殺し合いで始まる異世界転生   作:117

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この24時間で凄く小説を書いた気がする。
普段はここまでじゃないですよ、本当に。


014話 念・1

 クラピカやレオリオと別れたその日、天空闘技場へと向かう飛行船の中で俺は唐突に口を開いた。

「――そろそろ念について教えておくか」

 全員がくつろいでいたがその言葉でこちらを見る。まあいきなりこんな変な事を言えば、見てしまうのは分かる。

「いきなりなに言ってやがる」

「バハト、ネンって?」

 キルアとゴンが口を開くが、さてどう説明したものか。

「んー。必要最低限の力、かな」

 実際、プロハンターならば絶対に身に付けておかなくてはいけない技能が念だ。ウイングは四大行と凝のみで合格を言い渡したが、後にビスケに指導されたように堅や流の重要性は言うまでもない。特に堅は10分延ばすのに一ヶ月かかると言われている訳で、チートでも持ってないならば早めに始めるに限る。ゴンやキルアは才能のチートな気がしないでもないが、ポンズにそれを望むべくもないし。

「もっと詳しく。訳分かんねー」

「具体的に言うと、体から溢れる生命エネルギーを自在に操る技能」

「どうしよう、詐欺師感が増したわ」

 ポンズの言葉が的確過ぎて涙が出そう。

 ダメだ、これは口でいくら説明しても無駄になる。

 そう判断し、練を纏で留める事無く解放する。

「「!!」」

 ゴンは理解しようとしていた顔から驚愕に変化し、キルアはバカにしたような目から恐慌に陥って部屋の天井隅に張り付き、ポンズは退屈そうな顔から目を丸くして俺を見る。ユアだけはもう纏も練もできるから表情は変わらない。

 練はすぐさま収め、空気が元に戻る。キルアは未だに顔面蒼白で冷や汗をだらだらと流しているが、先ほどまでの緩い空気が吹き飛んだ。っていうかキルアの針もどうしようかしっかり考えないとな。今は置いておくけど。

「例をあげればこんな能力」

「……今のが念か?」

「念の中の1つの技能、練ね」

 俺の言葉にキルアが問いかけ、ユアが補足した。そのユアの言葉に3人の視線が我が妹へと向かう。

「ユアはネンを使えるの?」

「基本をみっちりやってるわ。もう、3年くらい」

「3年……そんなに」

「戦闘技能の1つでもあるからな、終わりはないよ。それこそ死ぬまで磨き続けなくちゃいけないのが念さ」

 ポンズが呆然と言うが、今度は俺の補足に愕然といった風情になる。

 そうだな、いくつか例を挙げるか。

「他にも様々な能力がある。例えば離れた場所を探ったりな。キルア、そのバスルームにでも入って、俺から見えない位置でなんか動いて見ろ。何をしたか、当ててみるから」

「…………」

 何か言いたそうな顔をしたまま、キルアは備え付けられたバスルームに入る。その間に円を発動し、その部屋を射程に捉えた。

 バタンと扉を閉めたキルアは、そのまま構えを取って正拳突きを1回、上段回し蹴りを1回、そのまま派生して踵落とし。これを1秒で終わらせて、ついで5秒くらいただ静かに立つ。

 それらを終えたキルアはバスルームから出てくる。

「今の10秒間、俺は何をしていた?」

「正拳突き、ハイキック、踵落としを1秒かけてやった。その後の時間は静かに立っていた」

「!!」

 見事に当てられて、キルアは驚きに目を見開いた。

 その反応を見れば間違いでなかったことは察せられるのだろう、ゴンも驚きの表情をつくる。そしてポンズは――俺に汚らわしいものを見る視線を送ってきた。

 何故だ。

「つまりバハトさん、あなたは人の入浴シーンを覗いてたってこと?」

「「あ」」

 ポンズの言葉で少年2人がその可能性を失念していたとちょっと責める目で俺を見た。

 内心、少しだけ焦るが。本心で下らないと思っている為、逆に冷ややかな目で見返しておく。

「今の流れで覗きを心配している場合かと心底問い返したい」

「でも、お兄ちゃんの円って隠も被せられるから本当のところは分からないよね」

「オイ、ユア」

 まさかの妹の裏切りである。

 てへへと笑って悪ふざけが過ぎたと謝るユア。

 全く、やるならサーヴァントを霊体化させて同期するわ、バレないし。やらないがな。っていうか、やったら女性サーヴァントからの協力が得られなくなる気がしてならない。

 ――なんか女性2人が疑う目で俺を見てきたので、この辺りで思考を打ち切ろう。マジでやらないし。

「ま、今のは応用技だから説明は追々な。念っていうのはさっき言った通り、生命エネルギーを自在に操る技能だ。攻撃に使えば相手を破壊し、防御するにも念を修めなければならない。

