殺し合いで始まる異世界転生   作:117

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調子が出て来たので次話投稿。
私って本当にやる気にムラがある。


053話 グリードアイランド・13

 同行(アカンパニー)によって着地した場所はとある街中だった。

 周囲のNPCは一瞬だけこちらに視線を向けるが、すぐに興味を失って歩き去っていく。呪文(スペル)というものが一般的であることを忠実に再現した反応だ。

 そんな背景のような人々から外れた人物が一人。白い外套で頭から足元まですっぽりと隠し、目元だけが開いている人物。

 ちなみに念能力者というのは特徴的な外見をしていることも多い。自分を通す事が念を強める要因となるため、流行などを無視した格好を選ぶことが多々ある為だ。もちろん逆に外見に興味がないからこそ流行をそのまま持ってくることもあるし、契約ハンターのように外見で好印象を稼ぐものいるからただの目安ではあるのだが。変な格好をしているのは、念能力者でもない狂人である可能性の方がずっと高いのは言うまでもない。

 さて。その点で言って、現在のアベンガネは極めて念能力者らしい理由から特徴的な外見をしていると言えた。よく見ればもぞもぞと動くその外套の内側に、彼の念獣を隠しているのだから。

「アベンガネだな。久しぶり、たいそうな遺言をくれた割には元気そうじゃないか」

「……」

 俺の挑発的な言葉に無反応を貫くアベンガネ。視線を確保するために僅かに開けた穴から見える地肌の色は黒であり、あからさまにそこに視線を向けてやる。

 同行(アカンパニー)はプレイヤー名を指標に移動する呪文(スペル)。こちらがもはや逃れようもなくアベンガネという以前に出会った男を目的に来たのは明らかだろう。

「……どこで俺の名前を知った? 前に会った時は名乗らなかったはずだ」

爆弾魔(ボマー)から情報を奪った」

 嘘八百。しかしこれには信憑性があるだろう。以前、爆弾魔(ボマー)の情報をくれた時にしか俺との接点はない。糸を手繰れるとしたらそこしかないのだ。

 警戒の様子を崩さないアベンガネに、軽い様子で話をする。

「バインダーで確認してみな。ゲンスルーたちはもうグリードアイランドにはいないぜ」

「――ブック」

 アベンガネはバインダーを出し、呪文(スペル)をセットしてプレイヤーリストを見ていく。

 その最中にも一切の油断がないことから、俺は心の中で舌打ちする。

宣誓記録(ノゥ・ツゥ・オゥ)が使えない)

 ユアの能力である宣誓記録(ノゥ・ツゥ・オゥ)。発言を切り取って文字として具現化し、それに絶対規律(ロウ・アンド・レイ)の効果を付随させるそれは、現実に使おうとして意外というべき難易度の高さを思い知る。

 制約として全力の練をしつつ戦闘行為を行っていけないというのは、かなり厄介。全力の練の時点でこちらは戦闘態勢に入っていることの証左であり、その状況で会話をして言質を取ることの難しさ。その上で戦闘行為をしてはいけないとは、サーヴァントやマチがいる俺だからそれ程でもないが、ユアにとっては正しく命を懸けたリスクである。能力を使おうとしている時ならば先手を取られることは確実で、操作系のユアは相手の系統が何であろうとも喰らう攻撃が致命傷になりかねない。

 それをクリアしてなお、やはり相手から譲歩の言葉を引き出すのは至難の業。まともに使おうとすれば威圧してこちらが有利な場面でしか使えないように思える。そして現状で頭の回転が早いであろうアベンガネが言質をくれるとは思えない。

(他にも操作系の能力はあるが……)

 アサンが集めた念能力も操作系のそれは少なからずある。しかし他人を操作するのはやはり物体を介するのが普通で、そうでないヴェーゼの能力のようなものでも結局は相手に触れなくてはならない。接近して触れる、というのはほとんど攻撃行為だ。アベンガネが許すとは思えない。

 ならばこの後の難易度が上がるとはいえ、力づくで操作するか。除念の能力は貴重であり、ここでアベンガネを上手く使わないとヒソカとクロロの戦いが起きず、ひいてはコルトピはともかくシャルナークが死なない。特にシャルナークが怖い。戦闘能力の高い操作系の上に旅団員との連携も考えられるあの男は、俺が直接始末したくない敵の第二位だ。ちなみに一位はクロロである。

