殺し合いで始まる異世界転生   作:117

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最近言ってなかったですが、いつも誤字報告して下さる方。本当に助かっています。
またもやや短いですが、投稿させていただきます。

読んでいただける事に感謝を。


033話 グリードアイランド・8

 

 どうしよう。

 俺の思考のほとんどがそれで占められていた。こんな考えしか浮かばない辺り、もうどうしようもないのは分かっているのだが。

 原因は言うまでも無く、俺の眼前でうなだれているニッケスと、彼の肩につけられた命の音(カウントダウン)を除念しているポンズ。ニッケスは言うまでも無く原作では死んでいた人物である。

 死ねとは言うまいが、生きてるんじゃねぇとは言いたい。

 いや、もう、これ、本当にどうしよう。

「ま、殺された人にこれ以上こだわっても仕方ないわさ」

 切り替えるように口にするはビスケ。その言葉を皮切りに、面々も大なり小なり引きずりながらも思考を切り替えていく。

 俺としても、今更ニッケスを殺す訳にもいかない。最低でもゴンを確実に敵に回すからだ。彼の信頼を裏切る訳には絶対にいかない。

(死んどけよ、クソっ)

 最後に心の中で悪態を一つ吐いて、俺も思考を切り替える。仕方ない、ニッケスが生存する前提で話を進めていくしかあるまい。

「それでポンズ、命の音(カウントダウン)の除念にどれくらい時間がかかりそうなんだ?」

「相当かかる、としか……。

 私の能力は、正確には除念じゃなくて解析なの。理解した発を逆方向に解していくだけ。強制的に祓ったり、解除する能力じゃないわ」

「でもヨークシンで遭った念能力者の、サソリの念獣はすぐに除念できなかったかしら?」

 ポンズの解説にユアが疑問を呈するも、ポンズは除念をしながら首を横に振る。

「あれは相性が良かっただけ。あの時に寄生された念獣は、強制的に私のオーラを使って具現化し続けるという念だったの。そして寄生された側は具現化させ続けられる念獣によって、やがてオーラが枯渇する。

 でも、それは言い換えれば私のオーラで存在する念獣でもあるという訳だから、核となる部分を除念すればそれで終わったわ。

 けれどもこの念、命の音(カウントダウン)は爆発力に多大なオーラが込められている。起爆部分は脆かったからすぐに除念できたけれども、爆弾部分は地道にオーラを相殺するしかないわ」

 つまり小細工には強いが、力技には弱いのがポンズの能力なのだろう。繊細な分解こそ他の追随を許さないが、単純に膨大なオーラを相手にするように出来ていない。

 ポンズの除念能力は強化系や放出系、変化系にはほぼ無効。操作系や具現化系とも地力で劣れば、今回のように即効性はないのだろう。あくまでポンズの能力は解析であり、分解はその本領ではないのだ。

 その上でポンズは顔をしかめる。

「でも、この念は何かおかしいわ。具現化系の筈なんだけど、ゲンスルー本人から離れているのに弱まる気配がちっとも無いのよ。

 しかも脈を測るなんて操作系も高水準で備えているし――」

相互協力型(ジョイント)だな」

 ポンズの疑問に答えた俺を、ビスケを除く全員が何それという表情で見る。ビスケはお手並み拝見といった様子だ。

 ちょっとだけ考えて、バインダーを出して一枚の呪文(スペル)カードを取り出す。

「例えば、このグリードアイランドにある全てのカードは具現化されたものだ。そして移動系の呪文(スペル)カードは、高速移動の能力を持つ。

 呪文(スペル)は具現化系で移動の能力は放出系、真逆の系統だ。

 だがここに、具現化したカードに移動系の念を込めるとする。それが実現した時、この再来(リターン)のように『具現化したカードに移動能力を持つ念能力』が実現するって訳だ。