 そしてやり方は大雑把に2種類あるが、深く瞑想して体が発する生命エネルギーを感知し、それを体に留めることでスタートされる。ちなみにその生命エネルギーをオーラと言って、それが垂れ流しになっているのが今の状態。それを体に留める技術のことを纏という」

「さっき、バハトから異様な圧力を感じたのは?」

「練。オーラを爆発的に増加させ、攻撃力と防御力を倍増させる技術のことだ。倍増とはいうが、戦闘する際はこの倍増した状態がスタンダードともいえる。

 とはいえ、これはまだ先の話。纏を覚えたらちゃんと説明してやるよ」

 ゴンの問いにもしっかりと答える。

 とはいえ、いきなり体に宿る生命エネルギーを~なんて言われても困惑しかしないだろうことは否定できない。

 故に、念を覚える前段階として燃の説明も入れる。燃は念を覚える為に必要な心構えを説いたものでもあるので、念を覚えるのに有効な手段だと俺は思っている。

「心を定めて、集中する点。なるほど……」

「もしかして、この圧力。兄貴も……」

「……1つ聞いていいかしら?」

 すっかり俺の話を信じたゴンとキルアだったが、ポンズだけはまだ疑いの視線を俺に向けてくる。

「なんだ?」

「なんでいきなり念の話を私たちにしたの? 今まで私は念なんて単語を聞いたことがないわ、秘匿すればバハトさんが絶対に有利じゃない。

 情報ハンターであるあなたが、無条件で情報を渡したことが信用できない」

 道理といえば道理だ。

 だが、大きく理由は3つある。

「1つ。念の習得はプロハンターに必須の技能だ。キルアはともかく、ゴンやポンズは絶対に覚えなくてはいけないし、その為に裏試験と称して念の使い手が接触してくる。

 ここで資格なしと判断されれば念を教えてもらうことはできず、別の手段で念を学ばなくてはプロと認められることはない。

 この状況下で、俺はお前たちになら念を教えてもいいと判断した」

「…………」

「2つ。念は便利で危険な技術だから、簡単に伝授しないのはもちろん敵対者には教えないようにするのが鉄則。だが、世の中の多くに流布されている技術なのが現実。俺の『敵』やヒソカにイルミも念の使い手だ」

「「「!!」」」

「ならば念を教えるのは当然。念を使えずならヒソカと同じ土俵に立てないし、ゾルディックに対抗することもできない。それに『敵』と共に戦ってくれるだろう仲間にまで、いちいち念を隠す意味がない。

 3つ。これから行く場所は天空闘技場だから」

 もっかい練、ただし弱め。

 少し圧迫感を感じるだろうが、その程度。キルアに刺さった針も反応しない程度の練だ。

「天空闘技場の200階クラスの人間は全員が念使いだ。偶然そうなったのか、誰かが故意にその状況を作ったのかは知らないが。

 そして目覚めさせる方法は2つあると言ったな。もう1つが洗礼、オーラで相手を攻撃するとそのショックで念に目覚めることがある。ただしその代償は大きく、オーラで一方的に攻撃されれば四肢が欠損したり半身不随になることもしばしば。99%が死に至るとまで言われる荒行だ。

 もしも念を知らないうちに200階に到達すれば、洗礼を受けることは間違いない。その前に念について教えておくのはむしろ当然」

「クラピカやレオリオに教えなかったのは?」

「理由3がないのも理由の1つだが、念を覚えるのに1年くらいかかるのはザラだ。俺と一緒に行動しない以上、下手な前知識はむしろ足かせになると判断した」

 説明を終えて一息つく。

 それを聞いた3人は、はーと納得の息を吐いた。

「色々考えているんだね、バハトは」

「お前は俺の事をどう思っていたんだ」

 地味に失礼なことを言ってくるゴンに言い返しておく。天然ってたまに毒舌が飛ぶから心臓に悪い。

 ともかく俺の説明を受けて納得したのか、ポンズは話を続けた。

「それで、念を覚えるのに1年もかかるわけ?」

「普通の才能なら、って話。しかも念じゃなくて、オーラを感じとって纏をするまでにおおよそ1年。だが、ユアは纏までに一ヶ月もかからなかった。要は才能次第だな」

 先に脅すような事を言いたくないから黙っておくが、上に行けば行くほど才能があることが前提になる。ここで手間取るくらいなら、トッププロになるのは難しいと言わざるを得ないだろう。厳しいようだが、才能の格差は純然と存在するのだ。

 ――『敵』がいることを鑑みれば、ウイングにポンズを預ける事も視野にいれなければならないだろう。凡才というだけで命を潰すくらいなら、俺から離れた方がいいとさえ思う。

