殺し合いで始まる異世界転生   作:117

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ゆっくり、リハビリを兼ねながら再開させていただいております。
気を長くしてお付き合いいただければ幸いです。

感想、高評価、お気に入り、誤字報告。
この場で感謝を。

それでは最新話をどうぞ。


107話 意味はなく、さりとて意義のある戦い

 

 ゴンが入院、というか延命処置をしている病院の前で険しい顔をしたレオリオと合流する。

「おう」

「おう」

 軽く言う俺と、重く言うレオリオ。

 おそらく、レオリオはゴンの状況はもう見ているのだろう。その上で医者に話を聞き、もう手の施しようがないという事も耳にしているはずだ。そうでなければここまで深刻な表情にならないはずがない。

 そしてだからこそ、深刻にはとても見えない俺に苛立ちを隠せてない。

「真剣にやってるよな?」

「当然だ。だが、重苦しくなっても意味はないだろ? レオリオがゴンを思っていてくれている分、俺は肩の力を抜いて対処をしたい」

 念の為に聞いてくるレオリオに、はっきりと俺は言葉を返す。

 確かに重く考えれば良いというものではないとレオリオも分かっているのだろう。

 レオリオは眉間の皺を緩めることなく、しかし俺の言葉を受け入れるくらいには柔軟だった。

 それから俺の傍にいるユアを見て、今度は少しだけ表情を緩める。

「おう、ユア。元気か?」

「レオリオさん、お久しぶりです」

「ハハ、年上に敬語を付けてくれるのは嬉しいが、オレたちはもう仲間だろ。もっとフランクにいこうや」

「了解です、レオリオ」

 ユアとの会話が一段落し、この場にいる最後の人物が口を開く。

「私とも随分久しぶりね、レオリオ」

「ポンズも久しぶりだな。おめーとは結局ヨークシンで会えなかったから、パドキア共和国で別れて以来か」

「ま、レオリオがヨークシンで会えなかったのはバハトともだとは聞いたけどね」

 肩をすくめながらそう言うポンズ。そんな彼女の立ち位置は俺のすぐ隣だ。

 その距離感を見て再確認したように言葉を紡ぐレオリオ。

「バハトとポンズは結婚して子供も儲けたんだってな。直接言わせてくれ、おめでとう」

「うん、ありがとう」

 女として最高の幸せを得られた、ポンズの花の(かんばせ)のような綺麗な笑みを見て一瞬だけ柔らかく目を細めるレオリオ。

 だがしかし、現状が祝福を贈るだけである事を許さない。ゴンは現代医療の必死の延命処置で命を繋いでいるが、いつその魂の灯火が消えてしまってもおかしくない状態なのだ。

 即座に表情を元に戻して言葉を続ける。

「落ち着いたらゆっくり祝わせてくれ。それで、キルアは?」

 いるべき仲間が一人足りない事は最初から気がついていたレオリオは、当然ながらその事を問いかける。

 それを聞いて、バハトは親指で病院の隣にあるホテルを示す。

「ここじゃあ誰が聞いているかも分からん。あそこの一室を借りた。盗聴はされるかも知れんが、容疑者が絞られるだけマシだろ」

 俺の言葉に表情を変えずに頷くレオリオ。

 まあ、この近くに居るとはいえパリストンもジンもどこの誰が借りているかも分からない部屋の盗聴もいちいちしているとは思いにくいが。

 それに俺は情報ハンターとしての伝手を使い、多少は情報戦の防御力の高い部屋を用意している。もちろん、故意に万全にはしていないが。

 情報を完全に漏らさないというのはとんでもなく難易度が高い。それよりかは多少の情報は漏れると覚悟をした上で、漏れても構わない情報を適度に流すのが上手いやり方というもの。

 重要な情報しか秘匿しなければ、漏れた情報は全て重要な情報となるが。なんでもかんでも情報を秘匿し、それらをジョウロから撒く水のように散らせば本当に重要な情報かどうかも仮想敵は分からないという理屈。なんなら、こちらから故意に撒いた情報か、本当に漏れた情報かも分からない。木を隠すなら森の中よりもタチが悪い防御法である。

 ともかく、情報戦の防御は鉄壁よりも適度にという方が適切なのである。

 情報が漏れた漏れないを、いちいち気にするとキリがない上に精神衛生上にもよろしくないという側面も大きいが。

 ちなみにピトーはナックルと一緒にモラウたちの方に向かって貰っている。ピトーがキメラアントである事は確かなので、今の段階ではメレオロンやイカルゴたちと一緒に居て貰い、()()()()()としての監視をいったんは受けてもらう。それから先、その()()()()()の保護を俺が請け負うというストーリーだ。

