逃亡アイドルの辿り着く場所〜Dream restart in station〜 作:スタプレ
初めての方は初めまして。ぜひよろしければ原作の方も読んでみてください。
これはとある小学校の話。場所は五夜小学校。中国地方の盆地にある。
そもそも五夜という町はそこそこ人口があり、南北に走るJR線の特急停車駅もある。
その町唯一の小学校は地元の子と、少し離れた山奥からスクールバスで通う子がいる。
一見人数の多そうな学校に見えるが、残念ながらそうでもない。学年で30人いれば多い方だ。
今年の6年生は不思議なことに、男女のバランスがいい。もちろん人数調節した訳じゃない。
話は変わるが、どこの学校にも1人か2人ぐらいはモテるやつがいるのだろうか?このクラスにも、他の女子よりも美しい女の子がいた。
他の女子がブサイクというわけではない。別の可愛い子もいるが、この少女だけずば抜けていた。
そんな子を放っておく男子がいないはずがない。告白をする男子は絶えなかった。
しかし彼女は、「夢があるから付き合えない。」と言って断った。
そしてそのクラスにはとある男の子がいた。彼は葡萄川という田舎から来ている子だ。
卒業まであと何週間前のある日。
いつものようにスクールバスを待っていた男の子。近くに流れる川を眺めていると、例の女の子が話しかけた。
「バス待ちなの?」
「あぁそうだよ。」
彼は彼女のことは眼中になかった。しかし同じクラスだから、互いの名前は知っているし、日直などで短い会話はしていた。
「私東京に行くんだ...」
「それは夢のため?」
告白してないとはいえ、何回も同じ理由で断れば自然と耳に入る。
「ホントはパパの仕事なんだけどね。でも夢への一歩でもあるんだ。」
「君の夢は何なの?」
「私の夢はアイドルになること!」
アイドル。それは歌って踊り、たくさんの虜を作るもの。
「君ならなれるでしょ。」
「そう簡単じゃないよ。ただ可愛いだけじゃダメ。だから東京のスクールに入って、立派なアイドルを目指すんだ!」
彼女はとても輝いていた。
「そう、頑張ってね。」
「君は夢、あるの?」
彼の夢は少し違った。それは将来の夢ではない。だからこう答える。
「僕は将来が決められている。だから君みたいな立派な夢はないんだ。」
「そうなんだ...何になるの?」
「駅員。お父さんがそうなんだ。」
彼の父は葡萄川駅の駅員。昔からの関係で住み込みで働いている。つまり彼の家は駅ということだ。
「駅員さん?かっこいいよ!」
「まぁ努力してなれたやつならな。親のゴネだから大したことないよ。芸能人だって親のゴネで入ったやつなんて輝いてないだろ?」
「でも一生懸命働くなら変わりはないんじゃない?」
「うち...すっげぇ暇なんだよ。」
葡萄川駅はローカル鉄道のとある駅。普通列車すら通過するやつがあるぐらいの過疎駅。なぜそんな駅に係員がいるか謎に思うぐらいだ。
「じゃあ夢ってないの?」
「無いことはないさ...」
「私に教えてくれる?」
「笑わない?」
「笑わないよ。だってどんな夢でも素晴らしいことには変わりないから!」
「ありがと。僕の夢はね...」
彼らは時間も経つのも忘れて話に夢中になった。運転手の呼びかけで我に返り、スクールバスが来たことで2人は別れた。
これで仲良くなった風に見えるが、それからまともな会話はしていない。
そしてこの記憶は忘れられた物置の部屋の隅に置かれるようになってしまった。なぜなら、『苦労』や『災難』という人物が隠してしまったからだ。