それを鑑みて、過去の前書きを一部削除させていただきました。
また、現状について活動報告にて呟かせていただきます。
そして誤字報告・感想をいただけている方にこの場を借りて感謝を申し上げさせていただきます。
殺意に満ち満ちたゲンスルー。
そう、彼らは仲間なのだ。あるいは自分の命よりも仲間の命を優先する程に強い絆で繋がっている。ゲンスルーはユアを狙っていない、ユアと彼らの間に立つ全ての人間を殺すつもりだ。筆頭は間違いなく最前線に立つ俺だろう。
「
俺はオーラを地面に向かって垂らし、それを氷化させる。現われるのは一本の棍。ぶっちゃければ長い氷の棒だ。
剣を作ろうにも、素材が氷では切れ味は無い。俺の能力で作れるのは鈍器のみなのだ。そうなった時、大まかに2つの方向性がある。重量を増やして押し潰すか、軽快に操って急所を突くか。
俺が後者を選んだ理由は2つ。重量を増やせば消費オーラが多くなるのと、軽快に操った方が身を守るのに向いているから。攻撃的ではなくなった方向性が、この時この場では最大限に活きている。バラの肩に取り付けられた
そしてバラを失った
氷の棍を構える俺に、ゲンスルーは冷静に間合いを計っている。
(冷静だ)
心の中で呟く。激高して襲いかかってくれば良かったのだが、崖っぷちに立たされたゲンスルーの頭脳は十分に切れていた。
サブが重傷を負った現状、バラがユアに向かうとなれば。俺を抑える役はゲンスルーのみになる。3人のコンビネーションを凌いだ俺を単独で相手取る危険性を、ゲンスルーは理解していた。その上で弾き出される結論は、ゲンスルーは行動不能になる訳にはいかないということ。僅かな負傷でも俺を相手にすれば一気に追加のダメージを食らいかねない。バラが確実に
6000のカウントが刻まれるまで、僅かといえども余裕がある。焦りが生まれるだろうからこそ、拙速の攻めは厳禁。ゲンスルーは冷静に激昂を律していた。
(手強いな)
この有利は一歩のみ。そう感じられるゲンスルーの冷静さと、追い詰められたからこそ溢れ出すオーラ。『敵』と戦う時の為に秘めていた
棍を構える俺に慎重な姿勢を崩さないゲンスルー。そんな彼を見ながら、俺はこの3人についての考察を思い出す。
そもそも冷静に考えて、バラが己を
つまり、サブやバラが自分の発をゲンスルーの補助でいいと云うのはよほどの事情がなくてはならないのだ。更に言えば、発の方向性が時限爆弾で共通しているのも難しい。ゴンがジャンケンに発を見出したように、ユアが亡き母のペンを操作の媒体にしているように、発にはどうしても思い入れというものに左右される。ゲンスルーが発に爆弾を選んだからといって、サブやバラも同じとは普通思えない。
ここで逆転の発想が出てくる。発を無理矢理に揃えたのではなく、3人ともに同じ発を選択するという環境で生まれ育った可能性。ゲンスルー・サブ・バラは発に影響を及ぼす幼少期を同じくして過ごしていたのだと。おそらくは念を知るよりも更に前から。
そこで俺が思い描いたのは少年兵。孤児も考えたが、ここまで攻撃的な念能力者になる事を想像するに、物心ついた時から殺し殺されの世界に居たと考える方が自然だ。そして何らかの絶望的致命的な窮地を、時限爆弾によって切り抜けた。こう考えれば、
さて、ここまで考察した事を踏まえた現状。
まだ解除の可能性があるからこそネフェルピトーに対するゴン程に振り切れていないだろうが、彼らにとってユアはいくら殺しても殺したりない相手になっているという事である。もちろん俺はそれを許すつもりはない。ユアの安全の為にも、是非ともこの3人はここで殺しておきたい。
仲間を守る、相手を殺す。俺もゲンスルーも同じ想いを抱いて向き合っている。
「破っ!!」
ジリジリと経つ時間を切り裂くように先手を打ったのは俺。待ちも悪くないが、攻めていけない訳でもあるまい。バラのカウントが5800になったと同時に、オーラを氷に変化させた棍で鋭く突く。
中国拳法で扱う武器では特に棍の使い方を重視するところがある。李書文やエミヤに叩き込まれた棍術は並でもなければ伊達でもない。今までより、一層の攻撃力を以てゲンスルーに襲いかかる。念によって大幅に強化された氷の棍、その突きは念能力者の体を貫く威力を十分に宿していた。
「っ!」
しかしそれも当たれば、の話だ。回避されるならともかく、まさかその手で掴み取られるとは思わなかった。そして同時にゲンスルーの
――先ほどよりも明らかに威力が高い!
(怒らせ過ぎたかっ!)
