殺し合いで始まる異世界転生   作:117

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015話 念・2

「勝者、バハトッ!」

『またも一撃ぃぃぃーー!! 止まらない、止められない、突き進むぅ!! バハト選手、なんなく200階への切符をゲット!!

 キルア、ゴン、ユア、ポンズぅ! 50階から負けなしの一行、全員が次のステージへ進出を決めました!

 彼らのこれからの戦いに目が離せませんっ!』

 解説者、ちょっと大げさじゃないか? まあ、ある意味それが仕事なんだろうけど。

 俺は仲間たちに纏すら禁じて200階まで勝ち抜くべしと指示を与えたが、結果は聞いての通り。誰一人脱落することなく200階へと駒を進めることに成功した。正直、ポンズ辺りはまごつくかと思ったが、そこはやはりプロハンター。李書文の教えもあり、苦手な近接戦闘は完全に改善されたと思っていいだろう。

 悠々と引き上げる俺の先にある廊下から、唐突に4つのオーラを感じた。

「お疲れ様、お兄ちゃん」

「ユア、ただいま。そして全員、見事な絶だ。合格」

 直前まで絶で気配を殺していた一同。それは俺も感知できない程で、これは合格させない訳にはいかない。これで纏に引き続き、絶もマスターしたことになる。

「おし!」

「次は練だね」

「私は発が楽しみよ」

 笑いあう3人。ユアはもうそこまで進んでいるので、一歩引いて喜ぶ彼らを見ている。

 他愛ない話をしながら、200階の登録をするべくエレベーターに乗る。そして目的の階に到着した瞬間、全員が纏をした。あまりに不気味、あまりに邪悪。そんなオーラが明確にこちらを見定めて襲い掛かって来たからだ。

 険しくなる一同の前に、廊下の先からその元凶が姿を現す。

「くっくっくっ♠ やあ、しばらくぶりだね♦」

「ヒ、ヒソカ!」

 念を覚えて分かるこの圧倒的な実力差を感じ、一歩下がってしまったポンズは責められまい。冷や汗を流しながらも気圧されまいとするゴンとキルア、そしてユアを褒めるべきだろう。

「な、なによこのオーラ。あんた誰なのよ?」

「お嬢ちゃんは初めましてだね♥ ボクの名前はヒソカって言うんだ♠ そこの3人と同期のプロハンターさ♦」

「仲は良くないけどな」

 盾になるように、俺が前に出る。念の熟練度を始めとした総合力でヒソカと勝負になるのは俺だけ。

 ヒソカとしてもここでいきなり襲い掛かるようなことはしないだろう。ゴンやキルアはまだまだ伸び代が大きいし、ユアは品定めの段階。ポンズは言ってはなんだが、壊す価値がない。

 そういう意味では俺が一番危険だが、何故かヒソカは俺を美味しそうとは言ってくるのに攻撃する気配が全くない。ハンター試験では相当警戒心を持っていたのだが、結局最後まで些細なちょっかいすらなかった。それが逆に違和を感じる。ヒソカはそこで遠慮する性質ではあるまい。

「まあそう怯えないでくれよ、傷つくから♣」

「じゃあその気味悪いオーラをしまえ」

「これがボクの普通さ♦ とにかく今日は話をしに来ただけなのは本当♠ 念が使えなかったら追い返しただろうけど、バハトが教えるならボクが手を出すまでもない♥」

 そこでゴンを見るヒソカ。ニィと生理的嫌悪感を抱かせる笑みを浮かべつつ、その成長を見定める。それを真っ向から見返すゴンは、大きく啖呵を切った。

「俺は念を覚えたぞ、ヒソカ。ハンター試験の借りを返してやる!」

「念を覚えた? うぬぼれるなよ、ゴン♥ 念は奥が深い、試験の時に念を覚えていなかった君がボクに挑むなんて片腹痛いよ♣

 そうだなぁ、200階で一度でも勝ったらその時は挑戦を受けるか考えてあげる♠」

「ッ!!」

 舐められている、馬鹿にされている。その屈辱がゴンのオーラを更に高め、それを見たヒソカの表情が濃いものとなる。

「それに今日の用事でゴンはおまけさ♦ 本命はバハト、君だよ♣」

「俺か?」

「ちょっと秘密の話があるんだよね♠ 一緒に来てくれないかい?」

「…………」

 ヒソカについて行くのは正直不安しか感じないが、無視してもそれはそれで嫌な予感が拭えない。

 悩むこと僅か。

「分かった、行こう。ゴン、先に言っておく。200階クラスで戦うのは練がある程度形になってからだ。

 しばらくは我慢しろよ」

「――」

 返事なしか、これは無理だな。

 ともかく、今は自分の心配をしなくてはいけない。まさか俺が呼び出されるとは想像もしていなかったので、控えさせているサーヴァントは百貌のハサン。ヒソカを相手にするには心許ないサーヴァントである。

