コモンズの王 ジャックアトラス   作:ふれれら

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「コモンズの王 ジャックアトラス
Jack Atlas - The King of Commons -」台本

遊星=遊
ジャック=J
女レポーター(メリッサ)=女


声劇用:ラストデュエル

モブ「遊星助教、本当に行かれてしまうのですか?」

遊星「ああ。これを最後に、オレは研究を降りる。オレに道を示してくれた友が待っている。約束を果たすときだ」

 

Dホイール:ギュイン、エンジン音

 

遊星「次にアクセルを踏むときは、絆を繋ぐ時。オレは友を救う。上を目指す理由ができた。 ジャックは、倒れるその日まで、走り続けるだろう。だから。

───オレが、キングを倒して、次の王になる」

 

遊星「ジャック、お前の返事を待つのは、もうやめにする。オレから行く。待ってろ」

 

 

◇ ◇ ◇

 

【ラストデュエル】

 

◇ ◇ ◇

 

 

J「そうか、遊星が上がってきたか。あれから十年、戦う理由を見つけたか。待ち焦がれたぞ。ようやくだ」

 

 ジャック:「ゲホン」血を手袋に吐き出す。口を拭う

 

J「レッドデーモンズ、お前も血が震えるか。きっと今夜が、俺の走り抜いた中で、最も熱い風になる。これが最期でも後悔はせん。────いくぞ」

 

歓声、フラッシュ、フラッシュ、フラッシュ、歓声(続いている)

 

アナウンス『デュエルが開始されます、デュエルが開始されます。ルート上の一般車両は、直ちに退避して下さい。デュエルが開始されます、デュエルが───(フェードアウト)』

 

レーンが展開する音

ジャック:ゆっくりと見上げ、スタジアムの歓声を浴びる

 

女「チャレンジャーの入場―!」

 

 遊星登場、フラッシュの嵐

 遊星:ジャックだけを見ている。

 

遊「ジャック」

J「あれから十年、か。ずいぶん遅かったじゃないか、遊星」

 

ジャック:フッ

 

J「待ちくたびれたぞ」

遊「ジャック。止まる気は、ないんだな」

J「愚問を」

遊「そうだな、───お前は、そういうヤツだ」

遊「ジャック、もう止めない。お前が口で止まるような男じゃないのは、よく知ってる。だからオレはここに来た。お前が繋いでくれた絆を信じて、オレは走って来た。多くのものを得て、時には失うこともあった。だが、その全てが、オレを支えてくれた」

 

 遊星の目、ギラリ

 

遊「ジャック、お前は言ったな。戦う理由が、オレを強くすると。そして、何があっても、最後は自分の前に来い、と」

 

 遊星:闘気ぶわり

 

遊「登って来たぞ、ジャック。お前を止めるために」

J「それがお前の『戦う理由』か。変わらんな、遊星」

遊「悪いが、力尽くで行く。オレの全霊を賭けて」

J「フン、大言を! やれるものならやってみろ、叩き潰されるのは貴様だ、不動遊星!」

 

 エンジン、同時に火を噴く。

 ジャックと遊星のアクセル音、ギュイン!

 

遊「ジャック、お前を必ず止めてみせる。先行は貰う! オレの、ターンッ‼︎」

 

 

 ─── ターン1 ───

 

 

遊「レベル2のクリア・エフェクターを墓地へ送り、パワー・ジャイアントを特殊召喚‼︎ このカードのレベルは墓地へ送ったモンスターのレベルの分だけダウンし、4となる!」

 

カード:ディスク(墓地)にスッと吸い込まれる

 

遊「さらにライティ・ドライバーを召喚し、効果発動! レフティ・ドライバーをデッキから特殊召喚する!」

 

 カッとぶつかる音(ドライバー)

 

遊「レフティ・ドライバーが特殊召喚に成功したとき、レベルが1つ上がる! レベルの合計は8!」

J「来るか、遊星!」

 

 遊星:アクセル踏む。Dホイール加速。

 

遊「レベル4のパワージャイアントと、レベル3のレフティ・ドライバーに、レベル1のライティ・ドライバーをチューニング!」

遊「集いし願いが、新たに輝く星となる! 光さす道となれ! シンクロ召喚!」

 

 風が、光った。

 

遊「飛翔せよ、スターダスト・ドラゴンッ‼︎」

 

 

この上なく美しいスターダスト。神秘的

舞い上がる

そよ風、キラキラ

スタジアム:無音

ジャック:言葉を忘れる

 

 

J(いま、ようやく分かった)

 

J(このためにあったのだ。天(あま)の先。あの日、空から舞い降りたカードは。光の先で出会えと、魂が訴えた竜は)

 

 ジャック:歓喜がぶわっ

 

J「お前と戦うために、すべてがあったのだ‼︎」

 

 スタジアム:ハッ → 歓声が爆発

 

J(腕が疼く、無いはずの痣が)

 

 ジャック:デッキに呼びかける。

 

J「ようやくだ、待ち焦がれたぞ…! スカーライト‼︎」

 

J(デッキが熱い。お前も感じるか、この燃えるような魂の震えを!)

 

遊「来い、ジャック! カードを一枚伏せて、ターンエンド!」

J「俺の、タァァァァァン‼︎」

 

 ドローが燃える

 

J「相手の場にのみモンスターが存在することで、バイス・ドラゴンを特殊召喚する! さらにダーク・リゾネーターを召喚!」

 

 きぃん! リゾネーター:音叉を鳴らす

 

J「王者の咆哮、いま天地を揺るがす。唯一無二なる覇者の力をその身に刻むがいい!」

 

 シンクロ音。炎ぶわり。レモン雄叫び。

 

J「シンクロ召喚! 荒ぶる魂、レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライトッ‼︎」

 

スカーライト、咆哮

スターダスト、咆哮

 

二体の竜、共鳴

ジャックと遊星、同時に目を見開く

 

遊「⁉︎ これは」

J「なにっ⁉︎」

 

赤き竜の咆哮

 

 その日、シティのすべてが目撃した。

 上空に突如として現れた、巨大な赤きドラゴンの咆哮を。

 

女『な、なんということでしょう!ごらんください、上空に突如(とつじょ)現れた、アレはいったい!?』(ヘリのプロペラ音)

 

J「赤き、竜──……」

 

 ジャック、無意識に言う。

 

J(腕が、燃えるように熱い)

 

赤き竜の咆哮

 

 ジャック、雷が落ちたように打ち震える。

 遊星、同じように打ち震える。

 

J(わかる。俺たちの宿命は…!)

遊(いま、この時のため…!)