 この例のように、2人以上の念能力が合同で使う発が相互協力型(ジョイント)と呼ばれる」

「いや、ゲームの呪文(スペル)で説明されてもな」

 キルアが呆れたように言うが、俺はそれに更に追加して呆れてやる。

「グリードアイランドは現実世界に決まってるだろ」

「……は?」

「気がつけよ。ゲームの中に入るって、電脳世界に身体を変換するって意味だぞ? 一人ならともかく、何百人も同じ世界に呼び込める訳がないだろ。明らかに人間の領分じゃない。

 そもそも、ゲーム機の前で練をするだけで自分の作った世界に引き込めるとか、念能力者殺しにも程がある」

「あ」

 ここでようやくビスケが気がついたらしい。

「そっか。あたしはここが念空間かと思ってたけど、確かにこんな巨大な念空間を構築するのは現実的じゃない。

 グリードアイランドのディスクは瞬間移動装置だった、っていうなら納得だわさ」

「そ。ここは現実世界のどこかで行われている、グリードアイランドっていう島で行われている」

 ゴンとキルア、ユアは絶句していた。ゲームの中に入り込んでいたと思ったら、瞬間移動しただけという話を突きつけられればそれも分からんでもないが。

「ここが、現実……?」

「じゃあ、もしかしてジンもこの中に?」

「そこまでは知らない。ジン=フリークスの情報は持っていないからな。しかし、ゴンをグリードアイランドに呼び寄せたなら、手がかりの一つでもあっても不思議でもないが……。

 10年以上前の情報かぁ。気が遠くなるな」

 ゲームクリア報酬の磁力(マグネティックフォース)を使ってニッグに会いに行けるのはゴンだけ。その方法でなければジンの情報は、このゲームの制作者というだけである。

 それだけでジンの行方を追うのは、はっきり無理だ。つくづく抜かりがない男である。

「でも、もしかしたらジンの手がかりがグリードアイランドにあるかも知れないし、ジンがやってみろって言うならクリアしたいしね。

 俺はやっぱりゲームクリアを目指したいな」

 難しいニュアンスを言葉に漂わせるが、ゴンは一切悲観した様子がない。この芯の強さは流石の一言だ。

 そして、こういった無垢な頑固さは念能力において得がたい才能でもある。ゴンは柔軟性がない訳じゃないしな。むしろ固い芯を軸にした突飛な発想力は常人が生み出せないアイディアを捻り出せる。普通、現実世界っていうか外の世界に呪文(スペル)カードを持ち出すという発想は生まれないし。

「まあ、ゴンがゲームクリアをするのは勝手。けど私はお兄ちゃんの『敵』を倒すのが優先だから」

「それは俺もだ。ゴンのゲームクリアも手伝うが、優先順位は変えないぞ」

「もちろんだよ。バハトもユアも、自分の目標を大切にしなくちゃ」

 程よく話が元に戻ってきた。

 俺とユア、ポンズが『敵』を殺す事が目標であり。ゴンとキルア、ビスケがゲームクリアが目標となる。お互いに協力できるところは協力すればいいが、お互いに優先順位を間違えてはいけないだろう。

 いやまあ、俺としてはゴンやキルアはともかくビスケには協力して欲しいが。ビスケの優先順位に俺の『敵』を殺すというのがランクインすらしていないのだから、如何ともし難い。

