殺し合いで始まる異世界転生   作:117

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ごめんなさい、FGOで人類悪をやっていたので遅れました。

誤字報告、感想、高評価、ご指摘。
いつも励みにさせていただいております。


067話 シングルの情報ハンター・2

 ◇

 

 情報ハンター。それについて少し深く考察してみよう。

 ハンターとは狩るものである。入手、強奪、殺害。結果の呼ばれ方は様々であるが、少なくとも生産者ではない。生産者がハンターであってもいいが、ハンターは生産者ではない。

 とか言うと、ジンが二首オオカミの繁殖法を確立させたり、ポンズがバッテラに造らせている昆虫博物館の内部に存在する繁殖場とかで抗議が来そうな気がするので。一般的にはと、惚けさせて貰う。ここでは一般的な情報ハンターの話をしているのであって、彼らが情報を創る事を指さないと自己弁護させて貰う。

 つまりは情報ハンターとは、一般的に情報を入手したり強奪したり抹消したりする事を生業とする人間たちの総称だ。

 入手や強奪はともかく、抹消というと穏やかではないが。要するに知られてはマズイ情報が漏洩した場合、それを始末するのも情報ハンターの仕事という訳だ。機密文書、密約書などがそれに当たる。敢えて綺麗な場所を取り上げるならば、司法取引の内容が犯罪組織に漏れた場合、それを抹消するケースなどがある。

 ここで情報についても掘り下げよう。ハンターが狙う情報とは、世間一般に溢れているそれではもちろん無い。新聞を目を皿のようにして読み漁ったり毎朝毎晩ニュースを視聴していても、彼らが望む情報を手に入れられる可能性は限りなく0に近い。そこになんらかのヒントがあるケースも無くは無いので、0であると断言はしないが。

 情報ハンターが狙う獲物とは、既に存在して隠されているモノが一般的に該当する。

 どこかの大企業の裏帳簿であったり、警察組織が裏で犯罪を見逃している政府高官の犯罪であったり、流出して逆利用された書類に記載された重要人物のサインだったり。

 または意図せず隠れてしまったモノもある。大都市に紛れた犯罪者の存在などだ。例として、解体屋ジョネスを見てみる。彼はザバン市最悪の殺人鬼と評されたが、百何十という犠牲者を出しつつもザバン市に潜伏し続けられたのは一般に彼の顔も名前も知られていなかったからだ。大都市という巨大なベールが個人という顔を覆い、結果的に逮捕までの時間を要してしまった。もしもここで情報ハンターが活躍すればジョネス逮捕までの時間が短くなり、命が助かった者もあるかも知れないが。ここでそのIFを語るつもりはないので置いておこう。

 つまり、などなど以上の情報をハントする事が情報ハンターの仕事であるといえる。

 その領域でシングルの称号を掲げ、世界最高峰の一人でもあるバハトは、或いはこう評される事もあるのだ。

 

 世界最悪のストーカー野郎。

 

 もちろんそう評するのは、敵対者やなんの責任や影響もない第三者に限る話である。

 そんな世界最悪のストーカーは、以前と同じく郊外の廃墟を改造し、一時的なホームにする事に成功していた。

 

 ◇

 

「こっちはOKだよ」

「ありがとう」

 マチが彼女個人で廃墟のビルに罠を張り巡らせる。それは俺が与り知らない情報であり、俺の情報が万が一抜かれても追加で一枚防御壁を作る作業である。

 電気系統に簡易トイレの設置をした俺は、大きな部屋に入り能力を発動。

不思議で便利な大風呂敷(ファンファンクロス)

 いや、発動というか解除か。バッテラに用意をさせた大量の物資を風呂敷を解く事でこの場に置く。食料品、飲料水、電池などの消耗品や毛布といった生活物資、そして正規の手段で手に入れた死体が3体に虫かごに入った蠅。

