まあ自分でもそろそろ見放されるかな、ヤバイかなとは思っていたのですが。
ちょっと短めで申し訳ない。
調子を掴んで、どんどん更新していきたいとは思っています!
◆
ヨークシン。昼下がりのある公園。
そこで些細なことからボカスカと殴り合うゴンとキルアを見て、緊張が緩まった笑みを浮かべるクラピカ。
近くの木陰で本を読んでいたレオリオは呆れを含んだ様子で、自分は関せずに本を開いている。その本がグラビアアイドル写真集なのは御愛嬌。
「後はバハトとポンズ、ユアか」
ぽつりとクラピカが言葉をこぼし、その言葉を拾うのはレオリオ。
「バハトとポンズは来ねーぞ」
「なに?」
「バハトの馬鹿が真正面から幻影旅団に喧嘩を売ったらしい。報復が怖くて逃げたとか」
「?」
レオリオの説明に首を傾げるしかないクラピカ。これで納得しろという方が無理だろう。
喧嘩を売って何故逃げるのか、ポンズが来ない理由は、ユアだけが来るのは何故。疑問は数々浮かぶ。
とはいえその答えをレオリオは知らないので、疑問の視線には肩をすくめて返す。
「詳しくはユアに聞いてくれ。オレはメールで簡単に話を聞いただけだからな」
「分かった。
が、それはそれとして、ユアが来るならそういう本を堂々と読むな」
クラピカが正論を言い、反論の余地もないレオリオは持っていた本を鞄にしまう。
と、そこでゴンとキルアの殴り合いが唐突に止んだ。
「おっ」
「ユアも来たね」
彼らが視線を投げかける方向に顔を向けて見れば、公園の入り口から向かってくる少女が一人。
金髪で活動的な服装をしたその少女は間違いなくユアだ。
だが。
「――なにか怒ってないか?」
「……うん」
「あれは怒っているな」
「だな」
明らかに不機嫌ですと言わんばかりの足取りで、ドスドスと擬音が立ちそうな様子のユア。
何故怒っているのか見当もつかない四人は困惑するしかない。
やがてユアは側まで来ると、クラピカを思いっきり睨む。
「……私が何かしたか?」
「…………」
言葉は返さない。ただ、固い声で一言告げる。
「場所、変えるわよ」
異論を許さない強い口調。否はないが、ユアのあまりの荒さが気にならないはずがない。
口を開くのはゴン。
「ねえ、ユア。どうしたのさ? なんでそんなに怒ってるの?」
「お兄ちゃんが幻影旅団に喧嘩を売ったからに決まってるじゃない」
「そんなん、バハトの勝手じゃねーか」
現に幻影旅団の賞金首狙いであるキルアが気軽に言うが、ユアはギロリと鋭い視線をキルアに投げつける。
「――あ?」
喧嘩を売られたと思ったのか、キルアの雰囲気も一変した。
二人のオーラが余りに剣呑となり、周囲を威圧した。
十数メートルは離れていた一般人が異様な空気を感じて怯えている。
「こんなとこでなんつーオーラを出してんだ。やめとけ」
「先はユアだろ」
「ふざけた事を言ったのはキルア」
「あ?」
「なによ?」
「やめなって。ユアの言う通り、場所を変えよっか」
ゴンの言葉で、いったん場を収める二人だった。
場所を変えて、適当に取ったホテルの一室。
ここなら多少不穏な空気になっても周囲にあまり迷惑はかからないだろう。もちろん暴れるのは論外だが。
だがここに来てまだ機嫌が悪いユアと、それに当てられて普段通りではないキルアとクラピカ。
どうにもこの三人で話を進めてもいいことがないと理解したゴンは、まずユアのことは置いておいてクラピカに話しかける。幻影旅団のうち一人を仕留めたのがクラピカであり、自分たちと同じ時期に念の事を知ったクラピカがどうやってあの化け物連中を倒せたのかを知りたかったのだ。
そしてクラピカから明かされる情報、念の制約と誓約という概念。それにより、クラピカは幻影旅団にしか念能力を発揮できないという事実。
「なんで、なんでそんな大事な事を俺たちに話したんだ!」
「何故…だろうな。奴らのリーダーが死んで気が緩んだのかも知れない」
怒りと驚きの表情を顕わにするキルアだが、クラピカはどこか
それに苛立ったように言葉を続けるキルア。
「奴らの中に、パクノダっていう記憶を読む能力者がいる! それにノブナガって奴がゴンに執着してるんだ!
