殺し合いで始まる異世界転生、その最終話を投稿させていただきます。
どうかお楽しみいただけると幸いです。
唐突に。
バハトは己の左の眼窩に指を突っ込み、その眼球を抉り出し始めた。
「っぅぅぅぅ!!」
呻き声をあげながらぐちゅりと己の眼球を掴み、ブチリと聞きたくもない視神経が千切れる音を頭蓋に響かせながら、バハトは己の視力を己自身の手で喪失させた。
ベタベタし過ぎて怒られたピトーが部屋の隅でしゅんと落ち込んでいただけの静かな時間が流れていたバハトたちのアジトだが、バハトの凶行で一気に場が緊迫する。
何も聞いていなかったピトーが最愛の人の唐突な自傷行為に総毛を立たせて戦慄するが、話はこれで終わらない。バハトの行動の意味を理解したレントが即座に後に続き、バハトと同じように自分の眼球を繰り出す。
「……」
バハトと違い、顔を歪めるだけでそれを為すレント。そんな夫と息子を見てポンズの顔色が青褪める。
ピトーと違いポンズは説明を受けている。悲痛な顔をしつつ、有り得た可能性としてこの光景の覚悟はしていた。とはいえ、幸せそうな顔で寝こけている
今夜のポンズの役目はレントの燃料係である。彼女はじっとしておく以上に役立つことはない。唇を嚙みしめて現状を見続けるしかない。
「「
2人の言葉が重なる。くり出されたそれぞれの眼球が歪に膨らみ、そして己自身の分身となる具現化された念人形となった。
新たに創り出されたバハトとレントは、アジトを一顧だにせずにボロ家を飛び出していく。
目指す先は言うまでもない、宮殿だ。
「……負けたのね」
暗い顔でポンズが言う。元から隻眼だった2人は共に虚ろな眼窩から赤い涙を流している以上、ポンズの表情を見ることはできない。
しかし、その声があまりにも悲壮に満ち満ちていた以上はその感情は伝わってくるというもの。真っ黒な視界の中でバハトが頷いた。
「ああ。アルトリアはメルエムに敗れた」
勝っていた勝負だった、たかが数万の人間を犠牲にすれば。バハトからすればメルエムの命を獲れるのならば必要な犠牲だと言い切れるが、判断したのは騎士王であるアルトリア。たった一人の少女の為に戦場に向かった彼女が、数万の無辜の民を犠牲にする決断をする訳がない。
バハトは己の腕を握る。そこに刻まれたのは、最後に残った1画の令呪。もしもあの時に令呪を使えば、メルエムを抹殺することも可能だっただろう。
(…………)
だが、できない。残った令呪の使い道は決まっている。たった一人の命を繋ぐために使うべきそれを、メルエムを殺すことに使えなかった。
何のことはない。バハトにとって数万の見知らぬ人民よりも、一人の家族の幸せを紡ぐ方が大事だったのだ。
「ピトー」
「ハッ!」
バハトに名前を呼ばれたピトーが彼の傍に傅く。見ることもできないまま、バハトはピトーに命じる。
「俺の眼球を復元した後、クルタの眼球も復元しろ」
「仰せのままに」
そう言ったピトーは遅滞なく能力を発動させる。修復を含めた生体操作を可能とする
それだけで痛みが少し収まったバハトはほっと安堵の息を吐いた。
「クルタ、すまん」
「いいよ。いざっていう時には父さんの方が強い。強化系だしね」
キシシと瞳のない顔で笑うレント。特質系である彼より、強化系でもあるバハトの方が地力が高い。
万が一の時には1秒でも長く時間を稼ぐ必要がある以上、バハトの方を早く治癒するのは当然の判断だった。
それでも仲間である息子に対して罪悪感を覚えない訳もなく、バハトの口から謝罪の言葉が発された訳であるが。
「さて」
仕切り直す。
理想的な展開とはいかなかったが、起きた事態に対して最善手は取れている自覚はある。
まず明確な事実として、アルトリアはメルエムの命を獲れなかった。これは動かせない。
「次に注釈するのは、王は薔薇の毒によって死ぬのか否か」
ポンズが誰にも見られないまま、難しい顔をして言う。
バハトが知る物語では、メルエムは薔薇の毒によって死んだ。レントが辿った歴史では、メルエムは薔薇の毒を生き延びた。
彼らがメルエムの生存条件として勘案したのは3点。ネフェルピトーの
現状。ピトーは操作した上でこの場におり、ポンズも健在。トトに至ってはバハトが捕食した。予想した全てに対処できている現状、今からできる事は何もない。
「確認しておくけど、トトにはメルエムを救う手段はあったのかしら?」
