殺し合いで始まる異世界転生   作:117

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ノリと勢いで書き上げました。
シリアスな場面が多いかと思いますが、お付き合いいただければ幸いです。


1章 殺し合いで始まる異世界転生
001話 転生前


「あ?」

 唐突に覚醒した意識が混乱する。

 自分が直前まで何をしていたか思い出せない。眼前には真っ白な世界、真っ白なだけの世界。

 そこで唯一色があるのは、ふと目を向けた先にいつの間にか居たスーツの男。こんな場所でなければただのサラリーマンかと即座に記憶から消去されてしまいそうな没個性な人物だった。だが、他に何も存在しないこの空間では唯一の自分以外の存在である。記憶に留まらない訳がない。

「やれやれ。ここまでですか」

 何故か落胆したように呟くスーツの男に、困惑気味に口を開く。その態度にさらにこちらは困惑してしまう。

「あの……」

「ああ、結構。(ワタクシ)、見た目通りに無駄は嫌いなのです。

 結論から申し上げますと、貴方は若くして死に、異世界へ転生する運びとなります」

 もちろん、貴方が望めばですが。そう付け加えるスーツの男。

 だが、死んだ実感がない身としては、唐突にそう言われても困るというもの。

「俺が…死んだ?」

「ええ、死にました。死ぬ際の痛みや恐怖、記憶などを遺してはこの場での会話で手間がかかるので、その辺りは消去(デリート)させていただきましたが。

 まあ、それはこちらの勝手な判断と思惑。返せと言えば返しますよ?」

「……」

 背筋にツーと冷たい汗が流れる。

 人が死ぬ際の痛みや恐怖などを、路傍の石が邪魔だから除けたと同列にのたまうスーツの男の精神性にこそ恐怖する。転生という言葉を簡単に軽薄に使うあたりからして、完全に普通とは違う。生死を扱うのに手慣れた感覚が、もはや恐ろしささえ感じさせる。

 このような話はフィクションではよく聞くが、その際に現れる所謂『神』と称される存在とは根本からして違うと感覚で理解できた。

 だが。一応の礼儀というか、確認として聞いてみる。

「アンタは、ええと…神様とかいうヤツなのか?」

「ハァ…。よく問われますね。神とでも悪魔とでも、何とでも呼んでいただいて結構ですよ。強いて言えば超越者という呼称が(ワタクシ)は気に入っておりますが、これは個人の嗜好の範疇ですので強制は致しません。

 重要なのは、死んだ身である貴方を転生させた上で特殊能力を付随させる事を可能とするのが(ワタクシ)である、その一点です」

「…何故、俺を?」

 これがどこかの物語であるなら、神様が間違った命を消してしまったからそのお詫びにとかいう言葉を期待するのだが。このスーツの男からそんな慈しみに満ちた言葉を期待するのは間違っている。ビジネスでやっていますという雰囲気がありありとしているからだ。

 それを隠そうともしないスーツの男は淡々と告げる。

「まあ、見込みがありそうだからと言っておきましょうか。貴方が死んだことに(ワタクシ)は関りがありません。死んだ者を見定める内の中でこれはと思った者に声をかけているだけです」

「ハ。なんか、北欧神話の戦乙女(ヴァルキリー)みたいな奴だな」

「そうそう。そういった感性が(ワタクシ)好みですので」

 言った言葉はさらりと流される。

 どうにもまともに対応されているという感覚がなく、正直な事を言えば雑に扱われているのだろう。

「他に聞きたいことが無いなら話を進めますよ。

 これから貴方が転生する予定の世界はH×H(ハンター×ハンター)の世界、といえば通りがいいでしょうか。

 産まれながらに念を使える存在にして、(ワタクシ)からも貴方が望む特殊能力を一つ授けましょう。

 これは他者の発想を元にした能力でも結構ですし、貴方が考えた能力でも結構。願った能力を授けます。ただし、それは貴方という人間を寄る辺とするので、強力過ぎる能力を付随させても必ず歪みがでますのでご留意下さい」

