食料と水を買い集めて時間を作る。どうせ盗賊に全て奪われるモノだ、適当でいい。
さて。ここで今一度タイムスケジュールを確認しよう。
今日は9月4日。ヨークシンでは、ゴンやクラピカが旅団を相手に準備をしている頃だろうか。ユアの安全を切に願う。
そして首尾よくいけば、クロロに
問題なのは明後日、9月6日の夜にバッテラがヨークシンに来ること。そして彼が競り落としたグリードアイランドをフィンクスとフェイタンが強奪し、彼らがグリードアイランドにやってくる。手当たり次第に殺戮を繰り返すアイツラと関わる選択肢はない。とりあえず、マサドラに長居はしないでおこう。あそこは全プレイヤーがひっきりなしに訪れる場所だから、
その後、バッテラの選考会が9月10日に終わり、ゴンやキルアが参加する筈である。もしかしたらユアもここでグリードアイランドに来るかもしれない。パクノダに記憶を読まれる危険性を考慮してユアにも俺の行先は伝えていないが、そうなるとゴンやキルアと一緒に行動するか、ホームに戻るかの二択だろう。クラピカと一緒に旅団に復讐する訳もないだろうし、レオリオは勉強するだけだろうし。
落ち着いたらポンズに頼んでユアもグリードアイランドに呼ぶか、ホームに帰っていたら。パクノダが消えればこっちも不安要素が減る。まあ、シャルナークに操作されて秘密を喋らされる危険性はあろうが、奴に操作された時点で生き残る事は絶望的なので、グリードアイランドに入ってしまえば後は同じだと思っておこう。
ゴンたちはビスケに教えを乞い、3ヶ月以上は修行に時間を費やす筈だ。年始にあるハンター試験にキルアが参加する為グリードアイランドを脱出するのと、ハメ組が全滅するのが同時期だったから。この間、幻影旅団もグリードアイランドに除念師がいる事を突き止めて、続々とこの島にやってくる。やはり奴らと遭遇しないように気を付けたいと思う。マチと旅団に挟み撃ちにされるなど、想像するだけでもイヤだ。
で、だ。この間、俺はどうするか。
まずはグリードアイランドのどこかに、罠を結集した拠点を築きたい。そこにマチなどの『敵』の手駒を引き込めれば大成功といえる。
それから、可能ならば協力者も集めたい。グリードアイランドに参加する念能力者が『敵』を相手にどこまで役に立つかはあまり期待していないが、数は力だ。敵を探るには役に立つだろうし、最悪肉壁として使い捨ててもいい。俺が操作系じゃないから不安が残るが――ユアの能力でそういう何かはないだろうか? 結構エグい能力作ってそうなんだよな、アイツ。
これらはじっくり取り掛かるとして、まあ3ヶ月くらいはかけていいだろう。グリードアイランドの指定ポケットカードや
大まかな指針はそれでいいだろう。考えをそこで打ち切り、近づく気配に顔を向けた。
「お待たせ」
「時間通りさ」
ポンズとにこやかに挨拶をして、懸賞都市アントキバを後にする。向かうは北、魔法都市マサドラ。
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現在追剥中
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「見事に引ん剥かれたなぁ」
「…随分と斬新な山賊だったわね」
俺はまあ知っていたからこの程度だが、ポンズは微妙な顔をしている。本当に凄く微妙な顔をしている。
スライディング土下座からの、情に訴えて身包み剥がされたのだからそれもむべなるかな。俺たちのバインダーの中身は0。俺は上着も差し出したし、ポンズは持っていた毒を含む薬品全部を差し出す羽目になっていた。蜂を飼っている帽子は見逃された辺り、操作系のトリガーになるものは一応除外されているようだ。
しかしそれでも武器から何から全部奪われるのは地味に痛い。俺が差し出した方がいいという言葉と、それから李書文に習った中国拳法の技がなければ。ポンズもカードはともかく薬品は渡さなかっただろう。
ここで山賊の要求を1つでも断ったら、奇運アレキサンドライトは手に入らないのだろう。最悪の話、
さて、北の山を越えたからここは岩石地帯。モンスターが出現する場所でもある。
『俺は見学でいいのかね?』
『しばらくは大丈夫だろ。俺が死にかけたなら、状況に応じて助けてくれ』
『ポンズの嬢ちゃんは?』
『見殺せ』
『りょーかい』
霊体化させて侍らせているのはランサーのサーヴァント、クーフーリン。