(これからの会話次第だな)

 焦る必要はない。数十の操作系を扱える俺は、つまりはその数だけ操作できる可能性がある。その中の1つを満たすだけで俺の勝ちに繋がる。ならば力づくは最後の手段でいいだろう。

 バインダーを確認したアベンガネは、視線を俺に戻す。

「確かにゲンスルーのランプが消えているな。殺したのか?」

「いいや、殺したらこれ以上の情報が搾り取れなくなるからな」

 白々しいやりとりである。アベンガネはその念獣が消えていない以上はゲンスルーが生きているだろうことを確信しているだろうし、俺もそれを分かった上で知らないフリをして別の理由をでっち上げる。

 お互いにお互いを信用できていない現状、会話にあまり有用性を見出せない。

 だからこそ、俺はここで全力の練をする。

「!!」

「ゲンスルーからお前の名前を引き出した時に気が付いたよ、お前がまだ生きているって。

 つまりお前は命の音(カウントダウン)を祓えるレベルの除念師だ。違うか?」

「……だったらなんだ?」

 返答如何によっては戦闘も辞さない。その表明でもある俺の練を目の当たりにして、アベンガネの声が固くなる。

「俺たちに情報を渡さずに除念することは可能だった。また、除念した後に爆弾魔(ボマー)の情報の対価に協力させることもな。

 しかしお前が選んだのは自分が死んだことにするという手段だ」

「俺は俺が死ぬとは言っていないが?」

「誤魔化すなよ。遺志を継いでほしい、と言っただろうが」

 見苦しく言い逃れようとするアベンガネを一喝する。とりあえず誤魔化せるか試してみようという姿勢は悪くはないが、評価はしない。

 俺を馬鹿にしたような言葉遊びに、後ろで静かにしていたマチも殺気がこもったオーラがあふれ出す。

「バハト、もういいだろ」

「まだだ。殺すのはいつでもできる」

 アベンガネのオーラが僅かに乱れた。この短いやり取りで彼は自分の命が風前の灯であることを察知できたのだ。

 俺は騙された事実に気が付き、アベンガネを殺す前提でここに来たこと。しかし、恐らくだが除念師であることに有用性を見出していること。そしてオーラやゲンスルーを倒した事実を鑑みるに、戦いになればまず間違いなく殺されるだろうこと。

 そこに思い至ったアベンガネがしたことは、即座の謝罪だった。

「すまなかった」

「――何がだ」

「お前たちを謀ってしまったことだ。

 完全な除念をするには条件がある。それを満たすことを優先し、誠実な対応を取らなかったことを謝罪する」

 言いながら外套を取るアベンガネ。思っていた通り、彼の体には奇っ怪な姿をした念獣が巻き付いていた。悪意や敵意は感じられないが、生理的嫌悪感は強い。

 それらを無視して、念獣がいるという事実に注視する。

「その念獣で命の音(カウントダウン)を祓ったのか?」

「そうだ。俺の能力は大きく二段階の手順を踏むことによって相手が仕掛けた念を排除する。

 自分のオーラと自然のオーラを混ぜ合わせることで念獣を作り、仕掛けられた念を無害化する一段階。

 そして念を仕掛けた者が死ぬか、解除条件を満たすことで念獣を排除する第二段階」

「なるほど。俺たちに真実を告げなかったということは、さてはゲンスルーに勝てるとは思ってなかったな?」

「その通り。命の音(カウントダウン)を仕掛けられた経緯とその破壊力から考えて、ゲンスルーの敗北は想定していなかった。

 だからこそゲンスルーの情報を流すことで場を混乱させ、その隙に居る筈のない生き残りが解除条件を満たすという作戦を立てていた」

 冷静に語るアベンガネは流れを掴んでいる実感があるだろう。それも当然、こちらも意図して流れをアベンガネに渡している。

 さて、仕掛けよう。

「一つ提案がある」

「……なんだ?」

「俺は除念したいとある念がある。もしもそれを除念してくれるならば、お前の命を助けてやってもいい」

「…………」

 簡単には頷かないか。その位の慎重さがむしろいい。逆にこちらの仕掛けに気が付かない可能性が上がる。

「協力者は他にもいる。そちらから金を毟ってやってもいいだろう」

「それで?」

「ここで死ぬか除念するか選べ、というのは下策だな」

「賢い男だ」

 こちらに除念の希望があることはアベンガネにも透けているだろう。そうでなければ即座に殺しにかかっていて不思議ではない現状だからだ。殺せない事情があるのに殺すという脅しをするのはこちらの底を晒す行為。故にそんな手は打たない。