「あった」
答えた言葉にポンズとレントの背筋が凍る。
「
「つまり」
「ああ、つまり薔薇の毒を肩代わりすることがトトには可能だった」
そう言いつつ肩を竦めるバハト。彼が誰かに忠誠を誓うことは考えにくく、トトから奪った
このように念能力というのは自分自身にカスタマイズされているケースが極めて多い。多くの念能力を集積しようが、使い勝手が良い能力というのはあまりないものである。
それよりか、護衛軍のオーラを丸ごと吸収できたことこそバハトにとって何よりの収穫である。
「現状、メルエムの生き目は考えうる限り全て潰した」
緊張の色を消さずにバハトが言う。
「だから、予定通りの監視ね」
バハトとレントのデコイを放った意味はここにある。知りえたあらゆる念能力を使いこなせる2人のコピーがいるとどうなるか。
答えは
これで可能な限り、メルエムの監視をしようという策である。
「これでメルエムが死ねば良し」
「……もしも、死なないのなら」
バハトの意識とポンズの視線がレントへと向く。
それを敏感に感じ取った彼は、それでも軽薄に笑った。
「あひゃ。分かっているさ、ボクの行く道がなくなるってね」
「「…………」」
「そう落ち込むなよな、父さんも母さんも」
瞳がないまま、レントは優しく笑った。
「覚悟してこの時代に来たんだ、悔いはないさ。
ボクを、レントを、父さんと母さんの息子を、どうかよろしく頼むよ」
◆
パチリ
パチリ
パチリ
感じられる息遣いは、たった2人のみ。
「4-5-1 忍新」
「5-5-2 砦」
「7-1-1 兵」
「7-1-1 騎馬新」
「――詰み、だな」
勝てなかった、ただの一度も。その充足感を得たまま、メルエムは小さく微笑んだ。
「はい。ワダすの勝ちです」
誇らしげに胸を張るコムギの姿、その全てが愛おしい。
許されるならばいつまでも軍儀で最愛の少女と戯れていたかった。
(いつまでも、いつまでも)
けれどもそんな奇跡のような時間はもう終わり。薔薇の毒に蝕まれた己自身の指先が、ほとんど動かない事を自覚しつつある。
「コムギ」
「はい」
「少し、眠る」
「はい」
「側にいてくれるか?」
「はい。もちろんです」
「いつまでもお傍に居させて下さい。メルエム様」
いつまでも、いつまでも。
いつ、までも。
◆
「――もう、いいだろう」
「だね」
力なくコムギに寄りかかり、その膝を枕にして体を横たえるメルエムを確認したバハトとレントはそう判断する。
護衛軍は全滅した。プフとユピーは毒で死に、トトはバハトに喰われ、そして操作されたピトーは悲痛な顔でバハトたちの傍に控えている。
建国記念大会での死闘から、1日と少しが経過しようとしていた。この時点まで毒に冒されながら生き続けたメルエムの生命力は流石であるが、もう逆転の目はない。結局はバハトの知る物語の結末を迎えた、という訳だ。
本当ならばメルエムが死ぬまで見届けたかったが、メルエムが死んでからでは遅いのだ。
「待たせたな」
「本当にな」
余裕のないイライラとしたキルアに睨みつけられてバハトは苦笑する。
無理もないと、他ならぬバハト自身がそう思っていた。あまりに酷い状態であるゴンを見た時はバハトも絶句したものだ。そんな彼を迷うことなくノヴの元まで運び、
しかしそうまでしてゴンの命を助けたキルアに明るい表情がない。それもまた当然で、ゴンが治る見込みがまるでないのだから。
更にその上、バハトはメルエムの死を確信するまではゴンたちの仲間には戻れないと言い切ったのだ。
◇
「理由は?」
「――誰よりも大切な、俺の息子のため」
◇
真摯に頭を下げるバハトに、キルアはそれ以上の言葉を飲み込んだ。
飲み込んで、キルアは自分ができる事をやった。シュートの見舞いに、モラウやノヴと情報を共有してゴンを救う手を社会的にも探すこと。
キルアたちの仲間であるパームがメルエムの死までを監視し、そんな彼女を気遣うイカルゴやメレオロンに差し入れもした。無傷に近い状態で戦いを切り抜けたキルアの仕事は膨大だった。
そして今、もう間もなくメルエムが死ぬから話がしたいと言ったバハトの元に訪れていたのだ。一緒に来たのはナックル。
バハトの傍には、彼の妻であるポンズと妹であるユア。それから胡散臭いクルタ族であるクルタと、そしてバハトが操作したというネフェルピトー。