 

J「スカーライト‼︎」

遊「スターダスト‼︎」

 

スカーライト、右腕で殴る。

スターダスト、バリアで受け止め。

 

 拳:バチバチ

 バリアとせめぎ合う

 

遊「スターダスト・ドラゴンの効果!」

 

 せめぎ合い。遊星が拮抗を破る

 スターダストから、まばゆい光線

 

遊「このカードをリリースして、カードを破壊する効果を無効にし、スカーライトを破壊する! ヴィクティム・サンクチュアリ‼︎」

J「無駄だ! 手札から効果発動、レッド・ガードナー‼︎」

 

スカーライトの前に赤い盾

「ドンッ」とスターダストの光線を弾き返す。スカーライト吠える

 

J「俺の場に『レッド』モンスターがいるとき、俺のモンスターは破壊されない!」

 

 スタジアム、ビリビリ震撼

 スタダ、キラキラ消えていく

 

 スカーライトの拳、遊星に迫る

 

J「行け、スカーライトッ‼︎ ダイレクトアタック!」

遊「トラップカード、オープン! 《くず鉄のかかし》‼︎ 攻撃を無効にする! そしてこのカードを再びセット!」

 

 拳、鉄くずの人形に弾かれる。

 ジャック叫ぶ。

 

J「カードを伏せて、ターンエンドッ!」

遊「この瞬間、スターダストの効果! リリースしたこのカードを墓地から特殊召喚する!」

 

 遊星:天に腕を突き上げる。

 

遊「蘇れ、スターダストッ‼︎」

 

 

J(ああ、これだ。懐かしい、何もかもが。これこそが、俺の求めていたもの!)

 

 ジャック、無意識

 手を手札に

 

J(なぜだろうな、手に取るようにわかる。初めて見るモンスター? いや、違う。この日を、どれほど夢にみたことか!)

J「速攻魔法、《おろかな転生》! 相手の墓地のカードを選択し、デッキに戻させる!」

 

 バンッとカードを叩きつける

 ジャック、吠える

 

 魔法発動 舞う花びら

 スタダ、遊星のデッキへ静かに消滅

 

遊「……ッ! スターダストッ‼」

J「デッキに戻されては、蘇れまい! 効果は不発だ!」

遊「やられた…!」

 

 

 ─── ターン3 ───

 

※Dホイール音。ジャックが前

 

遊(オレの場はがら空き…!)

 

 遊星、鬼気迫る雰囲気

 

遊「オレの、ターンッ‼︎」

 

 パッとカード反転。目を走らせる。

 

遊(これは…)

 

遊星:ゆっくり目をみはる。

指先からカードが声なく語りかける。

遊星:目を閉じる

 

遊「思い出すな、ジャック。お前と初めてレーンを走ったとき。あのときもこうして、お前にしてやられた。そうだったな、ジャック。……全てを賭けなければ、お前は倒せない」

 

 遊星:カッと目を開く

 カードを叩きつける

 

遊「魔法カード、《ブラスティング・ヴェイン》! 自分のマジック・トラップカードを破壊して、二枚ドローする!」

 

 カード:燃える。

 くず鉄のかかし:破壊、バラバラに。

 散った破片がレーンに落ちる音。

 遊星、走る。

 

J「守りの要を自ら捨てるか、いい度胸だ!」

遊「同じ手は通用しないだろう、ジャック。オレはデッキを信じている! ドローッ!」

 

 ドローが風を裂く音。

 遊星、目許を和らげる。

 

遊「よく来てくれた」

 

遊星、カードを掲げる。

 

遊「来い、ジャンク・シンクロン‼︎ 召喚に成功したとき、レベル2以下のモンスターを墓地から特殊召喚する! 復活しろ、クリア・エフェクター!」

 

 青い目、燃える。ジャックを射抜く。嵐のように激しい。

 遊星:拳を高く突き上げる

 

遊「レベル2のクリア・エフェクターに、レベル3のジャンク・シンクロンをチューニング!」

 

 ジャンクシンクロン:スターターの紐を握って、勢いよく引っ張る。ギュルン!(アニメ通り)

 シンクロ音

 

遊「集いし星が、新たな力を呼び起こす。光さす道となれ! シンクロ召喚‼︎」

 

 拳がうなりをあげる音

 

遊「切り拓け、ジャンク・ウォリアー‼︎」

 

 目にするや否や、レッドデーモンズ咆哮

(それは威嚇のようで、決着を求めるようで、そして、待ちわびた歓喜のようであった)

 

 スカーライトの右腕の傷、燃える。

 ジャック:同じ場所(右腕)をさする。

     ニィと口角を上げる。

 

J「ジャンク・ウォリアー、か…!」

 

遊「クリア・エフェクターがシンクロ素材となったとき、デッキから一枚ドローする‼︎」

J「引くがいい遊星! お前の運命のカードを!」

 

 ドロー、キラリ。

 

J「貴様のジャンク・ウォリアーの攻撃力は2300! その程度では俺のスカーライトは倒せん!」

遊「その通りだ。オレはこれでターンエンド!」

J「何を企んでいる。俺の、ターンッ!」

 

 ジャックのドローがきらめく。

 ジャック、尊大に指を突き付ける。

 

J「スカーライトの効果発動! ジャンク・ウォリアーには消えてもらおう!」

 

 炎、ゴウッ

 

J「アブソリュート・パワー・フレイム!」

遊「ッ‼︎」

 

 レッドデーモンズとジャンクウォリアーの拳、ぶつかる。

 大爆発。遊星を巻き込む。

 視界、途切れる

 落ちた沈黙。

 

 プロペラ音

女『これはひとたまりもないかーっ⁉︎』

 

 煙、くゆる。

 

 ゆらり。煙が揺れる。

 遊星のDホイール、飛び出す。

 

J「なにぃ⁉︎ 破壊されていない⁉︎」

遊「クリア・エフェクターをシンクロ素材としたモンスターは、効果で破壊されない!」

J「面白い! だが、戦闘破壊は防げまい! バトルだ、スカーライト!」

 

 遊星、小さく口角を上げる

 

遊「それを待っていた! 手札の『ラッシュ・ウォリアー』を墓地へ送り、効果発動! ジャンク・ウォリアーの攻撃力は倍となる!」

 

 ラッシュウォリアーの幻、ジャンクウォリアーに重なる。

 

J「なんだと⁉」

 

 ジャンクウォリアーの拳、巨大化。

 拳が金色。大地が震える(最終回のアレ)

 攻撃力、急上昇

 

J「攻撃力4600だとッ…!」

遊「迎え撃て、スクラップ・フィストォ‼︎」

 

 大気、震える。ジャンクウォリアーの巨大な拳、轟音と共に空から(最終回のアレ)

 

J「させんッ! 速攻魔法、《禁じられた聖槍》!」

 

 ジャック、手札を勢いよく振り抜く

 ビュン、銀の槍が飛ぶ

 

J「そこだッ‼︎」

 

 槍、巨大な拳を貫く

 「パリンッ」と高い音。金の拳が砕ける。ジャンクウォリアー止まる。

 

