殺し合いで始まる異世界転生   作:117

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 アンケートにご協力いただき、ありがとうございました。
 ひとまず先が書きあがったので投稿しますが、折を見て夜のイベントシーンの作成したいと思います。

 ちょっと短めですが、キリがいいところまでとりあえずどうぞ。


028話 グリードアイランド・5

「…………」

「…………」

 すげー気まずい。

 今日は9月14日。魔女の媚薬を飲んでから一週間が経過し、効果が切れてまたしばらく時間を置いたが。しかし俺とポンズの気まずさはなくならない。

 まあ、あれだ。大人の男女が好きあった状態で何もしない訳がなく、ご想像通りの爛れた生活を過ごしてしまった。そして正気に戻った今、もう本当になんて言っていいのか分からない程の気まずさが漂っていた。

 ただし、俺とポンズの気まずさはちょっと違うだろう。俺も最初はひたすら気まずいだけだったが、逃避する為に神眼(ゴッドアイ)で見れる指定ポケットカードの説明文を見ていた時に、それに気が付いてしまったのだ。魔女の媚薬は『意中』の相手にしか効果がないのだと。

 つまりはそういうこと。俺はポンズに対して自覚もなかったし、ポンズもそういう素振りを見せた事はなかったと思うのだが。

 俺たちは、相思相愛だったらしい。その上でヤる事はヤっている。そして俺も男だ。今までは『敵』を殺すことに全力を注いできたが、恋人が欲しいと思わないわけでもない。

「ポンズ」

 声をかけた俺に、ビクッと体を動かすポンズ。

 彼女は恐る恐る顔をこちらに向けた。

 ――まいった。こういう時、気の利いた言葉が出てこない。傍でニヤニヤとしている雰囲気を出しているクーフーリンは完全に無視する。百戦錬磨の恋愛をしたクーフーリンに助言を乞えば、気の利いたアドバイスも貰えるだろうが。男の意地とそれからなんかムカつくのも合わせて、その選択肢は存在しなかった。

「愛してる」

 そうして選んだ言葉は、惚れ薬で熱に浮かされた時と同じもの。

 なんてことはない、俺の感情が加速されただけで…別に惚れ薬を飲んだ時の俺が俺でなかった訳ではないのだから。

 しかし、全員が全員そういう訳ではないのだろう。ポンズは前と違い、俺の事は見つめてこない。ただ、潤んだ瞳と赤らめた顔をしたままで。

 コクリと頷いただけだった。

 

「そういえばバハトさん、明日ってアントキバで懸賞大会が開かれる日だっけ?」

 ポンズの呼び方が惚れ薬を飲む前に戻ったが、そこはまあどうでもいい。問題なのは変わった関係だ。お互いに恋人以上であることは確認した上で、これからどうするかを話し合っていく。

「ああ、そうか。明日は15日か」

「今月はジャンケン大会だったわよね。参加する?」

 ポンズの問いに、んーと考える。1000人以上が参加する大会な上に、放っておけばキルアが優勝するイベントだ。参加する意義はない。ただし、参加すればゴンやキルアと(それからいればユアとも)合流できる。

 できるがしかし、ここでゴンたちと会ってしまうと一つの問題が起きてしまう。ビスケによる修行フラグが折れてしまうのだ。これは彼らが大きく成長するのはもちろん、育成能力に長けた彼女とゴンたちが知り合う機会を逃すのは余りに惜しい。原作からも離れてしまうというのもマイナスポイントだ。

 やはり、ここでゴンたちと出会う必要はない。

「別にいいかな、参加しなくて。ゲームクリアとかどうでもいいし。それより、一週間も時間を無駄にしちまったし、拠点作りに移ろう」

「そう。分かったわ」

 基本的に俺の方針に従ってくれるポンズは本当にありがたい。想い合う関係になった今ならともかく、グリードアイランドにまで付き合う義理は彼女になかったというのに、だ。

 それに罠の作成など、サーヴァントならともかく俺にノウハウはない。彼女がいてくれて本当に助かっている。

 動き出す前に、この一週間で交信(コンタクト)による連絡があった事を思い出す。俺に連絡をよこす相手は一人だけだ。爛れた生活を送る事のみを考えていた時と違い、情報は仕入れた方がいいという判断は今ならつく。

