殺し合いで始まる異世界転生   作:117

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048話 グリードアイランド・11

 

 俺とマチが本格的にグリードアイランドの攻略を始めて、3日。初めて獲物が網にかかった。遠距離からスペルカードショップを見張っていたが、そこに有力プレイヤーが現れたのだ。

「あの男がトクハロネの仲間だな?」

「ああ、ブリューだね。この距離ならバハトのバインダーには載ってないはずさ」

 とはいえ、正攻法でグリードアイランドを攻略する気は皆無である。それはゴンに任せておけばいい。俺とマチがするのはそのサポートで、つまり独占カードを作る事と逆に独占されているカードを奪う事だ。

 まあぶっちゃけ、拷問スキルを持ったサーヴァントにかかればバインダーを出させることは簡単だろうが、ゴンの逆鱗に触れるので却下。そもそも拷問スキルを持つサーヴァントを召喚するのは普通に怖い。拷問のスキル持ちなんて大概が反英霊である。

 操作系の念能力を使おうにも、発動者が俺とバレたり発動条件が露見したりしたら普通に面倒だ。よってこれも却下。

 となると、やはりスペルで奪うのが最適解となる訳だ。俺はほとんどのプレイヤーの顔と名前が一致していないが、ここはマチに助けられた。彼女が把握しているトッププレイヤーを見る為にスペルカードショップの前を張っていたのだ。

「オーケー、視認した」

 無限に続く糸電話(インフィニティライン)、発動。

 エリリの能力であるこれは、最大10人までの相手と糸電話を接続できる。設定する条件は相手を直接視認するのみであり、緩いといえば緩いがテレビなどの映像や望遠鏡を介してでは無効である為に場合によってはかなり面倒な部類にも入る。

 そして糸電話を繋いだ相手1人だけ、自分の声を届けることが可能になると同時に相手の肉体が発する音も聞き取ることができる。例えば手に持った携帯の発する音は聞こえないが、携帯のボタンを押す音は聞こえるのだ。そしてこの()()()()というのが重要で、その方向や距離も理解できる。本来の能力者であるエリリならば25キロ先にいる相手もピンポイントで場所を把握できたらしいが、もちろん俺には無理でありおおまかにしか分からない。これがハンター試験でエリリが俺の居場所を探ったカラクリとなる。

 これでブリューは完全に捕捉した。少し離れた場所に移動したブリューは声を出す。

「ブック。再来(リターン)使用(オン)。コンターチへ」

 俺の耳にだけ遠くからはっきりと声が聞こえる、不思議な感覚。同時、彼の体が風切る音が耳に届く。

 便利と言えば便利だが、変な感覚といえば変な感覚だ。

「問題ないかい?」

「まあ、問題はない」

 サーヴァントとラインを繋ぐこともあるから普通の人間の感覚と違うことには慣れているとは思うが、こういうのはそれぞれで別の違和感があるから困る。同じ乗り物酔いでも、車や船やヘリコプターではそれぞれ違うというべきか。

 とりあえず、いったん糸電話の接続先に設定してしまえば切り替えはいつでもできる。俺はブリューから糸電話を外して妙な感覚から解放される。

 ちなみに糸電話という名前を使っている通り、この能力は結構脆い。距離で切れることはないが、念能力による移動ではブツブツ切れる。グリードアイランドに入る際、全ての糸電話が切れたくらいだから瞬間移動でもアウトなのだろう。現在の接続先はユアとマチ、そして今しがた接続したブリューだけだ。スペルによる移動は高速移動に分類されるらしく、糸電話が切れる様子はない。

「だいたいのプレイヤーはスペルカードショップに訪れる。そこで糸電話を繋ぎ、隙を見て接近してスペルで奪う。

 ……自分で言っておいてなんだが、いけるかな?」

「なんだい。まだ自信がないのかい?」

 やや呆れた声を出すマチ。自信はそれなりにあるし、荒事になっても勝てるとは思うが、完全に上手くいくとはやっぱり考えにくい。どこかで想定外のことが起きるとは考えておくべきだろう。

