殺し合いで始まる異世界転生   作:117

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最近短いけど、とりあえず更新していくよー。
いやまあ、キリがいいというのもあるけどさ。


060話 交渉戦・3

「弱った」

 頭を抱えて困るのはゴレイヌ。

 ここまで仲間になったのは、ゴレイヌを含めて7人。俺とユア、ゴンとキルア、そしてビスケとヒソカ。7名である。

 一坪の海岸線イベントのクリアに必要な8人まで1人足りないというのに、もう勧誘できるプレイヤーの心当たりがないのだ。

 ソウフラビの広場の片隅で額を突き合わせているが、どうにも妙案が出て来ない。

「サキスケ=ンジジだっけ? 比較的マシなの。

 誘うか? とりあえず8人揃うだろ?」

「いや、俺が名前を出しておいてなんだが反対だ。サキスケはがめつすぎる。納得できる報酬を支払った後で、イベント開始条件をツェズゲラかマチに漏らしかねない。

 8人ギリギリで誘うにはリスクが高すぎる男だ」

「つっても、もう本当に選択肢がないぜ?」

 キルアがサキスケを誘う案を出すも、ゴレイヌがそれを拒否する。じゃあどうするんだと俺が問えば、ゴンが何か言いたそうに見つめてくる。

 ゴレイヌとヒソカにバレないように厳しい視線を向ければ、ゴンは諦めたように視線を外した。マチについては明かす場面じゃない。

「くっくっく♥」

 後ろで手慰みにトランプをシャッフルするヒソカの前では、特に。

 ……やっぱりヒソカは殺しておいた方がいいと思うんだよなぁ。危険度が高すぎる。でもシャルナークは怖いし、旅団にぶつける奴に他に心当たり無いし。

 本当に扱いに困る奴である。

「ちょっと聞くが、ツェズゲラって選択肢はないか?」

 俺の言葉に、ゴレイヌたちがぎょっとして俺を見る。

「正気かよ、バハト。奴らは既に90種類以上の指定ポケットカードを集めているぜ?」

「冷静に考えれば、こそさ。俺たちはまだ73種。ここからツェズゲラ組に追いつけると思うか?」

 キルアが反発するように言うが、俺の言葉に反論できる者はいない。

 一坪の海岸線を独占しても74種。99種までにまだ25種類ものカードを集めなくてはならない。対してツェズゲラ組の残りカードは一坪の海岸線とこちらが独占している大天使の息吹、マチの所有している闇のヒスイと一坪の密林。そしてゲイン待ちのブループラネットと入手条件の判明している奇運アレキサンドライトの6種だ。下手に一坪の海岸線を回収してしまえば、それこそが最後の戦いの扉を開いてしまいかねない。

 かといって、ツェズゲラ組がいつまでも一坪の海岸線イベントの条件を看破できないと思うのも甘く見過ぎだ。彼らの独力では難しいだろうが、カヅスールなどはいつでも情報を売れる状態である。ツェズゲラ組にこれ以上のカードが集まるようならば、一坪の海岸線の情報は売られる可能性もある。

「うむ。一理ある、な」

「こちらが勝てるかも知れない。

 こういう条件だからこそ、ツェズゲラ組の譲歩を引き出せる。これ以上遅れれば、俺たちが持つ情報に価値がなくなるぞ」

 情報にも鮮度はある。腐りにくい情報もあれば、一瞬で無価値になってしまう情報もまたあるのだ。ただ情報を集めるだけでは三流である。適切に情報を扱ってこそ、それの価値は光り輝くのだ。

「分かった。だが、奴らがクリアした際の保険として、情報の見返りは約束しておこうぜ」

「甘いぜ、ゴレイヌ。ここは情報を売る代わりに奴らの仲間になる位がベストだ」

 口を挟めば、またもゴレイヌは苦い顔になる。

 確かにここまできてクリアを諦めるのは業腹だろう。だがしかし、だ。もう一度言うが、現実的に考えて20種類程の指定ポケットカードの差があるのである。これでこちらが先にクリアできるのか、冷静に考えて欲しい。

 そして今ならば、一坪の海岸線と大天使の息吹に奇運アレキサンドライトのカードも渡せる。ツェズゲラ組の足りないカードの半分の補填ができるのだ。そうすれば事実上、最後の戦いはマチのみ。単独プレイヤーであるマチに対して、人海戦術の呪文(スペル)攻撃は極めて有効だ。まさかツェズゲラがそこに気が付かないとも思えない。

 俺たちを高く売り込むならば、今が最高の時なのだ。

「……分かった。その分、吹っ掛けるからな」

「もちろんだ」

 俺とゴレイヌが頷き合うが、それを見てつまらなそうな声を上げるのはユア。

「盛り上がっているとこ悪いけどさ、肝心のツェズゲラさんとはどうやって連絡を取るの? バインダーに名前が入ってないでしょ?」

「ツェズゲラは有名人だし、探せばバインダーに名前が載っている奴はいると思うが――ヒソカのバインダーに載っていないか?」

「……リスト?」

 俺の言葉にヒソカが目を細めて聞き返してくる。

 そしてゴンがリストの説明をヒソカにして、奴のバインダーに記載されたリストを覗き込む。薄っぺらな嘘(ドッキリテクスチャー)で偽装されたバインダーを、だ。

 この世界では俺とマチしか知らない能力である。これは騙されるしかないだろう。幻影旅団の名前が載っていないバインダーを見て、ツェズゲラの名前を見つけ、ヒソカのバインダーリストは堂々と白となった。見事な嘘つきであると感服するより他はない。

 そうして交信(コンタクト)をツェズゲラに繋ぎ、面会の約束を取り付けた。

 