 今回の仕事で俺は転生に備わる贈り物(リバースデイプレゼント)のテストをするつもりであるからこその死体である。もちろんサーヴァント、ひいては百貌のハサンは強力な手札であり、それを自重するつもりは俺には全くない。魔術的な観点がないこの世界に於いて英霊という存在は隠匿性では特にその能力を発揮する。彼らを察知する能力や感覚が磨かれていないのだから、好き放題できるという理論。だが、こちらに成長性は少ない。サーヴァントがその能力以上の仕事をすることは出来ないから、サーヴァントはもちろん俺も成長しない。

 対してアサンから奪った転生に備わる贈り物(リバースデイプレゼント)の成長性は無限大だ。この世に念能力者が生み出される限り、その成長が止まる事はない。

(まあ、他人に依存しているけどな)

 そういう能力だから仕方ないが。自分であんな便利な能力が欲しいな、と思っても。その能力を創った相手を見つけ出さなくては使えないのだ。念能力ガチャか。

 前のプレイヤー(アサン)の情報を引き継いだから、それでも100を超える能力のストックがあるのは嬉しい。それらを組み合わせたり、俺が新しい使い方に気が付けば更に応用性が増す。

 今回はぱっと思いついたものや、アサンが使っていた能力の試運転だ。死体のうち、やや小柄な男に触れる。便宜上、コイツをAとしよう。

死体と遊ぶな子供達(リビングデッドドールズ)

 イカルゴの念能力で死体を操作する。これはアサンがテストをしていた念能力なので、詳細な条件も知れている。

 オーラを送り込む事によって死体を起動し、操作する能力。発声や念能力の使用も可能だが、遠隔操作が不可能。厳密には不可能ではないが、送り込んだオーラが尽きたら死体に戻るし死体が何を見聞きしているのか発動者に伝わる事は無い。ここら辺はイカルゴが死体に取りつく事を前提にした能力だからだと言えるだろう。

 要はそれを補佐する能力を使えば問題ない、という訳である。

裏窓(リトルアイ)

 続けて虫かごに捕らえていた蠅に球状のオーラを放つ。オーラに包まれた蠅は俺の支配下に置かれ、こちらは視覚や聴覚も繋げることも出来る。Aと蠅をセットにすれば自在に操れる諜報員の完成という訳である。

 ついでに言えばAは敵対勢力の死体であり、念能力者でもある。そういった者たちのストックは何体か存在し、これから先も便利に使わせてもらう予定だ。

「結構オーラを込めたけど、稼働時間は12時間くらいかな」

 まるで生き返ったかのように顔に赤みが差したAを見ながら、既に消費したオーラから逆算して操作可能時間を推測する。それまでにまたオーラを補充しなくては物言わぬ死体に戻ってしまう。まあ、とりあえずAはこれでいいだろう。

 次に美人めの女の死体に触れる。コイツはBでいいか。

在りし日のアルバム(メモリーズデイ)

 パチリと目を開けたBが起き上がり、俺も見てにこやかに笑う。

「おはよう、ご主人さま」

「おう。仕事内容は分かっているな?」

「もちろんよ。任せてってね」

 ふふふと笑うBに薄ら寒いものを感じる。

 これは生前のBの性格そのままらしい。それを再現した上で、Bにはとある念能力が付随される。それは殺害した死体の操作。Bは殺害した人間を更に操作して、その手駒を増やす事が可能。これは俺がBにオーラを込める時に命令した事を遂行するまで続けられ、それが終わると同時に操作が切れて死体に戻る。

 今回Bに命じた命令はジノトーダ市長がマフィアンコミュニティから献金を受け取ったその証拠を、マフィアンコミュニティから見つけて俺に送りつけること。Bはこれよりマフィアンコミュニティの人員を殺して彼らを操作しつつ、その奥に奥に入り込む。そして任務を達成した時、情報を抜かれたマフィアンコミュニティには死体の山だけが残る。

「これ、どういう奴が創った念なの?」

 思わず呟いた俺の言葉をマチが拾う。

「確か、夫を亡くした老婆だったね。元から精孔は開いていたらしいんだけど、特に念能力を扱えていた訳じゃなかったらしい。それが夫の死を受け止めきれずに、死んだ夫を操作したのが始まりだったはず。

