日向は木の葉にて。   作:らるいて

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殺し戦いそして。

殺し、

 

体中が赤く染まっている。血だ。だが己の血ではない。返り血だ。その手で直接殴り、突き、貫き潰した。

体から垂れた血が足元の草を汚す。

忍術や幻術を使えば、血を浴び、服を任務のたびに取り替える必要が無いかもしれない。

それでも、わざわざ体術を使うのは、最も得意とし誇りがあるから。

そして殺した相手を覚えるため。罪を感じるため。体術ならば感触が残る。

吐き気を催すような、相手の事切れる寸前の顔が良く見える。

その感触を、今際の瞬間を、焼き付け、忘れないため。出来る限り自身の手で殺すのだ。

まだ、敵はいる。

地面を蹴り高速で相手の背後に回る。そしてそのまま背中を蹴り砕く。

蹴りは背中に吸い込まれ貫いた、瞬間煙が上がる。変わり身。

白眼で瞬時に場所を把握する、後ろだ。

体を捻り、蹴りを放って上がった足に勢いをつけて回し蹴る。

無理な体勢から放ったそれは、敵が回避する方が早かった。敵はクナイを地面に投げ刺して後ろに飛ぶ。

クナイには紙が貼り付けられている、起爆札だ。

回し蹴りが終わり体勢を直すのとほぼ同時に爆発した。

従来の起爆札ではない、それよりずっと威力は高く、ヒノデは上がる火柱に飲まれた。

爆発を全身からチャクラを放出することで防ぎ、耐える。濡れていた事で、やけどなども無い。

煙の中からヒノデが現れる。赤い粒子を撒き散らしながら。

敵の腹に掌底を当てる。相手のチャクラを直接攻撃すると、顔を苦痛に歪める間もなく、目を見開いたまま倒れた。

ヒノデの体中に罅が入ったようになっている。軽く手を叩くとボロボロと赤い物体が、緑の地面に落ちる。

爆発の熱で固まった、血だ。

今殺した忍びの荷物を漁る。思っていた通り、忍具の口寄せの巻物をいくつも持っていた。

戦利品を確保すると、次の戦場へ歩き出す。

 

 

戦い、

 

足元には既に息絶えた敵の忍びが転がっている。年は若かった。

前には、臨戦体勢の敵の忍びが三人。フォーマンセルだったのだろう。

涙を流しながらも敵から目を離さない、担当者の教育が行き届いている証だ。

だが、些か以上に経験が足りない、実力が足りていない。

少なくとも激戦区と呼べる此処に送られる実力ではない。

年齢も一人を除けば、戦争が始まってから生まれたのは間違い無い。

相手が若いだとか、実力が低いだとか、そんな拍子に終戦の近さを感じさせる。

嬉しくもあるが、それ以上に悲しくもある。

 

ぼそぼそと口が動くのが分かったが聞こえない。それでも口が見えていれば何を言ったか分かるが、それも不可能だ。

マスクをつけていて、口の動きが分かりにくいようになっているからだ。

マスクをつける忍びはそれなりに居る、解毒薬等が付いていたりする場合が多いが、そうでなくても読唇を防ぐ効果がある。

さらに、急所の顔を少しでも守れるということも大きい。呼吸のし辛さは、鍛えていれば問題にならない。

それよりも、口を使う術を使うのに向かない事が欠点だ。口から泥出したり突風起こしたり、火を吐く一族もいる。

 

口を動かしたの年長の忍びである事、若い二人が不服そうな顔をしている事、手を握り締め、歯を強く噛んでいる事。

恐らく、逃げろ、という命令だろう。ますます優秀な隊長だ。ここで殺すのが惜しくなるほどに。

それでも、命を賭けて足止めしようが、無意味に終わる。

八門を開放していないヒノデを足止めできる実力はあるだろう。

だが、第三門、あるいは第四門・傷門まで開放すれば、三人纏めて殺せるはずだ。

 

敵が印を結び始める、それと同時に傷門まで開放する。体が熱を持ち赤くなる。血管が浮き出、体毛が僅かに逆立つ。

開放し終わり敵に向かい駆けるが、印を結ぶほうが早い。

進むために蹴りつけた地面が割れ、そこから次々に崩れ落ちていく。

咄嗟に崩れた地面を蹴り上へ飛ぶ。だが、二人の忍びが勢い良く下に飛び降りて行った。

クナイを取り出し投げる。風を切り音を響かせながら進んでいく。が、崩れる地面に遮られ届かない。

地面に刺さり、取り付いていた起爆札が爆発する。邪魔に地面を吹き飛ばすが、それでも遠く、突風で体勢を崩すだけだった。

続けて、手の平で空気を打ち出し敵を撃つ。空気を叩き付ける音と共に砂煙が退いて真直ぐ道を作る。

途中、さらに降ってきた地面が遮るがそれを貫く。そして、降りていく忍びに当たる。

当たりはした、だがやはりと言うべきか、威力は落ちていたらしい、致命傷とは行かない傷を作る。

攻撃を喰らった忍び二人は、印を結び土の中に潜っていった。

 