 とはいえ、泣き言を言っても仕方がない。サーヴァントに頼りすぎてもいけないし、俺が戦えないのは論外だ。こういうケースもよくあるだろうと諦めてヒソカについていく。『敵』との決戦でサーヴァントのみでなんとかなると思うのは甘すぎるだろう。俺も戦えなくては死あるのみだ。

 仲間たちを置いてヒソカについていく。もちろん凝は怠らない、ヒソカの念能力はあまりに厄介。騙し、拘束、そして自分の補助までこなす。単に自分を強化するだけでは済まさないところが、ヒソカの――変化系の最も恐ろしいところだ。

 やがて周囲に誰もいない、休憩所のようなところに辿り着く。凝と円を行使して、罠がない事を確認。

『警戒を頼む』

『承知』

 その上でアサシンも周囲の警戒に当たらせる。ヒソカは、サーヴァントはともかく円と凝には気が付いているだろう。しかし全く気にした様子がなく、安物のソファーに腰かけて俺の瞳を見て口を開いた。

「情報ハンターバハト、その活動は電脳世界でなくリアル系♦ 密会を監視して警察内部の裏切り者を探し出したり、サラリーマンのフリをした死の商人を摘発するなど偽装された相手の正体を暴くことを特に得意とする♠

 その手段は未だに不明♣ もしかしたらキミと仲がいい人は知っているかもだけど、ボクではそこに辿り着けなかった♥」

「…………」

 情報ハンターは己の情報を隠す。正直、ヒソカが言った事を調べるだけでも普通は無理である。

 そしてヒソカは明らかに情報系のハンターではない。己の専門外であるのにしっかりと情報を奪い取るその手腕には感服するしかない。

 だが、ヒソカが語った程度ならば別に知られて困るレベルの話でもない。黙って話を聞き、続きを促す。

「そんなキミには運命の赤い糸で結ばれた相手がいる、お互いに殺し合うことを誓った運命の人が♥」

「バカな、何故それをっ!?」

 落とされた爆弾発言に思わず叫ぶが、大失態だ。自分の間抜けさ加減に嫌気が差す。

 認めてしまった、俺が殺すべき『敵』がいることを。よりにもよってヒソカに。

「ふふふ、やっぱりね♦ 大当たり♣ ボクの勘も捨てたもんじゃない♥」

「――っ!!」

「安心しなよ、人の恋路を邪魔する趣味はない♦ キミたちが殺し合った後、独り身になった方と遊ぶ方が楽しそう♣

 ――まあもっとも、キミがボクから情報を絞り出そうとするなら喜んでお相手するよ♥」

 間違いない、ヒソカは俺の『敵』が誰だか知っている。おそらくはハンター試験前に出会っていたのだろう。ハンター試験後のイルミに依頼をしたいと言った時、割り込んできたヒソカの含んだ物言いとあっさり引いた事を思い出す。おそらくその時に『敵』の殺したい相手が俺だと確信したのだろう。

 いや、嘘か? そういう振りをして俺が全力でヒソカと戦うのを楽しみにしているのか? そういう類の罠か?

 ダメだ、情報が足りない。しかも相手はよりにもよってヒソカ。その戦闘能力は言わずもがな、騙し合いで俺の上を行く男。虚実の判断が全くつかない。

「キミの敵にも情報は流さない♥ 運命の人を探すのも楽しいものさ♦

 話はこれでお終い♣ もしももっと話をしたいなら――力づくで来るがいい♠」

 そう言ってヒソカは立ち上がり、離れていく。

 ――完全に主導権を握られた、完敗だ。

 これからはヒソカの動向にも着目しなくてはならない。ヒソカは一切信用できないからして、俺の情報をあっさり『敵』に流しかねない。

「……くそっ!」

 ガシガシと頭を掻きむしる。ヒソカが関わったせいで、話が一気にこじれた。『敵』の情報は喉から手が出るほど欲しいが、相手がヒソカだとそう簡単にはいかない。

 サーヴァントをけしかけたとして、あの男を仕留めきれるとも限らない。万が一、サーヴァントだけ見られてその話を『敵』にされたら目も当てられない。『敵』に繋がる可能性があるヒソカには俺の手札を限りなく隠さなくてはいけないのだ。