彼らはもはや廃墟と言っていい激戦地となった宮殿を臨む崖の上に立っていた。ふと空を見れば、東の空に微かな藍色が見える。
夜明けは近い。
「説明してもらうぜ」
「当然だな」
頷きながら、バハトは口を開く。
「まずは明確にしておこう。クルタの正体は未来から来た俺とポンズの息子であるレントだ」
「先に説明した通り、ボクの名前は呼ぶなよ?」
名を呼ばれたら、レントはその相手の命令に一切逆らえなくなる。己の全てを依存して操作権を捧げる念能力。そこまでのリスクを負わなければ、過去の世界で何か月と行動することはできなかった。
先にその説明を聞いていたキルアにユアとナックルは神妙な顔で頷く。現在の操作権を持つバハト以外はレントの名を呼ぶことは許されない。
「レントの知る未来では、王の討伐に失敗した。それによって王はその血脈を世界中にバラ撒き、キメラアントによって世界は大混乱に陥ったんだ」
「マジで滅亡する3歩手前、みたいな?」
あひゃひゃと笑うレントからは悲壮感はない。しかしそんなレントの悲壮感の無さを痛ましげに見つめるポンズの手前、全ての言葉は吞み込まざるを得なかった。
続けて口を開くのはそのポンズ。
「私たちの息子は、全てを懸けて過去へとやってきた。歴史を修正すれば、元の世界に戻ることもこの世界に留まることもできず、虚空に消える。その覚悟を持って」
「…………」
兄であるバハトも、自分自身も。命を助けられたユアは黙り込むしかない。レントが来なかったら兄妹諸共無残に死んでいたという事実を否定しても始まらない。
無論、目の前の成人男性がついこの間見た甥っ子と重なる訳ではない。だが、家族ではないが彼は恩人ではあるのだ。
そんなレントが、ユアの大切な命を救うだけ救って消えていく。どれはどこか勝ち逃げされるような後味の悪さをユアに与えていた。
「――無論。父としても、命を助けられた借りがある者としても、それらを見過ごす訳にはいかない」
「じゃ、どうするんだ」
呆れたように言うナックル。時間を超越してやってくるだとか、流石に話がデカすぎる。個人どころか、人間社会として頑張ればどうにかなるという範疇を大きく超えているといっていいだろう。
どうあがいても救えない者は救えない。言外にゴンのことを言われたようで、キルアは誰にも気が付かれないように奥歯を嚙み締めた。ナックルの言葉にそんな嫌味は当然なく、これはただの自分の被害妄想だと。
そんなキルアをさておいて、バハト薄くそして美しく笑みを浮かべる。
「捧げよう」
「何を?」
「俺の、最強を」
バハトの言葉が理解される前に、バハトは朗々と呪文を唱え始めた。
素に銀と鉄
礎に石と契約の大公
祖には我が大師シュバインオーグ
降り立つ風には壁を
四方の門は閉じ 王冠より出で 王国に至る三叉路は循環せよ
始まりには怪訝があった、バハトは何を口走っているのかと。
しかし、ああしかし。言祝ぐ声が進むにつれて、周囲の様子が明らかに変わる。ナニかは分からないが、この場に濃密な気配が漂い始めている。
繰り返すつどに五度
ただ、満たされる刻を破却する
気配はより重厚になり、今にも叫びだしそうな気配が満ちて溢れて荒れ狂っている。
キルアとナックルは強い困惑と警戒を浮かべながらバハトのことを注視していた。彼らが落ち着けている要因の一つに、ユアとポンズの存在がある。
彼らの仲間である彼女たちは、なんら警戒を露わにすることなくバハトを見守っている。
だからきっと、これは仲間を害する事柄ではないのだろうと信じられていた。
セット
――告げる
汝の身は我が下に 我が命運は汝の剣に
聖杯の寄るべに従い この意 この理に従うならば応えよ
誓いを此処に
我は常世総ての善と成る者 我は常世総ての悪を敷く者
気配と呼ぶのも烏滸がましい、オーラとはまた違うエネルギー。ただただ溢れ続けていたそれが、急速に指向性を持って動き出していた。
溢れ出て流れ出たそれらはバハトの眼前を目指し、渦を巻きながら収束していく。
これほどまでに存在感が高いものが集合していく有様は、それの固体化を幻視させる。それと同時に
止めるには遅すぎた。そう思いつつ、キルアとナックルは眼前の異常を眺め続ける事しか出来ない。
汝三大の言霊を纏う七天
抑止の輪より来たれ――
「――天秤の、守り手よ」
長い呪文を唱え終わった瞬間、集合した