 スペルカードを取り出して、使用。

交信(コンタクト)使用(オン)。ニッケス」

 一瞬の間が開き、バインダーから声が漏れだす。

『誰だ?』

「バハト」

『お前か。前にこちらが交信(コンタクト)で連絡とった時は随分な態度だったな』

「取り込み中だったものでな」

 向こうの嫌味を軽くいなす。

 ニッケスは俺のバインダーリストに入っており、そして実力による格付けは終わっている。俺がその気になれば磁力(マグネティックフォース)で強襲し、ニッケスを即座に殺せる立場である。そうである以上、奴は必要以上にこちらを刺激しない。見下されないように対等である事を誇示するだけだ。

 実際、前の時は俺が悪いのでこの程度は言われなければならないだろう。こちらも向こうもそれは分かっている。だからこの会話は、まあ挨拶みたいなものだ。

『まあいい、言う事だけ言っておく。マチというプレイヤーがグリードアイランドに入った。4日前だったな』

「……4日」

 選考会が終わった時と時期をほぼ一致する。マチが『敵』の手駒であることを確定とするならば、ゴンやキルアと接触することを目的としているのか。それとも別の思惑があるのか。

 とはいえ、マチがグリードアイランドに入ってこないという心配はなくなった。最悪マチだけでもこちらの陣地に誘い込んで、殺す。問題は『敵』も一緒にいるかどうか。それに『敵』かどうか分からないが、もしもマチと一緒に行動していればそれだけで俺の敵対者であると判断するには十分である。

「ニッケス、依頼をしたい」

『なんだ?』

「マチと共に行動している人間がいるか知りたい。調べてくれるか?」

『……報酬は?』

「マサドラで聖水(ホーリーウォーター)を当てた。Aランクのスペルカードだ。そっちは防御カードは独占しておきたいんじゃないか?」

『なるほどな。確かにお前に下手に使われるより、こちらが確保しておきたいカードだ。

 調べるのはマチが誰かと一緒に行動しているかだけでいいんだな? 誰も一緒でなければその結果を、もしも行動していればその者の名前を伝えればいい』

「ああ。情報がまとまったら交信(コンタクト)で連絡をくれ。直接会って、その情報と交換で聖水(ホーリーウォーター)を渡す」

『分かった、それでいい』

「頼んだぞ」

 そう言って交信(コンタクト)を切る。ひとまずはこれでいい、マチのバインダーに俺やポンズの名前が載るのは危険だ。ここは他の手足を使うべきだろう。

 次に交信(コンタクト)をバインダーにはめ込み、リストの一覧を見る。雑魚の名前などいちいち覚えていないが、こうすれば名前を確認できるから便利だ。

 目的の相手は、マサドラで離脱(リーブ)を求めてカードを買い漁っている連中たちだ。

交信(コンタクト)使用(オン)。ケーブ」

 さて、労働力を集めるとするか。

 

 ◇

 