 ――ヨークシンの行動が鍵になる。あそこでヒソカは大きく動く。『敵』もヒソカに注目するならば、どこかで必ず関わってくるのは間違いない。

 激動の予感は確信に変わりつつある。9月1日がXデーになるだろう。俺は踵を返してゴンたちの元に戻るのだった。

 

 で。

「――いきなり試合を申し込んだのか」

「……ゴメンなさい」

「俺に謝ってどうする、バカ」

 やっぱりゴンは暴走して、新人狩りのギドと対戦を組んでいた。

 まあ予想していたことではあるが、実際にそれを目の当たりにすると呆れるしかない。俺の言葉を無視したゴンはしゅんとしつつ怒られることを受け入れているが、棄権したりするつもりは全くなさそうだ。そんなバカをやらかしたゴンを、キルアたちも呆れて見ている。

 これは余りにお粗末、あまりに浅はか。念の危険性は伝えていたし、ウイングと同じようにオーラの破壊力はしっかりと見せつけていた。それでもなお戦いを選ぶのは匹夫の勇でしかない。

「なあ、ゴン。お前は何がしたい? 俺がお前に念を教えたのは、ここで無駄な戦いをさせない為だぞ?」

「それでも俺は知りたいんだ、俺はどのくらい戦えるのか。念を使える相手はどのくらい強いのか。それを知らないで、ヒソカに挑めるはずなんてない」

 折れる気配ゼロ。原作と同じように罰を与えてもいいが、ぶっちゃけ時間の無駄である。もちろん点をし続けた二ヶ月間が無駄であったとは思わないが、他の念の修行をしながらの方が効率がいいというのが俺の意見だ。

 それに、これでこそゴンだとも思う。俺は結構考えて動く方だが、裏を返せば勝ち目の薄い戦いを避ける傾向にある。だが、それでは突破できない壁というのは確実に存在する。俺はサーヴァントという規格外がいるから壁にぶち当たった事がないだけで、『敵』との戦いにゴンの思い切りの良さは確かな強さになる。

 俺は視線を下げ、ゴンとしっかり目を合わせた。

「必ず無事に戻ると誓え。もしも誓わないのならば、俺は試合までお前を寝かしつける。

 死ぬ可能性が高い戦いだということを覚悟して、それでも決して死ぬな」

「――分かった。誓うよ、バハト」

 力のこもった瞳で応えるゴン。

 ならば後は信じるだけ。ゴンはどんなダメージを負っても、折れることは絶対にないと。

「よし。試合は明日だな、思いっきり戦って来い!」

 俺は激励で以ってゴンを送り出した。

 

 結果。ゴンは全治4ヶ月の重傷を負う。

 

 病室に集まる仲間たち。とりあえずゴンは取り返しのつかない怪我をした訳ではなく、しっかり療養すれば治る範囲のダメージで済んだ。

 だがこれも運が大きく関わったのは間違いなく、下手すれば腕が千切れるくらいは十分に有り得た戦いだった。

「覚えておけ、念はここまでの破壊力を生み出す。

 それでもギドが自分で言った通りにあいつは相当非力で、最小限でこの威力だ」

 傷ついたゴンを題材に、俺は他の仲間たちに念の威力をまざまざと教え込む。まあ、絶で相手の攻撃を受けるなんてバカはそうそうやらかさないとは思うが。

 顔色を悪くするポンズ。ふむふむと納得顔のキルア。難しい表情をしたユア。三者三様に念の恐ろしさを理解して貰えたと思う。

「どうだった、ゴン。完膚無きまでに叩きのめされた感想は?」

「負けてなんかいられない、絶対にギドより強くなってやる!」

 ここまでの敗北とダメージを経て、なお気炎を吐くゴン。威勢がいいのは悪くないが、気負い過ぎとも感じてしまう。

 ――前言撤回。このまま念の修行にのめりこませるのは危険が大きすぎる。

「ゴン、アウト」

「え?」

「ここまで一方的にやられて、まだ立ち止まることをしないのはもう美点じゃない。

 お前は怪我が治るまで念の修行は中断。少し頭を冷やせ」

「で、でも俺。そんな時間は――」

 パンとゴンの頬を叩く。心の中では苛立ちはあるが、教える立場として負の感情で叱るべきではない。

 あげる怒鳴り声は、冷静さと一緒に。

「あそこまでの危険を目の当たりにして! ここまでの大怪我をしてっ!!

