうか」

 

 パラパラと残った紙の束をめくってファミリアを見ていく。下は0人から始まり、上は何十人もいる大手のファミリアが書いてあるが、大手のファミリアは束から外して探していく。このロキ・ファミリアとか、あの世界の終末を起こそうとしていた悪神などといったところなんて行ったらどうなるかわかったもんじゃない場所についてはたとえ大手だろうが弱小だろうが抜いていく。

 

「兄さん、決まった?」

 

 パラパラと確認してははじいて、はじいては確認してを繰り返していくとベルが束からはじいた量に少しだけ驚きながら俺の手元をのぞき込む。

 

「ん?あぁ、とりあえず、新興だけどここに行って確認してみようかなとは思ってる」

 

 そういって手にしたのはヘスティア・ファミリア。ごく最近ファミリア登録したばかりの、まだ誰もいない神のファミリアだった。

 




 ダンまちの世界で『六式』を使ったら、そりゃ教えてくれってなるよねぇ。って思いからこうなりました。特にロキ・ファミリアに関しては飛ぶ斬撃やら鉄並みの防御や空中を飛ぶ術やらは必ずダンジョン攻略に役立つって団長のフィンが絶対に教導することを決めると思うんです。勝手なイメージですけど。そんな何年もやらなくちゃいけないことを他人にやりたいかって言われたら、そりゃしたくないですよねぇ。っていう話です。
 ということで、主人公による手引でしょっぱなからヘスティア様のところに行くことになりました。正直ベルくんと一緒にファミリアに入ろうとしてもベルくんだけいらないと言ったようなことになりかねないので、それを回避するために主人公のおかげでそんなことにならずに済んだ、という感じです。無駄に傷つかずに済んだよ!やったねベルくん!
 なんか、ベルくんを甘やかしすぎている気がしてきた。
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