 難しい顔で考え込むニッケスに、怪訝な顔で話しかけるゲンスルー。

「どうした?」

「いや、何でもない。ちょっとした手間で聖水(ホーリーウォーター)を手に入れられる目途がついただけだ」

「朗報じゃないか!」

 喜色を浮かべるゲンスルーだが、ニッケスの表情は暗いまま。

「そのちょっとした手間が、プレイヤーキラーであるマチを調べることなんだがな」

「――ちょっとした手間って言わないな、そりゃ」

「だが、聖水(ホーリーウォーター)を確保できるなら悪くない話だ。マチと出会っていない奴をマサドラのスペルカード購入組に回そう。

 奴とて、誰も彼も殺している訳じゃない。スペルカード屋で並ぶ事を利用してバインダーリストに加え、共に行動している仲間がいるかを調べる。それだけでいい」

「攻略をしていない奴ばかりを殺すマチもよく分からん奴だが、それを調べる奴もよく分からん。なんで爆弾魔(ボマー)や他のプレイヤーキラーじゃなくてマチだけなんだ?」

「さあな。俺たちが気にする事じゃない」

 ゲンスルーがニッケスの肩に手を置きながら口にするが、本当にニッケスの知った事ではない。

 アントキバで出会った時から気にしていたから、マチがバハトの命を狙う者かその仲間かといった想像は働くが、ニッケスには関係ないことなのだ。

「それよりも大天使の息吹だ。持っている連中はまだ特定できないのか?」

「ああ。ランキングも100位までしか調べられないからそこまでのプレイヤーを総当たりしたらしいが、大天使の息吹を持っていた奴はいなかったらしい。

 全てのプレイヤーを調べるのも現実的じゃないしな」

「……どう思う、ゲンスルー?」

「普通に考えればツェズゲラ組などのトップグループのどこかが独占し、指定ポケットカードを0にしてランキングから逃れると考えられるが」

「だが、トップグループの仲間たちのバインダーも全部調べたんだろ?」

「もちろんだ。だが見つからない。もしかしたら大天使の息吹を隠す為だけに新しい仲間を雇ったのかもな」

「可能性はあるな、クソ!」

 最難関のSSランクカード、大天使の息吹。ようやく入手できるかと思ったが、タッチの差で別の誰かがスペルカードをコンプリートしてしまったらしい。彼らが入手できたのは大天使の息吹の引換券だった。

 そこまではまだいい。大天使の息吹のカード化限度枚数は3枚だから、堅牢(プリズン)で守りきれている訳がない。1枚か2枚はフリーポケットに入っているはずなのだ。ならばスペルカードを独占し、攻撃を仕掛ければ必ず奪える。

 問題は、誰が所持しているのか分からないということ。名簿(リスト)で調べたところ、2人のプレイヤーが所持しているとは分かったが、肝心のそれが誰だかが分からないのだ。これではスペルカードで攻撃する云々の話ではない。

 こちらの作戦を見透かされたような対処法に苛立つニッケスを、冷静な声で諫めるゲンスルー。

「落ち着けよ、幸い引換券は最初に手に入れられたんだ。手に入れたプレイヤーがランキングに載っていないことを考えれば、あっさりと死ぬかも知れん。マチのようなプレイヤーキラーだっているしな。

 そうじゃなくても、SSランクのカードは価値が高い。案外、独占するよりも指定ポケットカード10枚と交換をすると考えたりもするかも知れん」

「ああ、そうだな。悪く考えすぎてもいいことはない、か」

 やや冷静でなかったニッケスは、ゲンスルーの言葉で落ち着きを取り戻す。

 今は手に入らなかったカードの事で嘆いていても仕方がない。まずはスペルカードの独占に集中すべきだ。場合によってはスペルカードで攻撃を仕掛けてライバルの防御カードを浪費させることなども必要になってくる。

「頼りにしてるぜ、ゲンスルー」

「信頼には応えるさ。なんせ20億だ、5年も時間をかけたんだから間違いなくクリアしないとな」

 フっと笑うニッケスに、真面目な顔で頷くゲンスルー。初期メンバーである彼らの取り分は20億、5年ならばよい稼ぎといえるだろう。

 確かなクリアを目指し、彼らは今日も金を稼いでスペルカードを購入していくのだった。

 

 ◇

 

「この辺りでいいか?」

「そうね、85点ってところかしら」

 恋愛都市アイアイの周辺を探索し、罠を仕掛けるのに向いた場所を見つける。スペルカードで接近される事と相手が最低でもマチである事を考慮すれば、全方位を警戒するのは得策ではない。奥に長い洞窟を探し出し、その道中に罠を仕掛けていく作戦をポンズは提案した。

 ここがグリードアイランドでなければ場合によっては自らの退路も断つ籠城戦になりかねないが、スペルカードはこちらも使える。撤退には再来(リターン)1枚あれば十分だろう。

 理想としては罠で時間を稼いでいる間に投石(ストーンスロー)などで相手のスペルカードを破壊し、同行(アカンパニー)で洞窟の最奥にいる目印の人物まで敵対者を引きずり込む。こちらは磁力(マグネティックフォース)で洞窟の出口まで飛んでそこで待ち構え、脱出するのに消耗した相手を仕留めるというもの。

 もちろん、下手にマチなどの敵対者と遭遇していなければ普通に籠城にも使える。身を守れる要塞でありながら、敵を消耗させる攻撃にもなる。作成するのはそんな陣地だ。

「じゃあ、ポンズはここでどんな罠を作るか構想を練っておいてくれ」

「バハトさんはマサドラに行って、人手を集めてくるのね」

「ああ。拘束期間は3ヶ月くらいを考えている。『敵』も動く以上、これも楽観的な数字だがな」

「……思ったより時間はないと、そう考えておいた方がいいわね」

「そうだ。なるべく急ごう、頼むぞ」

 俺の言葉に、力強く頷くポンズ。

 それを確認して、俺はカードを取り出す。

再来(リターン)使用(オン)。マサドラへ」

 俺は一瞬にしてその場を離れ、戦う為の下準備に力を注ぐのだった。

 

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