「取引をしよう。

 俺はその念獣を消す手助けをしてやる。その代わり、こちらの願いを一つ聞いて欲しい」

「……断る」

「理由は?」

「念を祓うのは構わないが、先ほど言った通りに俺の除念は二段階の手順が必要だ。

 祓った念でできた念獣を消す手伝いと、金。これが保証されればいいだろう」

「…………」

 手強いな。全力の練をしている現状、言質が取れれば宣誓記録(ノゥ・ツゥ・オゥ)が発動するが。肝心のその言質が取れない。

 除念は極めてレアな能力であり、アサンが集めた発の中にも除念の能力はない。それ故に奴自身が除念能力を作ったとも言える。ヒナの能力は発動条件もリスクも何も分からないから使えるうちに入らない。

 それが分かっているからこそ、マチも殺気立ってもアベンガネを殺すことはできない。

(力づくで操作するか……?)

 先ほども考えた最終手段だが、これは相当に危険な賭けだ。操作された念能力者を、念が封じられたクロロの側に近づけることをヒソカも幻影旅団も許すとは思えない。少なくとも操作したものに害意がないことを確認するだろう。それは俺にとって極めて高いハードルだ。

 やはり、できれば、アベンガネの意思でクロロを除念をしてもらいたい。

「死んだフリをして騙した貸しがあるだろう?」

「それは爆弾魔(ボマー)の情報を流したことでチャラだ」

「…………」

「…………」

「その念獣は消してやる。その代わり、俺の協力者と一回会って話をして欲しい。

 報酬はソイツから貰え」

「依頼を受けるとは限らないぞ?」

「ああ。仕方ないな」

 これは無理だ。ヒソカに丸投げするしかない。

 原作でも何とかしていただろうし、きっと何とかするだろう。まあ、クロロを除念した後に念を盗まれるか殺されるかしそうだが。どちらにも転んでも念獣は消えるし、嘘ではあるまい。

 とにかくヒソカに恩が売れそうなだけ良しとしなければならないだろう。

「グリードアイランドで除念を依頼してくる奴がいたら、多分俺の協力者だ。俺の名前を出して様子をうかがってくれ」

 言いながらとある能力を発動する。手元に具現化された機械から、ゲンスルーの項目を選択して、発券された紙を破る。

 未来でレオルが使用する能力である謝債発行機(レンタルポッド)。それを使って一時的に命の音(カウントダウン)の発動者を俺に変えた。

「それは?」

「余計な質問は無しだ。俺に触れて解除ワードを言え」

 訝しい表情をするアベンガネだが、慎重に近づいてきて、そして触れる。

「『爆弾魔(ボマー)捕まえた』」

 瞬間、アベンガネに巻き付いた念獣が音と煙をあげながら消えていく。

 驚きに目を見開くアベンガネだが、強かな彼にこちらとしては一本取られた気分だった。

 

 ◇

 