J「ここだ、今この瞬間ッ! 攻撃力が800ダウン!」

 

 (ジャンクウォリアーの攻撃力、4600→3000)

 

遊「ッ‼︎ なに⁉︎ ジャンクウォリアーの攻撃力が…!」

J「本来《禁じられた聖槍》で下げられる攻撃力は、800だけ! だが、今は違う! 下がる攻撃力は、1600! 貴様の『ラッシュ・ウォリアー』の威力も半減する!」

遊「……ッ‼︎ ここで使ってきたか…! だが攻撃力はまだ3000! スカーライトと並んだ! ここは臆せず攻める! 行け、ジャンク・ウォリアーッ‼︎」

 

 二つの拳が、雷鳴のようにぶつかる。

 レッドデーモンズ VS ジャンクウォリアー(5D's最初のOP、二体が拳ぶつけたまま回転するアレ)

 

遊「くっ…!」

J「ぐあっ…!」

 

 同時に拳が入る。

 Dホイール吹き飛ぶ。ジャック、回旋しながら、かろうじて持ち堪える。

 

J「ぐっ…!」

 

 遊星は勢いをいなして加速。僅差の二人の位置、逆転。

 レッドデーモンズ・ジャンクウォリアー、同時破壊。

 

 スタジアムの空気、あぜん → 一気に沸く ワ―――!!

 

女『あ、相打ちだー!! スカーライト、倒れたぁッ! 信じられません、長年無敵を誇ってきたキングのエース、敗れた! こ、これは、これは大番狂わせかぁ⁉︎』

 

 ヘリで叫ぶ、音響がビリビリ

 

J「おのれぇ…! あえて効果だけを防いで挑発し、誘い込んだな⁉︎ くず鉄のかかしを破壊したのもこのためか!」

遊「さっきのお返しだ! これでお前のフィールドはガラ空き!」

J「ぐっ……カードをセット! ターンエンド!」

遊「ジャック、オレは負けない。みんなの思いを背負って、お前に勝つッ! ドロー!」

 

 

 ─── ターン5 ───

 

 

 摩擦でタイヤに火花。

 ドローが風を切り裂く。

 遊星、声を張り上げる。

 

遊「ジャック、ここに来るまで、多くのデュエリストと凌ぎを削った! お前の前に立てるのは、勝ち上がった一人だけだ。オレは今、その全てを倒して、ここにいる!」

J「そうだ、頂点は、キングは常に一人。孤高なものだ。遊星、貴様もいま、その高みにいる!」

遊「それは違う。ジャック、いまお前がデュエルしているのは、オレ一人じゃない!」

J「なに?」

遊「多くのデュエリストと戦った。夢や憧憬、野望、決意。皆 、戦う理由は様々だった。だが、ただ一つ、共通していたことがある」

 

 遊星の目、キラリ

 

遊「お前だ、ジャック。全てのデュエリストが、お前とのデュエルを望んでいた!」

 

 遊星。視線で射抜く。ジャック、目を細める。

 駆け抜ける遊星の背に、赤く繋がる想いのバトンを、空目する(遊星の背中に竜の痣が集まるアニメシーンのイメージ)

 

遊「託されてきた。お前と戦い、越えるために。今も共に戦っているんだ。オレの背には、相手と交わしてきたデュエルの絆がある。オレはその絆を信じている!」

 

 遊星:カードを閃かせる

 

遊「魔法発動、《ワン・フォー・ワン》! 手札のマッハ・シンクロンを墓地へ送って、レベル1のチューニング・サポーターを、デッキから特殊召喚する!」

 

 チューニング・サポーター:飛び出す

 

J(ボロ布をマフラーに、帽子がわりに中華鍋を被った機械族モンスターか)

 

J(遊星のカードはどれも、捨てられた廃材を繋ぎ合わせたような、埃の匂いのする小さな戦士…)

 

 ジャック:目を細める。アクセルを踏む

 

J(コモンズと同じ埃っぽさ…だからなのか、こんなにも懐かしいのは。なにかが「帰ってきた」と胸が熱いのは!)

 

遊「墓地のラッシュ・ウォリアーのさらなる効果! このカードを除外して、墓地から『シンクロン』を手札に戻す! 舞い戻れ、マッハ・シンクロンを召喚!」

 

 遊星:ハンドルを切る。

 二台のDホイール:ぶつかる寸前まで凌ぎを削る。わずか、遊星が前。ジャック並走。地面に火花。

 

 スタジアム:興奮

 ギュルン、カーブの内側を取ったのは遊星

 

遊「チューニング・サポーターを対象として、魔法カード《機械複製術》を発動する! 攻撃力500以下の同名機械族モンスターを、デッキから二体まで特殊召喚する!」

 

 ぶおん:チューニングサポーター複製、三体並ぶ

 遊星:加速、前輪を跳ね上げる

 

遊「チューニング・サポーターは、レベル2扱いでシンクロ素材にできる! レベル2のチューニング・サポーター三体に、レベル1のマッハ・シンクロンをチューニング!」

 

 キィンと星が舞う(チューニング音)

 

遊「集いし夢の煌めきが、新たな夜明けを駆け抜ける。光さす道となれ、シンクロ召喚! 跳躍せよ、シグナル・ウォリアー!」

 

 光の中:遊星のDホイールと同じものが出現。二台揃って前輪を跳ね上げる

 変形、シグナルウォリアー、構える。

 

遊「マッハ・シンクロンがシンクロ素材となったとき、墓地からジャンク・シンクロンを手札に戻す。さらに三体のチューニング・サポーターの効果。シンクロ素材となった時、デッキからドローできる! オレは3枚ドロー!」

 

 遊星の指先:風を切り裂く

 尽きた手札に、次々とカードが舞い込む。絶えず回り続けるデッキ。

 ジャックの視線:鋭くきらめく

 

J「使った手札が次々舞い戻り、シンクロすら一手として、加速するほどさらに加速する。まるでモーメントだな。これがお前の選んだ進化の形か」

 

 ジャックの指:風を切り裂く

 Dホイール:エンジンが火を噴く

 

J「だが、進化の先を行くのが貴様だけだと思うな! この瞬間、俺はトラップ発動ッ! 《逆転の明札》! 相手がカードを手札に加えた瞬間発動し、手札が貴様と同じ枚数になるまでドローする!」

 

 ジャック:キラリ、指先できらめくカード

 摩擦、火花が散る

 

J「来いっ! ゆうせ、」

 

 ゲホッ

 ビチャッ(血の音)

 

遊「ジャック…?」

 

 不自然な沈黙

 遊星:目を見張る

 

歓声:ワーーーー

歓声:遠くなる(フェードアウト)

 

ジャック:口許を拭う。小さく舌打ち

 

遊「今のは」

 

 遊星:蒼白

 

遊「ジャック、お前、まさか」

 

