元海兵がダンジョンにいるのは間違っているだろうか   作:ルーニー

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すいません入れる章を間違えてました。


もしもの世界6

 

「は?今、なんと……?」

 

 アストレア・ファミリアの拠点である星屑の庭で、先ほどのイかす仮面をかぶったガネーシャが数人の護衛を引き連れてきた。俺もライラと共に星屑の庭に戻って説明をしてガネーシャを待っていて、ガネーシャの護衛を外で待たせてから俺とアストレア、ガネーシャの3()で話していたのだが、話を聞いたガネーシャは困惑を隠せずにいた。

 

「その子はこの世界の子じゃないわ。オラリオ出身じゃないとか、極東よりももっと遠くとか、そんな次元じゃない。文字通り異なる世界から来た子よ」

 

「……信じられん。いや、アストレアの言葉を疑うわけではないが、しかし……」

 

「信じられないのは仕方ないわ。でも事実よ。その子から直接聞いたし、嘘をついてなかった」

 

 それだけ言うと喉を潤すためか用意していた紅茶を口に含むアストレア。ガネーシャは思案するように唸り声を上げながら俺とアストレアを交互に見ては口を歪ませていた。

 

「ガネーシャ、わかっていると思うけど」

 

「みなまで言うな。これはここにいる者だけにしたほうがいいことはわかっている」

 

 ガネーシャは俺にも戒めるようにそういうが、そうだろうな。天竜人は珍しいと思ったものは何が何でも自分のコレクションにしようとしていたんだ。どうせここでも同じようなことをするような連中なんだろう。

 

「だが、ギルドにまで知らせる必要はないが少なくともウラノスには伝えたほうがいいとは思うぞ。我々だけではすべてをかばうことはできない以上、ウラノスの後ろ盾はあったほうがいい」

 

 ガネーシャの口から聞き覚えのない名前が出てきた。話の流れから神の1人なんだろうが、なぜそれが出てくるのだろうか。

 

「ウラノス?」

 

「この街の創設神よ。ギルドの創設者でもあり、この街で最も偉い神と言っても過言じゃないわ」

 

「君臨はすれど統治はせず。地上での出来事にも口を出すことも、地下から出ることも滅多になく、その強大な神威で地下のモンスターの進出を防いでいる大神だ」

 

 アストレアとガネーシャの説明に納得した。確かに人を簡単に殺せるような害獣(モンスター)を抑えることができるとなれば、例え政治を摂ることをしなくても発言の力は相当な物になるだろう。

 

「……そいつ、モンスターに対する抑止力、というわけでもなさそうだな」

 

 けど、同時に気になることも出てきた。仮にも神を僭称しているような連中の中でも最上位にも等しい存在がモンスターを絶滅させていないということも奇妙な話だ。モンスターに知能が存在しないのだとしても本能は存在しているはずだ。

 アストレアから発せられた覇気、ここでは神威か、を以ってすれば本能から恐れを抱かせて進出しないようにできるはずなのにそれをしない。それこそ四皇や王下七武海、海軍のような抑止力となれるはずなのに、現状維持でしかないことしかできていない。

 

 そうすることができない理由があるのか、それともモンスターが本能すら存在しない生物としての定義から外れるほどの存在なのか。現状は何もわからないが、少なくとも重要な存在なのは間違いか。

 

「その様子だと察しているようだな。確かにウラノスによってダンジョンからモンスターが出てくることを防いでいるという点では抑止力ではあることには違いないが、厳密には違う。ウラノスが行っているのはダンジョンの活性化の抑制であって、モンスターへの抑圧ではない」

 

 それでもいなくなってしまってはこの街は崩壊してしまうだろうがな、と付け加えるように言うガネーシャ。わざわざここまで言うということは、俺が自分の感情に走ってウラノスを害してしまう可能性を考慮してのことだろう。

 

「あなたが神を憎んでいるのはわかっているわ。でも、ウラノスの助力はあったほうがいいわ。あなただってお尋ね者になるのも嫌でしょ?」

 

 アストレアの付け加えに、やっぱりそうだったかと思う。虎の威を借りる狐、というほどでもないだろうが、それでも使える権威は使った方がスムーズに事が進むほうが多い。そういう意味ではウラノスに話したほうがいいのだろう。

 

「処刑を望まれていた大悪党を弟に持っている身としては至極どうでもいいが、まぁ進んでお尋ね者になる気もないしな」

 

 もっとも、もはや弟を救いたいということで海軍に所属していただけの俺としては犯罪者になることに忌避感はない。好き好んで一般人を傷つけたり略奪に走る気は更々ないが、無抵抗でいる気も全くない。元々ルフィたちとゴア王国内で食い逃げや万引きをやっていたんだ。今更犯罪者と罵られようが特に思うことはない。

 

「大悪党が身内にいたの?」

 

 俺の言葉に驚きの声を出すアストレア。ガネーシャも信じられんと言わんばかりに口を開けてこっちを見てきていた。

 

「一番上の弟は貴族出身だったが、あとの2人は海賊王の息子に世界を崩壊させて作り直そうとした革命家の息子だ。そうじゃなくても全員が世界にケンカを売っている億越えの賞金首だった。今更俺の首に賞金がかかったとしてもあいつらへの自慢話にしかならねぇよ」

 

 もっとも、サボは天竜人に殺されたからその未来は無くなっているのだが。改めてサボの未来が無くなったことへの怒りが吹き出そうになるが紅茶を口にして落ち着けさせる。

 しかし、俺の首に賞金が付いたとすればいくらつくんだろうな。数百万しかつかなかったらあいつらに笑われそうだな。やる気はないが、もしやるとしたら最低限を残して神を殺し回って賞金額を増やしていこうか、なんて。