 ツェズゲラは千里眼の蛇から吐き出された念視(サイトビジョン)のカードを使い、情報を集めていく。

 これは定期的にしなければならないこと。相手の情報を集めることの重要性は言うまでもない。

「――情報を整理しよう」

 深刻に言うツェズゲラに、彼の仲間たちの表情が引き締まる。

 彼らの中でドッブルが代表して声をかけた。

「何かあったか、ツェズゲラ」

「ああ。ゲンスルー組が脱落して、マチ=コマチネというプレイヤーに全ての所持カードが移った」

 様々な意味が込められたその言葉が与える動揺は大きい。

「マチとは、プレイヤーキラーのか?」

「いや、バインダー上ではマチ=コマチネと名乗っている。別人ではあるだろうな」

「無関係とも思えないが」

「同感だ。だが、マチもログアウトして久しい。何かトラブルがあったか、別人か……」

 考え込むツェズゲラ。仲間たちはツェズゲラが考えを巡らせているのだろうと、彼の結論を静かに待つ。

 付き合いの長い男。そしてシングルの称号を持つプロハンター。彼への信頼は絶大だ。

 やや時間をかけて、ツェズゲラは仲間たちを見る。

「結論から言おう。おそらく、マチ=コマチネとマチは同一人物だ」

「根拠は何だ?」

「ゲンスルーの正体。奴はおそらく爆弾魔(ボマー)だった」

 そこで以前の交渉における不自然さを語るツェズゲラ。

 仲間たちは何故そんな重要情報を黙っていたのだ、とは言わない。凶悪な念能力者だということがわかれば萎縮してしまう可能性を考慮したのだという事くらいは分かる。必要となったら間違いなく語ってくれるという信頼と共に、それは長年の絆で培われていた。

 そしてゲンスルーが爆弾魔(ボマー)であるとするならば、マチの危険性が段違いに上がる。

「――つまり」

「マチは数十人を瞬殺した能力者である爆弾魔(ボマー)から、カードを全て奪えるってことか」

 この場合、手段は力づく以外の何物でもあるまい。わざわざそれを確認する必要もない。

 爆弾魔(ボマー)を超える凶悪さを感じさせるマチに、全員の顔色が悪くなる。

「これまで以上に呪文(スペル)の在庫には気を付けなくてはな」

 彼らは全員、左遷(レルゲイト)離脱(リーブ)を保険として持っている。突発的な遭遇ならば島のどこかへ、そうでないならばゲーム外に逃げる方法は確保しているのだ。マネーハンターである彼らだが、それでも金よりも命の方が大事だという感性はある。

「それでマチは89種集めているのか?」

「そうだ。000番を除いて後10種でコンプリートだ」

「今更マチがクリアを目指すか?」

「分からん。だが、ゲンスルーのカードを奪ったということは警戒しなくてはなるまい。

 俺たちの独占カードである『浮遊石』と『身代わりの鎧』がいつ狙われるか分からないからな」

 この場合、まさか穏健に呪文(スペル)で奪いには来ないだろう。マチが殺しに来ることすら覚悟しなくてはならない。

「『闇のヒスイ』はどうだ?」

「きっちりフリーポケットカードに14枚入っていた、この分だとゲイン待ちのヒスイまで回収しているだろうな」

「――手強いな」

「そうでもない」

 ニヤリと笑うツェズゲラに全員の視線が集まる。

「ここまで他者のクリアを警戒するって事は、逆に言えばゲームクリアが目的だろう。

 ゲンスルー組よりかはずっとやりやすい」

「確かにな」

 ソロプレイヤーというのは隙ができやすい。例えば闇のヒスイにしたって、ゲンスルー組から奪うには防御カードを抜ける徴収(レヴィ)が一番妥当な選択肢だった。相手が3人組だった時に比べて、マチから徴収(レヴィ)で闇のヒスイが奪える確率は単純に3倍。

 また呪文(スペル)での追いかけっこにしたって、フリーポケットの数が限られる以上は追うのも逃げるのも厳しくなる。金に呪文(スペル)に攻略アイテム、フリーポケットの数というのはそれだけで貴重な枠なのだ。

 グリードアイランドでは戦闘能力が高いことがそのまま有利になるとは限らないのだ。

「できれば交渉で手に入れたいところだがな」

「ああ。喧嘩を売って命を狙われるのは避けたいところだ」

 そんなこんなでマチへの対策は固まっていく。逃げる準備を万端にしたところで、まずは話してみようというところだ。

 続いて次の話題。

「それからトクハロネ組が独占カードを奪われた」

「マジか」

「『妖精王の忠告』をか?」

「ああ。奪った相手は今のところ不明だがな」

 トッププレイヤーは独占カードを持っている。というよりも、今まで最上位のプレイヤーは独占カードの交渉と未発見の2種のカードを探すことに多くの力を注いでいたと言っていい。

 しかしトクハロネ組が独占カードを失ったことで、ツェズゲラたちがまた一歩有利になった。と言うよりもトクハロネ組が一気に不利になった。状況が変わった時、クリアを阻止する手段がないのだから。

