殺し合いで始まる異世界転生   作:117

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書いてみたらほぼほぼ説明回。
序盤からこんなんだから私の小説はつまんないって言われるんだろうなァ…。

勉強になっています。以降、気を付けます。


002話 現状考察

 これは転生してから10年が経ったある日常。

「ごちそうさま」

 そう言って俺は腰をあげる。食器を台所まで運び、母が洗いやすいように水に漬けておく。

 父は食後のお茶を飲んでゆっくりしているし、母は2歳になった妹のユアを抱っこして機嫌を取っていた。

「バハト。今日も丘に行くのか?」

「うん。天気もいいし、のんびりしてくるよ」

 今日は安息日であり、自由な時間が約束されている日でもある。この日は誰でも好きな事をして過ごしていい日となっている。もちろん母の様に子守をしなければならない人など例外は居るが、基本的に日ごろの忙しさを忘れてゆっくりできる日で、俺はいつも好んで丘で過ごしている。

 静かに家を出て、太陽の日差しを浴びる。

『……あの子も変わった子よね。なんというか、老成しているというのかしら?』

『確かに歳の割りに落ち着いているな。だがまあいいじゃないか、畑仕事も家事手伝いもしっかりしてくれている。この村で静かに一生を過ごすのが一番だ』

 念を修めた俺の耳にはそんな両親の声と、意味があるのか分からない妹の声が聞こえてくる。

 それを無視して、俺は丘へと足を進めていた。

 

 

 丘でそよ風と太陽を浴びながら、物思いにふける。

 念ではなく燃。纏は維持しているが、現状を見定めて未来を考えるこの時間を俺は殊の外大事にしていた。すべきこと、してはいけないこと、やるべきこと、やってはいけないこと。それを考えると確かに念の修行にも熱が入る。ウイングが燃についても重要だと言っていた意味が、修行する身になってよく分かる。念とはとどのつまり精神力の戦いであり、己を見定めるという事は決して不利益にはならない。

 自分の事から思考を広げていく。

 俺が親からつけられた名前はバハト、歳は今年で10歳になる。両親と8歳年下の妹であるユアと一緒に小さな集落で暮らすクルタ族だ。

 その実、日本から転生してきた人間でもあり、この世界の事はH×Hの漫画などで得た知識がある。そして念にも目覚めていて、産まれた時から纏。今では絶・練・周・隠・流・円・硬までも会得している。といっても、応用技はまだ使えるだけである。とても実戦投入できる域までは達していない。とはいえ俺の齢は10歳であり、現状問題はないと思う。練も全力で行って一時間にそろそろ達するくらいには延びてきたし。

 そして系統だが、これがかなり特殊だった。特質系ではない、特殊だったのだ。水見式を行った時、二つの変化が同時に起こったのだから。

 コップに水を汲み、練を行う。これによって目に見えた変化は水の増加、すなわち強化系と思われた。ちなみにこれに失望した訳ではない、むしろ安定した継戦能力を望めるとあって好ましい系統だったといえるだろう。そして水見式をするとあって緊張していたのか喉が渇き、水見式に使ったコップを傾けて喉を潤した瞬間、俺は吹いた。何故なら水が塩辛かったからだ。

 やや呆然とした俺だが、原作を思い返して一つの結論に至った。グリードアイランドでの修行の際、ゴンはビスケに放出系よりの強化系と評された。ならば奇跡的な確率の上、強化系と変化系のちょうど真ん中に適性がある者もあるいはあるのだろうと。すなわち俺の系統は強化・変化の重複系統であると結論づけた。

 それに考えが及んだ時、正直頭を抱えてしまった。強化系との殴り合いには不利となり、変化系で競い合えば練度の差で勝ち目が薄い。どうしてもトリッキーな戦法を選ばざるを得なくなる。そしてそのような戦いを続ければ、結局どこかで死にやすくなる。蟻との戦いのように相手を殺せばいい戦いならば尖った性能も悪くないだろうが、死なない為の戦いではやはり純粋な強化系が理想であると俺は考えていた。結局、強化系に被っている上にオンリーワンな性質も出せると考えて、良いように強引に考えを向けた結論を出したが。

 ともかく俺の系統はそれであり、発についてはおおよそ考えは決まっている。オーラを水や氷、水蒸気に変化をさせる事を考えているのだ。特に氷は硬度に優れ、強化系とも良い相性になると期待している。

 そして何より俺を特別な位置に足らしめているのが魂に結び付いた聖杯によるサーヴァント召喚能力。なの、だが。これがとんだ曲者だった。なんとサーヴァントを完全に降臨させるにはいちいち詠唱をしなくてならない。『素に銀と鉄~』を全て言い切らなくてはならないのだ。最初は普通に1分以上かかっていたが、今では30秒程まで短縮できるようになった。人はこれを50歩100歩といい、どちらにせよ戦闘中に絞り出すには気が遠くなる時間を彼方に置き去りにした予備動作と言わざるを得ない。しかも召喚後の維持魔力は俺が捻出しなければならない為、現界時間もシビアであるというおまけつきだ。いちおう、俺の魂に聖杯があるせいか一度召喚したサーヴァントはそこにしまわれるらしく、記憶も俺と共有するから召喚後に意思疎通をしなくていいのが救いか。