 とはいえ、やると決めたことをウジウジと怖がってばかりでも恰好がつかない。問題は起きるとした上で、柔軟に対応するしかない。現場のプロとはそういうものだろう。

 思考を入れ替えて、決行の意思を伝える。

「自信はないが、とにかくやってみてから考えよう。少し時間を置いて、トクハロネ組を攻撃するぞ」

「そうこなくっちゃ」

 ニヤリと笑うマチ。相手が油断するまでの時間を使って、ひとまず現状をおさらいしておく。

 

 現在、グリードアイランドのイベントでクリアされていないものはほぼない。000番の『支配者の祝福』、001番の『一坪の密林』、002番の『一坪の海岸線』がそれぞれクリアされていないイベントになる。

 ……ちなみに『一坪の密林』の所有者も0である。原作では宝籤(ロトリー)で当てたものがいたらしいが、運命が狂ってその事実がなくなったか。それともまさかマチがプレイヤーキラーした中にそのプレイヤーが混じっていたのか。考えても頭が痛くなるだけだからとりあえず考えないことにする。

 それはさておき。最もカードを集めている上に独占カードも所有しているのがツェズゲラ組だ。確認した時点で集めているカードは92種、残り7種で99種類集まる。SSカードの所有枚数は0であるとはいえ、大天使の息吹の引換券も手に入れているし、独占カードを2種集めているのが大きい。『浮遊石』と『身代わりの鎧』。

 SSカードは『支配者の祝福』を入れて5種類だから、ツェズゲラが入手できていないカードは016番の『妖精王の忠告』、073番の『闇のヒスイ』、075番『奇運アレキサンドライト』。更にはカード化上限に達しているSSランクカードの『ブループラネット』も射程範囲だろう。

 この中で『闇のヒスイ』はゲンスルー組が独占し、『妖精王の忠告』はトクハロネ組が独占している。『ブループラネット』はハガクシ組が独占していたが、ハメ組にスペルで奪われた為に現在はゲンスルー組とハガクシ組が所有している。ゲイン待ちの一番は誰か分からないが、ここもツェズゲラ組の可能性は低くない。

 もちろん『大天使の息吹』はゴン組、俺とキルアとゴンが所有している。ちなみに全員のバインダーは堅牢(プリズン)で守られているので、スペルで奪取される心配はない。2回目に入島してマサドラに行った時に同行(アカンパニー)は当たらなかったが、堅牢(プリズン)は当たったし擬態(トランスフォーム)も当たった上にゴンが予備を1枚持っていたから、コピって防御しておいたのだ。つまり上位プレイヤーたちが硬直している間、ゴンたちは伸び伸びとゲームをプレイできる。

 話を戻そう。とにかく俺とマチの狙いは、これらの上位プレイヤーたちが独占しているカードだ。これを奪取しない限り、ゴンがゲームクリアするのは難しい。ように見える。本当のところはバッテラはもうこちら側に引き込んでいてツェズゲラは味方も同然なのだが、ゲームを楽しんでいるゴンにそれを言うのも野暮だろう。

 故に俺もスペルによる奪取で相手からカードを奪うのが良い、これは一応ゲームのルール内の出来事だしな。カード化上限に達しているカードはどれでも狙い目だ。

 

「そろそろいいかな」

「いつでもいいさ」

 適当に時間が経ったところを見計らい、無限に続く糸電話(インフィニティライン)を使ってブリューの場所を探る。おおよそ、北に80キロといったところか。

「……北?」

 ブリューが向かったのはマサドラから見て南にあるコンターチだったはずなのだが。

 ああ、そうか。マサドラではどこに人目があるか分からない。適当な別の都市に再来(リターン)で飛んで、そこから更に仲間のところにスペルで移動したのだろう。流石トッププレイヤー、慎重だ。

 とりあえずその事をマチに伝え、北を目指すことにする。

大和撫子七変化(ライダーズハイ)

 ゾルディックに仕えるツボネの念能力を使い、バイクに俺の身体を変える。即座にマチが俺に乗り込み、オーラを注ぎ込んで爆走を開始した。

 ちなみにマチは気が付いていないが、サーヴァントも俺に乗っている。今現在召喚しているのはアーチャーのエミヤだ。必要魔力が少ない割には近遠両方の戦闘をこなし、千里眼も持っているので重宝する男である。まあ、本気を出すとバカバカ宝具を投影するので途端に燃費が悪くなるのだが。