もしも奴らに捕まって記憶を読まれたら――」
「ノブナガは死んだわ」
流れをぶった切り、ユアが口を開いた。
驚きでユアを見る四人だが、ユアは無表情で淡々と言葉を続けた。
「お兄ちゃんが殺した」
「なんっ……!!」
驚きの余り、言葉を失うキルア。他の三人もユアを見て、目を見開いている。
「それはいい、それはいいの。けど、お兄ちゃんはノブナガっていう幻影旅団から奪った情報を流したわ。
団員の
お兄ちゃんは幻影旅団を完全に敵に回したの」
そう言った後、ユアは激しい憎悪の瞳でクラピカを睨みつけた。
「――クラピカ。全部、お前のせいよ」
「待て待て、ユア。なんでそこでクラピカが出てくるんだよ?」
余りに唐突な論理の飛躍に、レオリオから待ったがかかった。これはいくら何でも話が繋がっていない。
そんなレオリオを馬鹿を嘲る目でジロリと見て、ユアは重く口を開く。
「お兄ちゃんは、自分の『敵』を倒す事だけを目的にしてきた。星を取れるような功績だってあるのに、今年まではそんなのに目もくれなかった。
おかしかったんだ、そんなお兄ちゃんが急にプロハンターになるなんて。だから、絶対に何かあるって思ってた。
そしてそんなプロハンター試験で、クルタ族の生き残りと出会う。そんな偶然あると思う? 訳がないわ、お兄ちゃんはクラピカに会いにプロハンター試験を受けに行ったんだ」
その言葉に驚くしかないのはクラピカ。他の面々も驚いてはいるのだろうが、その強烈さは段違いだ。
バハトは情報ハンターだ。しかも聞いた話によると、シングルハンターになろう実績もあるらしい。確かに、クラピカの情報を掴んでいてもなんら不思議ではない。
その話を前提に、ユアは言葉を続ける。
「幻影旅団から情報を抜いたのはいいのよ、お兄ちゃんの『敵』の情報があったんだから。情報を抜いた幻影旅団を殺したのもいい。念で情報を引き出したなら、それを知られたら殺すのは当然よ。
けど、その情報を流すのは絶対に変。それはお兄ちゃんの『敵』を倒すのに関係ないだけじゃなくて、幻影旅団なんていう障害を作り出すだけなんだから。
なんでそんな事をしたのか。そんなの、クラピカの
バハトが情報を流したおかげで、幻影旅団は今まで以上に追い詰められるだろう。幻影旅団としては、仲間が殺されてしかも旅団自体にも害を為すバハトを許す筈がない。確実に標的の一人となっているはずだ。
「ちなみにバハトはどうしたの?」
「逃げたわ、旅団に狙われるからって。ポンズさんも一緒」
「どこに?」
「知らない。記憶を読む能力者の存在をお兄ちゃんは知っていたのね、警戒して私には教えてくれなかった」
そこまで徹底して隠すとは、バハトはその逃げる先に追っ手がかからないだろう事に自信があるのだろう。だからこそ、ユアにさえ逃げる先は話さなかった。
更に言えば旅団を敵に回してまでして逃げた訳で、つまりはクラピカのフォローにもなるということだ。幻影旅団としてはおそらく情報を抜いたであろうバハトの追跡を優先するはずである。その分だけクラピカが動き易くなり、旅団を仕留めやすくなる。
だがバハトが旅団の一番の敵になってしまったのもまた事実。バハトを誰よりも大事にしているユアにとって、それは余りに痛々しい現実。そうでなくてもクルタ族は幻影旅団に惨殺されているのだ。その魔の手が再び最愛の兄に忍び寄っているとなれば、とても平静ではいられない。
みんな分かっていた、もしかしたらユアでさえ。クラピカを助けようが、幻影旅団を敵に回そうが、そんなのはバハトの勝手なのである。ユアの許可が必要な訳がない。だがそれでも、バハトが自分の命を、ユアの一番大切なお兄ちゃんを。危険に晒した事がユアにはどうしても納得できないのだ。クラピカに対する怒りは八つ当たりに過ぎない。
しかし、それを言っても始まるまい。ユアの感情は、理屈でなだめられるものではないのだから。
「これ、お兄ちゃんからクラピカへって」
嫌な沈黙が流れる中、ユアは分厚い封筒をクラピカへ手渡した。
「これは?」
「お兄ちゃんからのプレゼント。幻影旅団の情報だって」
「そうか。ありがとう」
「それはお兄ちゃんに言って」
ぶっきらぼうに返事をするユア。
クラピカはバハトが自分の手伝いをしてくれる事を嬉しく思いつつ、またそのおかげでユアにとことん嫌われてしまったことを寂しく思いつつ。バハトの指示通りにちゃんとクラピカへと情報を渡してくれたユアに感謝をして
瞬間、クラピカの携帯からメールの着信音が鳴った。
そのメールはヒソカから。『死体は
◆
広がる草原。奥まった方にある木々。そこに混じる風と視線。
グリードアイランドの開始地点、シソの木から見える風景である。
(っていうか、視線がウザイ)
ゲーム開始からコレかと、現状も併せてげんなりする。