1分ほどの濃密な時間が終わった時、そこには一人の男の子がいた。金髪で黄色いマフラーを巻いた、キルアどころかユアでさえ見下ろすくらいに小さい男の子が白い服を着て立っていた。
あれほどの異常を経過して形作ったとは思えない程にふわりとした笑みを浮かべた少年は、自己を謳い上げる。
「エンゲージ。フォーリナーのサーヴァント、真名をボイジャー。参上したよ」
どこまでも場違いに言うフォーリナーのサーヴァント、ボイジャーの頭をくしゃりと撫でるバハト。
「ボイジャー、召喚に応じてくれて感謝する。
過酷な運命を共に背負ってくれる君に、敬意を」
「うん。道具であり兵器であるボクたちを、ヒトとして扱ってくれるキミだからこそだよ。
それに、ボクは今回の航海も楽しみなんだ」
無邪気に笑みを浮かべるボイジャーにもう一度笑いかけたバハトは、呆気にとられるキルアとナックルに顔を向ける。
「これが、俺が隠していた最強の能力だ。
異聞伝における英雄をそのまま具現化し、使役する。彼らの能力は俺程度を遥かに凌駕している」
「――まさか。リショブンや、エミヤも?」
「察しがいいな、キルア。その通り、李書文やエミヤも俺が具現化したヒトガタだった。俺よりも強い彼らが俺に従って手を貸してくれていたのは、このカラクリがあったからだ」
驚きながらも高速で思考を回すキルアにバハトは称賛の言葉を贈る。
一方で立ち直ったナックルは、それでも疑問が浮かぶ。
「で、そのスゲェ能力が今何の役に立つんだ?」
「ボイジャー、彼の最大の能力は異界渡り」
基本的にサーヴァントは
例外こそがフォーリナーのサーヴァント。彼ら彼女らは
たった一人、ボイジャーを除いて。彼は地球産のサーヴァントであり、地球から外に旅立つ宇宙船の概念が結集したサーヴァントである。
もしもこの世界から旅立つサーヴァントを選ぶなら、それはボイジャーをおいて他にいない。
「レントは間もなくこの世界から弾き出される。その運命は覆せない」
「その前に自分の足で出て行ってやろうっていうんだ。潔いだろ?」
あひゃひゃと嗤うレント。真っ暗闇だった未来に道案内ができただけで御の字である。
どこともないトコロへと消えていくのが怖くなかったといえば噓だから。必死になって
「それでも」
割り込んでボイジャーが口を開く。
「それでも、ボクは自分一人しか異界へと渡ることしかできないんだ。
それが小さな小さな誰も乗らない宇宙船という概念から出来たボクの限界」
ウチュウセン? と聞きなれない言葉に首を傾げる者もいたが、動き続ける状況が疑問を留め置くことを許してくれない。
バハトは己の腕を掲げ、朱く光る絶対命令権を提示する。
「――だから」
「そう、だから」
「お別れだ、俺を支えてくれたサーヴァントたち」
惜別を表に出しながらそう宣言したバハトは、覚悟を決めた表情で令呪を使う。
1画目はメディアに命じてノブナガの記憶を吸い出した。2画目はクーフーリンの宝具を発動するのに使った。最後の3画目を、今ここでボイジャーに捧げる。
「最後の令呪を以って命じる! ボイジャーは我が魂に宿りし聖杯を摘出し、願え! レントと融合してデミ・サーヴァントに成ることを!!」
朱色の輝きが消えると同時、ボイジャーはバハトの胸に向かって腕を突き出す。ボイジャーにその能力はないが、サーヴァントは基本的に霊体だ。令呪の後押しがあれば魂に干渉することはできる。
そしてボイジャーは令呪で命じられた通りにバハトの魂に腕を突っ込み、その魂と融合した異物である願望器の聖杯を、ブチブチと引きちぎる。
「ぁがああああああ!!??」
これにたまらないのはバハトである。自分の魂が引き裂かれる異常な感覚に激痛の声をあげた。
ユアとポンズはそんなバハトに心配の視線を向けるが、しかし止めることはできない。これは父が息子に贈れる精一杯の餞なのだから。
バハトの主観では気が遠くなるような数秒を経て、彼の胸から引き抜かれたボイジャーの手には光り輝く盃が握られていた。
その願望器を胸に掻き抱き、ボイジャーは祈るような願いを捧げる。
「――どうか、ボクとキミの旅路に幸があらんことを」
願いを聞き届けた聖杯によって、ボイジャーは聖杯ごと光り輝く粒子に変換され、それはレントへと向かう。
覚悟の据わった目でそれを見るレント。説明は受けていた、次は自分の番であると。
「ぎゃあああああああぁぁぁぁぁ!!」
