日向は木の葉にて。   作:らるいて

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おやすみ。

長い、二十年近くにも渡る戦いが終わってから、ちょうど一年が経過した。

未だに戦争の後始末が終わっていない。

終戦直後、戦争が終わった事を安堵して祝っていた人々も、落ち着いて復興に向けて活動している。

だが、墓地は未だに人で溢れている。戦争で亡くなった人と、語らいたい事はいくら時間があっても足りないのかもしれない。

多くの墓石が酒と涙で濡れ、近づいただけで酔ってしまいそうだ。

毎日人が出入りするが、それでも、だからこそ戦時中以上に墓は綺麗な状態だ。毎日多くの人が掃除をしている。

 

そして明日、戦死者を悼み弔う式典が催される。

終戦後一年、丁度一区切り付く。式典には木の葉の全ての人間が参加するだろう。

全ての人間が、友か恋人か親か子か、あるいはそれ以外の。大切なナニカを失った。

それでも時間が流れるように、人間も前に進む。

自分たちは大丈夫だと、進んでいけると、生者が死者にそう報告する場なのかもしれない。

もちろん、式典などしなくても、それぞれが墓に参るなり石碑に行くなりしている。

それでもこの式典は重要な意味を持つだろう。

この式典に深い意味を見出している人間の一人が、日向ヒノデ。

木の葉で、いや、先の大戦で最も多くの忍びを殺したと言われる存在である。

 

ヒノデは忍びを引退した。

当然、多くの者に引き止められた。それでも、里を見て回りたいと言った。

さらに戦争で何度も八門遁甲を開放したせいで体に限界が来ていることも理由にした。

家族から一年時間を貰った。

終戦後は共に過ごすと言う約束はあったが、各里の様子を見て回るためだ。

 

その悲惨さをその目に焼き付けた。木の葉は里の中でも被害は少なかったと言えるだろう。

木の葉に限らず、五大国は被害が少ないと言えた。

それ以外の国は、道の隅に屍が野ざらしにされて、鳥や鼠、虫が人までもそれを食う。

死者と見紛ってしまうような、骨と皮だけの人間。無気力に地べたに座り込む、目の濁った人間。

そんな光景も少なくは無い。かつて町があったであろう場所が荒れ果て、人一人いない場所もあった。

 

一年程度では、時間が全然足りなかった。それでも被害を見て、木の葉に帰ってきた。

式典に参加する。その後は日向の屋敷でひっそりと暮らすことになるだろう。

戦争を後世に伝えるために、書を記すのも良いかもしれない。などと考えながら。

 

 

式典は滞りなく進められた。

黙祷をして、多くのものが壇上に立ち、己の心情を吐露した。

泣いて、声が出なくて、それでも、吐き切った。

今この場に、涙を流していないモノは居ないのではないかと、そう思うほど里は涙に溢れていた。

 

ヒノデも壇上に立ち、憂いも嘆きも苦しみも怒りも悔しさも、全て吐き出した。

誰より苛烈で痛ましく哀れでそしてやるせない、そんな告白も多くの人々に伝わり心を打った。

それでも、声を枯らして叫んでいても、顔をどれほど歪めていても、その頬を濡らす事はなかった。

 

式典も終わり、家族と共に屋敷に帰り着く。

そのまま自身の部屋へ戻り、筆を取るつらつらと、戦争の悲惨さを書き綴る。

いつのまにか、筆を持ったまま、机に突っ伏すように眠っていた。

 

 

 

 

日向は木の葉にて最強である。

それは私自身がそうであったから、少なくとも私においては当てはまる。

二度目となる大きな大戦で私は最初の数年、目覚しい活躍を上げた。

自国はおろか、他国まで、己より強い存在など存在しなかった。

故に私は慢心した。傲慢で、愚かだった。

 

その愚かさに仲間を失うことで、ようやく気づき、自身の愚かさを呪った。

何でも出来ると思い込んでいた私は、調子に乗り、副作用の激しい力を使い、体に大きな傷を負った。

その傷のせいで本来の力を出せず、仲間は私を逃がすために逝ったのだ。

この時ようやく、戦争に、本当の意味で参戦したのだろう。

最強であっても、強くあっても、決して全能ではない、不可能などいくらでもあるのだと、気付かされた。

 

一時前線から離れ、里で人々を見た。

墓に毎日向かうのは子供から老人まで全て。友の墓に行くという忍びも居た。一緒に参った。

周りが遊ぶ中で、一人物憂げな少年。二人でしばらく話し、胸を貸した。

酒屋の隅で、騒ぐ男達を見ながら寂しそうに笑う人達。一緒に飲み交わし、一緒に泣いた。

彼らの思いを受け止めた。

 

麗らかな心地よい風が吹いていても、緑の香りがしたとしても、生臭い血と肉の匂いに変わる。

草木の生い茂る場所でも、赤茶の地面へとほんの数日で変わる。砂漠では綺麗な砂が赤黒く変色する。

死体が山と積み上げられ、纏めて焼かれる。死体に紛れられたら面倒だからだ。

まだ死にきっていない人間が、体を焼かれ肺を焼かれる痛みで、この世のものとは思えない凄絶な叫びを上げる。

決して心地よいものではないその叫びが、毎日のように戦場に響く。

 

戦いに疲れて自殺する忍びも居た。

目に隈を作り血色のない白い肌で焦燥しながら存在しない幻覚を見、幻聴を聞く。

一応書いておくと幻術ではない。白眼で確認したのだから。

彼は壊れたように笑いながら自身の首を掻っ切った。

どんな断末魔の叫びよりも、狂いそうだった。

 

終戦が近づくに連れて、戦場に若い姿が増えた。

そんな彼らも、いや若いからこそ他のモノより多く死んでいった。

積み上げられる死体は、若いモノが増えていた。

教え子を逃がすために命を賭けて足止めをして来た忍びが居た。

結局殺しきれずに、逃がしたが、悪い気持ちはしなかった。

 

終戦の連絡が届き、仲間と抱き合い喜んだ。

思わず崩れ落ち、乾いた声しか出なかった。

周りが涙を流すのを見て愕然とした。私は涙が出なかった。

それを隠すように誰より大きな声で笑った。

 

 

 

戦争を経て、私は■■てしまったのだろう。

どれほど■を■さぶられる■があっても、■は■なかった

もし■が■を■せ■とすれ■そ■は、■■を■に■れ■■が■う■■■――――――

 

 

死因は暗殺とも、過労とも言われている。

一つだけ確かなことは、

 

 

日向ヒノデは願いながら眠りに付いた。




だが、この僅か数年後、第三次忍界大戦が――――

完。
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