 反省がないならテメェに成長の余地はねぇって言ってんだよ! グダグダ言わずに足元を固めろ、小僧ぉ!!」

「…………」

 俺が荒い口調で叱るのは相当に珍しい。ユアでさえ驚きの感情を顕わにしている。

 シンと嫌な沈黙が流れるが、それを破ったのは、場違いなパチパチという拍手の音。ふと出入り口を見れば、そこには笑みを浮かべたウイングの姿が。

「言いますね、バハトさん。正直、未熟なゴン君を試合に出したあなたは念を教えるべき立場ではないと思っていました」

「ガス抜きをしなくちゃと思っていたよ。一回戦えば冷静になると思ったし、痛い目をみれば少しは視野が広がるとも思った。

 でも結局ここで怒るんなら、ゴンは怪我のし損だ。最終的に試合を認めた俺のミスなのは確かだ」

「教育者とて万能ではありません。我々も日々勉強ですよ」

 言いながらウイングはゴンの側に近づき、厳しい瞳でゴンの目を見る。

「ゴン君、君はどれだけ愚かしいことをしたのかを自覚するべきだ。バハトさんの怒りは至極正しい。

 今、君に必要なのは努力ではない。自省です。もしもそれができないのならば、君には念を覚える資格がない」

「…………。分かった、いや、分かりました。

 バハト、ウイングさん。ごめんなさい、そしてありがとう」

 ぺこりと頭を下げるゴン。そこでようやく場が弛緩した。

「とにかく今は怪我を治すことに集中だ。念の続きはそれから」

「あ、俺もゴンに付き合うよ。みんながゴンを置いていったらコイツ焦るかも知れねーし」

「キルアも苦労性だね」

 今回の件はゴンの自業自得、ついでに俺の監督不行き届きが妥当だろう。生半可なゴンに試合をさせるべきではなかった。

 それにキルアが付き合う道理はないというのに、律儀と言うかなんというか。ユアも苦笑いを浮かべている。

「じゃあな、しばらくはゆっくりしろよ、ゴン」

 そう言い残し、キルアを置いて病室から立ち去る。ユアとポンズ、ウイングが一緒だ。

 歩きながらウイングが口を開いた。

「試合を見ましたが、驚きました。もう絶まで覚えているとは」

「才能に溢れて羨ましい限りだよ、ホント」

「全くです。キルア君やユアさん、ポンズさんも?」

「ユアは3年前から基礎のみとはいえ念を教えていたが、キルアとポンズはそう。次は練を教えるとこ」

「――全く。末恐ろしい才能です」

「この調子だとポンズは今日中に練も覚えるかもな。ウイングさん、見てく?」

「そうですね、お邪魔しましょうか」

 言いつつ、俺の部屋へと向かう。そこで軽く支度を整えて、ポンズが指導を受ける準備を終えた。その間のユアは見学、人が念を覚えるのを見るのも勉強になるだろうという考えからだ。

 そして練の仕方について軽く講義をする。

「絶を覚えるのに精孔を閉じる感覚は覚えただろう。練はいわば絶の逆、精孔を閉じるのではなく開く感覚だ。

 体の中で練り上げたオーラを放出するイメージをすればやりやすいと思う」

「分かったわ」

 頷き、目を閉じて集中するポンズ。体の中でオーラを練り上げているのだろう、少しだけ場の空気が変わった。

 ……? だが、なんというか、おかしくないか?