 淡泊が過ぎる説明にどこか現実感がない。

 しかし分かる事もある。このスーツの男はタダでそれを渡すお人よしではないという事だ。明らかに何か裏がある。

「デメリットは?」

「そこに考えが及びますか。話が早くて結構です。

 (ワタクシ)が望むのはただ一つ、ある一人の人間を殺していただきたい」

「意味が分からない。アンタが自分で殺せばよさそうな話じゃん。なんでわざわざ俺を生き返らせて、特殊能力を授けて、一人を殺させようとする?」

 H×Hはそれなりに詳しいが、この神と呼ぶのに問題がない能力を持つスーツの男がこんな手間をかけるとは思わない。

 それこそキメラアントの王どころか、暗黒大陸の何某だって滅することができそうだ。逆に言って、この男が殺せない存在を、たかが特殊能力を持った一個人がどうにかできるとは思えない。

 そんな考えが見透かされたのか、スーツの男が笑う。ぞわりと嫌悪を覚える笑みで嗤う。

「それではゲームになりませんので」

「え?」

「殺していただきたいのは、もう一人の転生者。貴方以外に特殊能力を与えられたもう一つの異分子。貴方にはその人物を殺害していただきたい」

「……! クソ、さしずめ、暇を持て余した神々の遊びってか」

「遊びではありません。ビジネスです。最も、(ワタクシ)如きの末端ではどのような利益が出るのかさっぱり理解できませんが。

 お察しとは思いますが、(ワタクシ)はただのスカウトマン。これはと思う人間を見つけ出して、同じような商売敵を上回る事を目的としています。

 もちろん過剰に手を加えることは厳禁。平等条件として貴方と同じ世界から連れてきた魂である事と、その世界の能力――この場合は念を習得させることは認められています。それ以外に誰を選ぶか、そしてどのような特殊能力を与えるかは個々人の判断に任されるのです」

「……オーケイ、分かった。アンタが、アンタたちがそういう類の神様だっていうのは理解した。で、他にルールは?」

「相手が死ぬまで異分子への殺意を途切れさせない事。これを忘れた瞬間、貴方は強制的に『負け』となり、死ぬ事になります。

 逆に言えば、これさえクリアすれば自由自在。原作への関与、特殊能力を使った横暴、世界の支配。これら全てを我々は黙認します」

 考える。

 これは緩く、そして厳しい条件だ。流れが決まった一つの異世界への、二つの異分子の介入。すなわち、原作にない現象は自分か相手かのどちらかに限定される。下手に歴史を引っ掻き回す行動を取れば、自分の存在を相手に気取られてしまうだろう。

 故に流れを変えない事が基本となるが、そうなるとお互いにいつまでも相手を見つけられない。だが、介入しやすい場面というのは存在する。それは言うまでもなく原作だ。そこは介入しやすく、また一方的に監視できれば相当な優位に立てる。だが、それを監視しやすい立場にいるというのがまた難しい。

 例えばH×Hならゴンたちのハンター試験などが挙げられるが、そこにヒソカやイルミ以外の念能力者がいれば介入者である事はほぼ確定であるし、ハンター試験を一方的に監視できる立場というのも普通ではない。シングルハンターですら試験官に留まることを考えれば、おそらく十二支んクラスの発言力は必要になるだろう。どのような特殊能力を得たとしても現実的ではない。

 特殊能力もそうだ。索敵に重点を置くか、見つけた相手を確実に葬れる能力にするか、はたまた転生先でアドバンテージを取りやすい能力にするか。デスノートのように尖った能力にすれば汎用性は失われる。あそこは念能力者が最低ランクの世界であるからして、場合によってはあっさりと殺される可能性も否めない。ゾルディックや幻影旅団に狙われれば、念能力だけでは死は免れないだろう。