というのも、グリードアイランドはアサシンのサーヴァントとすこぶる相性が悪いのだ。情報収集するにしても、指輪をはめたプレイヤーが行動しなくてはイベントは進行しない。暗殺するにしたってカードは手に入らないのだから旨味がない。これで移動スペルでサーヴァントが共に行動できなければ泣くしかない。
まあという訳で、グリードアイランドでは主に身を守ったり、俺の周辺を警護するのに向いたサーヴァントを喚んだという訳だ。今回もコストパフォーマンスに優れたクーフーリンにお出ましを願った訳である。
つらつらとそんな事を考えていたら、一つ目の巨人の群れが姿を現した。岩石地帯で視界が悪いとはいえ、よくもまあこの数の巨体にここまで接近されるまで気が付かなかったものだ。普通に考えれば、プレイヤーを感知してすぐ側の岩陰からポップしたのだろうけど。
「デカっ!?」
「ぐぉぉぉぉぉ!!」
思わずポンズが叫び、雄叫びを上げた一つ目巨人が持っていた棍棒を振り上げる。しかしデカイ割には動作に隙が多い。所詮はGランクか。
棍棒を避け、岩場を足場にして駆け上がり、自分から弱点を主張しているような大きな瞳に蹴りを叩き込む。すると巨人は煙を出して悲鳴を上げて消えていく。残るのは紙切れ1つ、カード化された巨人。しかしサイズの落差がひどいなコレ。
「はっ!」
弱点を理解したポンズも同じように岩場を蹴り上がり、弱点である一つ目に拳を叩き込む。その巨人もカード化し、素早く回収してバインダーに収める。
威力だけはありそうだが、こんなものにいちいち手間取ってはいられない。程なく全ての巨人を殲滅する。レベルとしてはプロハンター試験の、ブハラの試験の威力だけ上がった感じである。問題など起きようはずもない。
「思ったよりも弱かったわね」
「まあな。でも、こいつのランクはG。最低がHだとしても、下から二番目程度の弱さってこと。
ニッケスから聞いただろ、最高ランクはSSだって。このパワーだけでGランクとなると、後々の敵は厄介な事になりそうだ」
拍子抜けしたように言うポンズに釘を差す。SSランクとか、つまりはレイザークラスだ。超1流の念能力者であるゲームマスターが相手になるレベルの難易度が4~5個。それが指定ポケットカードだと考えると、ジンは誰かにこのゲームをクリアさせる気があるのだろうか。
……。俺の息子ならやれる! とか根拠なく言い切るジンの姿が思い浮かんだ俺はきっと悪くない。
「注意は必要って事ね」
「いつでもな」
そう言い合い、北を目指す。と、10分も歩いたところで異変が。ゴロゴロゴロと何の脈絡もなく岩肌から落石が起きたのだ。しかも俺たちに直撃コース。
無言でさっと後ろに下がる俺とポンズだが、まるで追尾するようにその軌道をこちらに変える。
「「…………」」
偶然ではあるまい。凝で見ればやはり落石にオーラが付いており、それは先にある地面の裂け目に繋がっていた。
「ポンズ、下がれ」
言うだけ言って、俺は前進する。2手に分かれた俺たちだが、やはりというか地面の裂け目に近い俺に向かって落石が向かってくる。
まるっと無視して、地面の裂け目をのぞき込めば。そこには小さなネズミがオーラを出していた。そのネズミは俺に見つかった途端にびくりと身体を震わせて目を回し、カード化する。
「リモコンラットか」
こういう操作の仕方もあるんだなぁと、無駄に感心してしまった。ちなみに操作から外れた落石は明後日の方向にゴロゴロと転がっていく。
と、ガチっと何かに引っかかったのか、落石が中空に跳ね上がる。しかも何故か俺に向かって一直線に飛んできた。
「…………」
無言で堅をして、襲い掛かる落石に拳を当てる。バカンと真っ二つに割れた落石は俺の左右に落ちて、今度こそ動きを完全に止めた。
「……偶然、だよな?」
俺はまだ奇運アレキサンドライトは持っていない筈なのだが。
まあいいかとポンズの方を振り返れば、彼女は俺に背中を向けて奥にいるバカデカいトカゲを見上げていた。
一瞬、思考が止まる。モンスターの出現率高ぇな。
「きゃあああっ!」
「どわぁぁぁっ!」
反射的に殴り掛かるポンズだが、メラニントカゲにダメージはない。牛も丸呑みにできる巨体とは思えぬ俊敏さで襲い掛かるからして、逃げるしかない。俺とポンズは一緒になって走り出した。
「――って、あら?」
と、何かに気が付いたポンズが横にあった岩を足場に高く飛び上がる。そしてメラニントカゲの背中を取り、そこに拳を叩き込んだ瞬間、メラニントカゲはぐるんと白目を剥いて気絶しカード化した。