 ともかく話がこれからどうしようかという方向に進んでいく。

「ちなみにビスケは俺の目的は知ってるか?」

「ゴンがポロっと漏らしたわね。顔も名前も知らない相手と殺し合ってるんだって?」

 ポカリとゴンの頭を殴っておく。ユアとキルアは情報を漏らす訳がないから、ビスケに失言するとしたらゴンだろうとは思っていたが。

 そんな茶番劇を見ながらヒラヒラと手を振るビスケ。

「ま、あたしは関係ないわね。勝手にやってればいいわさ」

「そうなるよな、やっぱり」

「あ。私はお兄ちゃんと合流できたし、お兄ちゃんに付いていくから」

「俺はゴンだな。もちろん戦うその時になったら手を貸すから呼んでくれていいぜ」

 ビスケの手が借りられない事が確定し、更にユアとキルアが自分の立場を表明していく。

 それはまあいいのだが。

「キルア、お前は次のハンター試験はどうするんだ?」

「あ、やべ。もうそんな時期だっけ?」

「今日が12月14日だから、多少は余裕はあるだろうけど。そろそろ準備をした方がいいかもな。

 それにユアも」

「私?」

「ああ。念は言わずもがな、他にも色々手ほどきをしたしな。ハンター試験を受けていいぞ。そういう約束だったしな」

 それに次の試験は一次試験で他の参加者を全員ぶっ倒せばそれでクリアできるお手軽な試験だ。今のキルアと同等以上の力量を持ち、しかも協力関係を結べるのならばこれ以上に楽な年はない。その次は十二支んが変に手を加える予定だし、ライセンスを取っておくなら今年だろう。

 ユアは少しだけ考えたようだが、やがて軽く頷いた。

「うん、受ける。プロハンターになった方が選択肢が増えるしね」

「やっぱりライセンスはあると便利だしなー」

 ユアとキルアの口調が軽い。試験に何度も落ちたポンズの目がちょっと遠くなった。まあ、試験前に念を覚えているか否かの違いは大きいが、次の一次試験官が脳筋過ぎるのも悪い。強い奴しか務まらないのは確かだが、それだけに縛られてもいかんだろうとは思う。それに一次試験で基礎体力を測るのは間違っては居ないが、他の受験生を全てなぎ倒すレベルがいるのは予想外だったのだろう。例え念能力者だとしても、普通なら1500人近くもいる他の受験生を全員ぶっ飛ばさない。

「私の方もどれだけ除念に時間がかかるか分からないのよ。どうしても動きは鈍くなるわ」

 ポンズも困った顔で告げる。まあ、自分の能力をバラしてまで優先した命だ。そうそう見捨てる選択をする訳もないのは理解する。

 助けられている当人であるニッケスは未だに自失状態から立ち直ってないが。

「そろそろゲーム攻略に移りたいとは思っていたけど、ちょっとキリが悪いわね」

「だな。とはいえ、ニッケスの仲間たちが集めていたスペルカードは買えるだろ。ひとまず防御スペルは必須だし、マサドラで購入していいんじゃないか?」

「そうねぇ。キルアとユアはしばらくゲームから離脱しなきゃだし、フリーポケットカードが消えるなら急いで攻略する必要もないわね。

 スペルカードを買ったらハンター試験のギリギリまで修行をして、地力を伸ばす。で、キルアが帰って来たらこっちはゲーム攻略を開始するってとこかしら」

「俺の方は、とりあえずポンズの除念待ちだな。マチがニッケスのバインダーに載ってるし、場合によっては強襲するしかないか……?」

 出来ればそんなリスクは取りたくないが、現状手詰まり感が強い。多少以上は無理にいかなくてはいけない段階が来たようにも思う。『敵』も俺がグリードアイランドに居るという情報は持っており、同じようにマチが強襲して来ないとも限らない。不意を打たれるよりかは、不意を打ちたい。

 後の問題はやはりゲンスルーか。ニッケスが生き残っている事は、奴がバインダーを調べるだけでバレてしまう。そうなる前にニッケスがゲーム外に出てくれれば嬉しいが、ニッケスがゲーム外に逃げてくれるかも謎だし、除念前にゲンスルーが攻めて来ないとも限らない。

 問題は増える一方なのに、情報収集は遅々として進んでいない。

 苛立っても仕方が無いとはいえ、場を支配できない鬱屈は溜まる一方だ。せめてもう少し良いニュースが聞きたいと思うが、なかなか難しいと言わざるを得ない。

 思わず漏れてしまったため息は、仕方ないと割り切りたいものだった。

 

 3日が経過した。

 ゲンスルー達が南から徒歩でやって来る可能性を考慮して、キャンプ地はマサドラから西北西に4キロ程離れた場所に移す。これは少しでもグリードアイランドから脱出できる港に近い場所を選んだという側面もある。