 

 念能力者は感覚が鋭い。

 そこにまさかエンジン音を轟かせて接近する訳にもいかず、10キロ手前で大和撫子七変化(ライダーズハイ)を解除して接近。エミヤは先行させてトクハロネ組の様子を伺わせる。

「しっかし出てくるモンスターはウザイね」

「全くだ」

 遠距離からオーラの込められた木の実を投げつけてくる猿に突撃し、殴りつけてカード化。Dランクのモンスターカードである『遠投猿』をバインダーにしまう。

 どうやらトクハロネ組がいるのは密林の中らしく、視界は悪い。しかしこう物音を立てながら近づけば警戒されるのは間違いない。

『エミヤ、まだ気が付かれた様子はないか?』

『まだ大丈夫だ、マスター』

 サーヴァントのラインを確認すれば距離としては1キロといったところだろう。平地ならば発見されている距離だ。この密林が接近を知らせない壁の役割を果たしているが、俺はサーヴァントと能力によって位置が筒抜けである。このアドバンテージは大きく、スペルで攻撃するのならば手放してはいけないものだ。

「そろそろ慎重に行くぞ」

「分かったわ」

 マチは頷いて、大和撫子七変化(ライダーズハイ)とは逆に今度は俺を背負う。俺はマチの肩に手を回して、その体に手のひらで触れて息を止める。

 メレオロンの能力である神の不在証明(パーフェクトプラン)及び、それを連動させる神の共犯者によって俺とマチを他者からの認識の範囲外に置く。

 この状態ではモンスターの出現判定もなくなるらしく、ちょくちょく出て来たモンスターが一切出現しなくなった。密林を大きく移動するならば戦闘音が聞こえると思っているのなら、これは相当に大きい。

 尤も、モンスターを出現させなくするアイテムもかなり貴重ではあるが存在するらしく。これだけでは完全に相手を油断させる訳にもいかないだろう。

 100メートル毎をマチが慎重に進み、息継ぎの間は絶をして気配を殺す。絶もレベルが低ければコンマ以下のパーセンテージでオーラが漏れてしまうが、俺やマチがそんな低レベルな訳がない。エミヤから伝えられる情報も問題はなく、着実にトクハロネ組に迫っていく。

「っと」

 と、だいたい50メートルまで接近した時にマチが不自然に止まった。神の共犯者によってその声は相手には届かないが、何かあったのか。

 そう思う俺に説明するように、マチは足元を指さした。目をこらせばそこにはツタで作られた糸が張られている。その先には植物の実が括り付けられており、鳴子の役割を果たす簡易のブービートラップが設置されていた。

 ここから先は奴らの厳重警戒区域だろう。更に注意して進むこと、約25メートル。

(……居た!)

 マサドラで見た男、ブリュー。漫画でワンカットだけ出て来た精悍な顔つきの男、トクハロネ。髪を短く刈り上げた女、ソヨト。間違いない、トッププレイヤーであるトクハロネ組だ。

 やや息が辛くなってきたので、マチをタップして神の共犯者を解除する合図を送る。それに気が付いたマチが絶をして、解除。俺の息が整うまで、その場に潜む。

 トクハロネ組は俺たちの存在に全く気が付いていないらしく、話し合いを続けていた。

「『一坪の密林』がどこを探しても見つからん。ハガクシ組もツェズゲラ組も見つけていないらしいがな」

「特にハガクシ組は必死よ。ハメ組にブループラネットを奪われたし、独占カードがないもの」

 どうやら奴らは『一坪の密林』をターゲットに定めているらしい。道標(ガイドポスト)で地域を限定し、地道に探索中といったところか。

「つーか、情報提供者のガセネタが多すぎるんだよ。ピンポイントで聖水(ホーリーウォーター)を要求しやがったくせに、まさかのガセネタだぜ!?」

「怒鳴るな、ブリュー。腹立たしいのは俺たちも一緒だ」

「折角マサドラまで行って仕入れたのによ…」

 とはいえ、やはりSSカードは難易度がエグイ。Aランクスペルカードを要求してガセネタとか。これ、ガセネタかどうかを見分けるヒントはあるのか? ないならマジで心が折れるな。