J「っ、いま俺の手札はゼロ! よって、4枚ドロー!」

 

 ジャック:ドロー

 レーンに火花

 

遊「……ジャック」

J「……遊星」

 

命を燃やすジャックの目。迫真

遊星:グリップを握る手、緩む

ジャック:目で射抜く

 

ほんの刹那の、永遠

 

遊星:グリップを強く握り直す音

 

遊「オレは、ためらわない。……お前を必ず止めると誓ったんだ‼︎」

 

 歓声:戻ってくる(フェードイン)

 遊星:掲げた腕を、勢いよく振り抜く

 

遊「シグナル・ウォリアーでダイレクトアタック! エンブレム・オブ・ボンドッ!」

J「ぐわああああああああああああああ!」

 

 シグナル・ウォリアー ATK 2400

 → ジャック LP 4000 → 1600

 

 ジャック:バランスを失い、派手に回転。不安定な操舵

 

遊「ジャック!」(思わずハンドルを切る)

J「構うな!」

 

ジャック:立て直す

 

J「黙って見ていろ遊星、この俺の生き様を‼︎」

 

 大気:ビリビリ震える

 遊星:言葉を飲み込む。唇を強く噛む。

 

遊「カード、を…、一枚セット! ターンエンド!」

J「くっ、俺の、ターン!」

遊「この瞬間、シグナル・ウォリアーの効果が発動する! このカードとフィールド魔法に、シグナルカウンターを1つずつ置く! カウンターは2つ!」

J「決して破壊されぬ《スピード・ワールド―ネオ》を利用して、鉄壁の守りとして戦術に取り込むか! そうだ遊星、死力を尽くして、この俺を討ち取ってみせろ! 現れろ、レッド・スプリンター、ミラー・リゾネーター‼︎」

 

 ミラーリゾネーター(大きな丸鏡)

 ジャックのそばに舞い降りる

 

 キラン、と鏡が映る

 鏡:映った遊星。黄色のマーカー

 鏡:ジャックの腕に、赤の痣

 

J「俺の魂は滅びん! 幾度倒れようが、討ち果たされようが、何度でも燃え上がる‼︎ 見せてやる、レベル4のレッド・スプリンターに、レベル1のミラー・リゾネーターをチューニング! 破邪開闢、輪廻転生! 巡れ、命の鼓動よ! シンクロ召喚!」

 

 ジャック:拳を握る。左胸にかざす。燃え上がる魂(バーニングソウルの比喩)

 

J「再誕せよ! レベル5、転生竜サンサーラ!」

 

 蒼く美しい竜:ギャァァァァァオ、スタジアムをつんざく咆哮

 

 竜:翼を広げる。

   ジャックの背後で、ジャックが翼を広げたように。

 

J「バトルだ! 転生竜サンサーラ!」

遊「なにっ⁉︎ 攻撃力100のサンサーラで攻撃⁉︎」

女『な、なんと、キング血迷ったかー⁉︎ これが通ればキングのライフは0、自滅か⁉︎』

 

 遊星:ハッと目を見開く

 

遊「ッ違う、これは!」

J「リバースカードオープン、反転世界(リバーサル・ワールド)! フィールドの全ての効果モンスターの、攻撃力と守備力を入れ替える!」

 

 空:ぐにゃり、と歪む。

 霧がブワリと発生

 転生竜:霧と化して天を覆う

 シグナルウォリアー:小さく縮む

 

 遊星:ガバッと竜を見上げる

 

遊「しまった、シグナル・ウォリアーの攻撃力が!」

J「サンサーラの攻撃力は2600にアップ! 食らえ!」

 

 転生竜:シグナルウォリアーの喉元を食いちぎる

 遊星:Dホイール、衝撃を受ける。

 

遊「ぐああああああ!」

J「はっ、良い声で鳴くじゃあないか。どうした遊星、これで終わりか!」

遊「シグナル、…ウォリアーの、効果! カウンターの乗ったシグナル・ウォリアーは、戦闘と効果で破壊されない!」

 

 遊星 LP 4000 → 2400

 

 竜・戦士:睨み合う 熾烈な接戦

 ジャック:カードを素早く叩き伏せる

 

J「借りは返したぞ! さあ、このキングの首、掻き切ってみせろ、遊星!」

 

 

 ─── ターン7 ───

 

 

遊「オレのターン、ドロー! この瞬間、カウンターは4つ! シグナル・ウォリアーの効果、カウンターを4つ取り除き、相手に800のダメージを与える!」

J「ぐっ……! こざかしい!」

 

 ジャック LP 1600 → 800

 

遊「そしてオレは、魔法《埋葬呪文(まいそうじゅもん)の宝札》を発動! 墓地の《ワン・フォー・ワン》、《ブラスティング・ヴェイン》、《機械複製術》を除外し、二枚ドロー‼︎」

J「なるほど、見事なものだな。あらゆる全てを組み上げて、力に変えるか!」

遊「……デュエルは、モンスターだけでも、マジックやトラップだけでも勝てはしない。全てが一体となってこそ、意味を成す。そうオレに教えたのは、お前だ、ジャック!」

 

 遊星:アクセル ギュイン

 

遊「お前がオレをここに導いた。絆がオレを強くしたんだ。あの日、友と交わした約束を、オレは果たす! ジャンク・シンクロンを召喚し、効果発動! 墓地から再び、チューニング・サポーターを特殊召喚する!」

 

 立て続けに並ぶモンスター。散る火花

 遊星:指先が閃く。さらなる先へ

 

遊「このモンスターは、シンクロモンスターを素材とした時だけシンクロ召喚できる!」

J「! シンクロの先の、さらなる進化……!」

遊「見せてやるジャック、オレの目指す未来を! レベル7のシグナル・ウォリアーに、レベル3のジャンク・シンクロンをチューニング!」

 

 キラン。エンジンが燃える

 世界が光に包まれる

 

遊「集いし星のまたたきが、新たな未来を切り拓く! 光さす道となれ!」

 

 眩い光

 

遊「シンクロ召喚! 照らし出せ、サテライト・ウォリアー‼︎」

 

 蒼くきらめくパネル。金色の戦士:光臨

 

遊「サテライト・ウォリアーのモンスター効果! 墓地のシンクロモンスターの数だけ、相手のカードを破壊する! いま墓地にいるのは、ジャンク・ウォリアーとシグナル・ウォリアーの二体! 転生竜サンサーラと伏せカード、どちらも破壊させてもらう!」

J「ぐうっ!」

 

 カード:立て続けに破壊

 煙:視界が途切れるほどの煙幕

 ジャック:鋭く視線をきらめかせる

 (発動していた)

 

 場:煙が晴れる。ガラ空き

 

遊(ダイレクトアタックが決まれば…!)