 俺から離れる時はかなり寂しげな様子を見せていたピトーは、やはりネコの遺伝子を受け継いでいるのだなぁとシミジミと感じたものだ。

 そんな事を考えつつ俺が抑えた部屋に4人で向かい、そして中に入る。簡単に盗聴器などのチェックをして、雑多な相手に情報が漏れないようにする。

 手伝いをしてくれたのはこういう事にも経験があるポンズとユアで、得意分野でないレオリオはポットに水を入れてお湯を沸かし、部屋に備え付けられている紅茶のパックを開封して用意した4つのカップに投入。そしてお湯が出来るまで待った後に注いで、話をしやすい状況を整えてくれた。

 レオリオは一人がけのソファーに座り、その右手の二人がけのソファーには俺とユアが座る。そして机に備え付けられている椅子を引き寄せてそこに座るのはポンズ。落ち着いたところで、まずはレオリオが淹れてくれた紅茶を一口。

「で」

 パックのお茶というのは品質は低いが、そういうものだと覚悟して飲むから失望することがない。加えて、素人が雑に淹れることが念頭に置かれているため、エグみや渋みが必要以上に出ることがないように茶葉が調整されている。要するに、最低の味にならないように工夫が凝らされているのだ。

「キルアは?」

 余裕綽々といった俺にイライラを隠さなくなってきたレオリオが問いかけ、否、問い詰めてくる。

 仲間の一大事に顔も見せない仲間というのは、レオリオの中で怒りを買うになんの躊躇もない行動なのだろう。電話にも出ないであろうクラピカへの心情が思いやられるというものだ。

「実家に帰った」

「……今、かよ?」

 ぴくりと瞼が動いたレオリオ。それをなだめるようにオレが言葉を繋げる。

「ゴンのことに関して、何かのアテがあるらしい。当主であるキルアの父親に会いに行った」

「――」

 それでも納得の様子を見せないレオリオに、重ねてオレが言葉を紡ぐ。

「つまり、キルアはゾルディックの切り札を得るために実家に戻った。ゴンの為に、全力を尽くしている」

「そうか、そうだよな……」

 ゴンと一番仲が良かったのは、同い年で同性のキルアだ。それはレオリオも認めざるを得ない。そんなキルアが、ここまで大変な事になっているゴンを見捨てることなどある訳がないと思い直したのが手に取るように分かる。そしてそれを僅かでも一瞬でも疑ってしまったことを恥じ入るような心の動きも、また。

