逃亡アイドルの辿り着く場所〜Dream restart in station〜 作:スタプレ
ここはとある田舎にある葡萄川駅。葡萄川駅は明備鉄道という小さな鉄道会社の駅である。
明備鉄道はそこそこ需要のある七市線と、葡萄川駅がある二桜線の2種類ある。二桜線は赤字と言っても過言ではなく、葡萄川駅も一日1人乗る人がいたらいいぐらいだ。
葡萄川駅はいわゆる秘境駅。一日2往復しかなく、普通列車ですら通過する。平日には上り列車がもう1本あるが、それでも少ない。何も知らないマニアがやって来て、帰りの時刻表を見て絶望をした顔をするのを何回見たことやら。
葡萄川駅の近くには小さな国道が走っており、その向こうに2本の川が合流している。小さい川は葡萄川と呼ばれており、この駅の由来でもある。もちろん国道の交通量はめちゃくちゃ少ない。そして周りには田畑。
「...それでどう思う?」
『とりあえず貴重な昼休憩を奪うのはやめてくれない?』
俺、十里セイヤ(とおり せいや)はこの駅の住み込み駅員である。常に毎日働いているという感じ。先程の駅の様子から察する通り、鬼クソ暇である。
ちなみに十里家代々この駅の住み込みをやっているらしい。ちなみに親父は一年前に病気で他界している。
「まぁいいじゃねぇか。こっちは暇なんだよ。」
『お前はな!こっちの華やかな休憩を愚痴に付き合わされているんだよ。こっちの気持ちも考えて欲しいものだ。』
そして電話の相手は島本達大(しまもと たつひろ)。唯一の同期だ。
ちなみに毎日働くと言ったが、事前に休みを申請すれば、代わりが飛んでくる。
ほとんどの場合は彼が来るらしい。実は申請なんて全然してない。そもそも毎日が休みな感じだから。
彼もまた同期に会える喜びと手当てがつくので進んで来てるらしい。ちなみに彼は明備中央という駅で常に働いている。
「それで?どう思うのよ?」
『まぁお前の言うことは一理あるさ。だけど...仕方ないんじゃね?』
「正直その業界はあまりよく思ってねぇからな。」
俺らは何を話していたのか?それは最近炎上してしまったアイドルについてだ。
そのアイドルは『Sweet Spring』。五人組なのだが、初ライブに口パクでやってしまい、機会のトラブルで客にバレてしまったのが発端。
そしてネットやニュースでは叩かれまくっているのだが...
「そんなもんどのアイドルもやっているだろうが。所詮弱い者いじめってことだな。ドルオタは落ちたな。」
っとテレビを観ながら愚痴った。そして誰かと話し合いたいと思って気づいたら島本と電話したっていうわけ。
『結局俺たちがあーだこーだ言ったところで何も変わらないんだがな。』
「そうだよね〜。今更世の中の理不尽を言っても...そういえば彼女たちは?」
『そういえば公に出てないね。事務所の指示で隠れてるんじゃね?』
それでまた事務所の言いなりと言うのもキツいな。島本の説が合っているなら、恐らく口パクも事務所の指示だろう。
『あ、そろそろ休憩終わるから切るわ。』
「おー頑張ってな〜」
いくら同期とは言え、忙しいには他人事なので、気だるい激励しか出来ない。
そして数分過ぎると、下りの二桜行きの列車が来た。実は下りだとこれが始発。
トンネルを抜けたディーゼルカーがホームに滑り込む。
そして無駄に長いホームから発車して行く。
改札の準備をするものの、やはり降りる人はいない。
そしてしばらく経った時、
「駅員さん!駅員さん!」
「あれ?畑中さんどうしたんですか?今から明備でも?」
この人は、畑中耕二郎さん。駅の近くで畑を耕しているおじいさん。ちなみにこの人の家は、近くにない。いつも軽トラで来ているのだが...
「いや、違う!線路に人が倒れている!今すぐ来てくれ!」
本数が少ないとはいえ、見て見ぬふりをするのはダメ。急いで行かないと!
「大丈夫ですか!?ってあれ?」
倒れていた人は女の子...かなり年が近そうだ。
女の子は山吹色のロングヘアー。どうやら暑さでやられてしまっているみたいだ。
そして彼女には見覚えがある。
さっき島本と話していたこと。テレビを観ていたこと。
そう、確信はないが、この娘は炎上してしまったアイドルグループ『Sweet Spring』のセンターに立っていた娘だった...
アイドル名がダサいような...まいっか!