 けれども死んだ人間が動いているんだから当然騒ぎになる。だから更に死んだ夫に操作能力を足したんだけど、自分の夫との平穏な生活を乱す奴は敵だとか思ったらしく、死体が動いたとか騒ぐ奴を片っ端から殺して操作するようになったとか。で、殺された奴も動き出して今までと同じような生活を始めるんだけど、当然そちらの目撃者も居る訳で騒ぎは広がるばかり。

 そんな騒ぎが巡り巡って、アサンに騒ぎを解決するような依頼が回ってきたってワケ」

「…………」

 もう災害だな、それ。好奇心で聞いたが、聞いていて気分が悪くなった。

 どんな結末を辿ったかまで聞かない方が絶対に精神衛生上いいと判断して、それ以上問いただす事はしない。

 黙って最後の死体に近づく。

暴食餓鬼(グリトニー・オーガ)

 最後に使ったのは具現化系。これも中々にエグい能力だ。現れたのはよだれをダラダラと流す、茶色い肌をした(オーガ)。オーガは死体を見ると、躊躇せずにかぶりつき、その死肉を食らい始め、瞬く間に食い尽くした。

 食事を終えたオーガは俺に向かって土下座する。

「フ、フグッ、グググッ」

「良し。お前はアサノーダ組の所有しているベラドノーチビルへ向かえ。そこで存分に()()をしていい」

「フゲゴォ!」

 喜びの声?っぽいものをあげて、オーガはこの場から飛び出していく。

 奴は名前の通りに餓えた食人鬼である。人一人を瞬く間に食い尽くし、しかし空腹を思い出すまで1時間もない。腹が満ちている間は発動者の命令を聞くが、空腹を思い出すと同時に命令を忘れて誰彼構わず人を襲って喰らい始める。これは発動者ですら例外ではなく、一歩間違えれば自分の念能力に喰われるハメになる。

 止める方法は2種類のみ。空腹を思い出してから10分間、人を1人喰わなくては餓死する。満腹時に発動者がオーガに触れて消えるように念じる。このどちらかだ。人を喰った際に再生するが、それ以外に再生能力はないので、体をバラバラにしてしばらく放っておけば消えるという事である。

「お前も動けよ、俺も動くから」

「承知したわよ」

 茶目っ気を込めたウインクを俺に向けてくるBは、そのまま出入り口に向かう。マニュアル操作のAにも蠅を付けて動かす。Aを送り込むのはオーガと同じくアサノーダ組のベラドノーチビルだ。流石に破壊活動しかできないオーガに全部任せる訳にもいかない。

 オーガはあくまで下準備、Aを中に忍び込ませる為の特攻役だ。

「じゃあ、俺も行くわ。留守を頼んだ、マチ」

「分かったわ」

 今回のサーヴァントは百貌のハサンではなく、俺を護衛するディルムッドだ。とはいえ、彼を使う気はない。万が一の為の切り札であり、俺が失敗した時の保険という奴だ。

 そうして俺も走り出す。オーガが思ったよりも速く、急がないと間に合わない可能性がある。

 

 ◇

 

『うわぁ……』

『マスター、これは……』

『うん、ちょっとやり過ぎたかなって思っている』

 アサノーダ組が所有しているベラドノーチビル。その入り口のガラスは破壊され、周辺には夥しい血痕がまき散らされている。極めつけに衣類の切れ端や食い残しの肉片が散らばっている。

 そういう能力だとは聞いていたが、実際に見るとえげつなさが凄い。

「3階と4階の間に居るぞー!!」

「ビゼドが喰われているっ! くそ、アイツは入ったばかりの新人なのに!」

「言っている場合か! お前が喰われたくなければ撃て撃て撃てぇ!」

「ダメだ、死なねぇ! フィルさんを呼んで来い! 銃じゃ駄目だ、能力者を呼べぇ!」

『…………』

『…………マスター』

『…………行くか』

 思った以上の地獄絵図をつくり出してしまったらしい。冷や汗を流しながら、息を止めてビルに入る。神の不在証明(パーフェクトプラン)を発動させた俺は、悠々と入り口を潜る。オーガが暴れているとはいえ、まさか他の襲撃を警戒しなかったり機械による警備がない訳ではあるまい。しかしそれも神の不在証明(パーフェクトプラン)を使えば解決である。マジで便利な能力だよな。