 これは余りにも使い勝手が悪いと、試行錯誤の上でなんとか俺は無詠唱で一度召喚したサーヴァントを再召喚できるようになったが、その代償にその力量は半分程に落ちてしまう羽目になった。レベル半減といったところか。まあ、使い分けられるのならば悪くないと考えておこうと思う。

 また、召喚するサーヴァントも注意が必要だ。聖杯として願望器の御褒美がない以上、サーヴァントが協力的であるとは限らない。というか、その前提条件がある正史聖杯戦争でさえもマスターとサーヴァントの仲は大概アレである。藤丸立香まじでスゲェ。ともかく、俺様なサーヴァントは絶対に召喚してはいけないのである。ギルガメッシュやオジマンディアスなぞ、召喚した瞬間が俺の死亡時刻となるだろう。

 ある程度力になってくれるとなれば、騎士系サーヴァントや仕事人系のサーヴァント。前者は円卓の騎士などがいるし、後者はエミヤやハサンなどが該当する。制約はあるとはいえ、自由度は失われていないといえる。

 

 さて、ここまで長々と自己分析をして現実から目を逸らしていたが、そろそろ一番の問題点に視点を向けよう。俺はクルタ族なのである。そう、幻影旅団にクラピカ以外は(みなごろし)の憂き目に遭うあのクルタ族だ。

 これが単なる異世界転生であったなら問題はなかっただろう。原作などナンボのもんじゃいと、征服王イスカンダルあたりを召喚して幻影旅団を仕留めるかすればいい。これができないのは俺と同じく異世界転生を果たした人物がこの世界にもう一人居て、ソイツと俺はお互いに殺し合う立場だからなのが最も大きい。原作で悪名高い幻影旅団があっさり壊滅すれば、どんなバカでもその原因がもう一人の転生者だと気が付くだろう。スーツの男――もう神でいいか。あの神も転生者を選り好みしていたようだし、まさか原作知識のない人間は選ばれまい。神は俺と相手の殺し合いをどこか楽しみにしていたようだし。

 こうすると困った事になる。俺は転生して早々、家族を見捨てる決断を下さなくてならないのだ。クルタ族の壊滅は必須事項だし、それを防いだとすれば俺の素性はあっさりと暴かれるだろう。後は暗殺に特化したゾルディック辺りに俺の暗殺依頼を出せばそれで終わり。仮にサーヴァントがゾルディックに勝てたとしても大きく疲弊する事は間違いなく、その状態でもう一人の転生者に襲われてはひとたまりもない。斯くして俺は見事に殺されるだろう。

 それに原作主人公組であったクラピカがその実力を発揮できなくなる可能性もある。ふと気が付いたら暗黒大陸の生物によって詰みの状態になることも普通にあるのだ。なにせキメラアントでさえ危険度Bであり、まだまだそれ以上に危険な生物もありきたりにいるとなれば、これは決して荒唐無稽な話ではないだろう。っていうか、もしかして原作通りに進めても人類滅亡エンドに至るのではないだろうかという考えは、浮かんだ瞬間に破却した。冨樫(アイツ)ならやりかねねェな…。

 結論として、クルタ族は幻影旅団によって殺され尽くされなければならない、となる。もちろん俺はその騒ぎに乗じて逃げ出すつもりではある。幻影旅団も緋の目の単語を聞いた時に『生き残りが居たのか』程度の認識であり、俺一人が逃げ出しても見つからなかったら諦めると考えられる。問題となるのは俺にそれが多大なストレスをかける事となり、これから見捨てる一族と仲良くなることができなかったという点だ。

 更に簡単に辿れないだろうとはいえ、クルタ族の生き残りがクラピカ以外に存在するとなれば、まずソイツが転生者なのを疑う。クラピカがクルタ族であると一般的に知られなかった上に、ネオン・ノストラードを代表とした人体収集家の目にも留まらなかったとすれば、積極的に探しても見つからないだろうと推察できる。その道専門のプロハンターとなれば話は別だろうが、逆に言えばそういったレベルでないと見つけられないのだろう。日本に住んでいて、南半球にあるどこかの部族に詳しい人間がほとんど存在しないのと同じ理屈である。

 とはいえクルタ族は原作でもインパクトがある。もう一人の転生者がまあ一応調べてみようかと思う可能性は否定できない。その場合、俺は瞬間で正体を露呈する事となり、一瞬で窮地に立たされる。これがクルタ族に産まれてしまった大きすぎるデメリットだ。