 まあ、才能を見る前に言う事でもないが。

「じゃあ、瞑想して体にオーラが流れているとこから始めようか。

 飛行船じゃ激しい運動はできないし、瞑想するには適した環境だしな」

 

 天空闘技場。

 それは野蛮人のメッカとも言われ、ただ純粋に武と力が貴ばれる場所である。

 品格はいらない、強ければいい。それを体現する世界であるが為、腕に覚えがある屈強な者が日に何百人と訪れる場所でもある。

 そして察しのいい人なら気が付くだろうが、それでも天空闘技場が飽和しないのは毎日同じくらいの人間がこの地を去るからだ。自分の才能を見限り、諦めるならばまだいい方。死者が出ることさえまれでないのが天空闘技場という場所の1つの顔である。

 そこにおかしな5人組が現れたのだから好奇の視線を集めるのは仕方ないと言えるだろう。

 1人だけいる成人男性はまだいい。眼帯をしているのも戦いで負った傷だと思えば納得であるし、服越しでも分かるその体躯は鍛え上げられている。

 だが、一緒にいる女は弱そうで天空闘技場に来るとは到底思えない。子供3人に至っては論外、ここはガキが来る場所ではないのだ。

 もしや、この一同は家族なのだろうか? それにしては親が若すぎる気がしなくもないが、男の応援に来たと思えば不自然ではない。そのような想像に至るのはごくごく自然であるといえるだろう。

 だがしかし。あろう事か、全員が天空闘技場に選手登録してしまった。男はともかく、女子供4人全員がである。受付の者も多少困惑するが、ここに女子供はダメというルールはない。女子供だろうが強ければいい、それが野蛮人のメッカと呼ばれる所以である。

 

「…………」

「いい加減、機嫌を直せ。ユア」

 いや、気持ちは分かるが。まさか天空闘技場に着くまでの5日間で3人とも纏をマスターするとは思わなかった。ゴンとキルアはともかく、ポンズは意外だった。本当に意外だった。思い返せばポンズは蜂を操っていたし、操作系に目覚めかけていたのかも知れない。

 ともかく、自分の約5倍という速度で纏をマスターされたユアの機嫌が斜めである。いつも笑っているユアにしては珍しいが、これは仕方ない。ズシも1日で追い抜かれたら立ち直れないかもと思っていたし、才能の格差は存在するのである。まさか見上げる側になるとは思わなかったが。

「纏を覚えれば防御力があがるのよね」

 ポンズがここまで早く纏を覚えられた理由の1つに、臆病さがあるような気がしてならない。何度かヒソカや俺のオーラを間近で浴びた彼女は、近接戦闘に苦手意識があるのも相まって、とにかくその恐怖から逃れようと高いモチベーションで念の修行に臨んでいたらしい。

 正直、あんまりいい心持ちではないように思うが、念とは心の発露という側面もあるからあまり強く言えないのが辛いところである。むしろそれでここまで早く纏を覚えるのならば、恐怖さえ武器といえるかも知れないし。

 安心したように言うポンズに、その、とても複雑な気分です。原因に俺がいることも含めて。

 とにかく纏をマスターした3人に、まずはその纏を維持することを最初の目的にさせた。絶や練はまだ話が早い。意識しなくても纏、寝ていても纏。これを基本にした方がいい。

 それに俺はどこか自己流な部分が多いので、ウイングの協力も仰ぎたかった。心源流の師範代である彼は教え方も俺より上手であると信じている。

 念の話は置いておいて、天空闘技場の試合である。全員が試合を組まれ、武舞台へとあがる。俺はともかく、華奢なポンズや子供のユアにゴンとキルアは非常に目立っていた。まあ、よほど運が悪くなければ苦戦もすまい。

 実際、俺とキルアは手刀の一発で切り抜け、ゴンは原作と同じく押し出しで楽々クリア。ポンズとユアも李書文に習った中国拳法で勝ちを手に入れていた。女性2名はやはり対人戦闘に慣れていないのか、少しギクシャクしていたが。やっぱり本格的な殺し合いの前に試合形式で戦える天空闘技場で経験を積むことは間違っていない。おそらく、ウイングも同じ考えでズシをここに連れてきたのだろう。

 そう思った矢先、またも歓声があがる。ゴンやキルア、ユアが勝ち上がった時と同じ種類のそれは、またもや子供が勝ち上がったものに対する称賛。噂をすれば影、ズシが50階への進出を決めていた。

 彼、というかその師匠であるウイングとは是非とも良い関係を築いていきたいので、この巡り合わせが逸れなかった事に感謝したい。それにユアにとっても同年代の友達が増えることは良い事だろう。