これで接近戦を挑むという選択肢はなくなった。顔に陰を作りながら俺を見るゲンスルーは、掴めば俺を殺せる確信を得ただろう。
とはいえ、こちらも接近戦が選択肢になくなっただけである。少し短くなった氷の棍にオーラを流し、パキパキという音をたてながら再生させる。具現化させるほど強固なイメージを必要としないからこそ脆さはあるが、その分よほど強烈なイメージを貰わなくては再生も容易。それが俺の能力の最大の利点だ。
「ちぃ」
舌打ちするゲンスルー。想像できたことだろうが、再生する氷は面倒だと感じたに違いない。しかも普通に殴るだけでは
現状、まだまだ俺の方が有利。それを理解した上での舌打ちなのは察する事ができた。
更に言うならばどんなに感情を持ったとして、潜在オーラは簡単には増えない。ゲンスルーが俺の防御を上回る攻撃力を得ているのは単に顕在オーラが激増しているだけだ。つまりゲンスルーは長期戦に不利。1時間弱の中距離走に設定されている現在、瞬間的に顕在オーラが増えるというのは決して良しのみに天秤が傾く事ではないのだ。
急所に当たれば俺を殺しうるゲンスルーと、一撃死を最上級に警戒する俺。一合を交えて、再び膠着状態に戻る。
無論、時間がかかるのは俺に有利。しかして切羽詰まり状況を大きく打開する可能性があるのはゲンスルー。まだ、どちらかが確定的に流れを握った訳でもない。
ジリジリと寄せるゲンスルー。キリキリと威嚇する俺。俺とゲンスルーの頬を冷たい汗が流れる。
拭う余裕は、ない。
張り詰めた時間が流れる。お互いに後ろの仲間達が手を出す余裕も、ない。
バラに取り付けられた
2000を下回る。見えてきた勝機に俺が下手を打った。間合いの取り方で損を取る。だが、まだ凌げる。有利は俺、間違いない。
――本当にそうか?
カウントは1500に至り、先ほどのミスが響く。フェイントの仕掛け合い、有利の取り合い。ここで明確に俺が後手を踏み始めた。
30分もの時間を使い、ゲンスルーがこの場を制しつつある。
(くそっ!)
自分の才能の無さに歯がみする。所詮、俺は死線を潜るという経験をしてこなかった人間。土壇場で命の懸けた競り合いで一流に勝てるタイプではない。分かってはいたが、いざ窮地に立たされると自分の浅い経験に文句の1つも言いたくなる。
カウントが1000を割り、900を超える前。
「おらぁぁぁぁぁ!!」
動く。バラが、動く。
(く…くぅ!!)
俺は、動いてはいけない。全ての動きがゲンスルーに牽制されている。下手に動けばそれはゲンスルーへの隙になり、奴に攻撃を許す。動かなければ後を踏むとはいえ、ゲンスルーに対する隙にはならない。しかし動かなければバラを後ろに通す事を許す事になる。そうなればユアが、ポンズが。
「くそぉぉぉぉぉーー!!」
動かない方がいい。頭では分かっていても、俺はバラを迎撃するように動いてしまう。当然、それを見逃すゲンスルーではない。
突撃するバラ。迎え撃つ俺。撃墜するゲンスルー。
誰に隙がある? 言うまでもない、攻撃されるとは考えていないゲンスルーだ。
「なっ!?」
バラに背を向けてこちらに攻撃を仕掛けようとしたゲンスルーに向き直る。
なめるな、俺の仲間を。ゴンもキルアも、力量で劣ったとして諦める程に往生際が良くはない。ならば俺の役目はゲンスルーを確実にシャットアウトする事。1人まではいい、俺はそう思った。だからこそバラは通してもゲンスルーは決して通さない。
背後でガガガと打撃音が聞こえるのを無視し、俺はゲンスルーのみに注釈する。バラは仲間に任せた、だからこそ俺は確実にゲンスルーに対処する。
もう、俺に近づかれるリスクが怖いなどとは言ってられない。積極的果敢的にゲンスルーを仕留めるように氷棍を振るう。それが意表を突いたのか、ゲンスルーは攻撃に移行できない。唐突とも捨て身とも思える俺の攻撃に、ゲンスルーは完全に防戦一方だ。この戦局の流れは完全に制した。
問題は俺の背後、バラの攻撃だ。ビスケが参戦すれば確定で勝てるだろうが、戦闘音から判断するにどうやらバラを相手にしているのはゴンとキルアのみのよう。コンビネーションで多少の有利は取れるだろうが、バラを相手にすればやや分が悪いように思う。ユアやポンズは系統差が大きく、ニッケスは論外。ビスケはいざとなるまで期待できまい。
いや、文句は言うまい。ゴンとキルアの戦いで互角に渡り合えている。ならばビスケに期待する必要もない。俺がゲンスルーを突き放せば勝ちだ。
そう思った瞬間、頭上に影が差す。何かと思い一瞬だけ視線を向ければ、そこにはそれなりの大きさの爆弾が。
(!!??)
