日向は木の葉にて。   作:らるいて

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届かぬモノ。

ヒノデはその実力から危険な任務を任される事が多い。

 

確かにヒノデは強く、チャクラコントロールも里で有数と言っていい。

点穴を付くことでの医療忍術、視界の広さからくる状況把握能力。

白眼のおかげで幻術や奇襲に強く、斥候も難なくこなす。

さらに瞬間的に火影すら越える爆発力。

 

能力を見るならば非の打ち所が無い。

性格は敵に対しては容赦が無く残忍と恐れられているものの、

味方にはやや甘く、そのせいで窮地に陥ることもある。

 

それでもその他者を圧倒する強さで、幾度と無くその窮地を乗り越えてきた。

とはいえ、いくら強くてもどうしようもない事はあるものだ。

否、強いが故に苦しい問題もある。ヒノデが現在直面している問題は一つ。

 

つまりは休暇が取れないことである。

 

戦時中に休暇を取りたがるな、確かにそうだがヒノデには重大な理由がある。

前回の任務、負傷した仲間を守るためとはいえ、すこし無理をしすぎたのである。

確実に、かつ早く終わらせるために死門まで開き、その上確実さを求めての回天。

とどめに無理矢理八門を閉じたが故に、チャクラを巧く練れなくなっているのだ。

練れないわけではない。元から優れているのが人並み程度まで落ちただけだ。

だが普段の任務や、敵国に与えた損害を考えるならば、

トップクラスの忍びに狙われるのは必然、弱っているなら尚更だ。

さらに八門開放の副作用は、チャクラコントロールだけでなく身体面にも影響を与えている。

体中が疲労と痛みで動くのも辛い状況なのだ。筋肉痛とも言う。

さらに血を流しすぎたことによる貧血。

これらの影響で自慢の体術が鈍っている。これまた並み程度まで落ちただけだが。

 

総合すると現在のヒノデは凡百の忍びと変わらない実力しか発揮できない。

こんな状態で普段と変わらぬ任務を受ければ確実に死ぬだろう。

任務の難易度を下げたとしても戦場に出るだけで狙われ、死ぬ。

ある程度回復するまで、具体的には第五門、杜門の開放ができるようになるまで、休みを取りたいというわけだ。

火影は事情を知っている、理由を説明すれば十二分に休暇が取れる可能性はある。

 

だが今は常の時ではない。戦時中なのだ。火影と言えども所詮大名の家臣に過ぎない。

本来大名は一人の忍びの事などいちいち覚えては居ない。

だがその忍びが一人で戦局を一変させうるほどの実力があれば別だ。当然大名の知る所となる。

大名に忍びの事情など分かるはずが無い、安全な場所から命令するだけなのだから。

ヒノデは今まで活躍しすぎた。大名がヒノデの力を過信するには十分すぎる程度には。

戦いをより有利に進め領土を増やすという思惑と、

やられるはずが無い、多少力が発揮できなくても十分であるという楽観。

現実を、現場を知らないからこそ、戦場を又聞きでしか、数字や結果でしか知らないからこその楽観。

戦場の悲惨さを、若い芽が摘まれ手折られていく悲しさをしらないのだ。

戦に破れ自身の身に降りかかるまで気付きはしないだろう。

 

 

ヒノデは今、任務を受けている。

火影の必死の交渉の成果もあり、普段より幾分易しい任務だ。戦場の前線に出るような任務ではなく潜入する、斥候。

いくら弱っていても白眼を駆使すれば敵に気付かれない事はそう難しいことではない。

難しいことではない、ということは、簡単なことでもないということだ。

簡単であれば簡単と表すし、難しければ難しいと表すだろう。

難しいことではないという表現は即ち、どちらかといえば簡単、ということだ。

 

ヒノデにとって達成が出来る内容だったとしても、それが同じ任務に付く忍びにとって同じというとそうでもない。

否、普段通りならばこなせたのだろう。だが普段通りではなかった。

木の葉で最強と称されるヒノデと、共に仕事をするということに、未だ年若い忍びが舞い上がったとしても仕方のないことだった。

火影の気遣いが裏目に出たともいえる。現状のヒノデではやや厳しい任務にしていれば。

年を経た経験豊富な忍びと共に任務をこなしていれば、今回のようなことには、ならなかったかもしれない。

 