J「甘いッ! 破壊されたことで、転生竜サンサーラの効果発動! 墓地のモンスターを復活させる! さあ、蘇れッ‼︎ 我が魂ッ‼︎」

 

 転生竜:咆哮。蒼い炎に包まれて、燃え上がる

 スカーライト:蒼い炎を引き裂いて出てくる。

 

J「レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライトッ‼︎」

 

 スカーライト:咆哮

 灼熱がフィールドを覆う

 観客:ワッと湧く

 

女『復活したーッ‼︎ 我らがキングの不滅のエース! サテライト・ウォリアーの攻撃力では、遠く及ばないかー⁉︎』

 

 空気:ビリビリ震える

 スカーライト:炎の中で猛(たけ)る

 遊星:凪いだ目。ぽつん、言葉を落とす

 

遊「なあ、ジャック。『サテライト』とは。飽和した、ゴミにあふれた、という意味だ」

 

 ジャック:顔を上げる

 遊星の目:まっすぐ何かを訴えかける

 

遊「オレのカードは、弱いと蔑まれ、道ばたに捨てられていたカードばかりだ。確かに一枚だけでは意味をなさない。だが、だからこそ。ひとりひとりの輝きは小さくとも、組み上げたとき、眩しい光を放つ。サテライトには、星という意味もある。クズと蔑まれた小さな存在は、だからこそ、手を取り合うことで、誰より眩しい星になるんだ」

 

 ぎゅんぎゅん。アクセルペダルが二度踏まれる。

 ギアが加速。摩擦で火花が散る。

 

遊「今までシティは、オレたちは。キングという一人のスターに全てを頼りすぎていた。だが、これからは違う!」

 

 ジャック:目を見開く

 客席:ハッとする人々

 ジャック:遊星の背中に竜の痣を空目(比喩)(遊星の背に集う、小さなデュエリストたちの祈り)

 

遊「キングと呼ばれたお前より、眩しく! オレたち一人一人が、未来を担ってみせる! それがオレの、オレたちの目指す絆だ!」

 

 遊星:ハンドルを切る。壁を駆け上がる。コースアウト寸前

 客席:息を飲む

 遊星:壁を跳躍台に、飛んだ

 

遊「サテライト・ウォリアーは、破壊したカードの数だけ、攻撃力を1000アップする!」

J「なに⁉︎」

 

 サテライトウォリアー:蒼く輝く。ぶわっと巨大な光

 

J「攻撃力、4500…⁉︎」

遊「いくぞジャック‼︎」

 

 遊星:空から滑空。瞬間、Dホイール発火(隕石の表現)ジャックに迫る。

 

遊「これで決める! スカーライトを攻撃ッ! メテオ・シューティング‼︎」

 

 Dホイール:隕石

 

J「…ッ!」

 

 光:降り注ぐ

 ジャック:光に巻き込まれる

 

 爆発→音が絶える

 

女『け、決着か…!?』

 

 無音

 決着、誰もが思った、その瞬間

 Dホイールの駆動音

 

 煙を裂いてキング登場

 スカ―ライト:無傷

 

遊「なに⁉︎」

J「俺は破壊された瞬間、このトラップを発動していた! 《威嚇する咆哮》! 貴様の攻撃は無効となる!」

 

 遊星の回想

 

遊(サテライト・ウォリアーのモンスター効果! 転生竜サンサーラと伏せカード、どちらも破壊させてもらう!)

J(ぐうっ!)

 

 

遊「……あのとき!」

 

 遊星:唇を噛む

 

遊「カードを伏せて、ターンエンド!」

 

 ジャック:ひどく長く感じる一瞬を味わう

 

J(残りライフは800。風前の灯。デッドラインだ。よく、ここまで俺を追い詰めた。いつぶりだ。こんなにも滾るデュエルは)

 

J(デュエルを通して伝わってきた。奴の目指すもの。誰かと共に目指す未来。そして、俺が目指すものは)

 

J「ッ、ゲホッ、ゲホッ」

 

 繰り返す咳

 ジャックの手袋:血で染まる

 観客:ざわめく

 

J(感じる。シティは、未来は変わろうとしている。この一戦は、未来を決めるデュエル)

 

J(再誕の時だ。しかし、殻を破るにはまだ足りない)

 

 ジャック:咳、繰り返す。苦しそう

 

J(限界が近い。おそらく今が、キングとして何かを為す、最後のチャンス…!)

 

 ざわめきを振りほどくように

 ジャックは叫んだ。

 

J「聞け‼︎ 牙を忘れた者共よッ‼︎」

 

 音響:ビリビリ震える 

 → スタジアム:静まる

 

J「この街は久しく忘れていた。誰もが爪を持ち、未来を掴み取っていけるのだと! 立ち上がれ‼︎ 今このとき、コモンズもトップスも関係ない! 望みがあるなら、手を伸ばせ‼︎」

 

 力を振り絞って吠える

 ジャックが燃やした魂の全てを、いま、声に乗せて叫ぶ。

 

J「富める者よ! 今すべきことは、華美な衣装でおのれの弱さから目を背けることでも、弱き存在を見て見ぬふりすることでもない‼︎」

 

 特別室にて:トップスの人:がたっ

 

J「貧しき者よ! 貴様のすべきことは、自らを弱いと決めつけ、嘆き、俯いて歩くことではない‼︎」

 

 浮浪者:街頭テレビを見てがたっ

 

J「相手が誰であろうと、共に高め合い、眩い未来を掴んでいけるのだと! その真髄がデュエルにはある‼︎」

遊「ジャック…!」

 

 ジャック:決意で遊星を射抜く

 

J「今まで打ち捨てられてきた弱きカードを束ね上げ、ついに一人の挑戦者が王の前にやって来た‼︎ コモンズもトップスも隔てなく、願いを託されて来たというデュエリストが!」

 

 ジャックのDホイール:壁を駆け上がる。みんな目を離せない。見事に逆さに安定。挑戦者を振り返る。

 ジャック:指を突きつけた

 

J「問おう、チャレンジャー! 貴様の目指すデュエルは何だ!」

遊「───っ、コモンズもトップスも‼︎ 全てを超えて絆が未来を作るのだと、証明してみせる! それがオレの、……オレたちの、デュエルだ‼︎」

J「ならば俺が最後の壁となろう‼︎ この俺、キング、ジャックアトラスが!」

 

 ジャック:ぶわりと覇気

 遊星:片腕で目を庇う。覇気の風、必死に目を開けて、遊星は、声にならない言葉を

 

遊「ジャック、お前は、……ッ!」

 

遊(身をもって、最後の障害になろうとしているのか。この街が生まれ変わる、最後のいしずえに。倒されるべき敵として)

 

 遊星:目で訴える

 ジャック:向き直る

 

 視線:交差 

 時が、止まる。

 

 ジャック:全身で雄叫び。大気が震えた。

 