爆弾の大きさはすなわち爆発力に直結する。頭上に放り投げられた爆弾を見れば俺やゲンスルーはもちろんのこと、バラやゴンにキルアを巻き込まれかねない。それを為したのがサブだと思えば動揺もする、お前は仲間も爆発に巻き込む気なのかと。
「
気がつくのが一瞬遅れた。爆弾を投げたサブはたぶん操作系。ならば何かを操作するのが基本。それが爆風の流れだと気がつかなかったのが失策。
頭上にある爆弾が爆発したと同時、その爆風が一気呵成に俺に降り注ぐ。他には一切影響を及ぼさずに、俺にだけ。とはいえ所詮はただの爆弾、堅をすれば耐えきれない話ではない。
この攻撃に限れば、だが。
「「もらった!!」」
ゲンスルーとバラが同時に叫ぶ。背後は見えないが、ゴンとキルアが頭上で破裂した爆弾のせいで隙を晒したのだろう。かくいう俺も爆弾の攻撃に対処するのが精一杯でゲンスルーまで手に負えていない。
いや、今はゴンとキルアの事を考えている場合じゃない。俺は俺が生き残る事を考えなければ。
一手、俺は動けなく。ゲンスルーは無条件に攻撃できる。
「
全身に纏うオーラを氷に変える。身動きは取れないが、目くらましにはなるだろう。
ゲンスルーの一手、それから俺の一手。交錯する。
ゲンスルーはその手で俺の一部を掴み取る。そして発動する能力、
ドゥ…と体に響く爆発音。
驚きに染まるのはゲンスルー、冷や汗を掻くのは俺。
そして笑うのも、俺だ。
余裕があった訳ではない。運良く勝ったのが俺、それだけの話。
そもそも
それを鑑みて、俺は全身を氷で覆った上で首から上を凝で防御した。
首から下を掴まれない保証はない。しかしながらゲンスルーは俺を殺しにくると賭けた。全身を氷のオーラで覆った俺の弱点を見抜くには『凝』で見る事が不可欠だが、ゲンスルーが
そして流に時間がかかるとはいえ、凝ならば
俺は賭けに勝った。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
「くぅ……」
一か八か、四肢を失うか否か。ゲンスルーが首以上を狙わない保証などない。その瀬戸際の賭けに勝った俺の息はそれでも荒い。死ぬ事はないとはいえ、とっさに四肢を捨てる決断をしたのだ。息も荒くなろうもの。
そしてゲンスルーは攻撃が凌がれた事を察して後ろに下がる。多分それは正解、彼は残り僅かな時間を考えても負傷を負っている場合じゃない。
「最初はグー…!」
しかし、それがバラにも通じるとも限らない。俺の後ろから頼もしい声と共に恐ろしいオーラの集約を感じ取る。
強化系が、更に制約を懸けた一撃をここに。
「ジャン、ケン! グー!!」
「ガハァァァ!!??」
何が起こったのかは見えていない。
しかして背後からバラがサブの側まで吹っ飛ぶのは見えた。
「バラっ!?」
サブの悲痛な声にもバラは反応しない。ピクピクと震えながら、バラはサブの側で虫の息だ。吹っ飛ぶバラを目の端で捉えたゲンスルーはその表情に驚きと怒りと心配を張り付けて、一気に後ろに下がってバラの側へ戻る。
「キルアっ!」
かといってこちらも被害が軽微で済んでいる訳ではないらしい。
ゴンの悲痛な声に振り返れば、そこには青白い顔で腹を押さえてうずくまるキルアが。ゴンの技を出す事の囮にでもなったか?
分からないが、キルアは既に戦闘不能だということは分かる。まだ特殊合金のヨーヨーを持っていない事が敗因か。それともそれ以外か。キルアは重大なダメージを負ってしまったようだ。
だがひとまず命に別状はないと判断して、俺はゲンスルー達を睨む。
キルアは放っておいてもまだ死なないが、バラの
「くそ…」
残りカウント、728。
「くそぉぉぉ!!」
残りカウント、703。
ゲンスルーがいくら吠えようとも、瀕死のバラのカウントは止まらない。大怪我を負った彼のカウントは一気に進んでいく。
それを見て、ゲンスルーは、泣きそうな顔で叫んだ。
「勝手に俺の能力を使って…バラを殺すんじゃねぇ!!!!」
「あ」
ユアの間の抜けた声と同時、バラに憑いた
「え?」
「は?」
「あ?」
間。
「
一瞬早く我に返ったサブが
俺や仲間たちはそれに反応できる訳でもなく、
「え、これ、どういうこと?」
そんなポンズの声がほぼ全員の心境を表していたといえるだろう、痛みに悶えるキルアを除いてだが。
敵対者が去ったこの場でほぼほぼ全員が呆気に取られているのだった。