 探せば一応メリットもなくはない。とかくクルタ族というのは強力な人種であるようで、どいつもこいつも溢れ出るオーラが尋常じゃないのだ。外部から入ってきたクルタ族でない人間と比べれば一目瞭然、立ち上るオーラが別の生物かという程に違う。纏を覚えた訳でもない非念能力者を称してあの(・・)ウヴォーギンが『強かった』というのも納得であり、その恩恵は当然俺にも与えられている。つまり才能という点に於いて、トップクラスであるとも云えるのだ。産まれてくる体を選べない身としてはこれは相当な幸運だ。何せ、プロハンターになったポックルでさえ師団長クラスの蟻に歯が立たなかったのだから、才能があるという事にはどれだけ感謝しても足りるという事はない。

 

 最後に俺と殺し合う転生者について。

 これには当然ながら情報が少ないが、確定している事が幾つかある。まず、そいつも神によって特殊能力が授けられており、念でない異常な能力を持つ者がいればそれが転生者でほぼ確定だ。ナニカを筆頭とした暗黒大陸由来の異能力の可能性もあるから絶対ではないが、卍解を可能とした刀を持っていたり身長50Mの巨人になれるなどの分かりやすい能力であれば断定できる。また、念能力者である事も確定であり、歳不相応に力を磨いた俺と同じ年代の人物が居ればかなり怪しい。そして原作に異変があり、それが俺由来でなければその大本こそが転生者だ。

 逆に言えば分かっているのはこのくらいである。言うまでもなく、世界中から一人を見つけるとなれば少なすぎる情報だ。

 この上で俺の行動でまず確定している事は、プロハンターになるということだ。何せ入手できる情報に大きな差異が存在する。異様な能力を持つ者ならば殺されるか秘匿されるかだが、その情報でさえ普通には手に入らない。例えばバッテラのような大富豪ならば独自の情報網を築けるだろうが、その域に達するにはどれだけの奇跡を起こせばいいのやら。プロハンターになる方が現実的だという悲しい台所事情がそこには存在するのだ。

 そしていつのハンター試験に受験するかだが、ゴンたちと同じハンター試験を受ける事を決めている。その次年度のハンター試験でも悪くはないのだが、そうなると原作組と共に行動できない。この身はクルタ族であるからして、いつか原作からの異端者としてもう一人の転生者に目をつけられる事は確定している。ならば自分をエサにして釣りをするというハイリスクハイリターンの方法を選ぶのが比較的現実的というものだ。

 したくはないが、したくはないが。

 

 

 長い思考が終わる。

 そうすれば次は鍛錬の時間であり、俺は最大の円を展開した。

 これこそが俺が考えた最も違和感を持たれにくい修行方法である。クルタ族という異常才能者の集落であっては、下手に強力な練をすれば俺の異常性に気が付かれかねない。かといって練をしなければ顕在オーラも潜在オーラも伸びない。そこで纏と練の複合能力である円の出番である。これならば違和感を持たれないように修行ができ、更に隠を施すことによって絶の修行も加える事ができる。これって一種の発じゃね? とは思うが、どの系統にも合致しないのできっと発ではないのだろう。

「素に銀と鉄――」

 そしてサーヴァント召喚の呪文も同時に唱える。転生者と戦う時はまず間違いなく念とサーヴァントを両方扱わなくてはならない。

 ならば修行の段階でこの二つを組み合わせるのは当然だった。

「――抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ」

 詠唱が終わる。膨大な魔力が俺の魂から溢れ出して、眼前にエーテルの肉体が為される。

 そこには――寸前と変わらぬ景色があった。サーヴァントの姿などどこにもない。その光景を見て俺はニヤリと笑う。そうだ、これでいい。これでいいのだ。アサシンのサーヴァントが俺とのライン以外で知覚されては困るというもの。

『呪腕のハサン、召喚に従い参上しました。なんなりとご命令を、マスター』

『いつも手伝わせて済まない。今回も暗殺命令ではなく、偵察訓練だ。クルタ族の里を満遍なく回り、特にクラピカの情報を集めろ。

 ラインを繋ぎ、リアルタイムで俺と情報共有する練習もいつも通りだ』

『御意』

 ラインから伝えられる呪腕のハサンの存在が遠ざかる。意識を集中すれば呪腕のハサンの情報が俺にフィードバックされ、いわば共有酔いといった現象を起こし始める。これだから普段はマスターとサーヴァントはラインを繋がないのだが、いざという時にこれができなくて死にましたでは話にならない。俺はこの感覚に必死で慣れなければならないのだ。

 もちろん隠を施した円を維持したまま。辛い、辛いがだからこそ訓練になる。

 幻影旅団が襲来するのはクラピカが旅立った間であることは間違いない。シーラという女性が直前にここに訪れれば確定だ。

 ならば今は牙を研ぐ時。研鑽を怠る事は死に繋がる。

 

(生きる)

 例えクルタ族全てを見殺したとしても。家族を助けなかったとしても。

 転生者、バハトはどうしても死ぬ気になれなかったのだ。

 

 

 

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