 エレベーターで一緒になり、ズシの方から同じ子供であるゴンたちに話しかけてくる。

「押忍。試合見ました、素晴らしかったっす。できれば流派を教えて貰いたいっす。ちなみに自分は心源流っす」

「「特にないかな」」

「中国拳法八極拳よ」

 特にないというゴンとキルアに一瞬ショックを受けた顔をするズシだが、ユアの言葉にキョトンとしてしまう。

「ちゅ、はっきょ…?」

「中国拳法、八極拳。兄の知り合いの方を紹介して貰って、教えを乞うたの」

「初めまして、俺は兄のバハト。情報ハンターだ」

「っす。自分はズシっす。自己紹介が遅れてすみません」

 それをきっかけにして自己紹介をしていく全員。

 そこでエレベーターが50階に到着し、温和そうな顔をしてシャツがはみ出た眼鏡をかけた青年が温かくズシを迎え入れていた。

「おめでとう、ズシ。

 それに他の方々も素晴らしい試合でした」

「押忍。ありがとうございます、師範代」

 真っ先にズシが返事をするが、俺たちを見る青年――その瞳が少しだけ細められる。

「使えるようですね」

「初歩だけな」

 俺が肩をすくめながら言うが、鋭い視線は変わらない。

「正直、驚いています。いつからですか?」

「ほんの昨日一昨日さ」

「そこまで早いとは天性の才能に嫉妬してしまいますよ」

 目が笑っていないウイング。なんか怖いんだけど。

 と、急に黙っていたキルアが口を開く。

「アンタ、裏試験官?」

「!?」

 ウイングの細められた目が大きく開かれた。それは彼が()()である事を如実に表すものである。

 っていうか、なんでわかったキルア。たぶん全員が疑問に思ったのだろう、集まった視線を感じたのかその理由をキルアが口にする。

「アンタ今、早いって言っただろ。つまり直前まで俺たちが使えない事を知っていたんだ。そうじゃなきゃ、早いなんて言葉が出る筈がない」

「――お見事」

 いや、ほんとお見事だキルア。これはウイングと同感である。

 他の全員も驚きと称賛の目でキルアの事を見ている。キルアはちょっと照れたのか、ふんすと息を荒げて場を仕切り直した。

「改めて自己紹介を。私は心源流師範代のウイング、そこのズシの師匠をしています。

 そしてお察しされた通り、場合によっては念の伝授を請け負う裏試験官の側面も持っております」

「ウイングさんもプロハンターなの?」

「いえ、私はただの武闘家です。ハンターの才能なんてありませんよ。ただ使えるだけです」

 まあ、ハンター試験と裏試験で大分性格違うし、そもそもプロハンターって教えるのが下手な奴の印象が強い。ダブルハンターとかは例外、ビスケは例外中の例外。

 ひとまず挨拶を終え、丁寧に礼をしてその場を去ろうとするウイング。と、ぼーとしてる場合じゃない。

「ウイングさん、ちょっといいか?」

「なにか?」

「いや、俺が一応教えてはいるんだけど、自己流が多くてな。心源流の師範代の協力が得られるなら嬉しいと思って。

 少しでもいいので教えを乞うていいだろうか」

「――構いませんよ、どうやら溢れる才能をお持ちのようだ。私でいいなら微力を尽くしましょう」

「じゃ、連絡先と口座を」

「連絡先はこちらです。お代は結構ですよ、先達者として当然の務めです」

 にこやかに笑うウイング。いい人だし好感が持てるが、情報ハンターとしてはここは対価を払わねばなるまい。

「そういう訳にもいかないさ。ウイングさんが今まで努力してきた結晶をタダで手に入れるなんてできるはずがない」

「――分かりました。ですが、私個人ではなく心源流の口座にお願いします」

「了解、調べておく」

 そう言って俺の名刺も差し出す。それをそつなく受け取るウイング。

「情報ハンターのバハトさんですね、よろしくお願いします」

「ああ、こちらこそ。ズシに何か教えることがあったら協力するよ。それに仕事があったら遠慮なく依頼してくれ」

「持ちつ持たれつですね」

 そういって今度こそ立ち去るウイング。

 控室に行き、賞金で缶ジュースを買って暇を潰す。名前が呼ばれはじめるが、キルアとズシが戦うことはなかった。

 まあ、ハンター試験でも番号の狂いはあったし、これだけの人数がいるなら不思議でもないけど。

「バハト選手、カズラー選手。試合です」

 お、俺の番が来たか。さて、行くか。

『頼んだぜ、百貌のハサン』

『御意』

 もしも『敵』が紛れ込むなら、天空闘技場は格好の場所だ。そもそも人が純粋に多いし、200階闘士が下りて見に来ることもあるから念能力者でも不自然ではない。

 見つかるかどうかは分が悪いかもだが、警戒しない理由もない。特に俺の試合に絞って観客を監視するべく、百貌のハサンを放つのだった。

 

 

 

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