J「俺は誓った。真のキングとは、皆を導き幸せを与える者だと‼︎ 俺にそう説いた者がいた! 王が与えるのを待つのでなく、自ら掴みに来た挑戦者よ‼︎ いまお前に、望むものがあるのなら───」

 

 ぶわり、ジャックの覇気、シティ中に襲いかかる

 客席、視聴者、みな思わず立ち上がる

 

J「王を超え、討ち果たしてみろ! このキング、ジャックアトラスを‼︎」

 

 観客:ワー――ッ!! 歓声が爆発。

 

J「さあ行くぞッ‼︎ 俺はクリムゾン・リゾネーターを召喚し、効果発動ッ! デッキから特殊召喚! 来い、ダブル・リゾネーター、チェーン・リゾネーターッ‼︎」

 

 リゾネーター(炎):燃え上がる。一瞬で三体ずらりと並ぶ。

 スカーライト:悪魔を従えて吠える

 

J「見よ、これが限界を越えた先! 俺の望んだ未来! トリプルチューニング‼︎」

遊「トリプルチューニングだと⁉︎」

J「レベル8のレッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライ、……ゲホッ!」

 

 ご、ぽっ

 白のライダースーツが、真っ赤に染まる。

 

J「ぐっ……こんなときに……ッ!」

 

 

 ビチャリ。大量の鮮血。レーンに点々と落ちる赤

 客席から悲鳴

 

遊「ジャックッ!」

深影「アトラスさま! ッお願い審判、止めて!」

 

J「止める、なぁッ‼︎」

 

 ビリビリと音が震える

 

 誰もが息を呑み、目を見張った。

 ぐらついたDホイールを立て直し、ジャックは血の滴る唇を噛みしめた。

 

J「まだだ。俺の魂は尽きていない、倒れるわけにはいかん、決して」

 

 ガッとアクセルを踏み込む。

 

J「たとえこの身すべてが焼き尽くされようと!」

 

 ギュイッ:タイヤが唸る。ハンドルを切る。

 

 エンジンが火を噴いて、ジャック、彗星のように燃え上がる。

 

J「クリムゾン、チェーン、ダブル・リゾネーターを、トリプルチューニングッ‼︎」

 

 スカーライト咆哮

 瞬間、スカーライト、眩しい炎に包まれる

 

 炎の羽化

 炎を突き破って、4枚の翼

 

J「王を迎えるは三賢人。紅き星は滅びず、ただ愚者を滅するのみ! 荒ぶる魂よ、天地開闢の時を刻め‼︎ シンクロ召喚ッ!」

 

 解き放たれる。真の姿が。

 ジャックは飛んだ。

 いま、待ち望んだ、最後の対決を。

 

J「君臨せよ、スカーレッド・スーパーノヴァ・ドラゴンッ‼︎」

 

 

J(刮目せよ。コモンズに生まれ落ちたジャックアトラスの、ラストデュエルを)

 

 

◇ ◇ ◇  

 

 

スカーレッド・スーパーノヴァ

 

 

◇ ◇ ◇

 

厄災。大地が炎で震撼

スーパーノヴァの咆哮

炎炎炎炎炎

遊星のDホイール、火に巻かれる。

必死に目を庇う遊星

 

遊「これがジャックの、本当の力…!」

 

 天まで燃え上がる火柱。

 天に腕を突き出し、君臨するジャック。

 

J「スーパーノヴァの攻撃力は、墓地のチューナー一体につき500アップする! 俺の墓地には、四体のリゾネーターがいる!」

 

 音叉:一斉に鳴り出す

 スカーライト:天を覆うほど巨大化。炎が勢いを増す

 

遊「攻撃力、6000、だと…⁉︎」

 

 サテライト・ウォリアーの攻撃力:4500

 灼熱がさらに灼熱

 

J「バトルだ! サテライト・ウォリアーを攻撃ッ‼︎」

 

 地面:炎が走る

 振り上げた拳が隕石のように発火

 ウォリアーをなぎ払う

 

 スーパーノヴァ VS サテライト・ウォリアー

 = 遊星 LP 2400 → 900

 

遊「ぐ、あああああ!」

 

 Dホイ―ル:衝撃で激しく揺れる。

 遊星:腕で顔を庇う。かろうじて持ち堪える。

 

女『こ、攻撃力6000を前に、フィールドはガラ空き……これは……』

 

スタジアムに漂う絶望的な空気

 

遊「くっ、まだだ! 破壊されたサテライト・ウォリアーの効果ッ! 墓地から復活しろ、ジャンク・ウォリアー、シグナル・ウォリアー‼︎」

 

 遊星の声に反応:二体の戦士、復活

 火の中、睨み合うモンスター

 

J・遊(俺のライフは)

J(800)

遊(900。どちらもデッドライン)

 

J・遊(次の攻撃を制した方が、勝つ…!)

 

J「…さすがだな、遊星。俺が限界を超えるたび、お前も限界を超えてくる!」

遊「お前こそ」

 

 懐かしい応酬

(1戦目で同じやりとりをセリフ逆でやってる)

 

 ジャック:ふっと笑う

 

J「感じるぞ、遊星。この十年、どれほどお前が俺のデュエルを見てきたか。やはり俺の目に狂いはなかった。願わくば、永遠にこうして居たいと思うほどにはな」

遊「ジャック……」

J「だが、それは無理というものだ」

 

 げほん

 隠そうともしなくなった吐血

 血をレーンに吐き捨てる

 ジャックは吠えた。

 

J「なぜなら、ここで俺がお前を倒すからだ! お前は俺に届かん!」

 

 手札を全て伏せる

 ジャック:圧倒的覇気

 スーパーノヴァ吠える

 ギャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァア

 

J「教えてやろう、遊星! 我がスーパーノヴァは、攻撃や効果に対し、貴様のあらゆるカードを除外できる効果を持っている!」

遊「なに…⁉︎」

J「覚悟があるのなら。超えてみせろ、遊星。我が魂を! 圧倒的不利すら覆して、不可能を可能にしてみせろ! これが、お前にやるラストチャンスだ!」

 

 

 ─── ラストターン ───

 

 

 鏡のようなデュエルだった。

 

 最初はスターダストが倒され、次はレッドデーモンズが倒された。

 先に遊星が大ダメージを与え、次はジャックが大ダメージを。

 

 ジャックの蒼き竜が倒されて、レッドデーモンズは蘇り

 遊星の戦士が倒されて、二体のウォリアーが蘇った。

 

 そしていま、

 ジャックが限界を超えた先で

 遊星もまた、限界を超えていく。

 

 

観客:ワーーーー

 

揺らめく炎

遊星、静かに問いかける

 

遊「ジャック、お前はどこまでも孤高を貫くんだな」

 

遊(血を吐いても、折れない魂。限界を超え、コモンズの未来を背負って、ひとり、走ってきた、王)

 