気を切り替え、術を放った年長の忍びに落ちる地面を蹴る。

地面は岩弾となって空気を切り進むが、回避される。

その場から動いたことが原因か、目的を果たしたからか。崩壊は止まり地面はその穴を塞ぎ始めた。

地面に着地すると即座に術者の下へ向かう。接近を気にも留めず只管に印を結んでいる。

一歩でいける距離まで近づくと思い切り踏み込む。

ダンッ! という音と共に地面に罅が入り僅かにへこむ。

敵は僅かに反応したが避けられない、と判断したのか術を続ける。

既に拳の射程内であるが、さらに踏み込む。その踏み込みと同時に拳を体全体を使い前に突き出す。

打ち込む途中、拳に火が付く。圧倒的な速さによる摩擦の熱だ。

そして拳は何の抵抗もなく体を貫く。次の瞬間には足元の地面が砕け、瓦礫が飛んだ。

相手は血を吐き、咳と同時にマスクが赤く染まった。そして手を力なく下ろした。

敵に火が移り、その体を燃やし、焼き始める。

ヒノデが突き刺さった手を抜くと、そのまま仰向けに倒れた。

炎に包まれ焼かれながら、それでもマスクの上から分かる程、満足そうに、優しげな笑みを浮かべた。

白眼で、地中でも見ることは出来る、だがそのまま敵陣まで逃げるだろう。

追うだけ無駄である。白眼で逃げている二人を確認すると、最初に殺した死体を持って逃げているのが分かった。

先ほどまで残っていた穴も完全に塞がっている。それに気が付くと、燃えている死体を眺めた。

ヒノデ自身は気付かないだろうが、その顔には死体と同じような、優しい笑みが浮かんでいた。

 

 

そして。

 

既に日は暮れ、辺りで戦闘は行われていない。

灯りなど存在しない。

今更することも無いので、木の葉の夜営所に向かう。

 

地形が変わっていたり、泥で歩き難かったり、つい先日まで綺麗な草原だったとは思えない荒廃ぶりだ。

敵国の人里もすぐ其処、終戦も間際だろう。

今まで戦った場所は大体こんな荒地になった。砂の国で戦った時は最初から荒れていたが。

こんな大地でも草木は育つのか、赤い花が咲いているのが視界の隅に映る。

白眼を使うと遥か遠く、ぽつぽつとある草木が見える。

心休まるが、それ以上に人間の死体が多すぎる。赤い水溜りがそこかしこにある。

その死体を良く見ると、木の葉の者を発見した。其処へ向かう。

 

死体は三つ。スリーマンセルだったのだろう。一人で運ぶには少々辛い。

なので巻物を取り出し其処から道具を出す。

丁度人を数人並べられるような大きさの木製の箱。その箱の下、手前の方に車輪が一つ付いている。

車輪の反対側の方には倒れるのを防ぐ板が付いていて、手すりも二本出ている。

要するに手押し車である。手押し車の荷台に丁寧に死体を乗せる。

乗せ終わると押しながら歩き出す。

 

夜営所の側まで付くとなにやら騒がしい。夜襲かとも思ったがどうやら違うようだ。

詳しくは分からないが明るい様子だ。さらに近づくと、木の葉の忍び、見張りが二人近づいてくる。

ヒノデということに気付くとお疲れ様です、と挨拶を交わす。

手押し車を渡すと、運ばれていく。残った一人がヒノデをテントに案内する。

騒がしい声は此処から聞こえる。

促されるままに中に入ると皆が一つの紙を回し読みし、泣きながら笑っている。

ヒノデが不思議に思っていると、一人が震えた手で紙を渡してきた。

内容はごちゃごちゃと色々書いてあったが、要略すると

 

 

 

 

戦争が終結した。

 

 

 

 

と。書いてあった。手が震え、紙を落としてしまう。

 

「は、はは、ははは。ははははは……」

 

口から自然と声が漏れ、その場に崩れ落ちる。

 

「終わったのか……やっと、やっと……っ! あっはっははははははは!」

 

ヒノデも大きな声で笑い出す。周りと違い、涙は流さずに。誰より大きな声で。

ヒノデはその日、一睡も出来なかった。

 

 

次の日前線の忍び達は各里へ帰った。




終戦。
久々の台詞。
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