「走り方がおかしいと思ったら、やっぱり急所を庇っていたのね。
――体中に一つだけあるホクロが弱点、か」
カード化したメラニントカゲの説明文を読みながらポンズは納得する。
答えを知っている俺よりも早くソレに気が付くとは恐れ入った。ポンズの観察眼がゴンやキルアよりも上ということだろう。
どうやら岩石地帯では俺たちが苦戦するような敵は少なそうだ。
「思ったよりサクサク倒せるな。じゃ、先を急ぐか」
カード代も稼がなくちゃならないし、モンスターは倒していく方向で。
そして岩石地帯を抜ける頃には出会ったほとんどのモンスターをカード化する事に成功していた。バブルホースは1回逃がしたが、カラクリを見破ればなんてことはない。俺には簡単に捕縛できた。が、ポンズはまだ無理みたいだった。纏と絶の切り替えって地味に難易度高いんだよな……。
と、いう訳でマサドラである。しかし不思議な景観の町だな。
「思ったより順調に来たわね」
「俺らは案外相性いいかもな」
実際、地力だけならば俺はハンターでもトップクラスだとは思う。それにポンズの観察眼が合わせれば大半のプレイヤーが命懸けとなるらしい岩石地帯もなんなくクリアできた。
まあ、俺もポンズももうちょっと修行はしておきたいところだけど。
ひとまず手に入れたモンスターカードを売り払い、金だけを手元に残す。モンスター達は結構いい値段で売れて、合わせて100万程の貯金ができた。
さて、フリーポケットは1人45枚分。スペルカードで30枚くらいは埋めておきたい。
「ニッケスから聞いた話によれば、聖騎士の首飾りは必須よね」
「だな。スペルカードを買いまくって、コモンカードは売り払おう。50回に分けて売ればすぐにお得意さんになれるしな」
1万ジェニーで3枚入りのスペルカード、とりあえず10万持ってスペルカード屋の前に並ぶ。
入ったグループが抜けない限り、次のグループは店に入れないらしい。なるほど、何が当たったのかを知られない為の措置か。店の中でバインダーに入れないといけないし、レアカードが当たったとしてもすぐにバレる事は無さそうである。徹夜することもあるとは聞いたが、まあ稀な現象だろう。もしくはハメ組が大挙としてやってきた時に運悪く当たったか。
ほんの30分程度で俺とポンズが入店する。そして30枚のカードを買い、確かめてバインダーに入れる。
「あ、Bランクが当たったわ。
――1番欲しいカードをあっさり引くとは、持ってるなポンズ。
とりあえず
スペルカード屋を出て、クズカードを売り払う。で、スペルカード屋の前を張って、明らかに実力が低そうな上に落胆した奴を待って話しかける。一つ目巨人で500ジェニーくらいしかならなかったから、マサドラまで来るのに命懸けな奴は金策にも一苦労なのだろう。60億近くするグリードアイランドを買って、1万ジェニーに四苦八苦するとはなかなか皮肉な話であるが。ちなみにバブルホースは50万以上した。流石Cランク。
それを繰り返し、4人と交渉に成功。本当にクズカードしか持っていない奴もいたから、話しかけた数としては10人くらいか。手持ちのカードを全部受け取る代わりにゲームから脱出させる。
手に入ったカードは
それから
「しかしバハトさん、なかなかエグい作戦思いつくわね」
「まあ、こういうのは気が付くかどうかだからな。
1枚しかない貴重な
しかしちまちま恋愛イベントをやるのも面倒だな。ギャンブル都市ドリアスで魔女の媚薬が手に入るし、使えばショートカットとかできないだろうか? リスキーダイスは振りたくないから、
つらつらとそんな事を考えながら、手持ちの
コンプリートまで、残るカードは2種類。
黄金天秤を売った金で、聖騎士の首飾りを2つ買う。
「
ついでに2枚あるうちの1枚を使って、大天使の息吹があるページをガード。これで手に入れた瞬間に奪われる心配はしなくていい。
取らぬ狸の皮算用だが、順調にいけば大天使の息吹を最初に独占できるのは俺たちになるかも知れない。
ゴンたちのクリアもそうだが、グリードアイランドでマチや『敵』と戦うならば最も重要なカードになる事は間違いない。
ハメ組よりも先に是非入手したいものだ。
「金はたんまりあるし、作戦続行するか。挫折の弓の入手にどれだけ手間取るか分からないし」
「じゃあ
「…………」
ポンズよ、そこに気が付いてはいけない。