J「ああ。それが俺の生き様。俺のデュエル」

遊「キングだからか?」

J「そうだ、キングだからだ」

 

J「遊星、お前にその覚悟があるか。全てを捨て、全てを背負う覚悟が」

 

 遊星:静かに首を横に振る

 

遊「ジャック。オレとお前の道は違う。オレの道は、風と共にある」

 

 遊星:拳をゆっくり、ジャックに突き出す

 

遊「オレは遊星粒子のように、みんなの心を繋ぐ絆でありたい。オレが目指すのは、絆を繋ぐデュエルだ。何も捨てない。誰も独りにはしない。ジャック、お前のことも」

 

 変わらぬ遊星の目。

 ジャック:フッと紫の瞳を和らげた。

 

J「お前らしい」

 

 Dホイールが並ぶ。

 ジャック:拳を突き出す、こぶしごっつんこ(それは、認めた強敵を讃えるハイタッチであり、決別を示すものであった)

 

J「来い、遊星! 貴様のラストターンだ!」

遊「ドローッ! 魔法カード《能力調整》! モンスター全てのレベルを一つダウン!」

 

 発動:レベルが下がる音

 

遊「来い、ジェット・シンクロン! レベル1のチューニング・サポーターに、レベル1のジェット・シンクロンをチューニング!」

 

 きぃん、高らかに星が舞った(シンクロ音)

 

遊「集いし願いが、新たな速度の地平へいざなう。光さす道となれ! シンクロ召喚! 希望の力、フォーミュラ・シンクロン!」

 

 フォーミュラ:炎を裂いて飛び出す

 遊星:腕を振り抜く

 

遊「この瞬間、チューニング・サポーターと、フォーミュラ・シンクロンの効果発動! シンクロ召喚に成功したとき、それぞれ一枚ドロー‼︎」

 

 立て続けに二枚ドロー

 遊星:勢いのまま腕を突き出す

 

遊「そしてシンクロ素材となったジェット・シンクロンの効果で、デッキから『ジャンク・ジャイアント』を手札に加える!」

 

 遊星:手の中に舞い込んだカードをキャッチ。

 ジャック:訝しむ

 

J(おかしい。魔法でレベルを下げたのはなぜだ。場には、シンクロモンスターが三体。遊星が得意とするのは、連続シンクロ……)

J(まさか)

 

 ジャック:ハッ

 遊星:ジャックを見据えている。(青く透明な瞳で:クリアマインドの示唆)

 

J「遊星、お前も越えようというのか、スピードの限界を…!」

 

遊「共に走れば、相手の全てが、深く、熱く、分かる。それが、ライディングデュエル。ライディングデュエルは、人生。誰かと人生を共に走ることだ」

 

 遊星の声:積年の友人にかけるような温かみに満ちている

 熱く、熱く、酩酊するような風

 

 風が。赤い風が、燃えている。

 

遊「ジャック、お前は待っていたんだろう。この頂点で、ずっと。お前を倒しに来るデュエリストを」

 

ずっと求めていた何かに出会ったジャック

 

J(そうだ俺は待っていた。終生のライバルが、お前が。スピードの限界を超えて、俺の前にやって来るのを)

 

遊「いま、行く」

 

 青い瞳、キラリ。クリアマインド。

 遊星の空気が、風が。金色に

 

遊「シンクロは、絆。思いが積み重なって、新たな未来を切り開く。お前が、チューナー三体でシンクロするなら、オレは───シンクロモンスター三体で、シンクロ召喚する!」

J「なんだと⁉︎」

遊「見せてやるジャック。これがオレたちが走る、未来への絆! トップ・クリアマインドッ‼︎」

 

 遊星:三枚のカードをかざし風を切り裂いく

 

遊「シンクロモンスター『ジャンク・ウォリアー』『シグナル・ウォリアー』に、シンクロチューナー『フォーミュラ・シンクロン』を、チューニングッ!」

 

 きぃん。加速して、黄金の風が、燃えた

 

遊「集いし星が絆を繋ぎ、祈りと共に未来へ翔けるッ‼︎」

 

 カーブに差し掛かる。地面スレスレに体を倒す。タイヤがうなりをあげる。グリップを握る手に汗がにじむ。

 

遊「光さす道となれッ‼︎」

 

 アスファルトが擦れる。火花が散る。

 

遊「デルタアクセルシンクロォォォォォォ‼︎」

 

 風が唸った。

 

 キィィィィィィン。

 加速して残像だけ残して遊星が消える

 ジャック:目を見開く

 

J「消えた⁉︎」

 

 瞬間。背後で音が爆発

 

 遊星:空へ飛んだ

 遊星:宙に浮かぶ一瞬

 

遊「生来せよ、コズミック・ブレイザー・ドラゴンッ‼︎」

 

 コズミック:翼を広げて咆哮

 光、光、光。

 ジャック:光に目を覆い、その後、限界まで目を見開く

 

J「デルタアクセルシンクロだと⁉︎」

遊「バトルだ! コズミック・ブレイザー・ドラゴンで、スーパーノヴァを攻撃ッ!」

J「なに⁉︎ 攻撃力4000で、俺のスーパーノヴァに挑むだと⁉︎ 何を企んで……!」

遊「トラップ発動、《罠蘇生》!ライフを半分払い、相手の墓地のトラップの効果をコピーする!」

 

 遊星が、腕を突き出して、叫んだ。 

 その瞬間、カードから、天を覆う霧が発生した。

 

 赤き竜:咆哮

 

遊「オレが選ぶのは───《反転世界(リバーサル・ワールド)》‼︎」

 

 コズミック:咆哮

 

J「ッ‼」

 

 

 

 霧の中に突っ込む

 ジャック:目を凝らす

 

J(霧が…)

 

 向こうからDホイール音

 ジャック、一瞬誰かとすれ違う

 

J(今のはッ……⁉︎)

 

(ジャック(5D’s版)とすれ違う)

 

 スーパーノヴァ、名残惜しげに吠える。あとを引く咆哮。

 

 霧が晴れる。

 ジャック:ハッと夢から覚めたように

 遊星:射抜くようにジャックを見つめている

 

遊「オレの残りライフは450。スーパーノヴァの攻撃力は3000までダウンする。だが、オレのコズミックブレイザーは」

 

 ジャック:見上げて目を見開く

 

J「攻撃力が、変わっていない…⁉︎」

遊「コズミック・ブレイザー・ドラゴンは、攻守ともに4000、攻撃力は変わらない!」

 

 ジャック:焦燥

 

遊(オレは見た。あの霧の中で)

遊(あれは。あの赤いDホイールは)

 

遊「ジャック。世界がどれほど移り変わろうと、オレは変わらない」

 

 遊星:挑むように低い声

 

遊「絆は変わらない。世界がどんなに変わろうと、オレはオレのデュエルを貫く!」

 