 まあ、俺たちが更に奴らの心を折ってやるんだが。

 ポンとマチも肘を叩き、彼女の手を握る。そして息を止めると同時、マチが呪文を唱える。

「ブック」

 プレイヤー同士がスペルをかけあえる距離は20メートル以内から。熟練プレイヤーほどこの範囲に敏感になり、絶で接近しても気が付かれないとは限らない。そもそもスペルを唱え終わるまでに相手がバインダーを出せば防御スペルを使われてしまう。バインダーにセットする方法も、そこまで接近して準備をすれば相手に気取られてしまう。

 だが、神の不在証明(パーフェクトプラン)は完全な奇襲を可能とする念能力だ。素早く10メートル程近寄り、誰そ我の距離は約15メートル。射程範囲内だ。

強奪(ロブ)使用(オン)、ソヨト! 『妖精王の忠告』を奪え!」

 声は聞こえない。しかしスペルの効果による光は隠しようがない。ソヨトの体から光が飛び出してマチの体に回収される。

 驚きに顔を染める3人だが、即座にその呪文を唱える。

「「「ブック!!」」」

 3人全員の前にバインダーが具現化されるが、そもそもそれが隙。防御スペルでは防げない攻撃をするだけだ。

 マチは税務長の籠手を装備している。彼らには聞こえない声で高らかに宣言する。

徴収(レヴィ)使用(オン)!」

 3人と、ついでに俺から光が飛び出してマチに収束。

「声が聞こえねぇぞ!?」

「バインダーにセットしてるにしては早すぎるわ!」

徴収(レヴィ)使用(オン)!」

 更に攻撃。贋作(フェイク)で埋めた指定ポケットカードが壊れていくだけで徴収(レヴィ)の攻撃が成立していく。

 近距離までいるはずの俺たちの気配が感じられないことが、彼らの困惑を大きくしているらしい。方向は分かっているはずなのに、こちらを見ても姿を確認できないのだ。攻めるべきか引くべきか、判断がついていない。

徴収(レヴィ)使用(オン)!」

 3回目。ここに来てトクハロネがバインダーからカードを取り出す。

 大丈夫、この状況で獲物がする動きは読めている。俺とマチは素早く下がり、奴らの半径20メートルから離脱する。

同行(アカンパニー)使用(オン)、マサドラへ!」

 範囲外に出た俺たちを置いて、トクハロネ組が空へ消えていく。ここからは時間との勝負だ。

 マチもバインダーからカードを取り出し、スペルを唱える。戦果の確認は後回しである。

同行(アカンパニー)使用(オン)、アントキバ!」

 高速移動をしながら、俺は息を吐く。ここまできたら神の不在証明(パーフェクトプラン)は必要ない。

 十数秒の滞空時間を経て、アントキバへ到着。とりあえず入り口は目立つので、この場から離れる。

 離れながら、マチは口を開く。

「予定通りだろ。ほら、大丈夫じゃないか」

「ああ。同行(アカンパニー)で攻撃者を引きずり出せなくて混乱している奴らだが、すぐにバインダーをチェックするだろう。失ったカードももちろんだが、謎の攻撃者も誰か知りたいはずだ。

 するとバインダーの最後尾には俺の名前。俺が攻撃したように見えるが、念視(サイトビジョン)で調べても奪われたカードを俺は持っていない。

 そりゃ、限りなく怪しいだろうが、決して黒ではない。証拠はどこにもないんだからな。

 疑って俺と交渉してくれなくても、何の問題もない。ゴンたちは普通に交渉できるはずだ」

 俺が誰と繋がっているか分からない、というのがこの作戦のミソだ。最大限に相手の混乱を誘える。

 更に言うならば、スペルによる攻撃はプレイヤー同士で禁忌とされていないのも大きい。直接相手を殴りつけた訳でもないから、よほどの土壇場になるまでこちらに襲い掛かってくることはないだろう。

 まあ、襲われても返り討ちだがな。俺とマチはもちろん、サーヴァントが居れば大分以上に心持ちは楽だ。

『他プレイヤーがあなたに対して交信(コンタクト)を使いました』

(おっ)