「とにかく『一坪の海岸線』の情報料はクリア報酬の15%である75億だ」

「……法外だな」

 ツェズゲラが呟く。確かに94種類ものカードを集めたツェズゲラ組としては、たった1種のカードにその値段が付けられるのは納得がいかないだろう。

「もちろん、この条件を呑んで貰えれば俺たちはこれからそちらがクリアをする事のバックアップをする。

 俺とゴン組で独占している大天使の息吹も提供するし、マチ=コマチネからカードを奪うのも手伝うぜ」

「……くくく、俺とゴン組か。お前たちが裏で手を組んでいることは秘密か?」

 ツェズゲラが確信を持ったように言うと、ゴンとユアが驚きで目を丸くする。バレているとは思わなかったのだろう。

 かくいう俺も、どこでその情報が漏れたのか内心驚きである。

「ああ、それは秘密だ」

 まあ、驚きを表に出す真似はしないのだが。飄々とした風情で流す。後ろでヒソカが楽しそうに笑っている気配が感じられたが、もちろん無視である。

 それから少しだけ問答をして、ようやくツェズゲラは頷いた。

「よかろう。マチとの決戦に力を貸してもらうという条件を加えるなら頷こう」

「快諾してくれて嬉しいぜ」

「交渉成立だな、話してくれ」

 ツェズゲラ組の了解を得た上で一坪の海岸線イベントについて説明をする。

 イベント条件が解明してから、まだ2日も経っていない。ツェズゲラ組に情報を真っ先に売れたという意味では、やはりこの迅速な行動は間違っていなかったのだと確信できる。

 参加者が15人以上必要であると説明すれば、彼らの後ろで絶をして息を潜めていた仲間の2人を呼び出して戦力になる人間を確認。11人になる大所帯が結成されたが、それでもまだ4人足りない。

「現実に帰りたくても帰れないプレイヤーを誘う。戦力としては全く当てにはできないが――」

「――その分、報酬に頭を悩ませなくてもいい、か」

「そういうこと。ちなみにゲインした挫折の弓があるから、離脱(リーブ)の当ては任せておけ」

 とんとん拍子に話が進み、次にどうやってイベントをクリアするかの話になる。

 実際に敵の力量を見たゴレイヌやキルアは、自分たちならば勝てると自信満々に言い切り、お前らは勝てるのかとツェズゲラを挑発。

 それをニヒルに笑って流したツェズゲラは、シングルハンターに恥じない実力を見せつけてくる。垂直飛びで10メートルを楽に超えるジャンプを披露した。

 ヒソカがちょっと冷めた視線を送っていたのは無視する。ついでに試しで垂直飛びをしたゴンとキルアが20メートル越えをした事に目を輝かせたが。

「ガキ」

 同い年のユアが、落ち着きのないゴンとキルアに冷たい独り言を呟いたのももちろん俺は聞いていない。

 ジャンプ対決を始めたゴンとそれに付き合わされたキルアはさておき、イベント攻略の話に進む。スポーツ対決で確認したのは8種だが、相手が馬鹿正直にその8種で勝負をしてくるとも限らない。とはいえ、手持ちの情報はこれしかないのである。この8種を基準に戦略を整えるしかあるまい。

「俺はビーチバレーにしておくか」

「あ、相撲は俺がやるから」

「キルア、もう1回だけジャンプ勝負!!」

「しつけーな、オメーはよ!!」

「ボクシングは俺がやろう。相手の念への対策もある」

「ボウリングは俺だな。念を使えばパーフェクトも容易いし、相手のやってきそうな事も想像がつく」

「ボクはリフティングがいいな♣」

「私は卓球がやりたいです」

「フリースローはオレがやる」

 あっという間に決まっていく競技に、呆気に取られた顔のゴン。やがて残ったのはビーチバレーの相方と、俺とゴンにユアだけだ。

「まあ、11人いるなら3人はあぶれるが……一緒にビーチバレーをやるのは誰だ?」

「あ、俺はパス」

 真っ先に言っておく。そんな俺の顔を全員が見る。

「なんで?」

「予想でしかないが、オリンピック競技やジャポンで有名な競技が多そうだ。相撲とかな」

「ああ、相撲ってジャポンの競技だったんだ」

 ユアが言う。何十年か前に相撲が世界的ブームになったから、多少の知名度はあるが何せ古い話である。朧気なルールくらいは知っていても不思議ではないが、発祥国などの詳しいことを年若い人間が知らなくても仕方あるまい。

 そう思いつつ、俺は発を披露する。

煌々とした氷塊(ブライトブロック)

 オーラを変化させた氷を棍状にして、構える。そして鋭い突き(トゥシュ)を放つ。

 目を丸くするツェズゲラたちに向かって、ニヤリと笑う。

「フェンシングやベースボール対決があるかもだからな。それが来たら、俺がやろう」

「――素晴らしい腕前だ。いいだろう」

 掛け値なしの称賛を浴びせてくるツェズゲラ。彼のパートナーから俺を外し、視線が向くのはユアとゴン。

「では、どっちがビーチバレーをやる?」

「ゴンかしら? 身体能力はゴンの方が優れているし、カンもいいわ。私はあんまり激しいスポーツは得意じゃないし」

「じゃあユアは何をやるの?」

「相手の出方次第かしら? できれば私の出番よりも前に8勝してくれると嬉しいけど」

「オメーはもっとやる気を出せよ」

 キルアの尤もな言葉に、兄としてちょっと恥ずかしい。

 いやまあ。ユアもクルタ族の里にいた時はともかく、外に出てからは学校に通わせられる訳もなく、細々とした生活を送っていたしな。戦いは命にかかわるから教えたが、スポーツまでは手が回らなかったという事情もある。

 だからあんまり責めてくれるなよ。家庭環境とかあるんだからさ。

 

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