年若い忍びは、普段ではしないような失敗をしてしまった。

失敗というのも可哀想な些細な物だ。足元の小石を蹴り、それが木に当たっただけ。

よほど耳の良い忍び出ないと気付かぬような、小さな、小さな音。

不幸は、丁度その場を巡回していた忍びが、感知系、それも音の感知を得意とする忍びだったことだ。

 

結果、ヒノデ達は気付かれ、撤退を余儀なくされた。

敵は多数、もちろん現在のヒノデよりかは速い忍びも居た。

交戦するにしても、斥候の任務を受ける忍びたちだ、戦闘を得意とはしていない。

敵の方が数が多く、さらに敵の方が強い状況。

その中には八門を開放しなかったとはいえ、ヒノデと戦い生き残った忍びもいた。

せめて万全の状態であるならば突破できたであろう。

ヒノデが現在開放できるのは第二門、休門まで、それもかなり無理をしてだ。

開放しても勝てるとは限らない、強敵である。

 

 

自身の失敗で絶望的な状況と成った事をその忍びは悔いていた。

憧れの人とも言える、日向の宗家。分家に生まれた己には、実力でも地位でも遥かに遠い人。

日向は木の葉にて最強。そう言い放ち、それに異議を唱えさせぬ実力。

彼のようになりたくて修行をして来た。体術はあまり得意ではないが、白眼の精度は中々の物だと自負している。

それなのに、彼の足を引っ張って、このような状況にしてしまった。

普段通りに気を配っていれば避けられたに違いない。そう考えてしまう。

この状況を作ってしまったのが自分ならば、この責任を取るのも自身以外に居ないだろう。

白眼により敵の数、場所、距離、全てを把握し、彼は覚悟を決めた。

 

 

若い忍びが、自身が食い止めるから逃げろという。

それを否定し、皆で生き残る術を探したい自分と、それ以外に手段は無い、と肯定する自分。

二つの鬩ぎ合いとなりヒノデは前者を取る。危機的状況など今までにいくらでもあった。

それを乗り越えてきたから己は今、ここにいるのだと。

だが他の二人も若い忍びの意見に賛成した。貴方には死んでも消えない白眼がある、敵国に渡せないと。

貴方が死ねば里の士気が落ちると、貴方がこの後為す事のためにも生きるべきだと。

全て正論であり、ヒノデ自身も良く分かっていることだった。それしかないのだと。

だからこそ、強く否定できなかった。

 

覚悟を決めた三人を止めることは出来ず、三人の犠牲を無駄にするわけにも行かない。

ヒノデは湧き上がる、自身への怒りを抑えて敵に背を向け駆ける。

何が最強だ。肝心な時にこれでは何の意味も無いではないか。と。

ヒノデは最強だ。だがその最強は命を削る物だ。連続しての使用も出来ない。

ヒノデは万能だ。だが全能ではない、故に届かぬ物もある。

いくら強くても、いくら万能でも限界はある。慢心していたのかもしれない。

どれほど危機的な状況でも切り抜けれた。犠牲は出なかった。だから今回も大丈夫だと。

違う、犠牲は出る。大丈夫は有り得ない。そんな当たり前のことを忘れてしまっていた。

叫びたくなるが敵に気付かれるので出来ない、何かに八つ当たりしたくもなるが出来ない。

ただ心を震わせ覚悟を決める。こんな醜態は晒さない。油断も慢心もしない。

捨て身の無茶もしない。せずとも救えるだけの力はある。あるはずだ。無ければ身に付ける。

今だけでない、先を見る、最善の未来を見る。あの若い忍び達が笑って過ごせる平和目指す。

そう、最強の証明で無い。木の葉の平和、未来のために戦うのだ。散った若い芽が、無駄では無い証明のために。

 

ヒノデは唯々走り続ける、木の葉の里に向かって。

 




後半ダレたからあっさり。
力には代償がある。それだけのお話。
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