 そして一階にある個室のトイレを探し出し、ノヴの四次元マンション(ハイドアンドシーク)を発動し、出口を設置。これで目的の1つは達成した。

 続いて上階での銃撃音を聞きながら、それよりも下の階を徘徊して身分の高そうな奴を探す。間もなく地下への階段を見つけ、そこに侵入。たまに監視カメラの死角を見つけたりしながら息継ぎをしつつ、潜入を続ける。円も併せて使えば目的の場所はすぐに見つかった。カメラやその他の情報を集める監視室、そこに辿り着く。

(さて、と)

 神の不在証明(パーフェクトプラン)で感知されない状態での円で内部を探れば、中には4人の人間がいる。全員が一つの画面に顔を向けている辺り、そこでオーガが暴れているのだろう。

 部屋は気密性が高く、やはり攻撃される前提で防御を敷いているのが分かる。

 とはいえ、だ。

(人の心は脆いもんなんだよ)

 俺はたった一つの扉のノブに触れて、静かに開ける。そして扉を開ける時に音が鳴るしくみらしい、コンビニとかの入り口のアレだ。ピー、と小さな高い音が響くと同時、部屋の中にいた男たちは銃を俺に向けてきた。見えない俺に、だ。

「……誰だ?」

 もちろん俺からの返事はない。

「……敵襲と思え。最大に警戒して、様子を伺うぞ」

「警報は? ザイツさん」

「まだだ。ここまで監視カメラに怪しい人影はなかった筈、いきなりここに敵が現れるのは不可解だ。

 だが可能性は否定できねぇ、上でバケモンが暴れているなら尚更な。敵がすぐそこまでいると思って警戒しろ」

 一番奥にいる男がリーダーで、ザイツというらしい。いい情報が手に入った。

 そしてそのまま入り口に銃を向ける男たちだが、何も起こらない。俺は廊下に戻り、絶をした上で神の不在証明(パーフェクトプラン)を切る。流石にずっと呼吸しないのは厳しい。

 30秒程経ったが、お互いに動きはなし。

「……ラチが明かねぇ。おい、お前ら様子を見てこい。ベイは残れ」

「うっす」

「分かりました」

「必ず2人で動けよ」

 男2人が銃を持って警戒したまま扉に近づいて来る。そのタイミングで神の不在証明(パーフェクトプラン)を発動し、監視部屋の中に潜り込む。

 残った男たちであるザイツとベイは彼らの後ろから銃を構えているが、当然彼らにとって異常はなし。様子を見る為に動き出した男たちが警戒しながら廊下に出て、扉を閉めるまで銃を降ろさないままだった。

「やはり敵襲でしょうか」

「だろうな。ベイ、お前はアイツらの様子を監視しろ。俺は他全部を警戒する」

「了解です」

 ザイツとベイは俺に背中を向けて画面を見たり、イヤホンを耳につけて音を拾う。

 さて、もういいか。

 素早くベイの首筋に手刀を叩き込む。

「がっ?」

「ベイ!?」

 ザイツは部下の異常には気が付けたが、神の不在証明(パーフェクトプラン)を発動している俺には当然気が付けない。一瞬でザイツに肉薄すると同時、その肉体に具現化した鎖を巻き付ける。

「なっ!」

「黙って貰おうか」

 使ったのはクラピカの束縛する中指の鎖(チェーンジェイル)だが、旅団以外に使えば死ぬという制約の刃を俺に刺していない為に強制的に絶にする効果はない。ただ、捕らえた者を動かさないだけの鎖。だがこれだけでは口が動いてしまう。声だけで警報を鳴らせるシステムがあったら厄介だ。そのままヒソカの能力である伸縮自在の愛(バンジーガム)を使い、その口を塞いだ上で鎖の上から更に拘束。これで例えザイツが念能力者だったとしても、生半可な実力や能力では拘束を解く事は不可能。