 これはもはやお気楽な転生物語ではない。漫画の名前に相応しい、相手を狩るハンティングバトルだ。

「産まれる時間や場所は決まっているのか?」

「時間は1979年に限定させていただいております、原作開始時には二十歳になりますね。数ヶ月のアドバンテージはあれど、極端な差異は生まれにくい。

 場所はメビウス湖の内側で固定、両親が人間である以外は運です。魔獣などに転生することは有り得ません」

「産まれた瞬間に相手を呪い殺す能力にはできるか?」

「それを選べば反動で貴方も死にますね。自分の都合のいい能力程、デメリットも大きい。奇しくも転生する先である念能力を想定していただければいいかと」

 その言葉を聞いた瞬間、閃いた。

「ならば訓練や成長によって能力は強化されるのか?」

「お察しの通りです」

 ならば産まれた瞬間から最強である必要は皆無。相手も同じ時期に産まれる事を考えれば、早くて12歳で遅くとも15歳くらいで実用可能な範疇であればいい。

 その中で、特に戦闘に特化して他にも融通が利く能力。もしもこれができるなら最高ではないかという願望を口にする。

「サーヴァントを使役する能力を選びたいけど、それを選んだらどのような不利益が存在する?」

「……サーヴァントとは、FGOに代表される聖杯戦争の使い魔を指す認識でよろしいですか?」

「ああ。そのサーヴァントだ」

 首肯する俺にスーツの男は僅かな時間、熟考する。

「そうですね。では、貴方の魂に聖杯が付随されているという特殊能力を与えましょう。

 貴方の魂が聖杯であるから、呼ばれたサーヴァントは基本的に貴方に服従の身となる。もちろん、願いを叶える聖杯がないから使役できるサーヴァントには制限があるでしょうから、上手く扱って下さい。そしてマスターの扱いになる以上、それを使役する為の令呪も付随されます。これは初期ならば一年に一画程に回復するかと。

 また、基本的に召喚できるサーヴァントは一体ずつのみ。種類の制限はないですが、強力なサーヴァントである程消耗は激しく、出力と現界時間に制限があると思ってください。

 他にも細々とした事はあるでしょうが、今の時点で確実に言えるのはこのくらいでしょうか」

「連続して召喚できる時間は? どのくらいのインターバルで再召喚できる?」

「産まれたばかりならば、低コストのサーヴァントで5分。魔力が底を尽きれば1週間は回復に時間がかかりますね。産まれた場所によっては、即座に詰みます」

「だが、生き延びられる環境ならば能力は強化されていく」

「その通りです。ですが、成長には環境の影響が大きい。どのくらい成長するかはなんとも言えませんね」

 十分だと思う。そもそも同条件の相手もこちらを殺しにかかってくる状況で、完全すぎる攻略法などある訳がない。産まれはまともだと信じる他ないし、多少のリスクは負うべきだ。

 能力としては相対した時に相手を殺害する事は前提にしているが、サーヴァントという優位性はそれに留まらない。索敵や暗殺にはアサシンが使えるし、追跡や逃走にはライダーが使える。真っ向勝負ならばセイバーやランサーの独壇場だし、搦め手ならばアーチャーやキャスターが有用だ。

 心配なのは相手も同程度の特殊能力を持っているということだが、こればかりは心配しても仕方がない。相手だって真剣にこちらを殺しに来るだろう。

 ならばするべきは、手の内が分からない相手の対策よりも自分の強化だ。その点、この能力以上は自分には思いつかない。

「決まりだ。その能力をくれ」

「やれやれ。特殊能力を与えてくれる相手への敬意が足りないようだ」

「そっちだって俺をゲームの駒扱いだろ? 敬意なんて持てねぇよ」

 返した言葉にスーツの男は薄く笑う。

「まあいいでしょう。では、これが最終決定でよろしいですか」

「あ、念はどうなるんだ? 系統とか」

「纏が使える事のみ確定です。それ以外の干渉は致しません」

「分かった、それで十分だ」

「では、これまでに述べた内容で契約するとハッキリと口で申して下さい」

「今まで話した内容で、俺は転生に同意する」

「――結構。では、これにて決定すべきは全てです。

 良い人生を」

 スーツの男がそう言うと同時、俺の意識は急激に薄れていった。

 これから新たな人生が始まる、特殊な能力を持った超人として。それに少なからず、興奮した心を携えて。

 

 

 

 

「産まれた、産まれたぞ!」

「おお、元気な男の子だ」

「天に居まわす神々よ、この地に新たな子を授けて下さったことに感謝いたします。

 我々は新たなクルタ族を、喜びを以って迎え入れます」

 

 あの、スタート地点がちょっとハードモード過ぎやしませんかね?

 

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