「っ! ポンズさん、いけません、即刻中止して下さい!」

「!? きゃあああああぁぁぁ!!!!」

 ウイングの叫びは一瞬遅かった。

 突然、本当に突然だ。ポンズの精孔が爆発するように開き、勢いよくオーラが噴出する。見ただけで分かる、このオーラの放出は命に関わる。

「ポンズ!」

「ポンズさん!」

「ポンズさん、落ち着いて! 絶です、絶をして精孔を閉じるのです!!」

「ぁぁぁぁぁぁ…………」

 ウイングが必死に呼びかけるが、ポンズは反応できない。滝のようにオーラを流して消耗し、その場にへたり込んでしまう。頬が一気にこけて急速に生気を失いつつあった。

 その手にはオーラが収束して何かが物体化し始めているが、それはポンズがオーラを制御できていない証拠に他ならない。

 まずい、ここままじゃ本当にポンズが死ぬ!

存在命令(シン・フォ・ロウ)!」

 と、ユアがいきなりペンを持ってポンズの額に文字を書き込んだ。

 書かれた文字は『絶』であり、その瞬間にポンズのオーラがぷつりと切れる。強制的な絶とオーラの激しい消耗にポンズは意識を失い、倒れかけるのを俺が咄嗟に抱き留めた。

 息はある。とりあえず急場は凌げたようで、それを為したユアを見た。オーラが込められたそのペンは、亡き母の形見。

「ユアさんは操作系ですか……。助かりました」

「操作系なのは知っていたが、発は初めて見たな」

「だって私の発は分かり易いんだもん」

 ウイングは心の底から安堵の息を吐き、俺は意識を失ったポンズをベッドへ寝かす。そしてユアはちょっとふてくされたように頬を膨らませていた。

 確かにユアの発は分かり易い。形見のペンでオーラを込めた文字を書き、その通りに操作する能力といったところか。

「いえ、助かりましたよユアさん。外部から補助をしなければ、ポンズさんはおそらく死んでいたでしょう」

「ウイングさん、ポンズに起きたことが何か知っているのか?」

 あまりの出来事に驚いていた俺だが、ウイングはどうやらこの現象に心当たりがあるらしい。何が起こったのか説明をしてくれる。

「ええ。彼女は恐らく誕生覚醒者でしょう。

 まれにいるのですよ、産まれた時から精孔が開いていて念を使える者が。大抵は死ぬか本能的に纏を覚えますが、そのどちらもできない場合は次第に精孔が閉じていくのです。

 しかしオーラを正しく循環させるという事を体が覚えているには違いありません。結果、内部にオーラをゆっくりと貯蓄しつつ成長するのです。そしてそのような者が練を初めて行う時、内部に蓄積されたオーラが一気に放逐されて命の危機に陥る。

 先程のポンズさんは正にその状態でした。ユアさんがポンズさんを操作して強制的に絶にしなければ、生命力を出し尽くしてポンズさんは死んでいたでしょう」

「…………」

「ですが、その危機は乗り越えました。もう心配はいりません。

 そして産まれてからずっと無意識にオーラを練り続けていた彼女は、おそらく多大な潜在オーラを有しているはず。

 それにオーラの放出によって発も目覚めたようだ」

 ポンズの手に具現化された物体を思い出す。

 それは空き瓶だったはず。透明なガラスのような素材で、なんというかハチミツを入れておくような横に広く縦は短いものだった。

 ちなみに今は絶の状態なので、もうあの空き瓶は影も形もない。

「ポンズさんは具現化系のようですね。誕生覚醒者ならば少しの修行で発を使いこなせるようになるでしょう。こういったタイプは本能的に、自分の能力は理解しているものです」

「――まあ、分かる。俺も多分誕生覚醒者だ」

 そういう俺に、ウイングは驚きの目を向けてきた。ユアも同じだ。

 別にここは隠すことではないので、正直に言う。

「俺は物心ついた時からオーラが見えていたんだ。本能的に纏を覚えていたタイプなんだろ」

「なるほど」

「初耳ー」

 頷くウイングと軽く言うユア。

 まあ今更と言えば今更である。

「誕生覚醒者は生まれてからずっと念に関わっていた為、才能溢れる方が多いと聞きます。

 ポンズさんがこれほど早く念を覚えたのもそれに一因があるのでしょう」

「じゃあゴンやキルアも?」

「可能性はありますね。もしも彼らが練をする時はユアさんが一緒にいてあげて下さい。

 私もできることがあればお手伝いをさせていただきますよ」

 そう言ってベッドですうすうと寝息を立てるポンズを見るウイング。

 その額には大きく書かれた『絶』の文字。

「ブフゥ!!」

 ウイングが思わず噴き出した。

 なんか色々と台無しである。

 

 

 

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