 マサドラを経由した事により、ゴンたちもスペルカードを補充。Sランクのカードこそ当たらなかったが、擬態(トランスフォーム)聖水(ホーリーウォーター)などのAランクのカードと、幾つかの攻撃スペルも入手できた。

 一方、ニッケスは多少落ち着きを取り戻していた。ゲンスルーが裏切った事、仲間たちが皆殺しにされた事を呑み込み、これからどうしようかと考えを巡らせているところらしい。

 ちなみに彼の念能力も開示した上で見せて貰った。助けて寝首を掻かれるのはゴメンだと言ったユアの意見を汲み、またニッケスも命を助けられた恩を感じていた事もあって揉める事無く教えてくれた。

 『蓄え続ける銃撃(クリティカルショット)』。それが彼の念能力、放出系だな。練をした時間分、そのオーラを表に出さずに自分の中に溜め込む事が可能であり、溜め込んだオーラを念弾として攻撃に使う事が可能。単純だが、それ故に小細工が通じないタイプの能力だろう。念弾はある程度の操作も可能であるらしく、それの強化も併せて放出・強化・操作という自分に適した系統を上手く組み合わせているといえる。

 とはいえ、彼の基礎能力は既にここにいる子供組やポンズにも明らかに劣っている。そういう意味で役に立つかというと微妙ではある。俺にとって、彼の最大の価値はそこではなく、バインダーに載っているマチの名前の方だしな。

 そして彼に取り付けられた命の音(カウントダウン)はまだ解除されきっていない。ポンズによればもう少しで半分くらいは除念できるとか。もちろんポンズの小瓶の精霊(ホムンクルス・ハニー)は発であるので、ずっと発現し続ける訳にはいかない。普通にオーラが枯渇する。休み休み、3日かけて半分以下。これは解除しきるまで1週間は見なければならないか。

 もっとも、この時間が無駄という訳ではない。ビスケ曰く、

「優秀な除念師が稀な理由って、除念能力を得るのも難しいのは当然なんだけど、経験を積む機会が少ないって言うのもあるのよね。

 除念師って戦闘能力が劣る事も多いから中々名乗り上げないし、そもそも悪意ある念とかだと除念する前に取り憑かれた対象が死ぬ事も多いから。

 そういう意味で、ゆっくりと高度な能力を除念できるこの機会はいい修行になるわね」

 だとか。基礎能力ももちろんだが、発を磨くのも当然大事である。悪くない修行になると考えればまあ良しとするしかない。

 ユアとゴン、キルアは今まで通りの修業。その際、ゴンはジャンケンから発想を得て自分の能力を決定付けた。キルアもオーラを電気に変える能力を見せてくれたし、ユアは言わずもがな。順調に育ってきてるといえるだろう。『敵』と戦うには心許ないが。

 さて、これからの方針である。

 とはいえ、選択肢はそう多くはない。せいぜいがマチに同行(アカンパニー)で強襲をかけるタイミングを決める事くらいだ。打てる手段としては、もうこれくらいしかないしな。

 逆に強襲をかけられる可能性もある。『敵』もニッケスが爆弾魔(ボマー)から逃げ延びて生きていると知れば、間違いなく俺の関与を疑うだろう。また、爆弾魔(ボマー)もニッケスが生きていると知れば殺しに来る可能性は高い。能力を知られるのはかなりハイリスクだしな。それから旅団も攻めてくる可能性は排除しきってはいけない。

 攻めて来るとしたら大凡この辺りか。どれもこれも面倒な相手である。できれば何事もない事を祈りたいが。

「ねえ、呪文(スペル)の移動音が聞こえるわよ」

 そんな訳にもいかないよなぁ。

 ユアの言葉に耳を澄ませる。呪文(スペル)は大きな音が聞こえるからして、気がつくのは当然。強襲はできても奇襲にはならないのである。

 そして音が聞こえる東の空を見上げれば、そこには光に包まれた大きな塊が見えた。衝突(コリジョン)による第三者であれば嬉しいが、まあまず間違いなく敵対者だろう。

 覚悟を決めて着地地点を睨み付ける。

 光と煙が晴れたそこに居た人物は――

 

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