 

 

J「っ、この攻撃が通れば、俺の負け……っ、だが! スーパーノヴァは、自身と共に、相手のすべてのカードを除外できる!」

遊「それはどうかな!」

 

 遊星が叫んだ瞬間、コズミック咆哮

 

遊「コズミック・ブレイザー・ドラゴンの効果! エンドフェイズまで除外することで、相手の効果の発動を無効にし、破壊する!」

J「なんだと⁉︎」

 

 コズミック:翼を広げる。パァぁぁぁっと光が広がる

 

J「攻撃を無効にしたはずのスーパーノヴァを、コズミックブレイザーで無効化するだと…!?」

 

 ジャックは吠えた。

 

J「まだだ…俺は負けん‼︎ トラップ発動、《竜の転生》‼︎」

 

 ジャックの最後の伏せカードが立ち上がる。

 

 スーパーノヴァ:コズミックに引き裂かれる寸前で、消える。

 コズミックブレイザーの爪が空ぶる。

 

遊「スーパーノヴァが消えた⁉︎」

J「スーパーノヴァを除外し、甦れ、我が魂ッ‼︎」

 

 地面:灼熱が噴き出す

 

J「レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカァァァライトォ‼︎」

 

 スカーライト君臨。大地を走る炎

 コズミックブレイザーが消えていく

 

遊「…っコズミックブレイザーは、効果を使ったときエンドフェイズまで除外される…!」

 

ジャック:指をびしっ

 

J「貴様の場はガラ空き!遊星、貴様の負けだ‼︎ 貴様に次のターンは来ない!」

遊「……ああ、ジャック。次のターンは来ない。───このターンで、決着を付けるッ‼︎ 速攻魔法、《ツインツイスター》‼︎ オレは、自分の伏せカードを二枚とも破壊する!」

J「なに⁉︎ 伏せカードを自ら手放すだと⁉︎」

遊「そうだ、この世に不要なカードなどない、破壊されることにもまた、かけがえのない意味がある!」

 

 遊星:バッと腕を天に突き上げる

 

遊「これがオレの切り札! 自分のカードが二枚以上破壊されるとき、トラップ発動ッ! 《スターライト・ロード》‼︎」

 

 遊星の前に、美しく光の道。駆け抜ける

 

遊「バトルフェイズは終わっていない! デッキから甦れ、皆の想い、希望の絆‼︎」

 

 天まで伸びた光

 セカイがホワイトアウト

 

遊「飛翔せよ、スターダスト・ドラゴンッ‼︎」

 

 スターダスト再誕

 美しく、翼を広げる

 

 ジャック:打ち震え、歓喜

 命を燃やして、最後のアクセルを踏み込む

 

 叫ぶジャック。叫ぶ遊星。

 

J「スカーライトォォォッ‼︎」

遊「スターダストォォォッ‼︎」

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 ポタン、…ポタン

 ポタン、ポタン

 

 点滴が落ちる。

 

 ジャック、医務室で目を覚ます

 視界が揺れる。

 

 ポタン、ポタン。

 

J「カーリー、俺は、負けたか」

カ「……うん。強かった、ずっと、見てたよ」

 

 ポタン、ポタン

 

J「そうか」

 

息を吐き出す

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

遊「速攻魔法、《イージーチューニング》‼︎ 墓地のジャンク・シンクロンを除外して、スターダストの攻撃力を3800にアップ‼︎」

 

 スターダスト:輝く

 

遊『響け、シューティング・ソニィィィィック‼︎』

 

 セカイから、音が遠のく。

 ジャック、撃ち抜かれる

 意識を、手放す

 

遊『ッ⁉︎ ジャックッ‼︎』

 

 Dホイールから滑落、放り出される

 

 遊星叫ぶ、観客の悲鳴

 ジャック、浮遊

 ジャック、全てがスローモーションのように感じる

 

J(ああ、)

 

 

J 長い、長い孤独な戦いだった。この世界に生まれ落ち、独り歩んできた。だが。悪くは、なかった。

 

 カードと出会い。育ての母と出会い。

 孤児院で騒がしい同胞と出会い。愛機と共に駆け。

 そして、愛する女と、友と出会った。

 

 多くと、出会った人生だった

 

 これが絆なら、俺の走ってきた人生は。

 きっと、誰よりも上々だった。

 

 そうだろう、我が魂、レッドデーモンズよ。

 

 ジャックは、静かに笑った。

 遠い咆哮で、火竜が応えたのを、知った。

 

 

遊『ジャックッ‼︎』

 

 遊星:アクセルを踏む、追って、飛ぶ

 

遊『ジャックーッ‼』

 

ジャック:頭から墜落

遊星:限界まで手を伸ばす

指先が掠めて、空ぶる

 

遊(───だめだ、届かない!)

 

 遊星:サイドを開いて、Dホイールを蹴って、跳ぶ

 

 二台、クラッシュ

 壁に激突 爆炎と煙。

 

 観客、声を失う

 煙がレーンを覆う

 

 ヘリのカメラがズームアップ

 

 全身でジャックを受け止めた、遊星の姿

 

 観客、わっと一斉に湧く

 

 キラキラと、ソリッドビジョンが消えていく。

 

 スターダスト、消えていく、光の中

 ジャック:遊星の腕の中で、満たされたように気を失っている。

 

 街を背負って走った、気高い背中。

 思っていたよりもずっと軽く、小さい

 

 十年の歳月を走り抜けて、力尽きたように金色のまつ毛を伏せる、ライバルを前に。

 遊星は、噛みしめるように告げた。

 

 

遊『ジャック、友の意志はオレが継ぐ。……だから、どうか、休んでくれ。ありがとう』

 

 

 

◇ ◇ ◇


 

 

 

カ「ねえ、ジャック、…ジャック、スタジアムの声、聴こえる?」

J「ああ、聴こえている。……名を呼んでいる。俺の名だ」

 

J(聞こえる、歓声が。キングでなくなった俺に、喝采が)

 

カ「ジャック、コモンズとトップスがひとつだよ、聴こえる?」

J「ああ、ちゃんと聴こえている。判っているから、───泣くなカーリー。俺は死なん」

 

 ポタン。カーリーの涙。

 

J「キングの俺の役目は、終わった。俺は、もう一度ここから始める。キングではない、ただのジャックアトラスとして、病を癒して、今度はゼロから挑戦者として挑もう」

 

 ジャック、うまく動かない手をゆっくり動かして、カーリーに指を絡める。

 

J「カーリー。俺はもう、王座を持たぬただの男だ。俺は今、心の全てをかけて、願う。真に愛する者、お前と在りたい」

 

 ぎゅっと。無言で強く握り返すカーリー

 

カ「俺の復活の日の記事はお前が書け。俺も、ずっと見ていた。本当に、良い記事を書くようになったな、カーリー」

 


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