 (かぶり)を振って雑念を追い出したレオリオは、今の俺たちに目を向ける。

「で、オレたちを何をする? 言っておくが、キルアを呑気に待つなんてする気はねーぞ」

「もちろんだ。第一、キルアの方法でゴンが治る保証もない」

 大真面目な顔で嘯く俺。ナニカの力を使えばゴンが治る事は分かりきっているが、俺は体面的にそれを知らない事になっている。

 となれば、俺は俺としてゴンの仲間として動くのが自然だ。

「だからこそ、幅広く大きく情報を集めるべきだと思ってな」

「どうする?」

「ハンター協会の会長になる」

 俺の言葉にレオリオの目が少し大きく開いた。だが、それもすぐに険しくなる。

「ゴンが大変なこの時に権力ごっこか?」

「権力闘争さ。金と権力は扱いに難しいが、強力だ。先々の為にも手に入れておいて損はない」

「先々?」

 頭から否定をせず、レオリオは俺の言葉を聞いて意図を汲み取ってくれる。

 こんな友思いの友を持てた事に感謝をしながら、言葉を続ける。

「ゴンの治療法を探すことが長期戦になるケースだ。俺たちが打てる手を全て打ってもゴンが治らない場合、除念師を探す事になる。

 それも世界に十指に満たないと言われる、死者の念を祓えるレベルのだ」

「…………」

「その時、権力があるのとないの、どちらがいい?」

「言いたいことは分かった」

 全く納得しない風情のレオリオは、自分で淹れた安い紅茶で口を湿らせた後、俺を睨み付けながら言う。

「が、それだけじゃねぇだろ?」

「当然」

 隠すつもりもない俺はレオリオの言葉に簡単に頷き、それから言葉を探す。

 何と言えばいいのか、天井に視点を合わせながら口にした。

「そうだな、俺はやり甲斐が欲しいんだ」

「やり甲斐?」

「ああ、ハンターとしてのやり甲斐だ」

 意味を深掘りしようと思案顔になる前に、レオリオの表情は納得に染まった。

 ハンターとしての目標を、俺は達成しているだろうことに。

「そうか。バハトがハンターになった理由は――」

「ああ。『敵』をハントする為だった。そしてその『敵』はハントし終わった以上、当初の熱意を持ってハンターを続ける意味はない」

 情報ハンターになったのだって、『敵』との戦いを睨んだ一手に過ぎないし、情報ハンターとして十分な腕を振るえていたサーヴァント召喚能力は失われている。いろんな意味で、今の俺は自分の全てを見直す時期に来ているのだ。

 そして今から我が身を振り直すとしても、せっかく星持ちのプロハンターになっているのだ、これを安易に捨てる意味もない。

 そもそもとして。幻影旅団と敵対している事実も、俺やユアや息子のレントがクルタ族であって貴重なお宝である緋の目持ちであるという事実も消えていない。身を守るためにも、権力は絶対に必要だった。

 更に言うなら次の物語は暗黒大陸編へと続いていくのだろう。もはや未来を知れない以上、武器は必要だった。その意味でも権力というものは適していると言える。

「今回の選挙はプロハンター全てが候補者かつ投票者であること。なのに、投票率が上がらなくて選挙が成立していないらしい。

 そこで好きな事を訴えられる場を、近いうちに十二支んが整えるという情報を得られた」

「ケ」

 めんどくさそうに吐き捨てるレオリオ。思ったより彼は権力というものが嫌いらしい。

(正確には、身分不相応の権力が、かな?)

 個人が持てる以上の権力を背負い込むと、人は容易く狂う事を知っているからか。身を滅ぼしかねないモノを嫌うとは、やはり彼は人情派なのだろう。

 そんな人情派なレオリオが、こんな状態のゴンの父親に黙っているとは思えない。それは史実を知らなくても分かること。

 答えが分かっているが故の笑みを浮かべながら、俺はレオリオに話しかける。

「俺も言いたいことを言いに行く。レオリオも一緒に来ないか?」

「――行くさ。一言、言ってやりたいヤツが多すぎる」

 そこに親の仇でもいるかのように、虚空を睨みながらレオリオが言う。

 そんな彼を尻目に、俺は手元の端末を操作して第二回選挙の結果を見る。

 

 13位 リンネ ビスケット バハト 8票

 

(まあ、この位置ならな)

 可能性はある、と思う。

 そもそもとして俺はプロハンターの中でも珍しい星持ちだ。シングルハンター以上で全体の1割程度であり、たった一年でここにたどり着いた俺はその筋では有名人である。

 ただまあ、二十歳でシングルというのは珍しいといえば珍しいが、それまでと言えばそれまでだ。似たような年齢ではメンチがいるし、ジンとかはもはや語るまでもないだろう。

 だが、ダブルやトリプルとなると話は別だ。

 特に今回のキメラアントの事件で、インセクトハンターであるポンズはシングルの功績になるのではないかと審議がかけられている。これが通ればポンズの師匠である俺はダブル。

 そして事件に関わり解決の大きな一助になった俺は、ヨークシンのマフィアの掃除も併せてトリプルの話まで出ている。キメラアントの事件は世界的な事件に発展する可能性があった事をハンター協会が掴んでいるという訳だ。まあ、キメラアントの女王が暗黒大陸からの来訪者だと半ば気がついていれば、不思議な話でもない。

 とはいえ、これらは話があるだけで進展はしていない。

 理由としては分かりやすく、ネテロ会長がいない今は副会長のパリストンがハンター協会の多くを牛耳っている為だ。ネテロ会長が殉職した事件で活躍し、最新のトリプルハンターを誕生させるなど、そんなセンセーショナルなニュースを投票ゲームをしている彼が許す訳がない。

(まあ)

 それも『俺が面白くなければ』というただしがつくだろうが。

 ネテロという相手を失ったパリストンは、遊び相手に飢えているだろう。ターゲットになるのは勘弁だが、現状ハンター協会の最高地位を築いている男が相手ならば立ち向かわざるを得ないだろう。

 俺としても人生の目標がなくなったところ。楽しめるものなら楽しみたいものだ。

 心の中で笑いながら、すまし顔で紅茶を口にする俺だった。

 

 

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