 

「あぁ、だからと言ってここで暴れる気はない。これでも正義を背負っていた時期の方が長いんだ。よほどのことか神経逆なでにされるようなことをされない限りは暴れるようなことをする気はない」

 

「……できれば暴れてほしくはないのだけれど」

 

「……なんというか、とんでもないな」

 

 ここで生きていくのなら神に対するこの憎しみと認識をどうにかしないといけないんだろうが、こればかりは今日明日で無くせるとは到底思えない。人々が海賊ということでピースメインだろうと怒りを向けるのと同じように、海軍に抑圧された街が海軍に恨みを抱き続けるのと同じように。一度刷り込まれた認識はそう簡単に変えることはできない。

 

「……ずっと気になっていたのだが、どうしてそこまで神を憎んでいる?確かに度し難い思考を持つ神がいるのは否定できないが、そこまで神に憎しみを顕わにしている者は見たことがない」

 

「それは私も気になっていたわ。確か天竜人だったかしら。あなたの弟を殺したことは聞いていたけど、それだけでそこまで憎しみを持ち続けられるとは思えないわ」

 

「天竜人?」

 

「神の子孫と言われている天上人だそうよ。詳しくはあとで聞いた方がいいと思うわ」

 

 神の子孫と聞いてガネーシャは興味深そうに声を上げるが、俺としてはそれが理由で神と称する連中が憎くて仕方ない。

 

「胸糞悪い話だ。同族以外は人ではなく、欲望を満たすためだけの言葉をしゃべる道具としか思っていない連中だ」

 

 それから俺の見てきたこと聞いてきたことを話した。目の前で気に入った男を奴隷として連れていく女の天竜人と抵抗する男に見て見ぬふりをする民衆と俺たち。少し虫の居所が悪かっただけで無抵抗の同期をサンドバッグにする天竜人。狩りと称して島1つ分の住民を皆殺しにした天竜人。他にも様々な話が枚挙に暇がない天竜人の話だ。

 どれもこれも胸糞が悪く、任務でどうしても天竜人の護衛につかなければならなかった時にガープさんの頼みで一緒に来てくれていたクザンさんがいなかったら天竜人に殴りかかっていた。

 

「なんと……」

 

「それは……」

 

 俺の話を聞いてアストレアとガネーシャは言葉を失っていた。何一つ嘘がないとわかったアストレアは力が抜けたかのように椅子に深く座って顔を青くし、ガネーシャは今にも暴れ出しそうなほどに手に力が入り怒りで顔を赤くしている。

 

「そいつらの蛮行は止められなかったのか?」

 

「止められるなら止めている。何に恐れていたのかまではわからないけど、俺の恩人のガープさんやガープさんの友人のセンゴクさんですら手を出せなかったんだ。少なくとも海賊王以上の何かがいるんだろうな」

 

 笑えない話だ。ガープさんどころかセンゴクさんですら組織立って抵抗しようと考えることができないほどの脅威が後ろにいるというのに、ごく一部の人以外はその存在を知ることができずそのまま裏で世界を牛耳る。あの世界の闇はどれだけドロドロして気色が悪いほど真っ黒なのだろうか。

 

「どうしてそこまで神に憎しみを向けているのか、理由は痛いほどにわかった。だが、ここで神に手を出すのはやめてほしい。ただでさえ闇派閥との戦いで神経質になっている。余計な火種は増やさないに越したことはない」

 

「……わかった。俺も好き好んで知り合いと敵対したいわけじゃ無いしな」

 

 しばらくしてようやく怒りを抑えられたのか、しかしそれでも声に怒気が抜け切れていないガネーシャの言葉に深く頷く。少なくともアリーゼたちにはかなり世話になった身だし、彼女たちと敵対したくはない。恩を仇で返す様なことは二度としたくはない。

 向こうにいた時でも、真面目で正義感が強い奴が政府の闇を垣間見て海賊になるのは公表こそされてはいないが少なくともいるし、たまたま遭遇してその連中と戦ったこともある。かつての仲間と殺し合うのはさすがにクるものがあったが、ガープさんにうじうじするなと叩き直されてからは持ちこたえることはできた。今思えば、ガープさんもそれなりに経験はあったのだろう。本当にそういうところは尊敬する。

 もっとも、必要があれば神は殺すし、敵対することも覚悟はできるが。

 

「ウラノスとの面会は俺の方から話を通しておく。なに、悪いようにはせんから安心しろ」

 

「何かあったら私たちに頼りなさい。解決ができるかはわからないけど、力にはなるから」

 

 内心に黒い感情が渦巻いている中、そういって笑みを浮かべて腕の筋肉を盛り上がらせるガネーシャと誓いを立てるように胸元に手を遣るアストレア。見分色の覇気を使うまでもなくわかる噓も害意もない様子に、俺の中の神への憎しみがわずかに和らぐのを感じた。同時に、どうしてこういう神が向こうにはいなかったのかとあの世界の天竜人に対する憎しみが増していったが、それはここでは不要のモノだと心を落ち着かせる。

 

「ありがとうございます」

 

 この2()はまだ信頼できる。そう信じることにした俺は頭を下げた。世界が違えば常識は違う。わかっていても染みついた常識はそう簡単に変えられるものではないが、それでも変えようと思わなければ変えることもできない。向こうの常識からこちらの常識に上書きできるのは何時になるのかはわからないが、少しずつでも変えていくように努力していこうと、この2柱を見ているとそう思えてくる。

 

 

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