ヨークシンのホームに設置したジョイステからこの場所に飛ばされたが、霊体化させたサーヴァントは聖杯に還ってしまった。感覚としては距離が離れ過ぎた為にラインが切れて現界できなくなった時のそれである。まあ、ヨークシンからグリードアイランドまで瞬間移動すればそれも当然か。アーチャーならば単独行動のスキルを持っているから現界できたかも知れないが、俺から離れたヨークシンにアーチャーを単体で残しても意味はない。
ポンズが来るまで、現状を整理の思考を回して時間を潰す。
「うわぁ。これ、本当にゲームの世界かしら。凄いリアリティ」
とはいえ、もちろん時間はほとんどない。同じゲームを使ってここに来るのだ、時差はオープニングの説明分だけである。
シソの木から降りてくるポンズに、簡単に返事をする。
「現実だよ」
「へ?」
「ここは現実、ゲームの中の世界じゃない」
「え、いやだって…え?」
「グリードアイランドは現実のどこかにある孤島さ。ゲーム機はそこに強制転移させる装置に過ぎない。放出系の能力者なら可能だ」
「えぇ~……」
あまりに夢のない言葉に、ポンズはやり切れない声をあげて微妙な顔をする。
まあ、なんだ。色々と台無しにしてしまった感はあるが、隠す価値がある話じゃないし。
ちなみに逃げ先にグリードアイランドを開示した際にもポンズは微妙な顔をしていた。凄く微妙な顔をしていた。ゴンとキルアが必死になって金集めをしていた目的の物を俺が持っていたのだから、その反応もまあ分かる。
分かるがしかし、俺はゴンにちゃんと言った。グリードアイランドならなんとかなる、と。それを蹴ったのはゴン自身である。俺に文句を言われても困るというものだ。まあ、ポンズは何も言わなかったが。
「まあいいわ。で、どこへ行きましょうか? 見渡す限り、ヒントはなさそうだけど」
「あっちかこっち」
俺は間髪入れずに指さした。ポンズは人の視線を感じ取る事はできなかったらしい。
疑問符を浮かべるポンズに説明をしながら、俺は心の中で苛立っていた。
この視線は行先を示す道標でありながら、俺がサーヴァントを召喚できなかった原因であるからだ。
サーヴァントは召喚された間から霊体化はできない。万が一を考えれば、その姿を晒す事は憚られる。結果、しばらくはサーヴァントの護衛無しにせざるを得ない。
もちろん魔力の関係からサーヴァントを召喚していない時間はあるのだが、他が原因でサーヴァントを使えないという状況は著しいストレスになる。自分でも多少神経質だなと思わなくもないが、自分が状況を支配できていないと不安になるのだ。一瞬でもそんな隙があると『敵』が襲ってくるのではないかという強迫観念は、昔から。
そんな感情は押し隠して、俺はポンズへの話を終えた。
「で、どっちに行く?」
「どっちって…どちらも情報はないのよね?」
「ああ」
「でも、ある程度の情報はバハトさんは持っているのよね?」
「…………」
なんで分かったし。
「そりゃ分かるわよ。分かり易いもの」
「俺は何も言ってないが?」
「だって分かり易いもの」
そんなにか。
自分の単純さにため息を吐きながら、ちょっとした自己嫌悪に陥りつつ。グリードアイランドでは常識的な情報を口にする。
「グリードアイランドではスペルカードというものを使い、他のプレイヤーからカードを奪えるらしい。これを防ぐにはやはりスペルカードによる防御しか方法はない」
「そのスペルカードの入手方法は?」
「さあ?」
「…………」
ここは知っていてはおかしい部分なので惚けておく。あくまで開示する情報は原作知識ではなく、情報ハンターとして得た分だけ。
ちなみにこの情報もかなり価値が高かった。グリードアイランドの情報は需要も供給も少ないので、高くなりがちなのだ。
「まあ、なんだ。名前や効果からして、手に入れるのがそんなに難しいモノじゃなさそうだしな。どっかの村や町で簡単に情報は集まるだろ」
「楽観的ね。ま、いいわ。全く情報がないよりかはマシだと思うわよ」
どうやらポンズは攻略本を見るのに抵抗がないタイプらしい。こういう他からの情報は、嫌う奴はとことん嫌う。ポンズがそうでなくて何よりだ。
ともかく、だ。
俺は『敵』に
だからこそ、このグリードアイランドでできる限りの地盤を作っておきたい。できるならば仲間を、最低限は協力者を募って『敵』への攻撃をかけなければならない。
手段はある。『敵』は間違いなくマチを操作しているという事と、バッテラと繋がっているという事。これらは十分な取っ掛かりになる。調査にサーヴァントが使えないのは痛手だが、バッテラが雇うプレイヤーは金次第で動く者ということでもある。例えばゴレイヌなどは上手く使えば役に立つだろう。
理想としてはグリードアイランドでこちらに有利な戦場を整えておき、そこに『敵』を誘き寄せることか。そこまでは無理でも、俺がグリードアイランドに居ると分かればマチや他に操作した人間を向かわせるくらいのアクションは期待していい。そして令呪を使えばメディアが記憶を吸い出せる事は分かっている。顔や名前が分かれば、ゾルディックに依頼もできるというものだ。
ポンズと共に新天地を踏みしめながら、先々について考えを巡らすのだった。