『…………』

 このタイミングで交信(コンタクト)。間違いなくトクハロネ組だろう。察したマチは即座に黙る。

 こちらから聞こえるだろう反響音は間違いなく街中のもの。先ほどまでいた密林ではない。

「誰だよ? なんか喋れ」

『…………お前か?』

「? 何が?」

『…………』

「だから誰だよ、お前」

 すっとぼけて聞いてやる。確認を取るための行動がドツボだ。あの3人のバインダーに載った最後尾の名前は間違いなく俺である。しかし念視(サイトビジョン)で調べても奪われたカードは所有しておらず、交信(コンタクト)で探りを入れても反響音は密林ではない。

 もしも同行(アカンパニー)で飛んできても、マチに隠れてもらえば済む話。相手が打てる手はそこまでだ、俺を黒と決めつけて攻撃すれば他のプレイヤーからの信頼は失墜する。百歩譲って俺を殺せても、奴らからカードを奪った仲間がどこかにいると考えるだろう。まだ交渉でカードを手に入れなくてはいけないこの段階で、プレイヤーキラーの汚名を被る事は当然嫌う。

『――この借りは返す。必ずだ』

交信(コンタクト)が終了しました』

 結局、奴らは『バハト』というプレイヤーが黒であるという確信に近い予想までしかできない。そして『大天使の息吹』を持っていることも知れる訳で、ゴンやキルアに追っ手はいかずに俺に集中するだろう。

 場合によっては、そこを俺とマチとサーヴァントで狩る。

「じゃあ収穫を確認するか」

「そうだね」

 奪ったカードは10枚。かなりの収穫で、しかも強奪(ロブ)によって奴らの独占カードである『妖精王の忠告』を確定で奪えたのが大きい。

 残りの徴収(レヴィ)による奪取カードは以下の通り。

『真実の剣』『強奪(ロブ)』『反射(リフレクション)』『妖精王の忠告』『羽ばたきの鈴』『再来(リターン)』『水』『人生図鑑』『信念の楯』

「結構な収穫だな」

「熟練プレイヤーほど指定ポケットカードかスペルカードを多く集めるからね」

 指定ポケットカードを4枚の上に、ダブリであっただろう『妖精王の忠告』を更に奪えたのは大きい。これはかなり良いトレード材料になるだろう。ツェズゲラ組の独占カードのうち、1枚と交換する事も可能なはずだ。

 同じ相手に何度も使える方法ではないが、バインダーを出していない隙をついて強奪(ロブ)で独占カードを奪えるのは美味しい。

「ほとぼりが冷めるまで少し待って、またスペルカードショップの前で網を張ろう。

 できればハガクシ組とツェズゲラ組にも糸電話を繋げて――」

『他プレイヤーがあなたに対して交信(コンタクト)を使いました』

 またか。

 まさかトクハロネ組ではないとは思うが。

「誰だ?」

『――バハト』

「ゴンか」

 仲間からの連絡かよ。

 にしても何事だか。ゴンの様子が相当に切羽詰まっているみたいだが。

『ユアが、攫われた』

「――は?」

 バインダーから聞こえて来たゴンの声に、俺は間抜けな声を上げて思考が停止してしまった。

 ユアガサラワレタ?

 ――ユアが、攫われた?

「……誰にだ?」

 自分で思ったよりも深く沈んだ声が響く。

『ゲンスルーに。

 ビスケがサブを捕まえたけど、代わりにユアが――』

 ギロリとマチを鋭い視線で見れば、彼女は既にバインダーを調べていた。交信(コンタクト)を嵌め込んだそのページを見れば、ユアのランプは光っている。

 ユアはまだ少なくとも生きている。それは間違いない。

 だが、どんな状態になっているのか把握する術もない。

 冷静に頭を回す一方で、俺は自分の心が酷く冷めきっていくのを実感していた。

 

 ああ。俺はきっと、あの3人を殺す。

 




ちなみに何を考えたのか、新年度というクソ忙しい時期に新しいオリジナル小説の執筆を始めてしまいました。
別のサイトで連載していますが、もしも気が向いたら読んで下さい。

活動報告にアドレスを載せておきます。
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