レントが、数多の地獄を潜り抜けざるを得なかったレントが。我慢できない程の違和感と自分が変わる恐怖に叫び声をあげた。
デミ・サーヴァントになるとはそういうこと。ある意味で人間でなくなるに等しいことだから。
しかしとある歴史で科学と魔術によって手探りのように調整されていった少女とは違い、今回は聖杯という願望器によって強制的に願いは叶えられる。またもほんの数秒で、苦悶の時間は終わった。
「…………」
「…………」
僅かに、沈黙。
「レント、どうだ?」
「うん、大丈夫。思ったよりずっと、ボクの体に馴染んでいるよ」
今のレントはレントではある。しかしそれと同時、ボイジャーも混ざっている。今までの皮肉屋な様子は鳴りを潜め、純粋無垢な面も大きく表れていた。
そして、レントは覚悟を決めた表情でバハトと、そしてポンズを見る。
「時間がない」
「――メルエムが死ぬ、か」
「うん。なんとなく分かるんだ。ボクがこの世界に居られる時間は数分もないって。
弾かれる前に自分から旅立たなくちゃ、どこに飛んでいくか分からない」
そういってふわりと宙に浮くレント。ボイジャーのスキルであるスイングバイを使い、全員が見える位置に移動する。
やり切った顔の父。心配そうな顔の母。それから、この場の流れについてくれてこれていない多くの人たち。
「みんな、バイバイ」
「いってらっしゃい。私の、自慢の息子」
「――よい旅を、な」
レントが消える直前、朝日が昇る。暁に見送られるレントは、よい旅になりそうだと満面の笑みを浮かべた。
そして、まるで最初からいなかったようにレントが消える。
旅立ったのだ、この世界から。新たな自分が根付くことができる世界へと向かって。
一つの話が終わる。
これは、神と呼ぶにふさわしい存在から力を授かった2人が殺し合った物語。
その果てに、奇しくもその両方の力を身に宿した青年がこの世界から旅立った。
紅い瞳にはあらゆる念能力を扱える瞳を宿し、全身には世界を守る精霊に等しい存在を羽織って。
そして、物語は続いていく。
「待たせたな、キルア」
「さあ、ゴンを助けに行こう」
今一度言わせて下さい。
皆々様方。長らくお付き合い頂き、本当にありがとうざいました。
これにて『殺し合いで始まる異世界転生』を
なぜ
それは続く選挙編まで書くことを決意したからでございます。
しかしながら、当初の予定では3章でこの物語で描きたいことは全て書き終えるつもりで、その心持ちは今でも変わっておりません。
続けるか、終わらせるか。どちらにするか。
決断したのは一つの感想、迷っていた時に贈られた言葉。
この物語が大好きだと、応援していると。
純粋にこう言われては、プロットが思いついている選挙編まで書くのがいいかなと、そう思ったのです。
つまりですね。
みんな! 大好きな作品には素直に応援した方がいいぜ! マジで!
今回みたいに作者がやる気になったりするから!
さて、それはさておき。
それでもこれが一つの区切りには違いありません。
次話は『あとがきと基本設定などなど』と称して、本編で語ることができなかった設定などを提示していきたいと思います。それが終わったら、この作品の全体的な見直しを。
その後に『断章』とでもして、選挙編を書いていこうかな。そう思っています。
現在の私は、二次創作の他にオリジナル作品にも力を注いでいます。
それでもあらゆる創作には全力を出していきたいと、そう思っておりますので。
どうか、お付き合い下さる皆様。
これからも、殺し合いで始まる異世界転生だけでなく、私の作品すべてをどうかよろしくお願いいたします。
もうひとつオマケに、レントの次の世界はどこがいいですか?
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最初に想定したアルスラーン戦記
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妙に世界観がマッチする新作のバーサス
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ほのぼのとしたラブコメ時空
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っていうか選挙編を書け