 ハガクシ組がブループラネットを失い、トクハロネ組が妖精王の忠告を失った。

「これで独占カードは俺たちが持つ2種と、マチの持つ『闇のヒスイ』だけになったか」

「いや。おそらく『大天使の息吹』も独占されている」

 ツェズゲラの言葉に、誰ともなしに驚きの声が上がる。

「おいおい。『大天使の息吹』はゴン組が交渉で得た筈だろ?」

「ああ。そこを詳しく調べたんだが、不審な点が見られた」

 ツェズゲラの真剣な瞳に全員がその話に引き込まれる。

「まず大前提として、ゴン組は何を対価に『大天使の息吹』を手に入れたのか?」

「……それは」

「バハトのカードが増えた様子はないのに、ゴン組が『大天使の息吹』を手に入れた。これは酷く不自然な状況だ」

「いや、しかし……。呪文(スペル)で奪ったというのは?」

「『大天使の息吹』を手に入れるほど呪文(スペル)を買ったのに、防御を疎かにするか? SSランクのカードだぞ?」

「…………」

「そもそもバハトは何を考えて『大天使の息吹』を手に入れた?」

「それは確かに疑問だった。ランクインしているプレイヤーを名簿(リスト)で調べても引っかからなかったしな」

「マサドラで離脱(リーブ)をエサに仲間を集めている不審な男を、ツェズゲラが怪しいと思わなければ調べようとすら思わなかった」

「そう。だが、こう考えれば納得がいく。

 バハトは『大天使の息吹』を独占し、仲間のサポートをしていた」

「――その仲間がゴン組か?」

「いや待て。それならギリギリまでバハトが独占しておくんじゃないのか?

 ゴンとキルアに『大天使の息吹』を渡したことで情報が漏れたんだろ?」

「いくら情報を隠そうとしても、98種まで集めたら最後の『大天使の息吹』を探すのに血眼になるだろう。奴はその前に手を打ったんだ。

 堅牢(プリズン)を3枚集めるという手をな」

「な、なるほど。それなら『大天使の息吹』は呪文(スペル)で奪うことはできない」

「じゃあ、バハトは今何をしているんだ?」

「ゴン組と繋がっていると考えたら、おそらく自分の独占カードを作るか、相手の独占カードを奪うかだが」

「……まさか」

 全員がそれに思い当たる。

 あまり積極的に動かないバハトは、バインダーに載る者も少ない。ツェズゲラ達の中でも彼をバインダーに載せているのはボードムのみ。

念視(サイトビジョン)使用(オン)、バハト!」

 果たして覗いたバハトのバインダーの中にトクハロネ組が独占していた妖精王の忠告のカードがあった。

「間違いないな」

「ああ、バハトはゴン達と組んでいる」

「意外、だったな。まさか外部のプレイヤーが5人目の仲間になるとは」

 グリードアイランドのクリア報酬は、指定ポケットカード3枚。これは比較的簡単に知れる情報だ。故に普通のプレイヤーは4人以上の徒党は作れない。例外はバッテラに雇われた人物くらいだろう。

 しかし思い返せば、バッテラがした契約はクリア報酬を渡すことで500億を払うというもの。バハトが2枚の指定ポケットカードを得て、ゴン組が1枚バッテラに指定ポケットカードを渡せば大儲けだ。これは確かに死角にあった事実。

 これももちろん前提条件があり、報酬の金やカードで揉めない事が前提になければならないのだ。それを考えれば、ゴン組とバハトの絆は恐らく深い。

「相手に察知されずにこれに気が付けたのは大きい。

 上手く交渉に使えば裏をかけるかも知れん」

 ツェズゲラの言葉に仲間たちが頷く。

 彼らの集めた指定ポケットカードは92種。残りは000を除いて7種。その内の殆どが独占カードか未発見のカードであり、ゲームは大詰めと言っていいだろう。

 ゴールの見えた彼らだが、しかし慢心はない。後ろに迫っている競争相手もいる以上、油断できる状況でもないからだ。

 数年かけて挑んだ、500億の仕事。それを完璧に仕上げる為、より慎重に作戦を練っていくツェズゲラ達であった。

 

 ◇

 

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