「ム、ムグ……」

「さて質問だ。警備上の秘密は何だ?」

 相手に触れた上で質問し、その答えを引き出す能力。パクノダのそれで記憶を浚い、俺の頭に叩き込む。これで重要な情報は頭に入った。後の細かい情報は操作して聞き出せばいい。

「おっと、これじゃあ喋れないか。後で尋問だな」

 そう言いつつ、ザイツにも首に手刀を入れて意識を落とす。そしてこの場にも四次元マンション(ハイドアンドシーク)の出口を設置する。ビルの外に設置した入り口から俺が操作するAを入れて、この場に呼び出した。

転校生(コンバートハンズ)

 まずはAを俺の姿にして、次に俺とザイツの姿を入れ替える。更にAと俺の姿を入れ替えれば完成。この場にはザイツの姿をしたAが出来たという訳だ。

 最後に四次元マンション(ハイドアンドシーク)の入り口を設置して、本物のザイツと共に脱出。

 この間、ほんの10秒足らず。ザイツに変装させたAだけがその場に残る事になった。これからAは『ザイツ』として活動する事になる。手始めに、と。

「おい、ベイ!! 大丈夫かっ!?」

「う、あ、ザイツ、さん? 何、が?」

「分からん、お前は急に意識を失ったんだ。

 ほんの10秒くらいの時間だがな」

 ベイは自分の腕時計を見てその言葉が真実であることを確認する。

「とはいえ、実害が出たのも事実だ。警報を鳴らすぞ」

 そして『ザイツ』の視線を監視映像に向ければ、剣を振るう男によってオーガがバラバラにされているところだった。

「向こうが落ち着いたな。これ以上の攻撃は出来なかったのかも知れん。

 だが、まだ警戒態勢を解くわけにはいかん。ビルの中を総浚いして、ネズミが紛れ込んでない事を確認するぞ」

「了解です」

 『ザイツ』は暗証番号を打ち込み、警戒レベルを上げる指示を出す。それはビルの中にいる者たち全てのケイタイを4回震わせ、まだ危機が去っていない事を伝えた。

 直後に『ザイツ』のケイタイが鳴る。

『ザイツ、どうした?』

「監視部屋に襲撃を受けた。ベイが気を失わされただけだが、敵の存在が確認できていない。引き続き警戒を頼む。

 俺も気になる所を調べるから、ベイを補佐する人員をよこしてくれ」

『分かった。増援が行くまで警戒を続けろ』

 ケイタイの通話が終わると同時に、気味の悪い沈黙がその場に落ちるのだった。

 

「で、どうだい。使い勝手は?」

「んー。イマイチ」

「だろうね」

 フフフと笑うマチにしかめっ面で返す俺。大騒ぎを起こしたベラドノーチビルから遠く離れたこの拠点で俺は『ザイツ』を操作している。

「マニュアル型って慣れないと自分以外にももう一つ体があるようなもんだしな、変な感覚は消えねぇよ。それに潜入させているから疑問を持たれないように注意しなくちゃならんしな。

 だからといってオート型のBは何をしているのかさっぱり分からない。途中経過も得られないし、もしや失敗しているかも分からん。あっちもヤキモキする」

 というか、自律思考能力を持つ上に俺といつでも繋がれるサーヴァントの規格外さが分かるというものだ。サーヴァントを超える念というのも普通ないと割り切って、手駒を増やすくらいの気分でいた方がいいかも知れない。

(いやいや、諦めるな俺)

 首を振って今の考えを打ち消す。既に百を超える念を持ち、これからも増やせる俺は。トライアンドエラー、試して失敗する根気が必要だ。無限の可能性がある以上、サーヴァントと同様かそれ以上のコンボが見つかるかもしれない。なんならそれを超える能力を一本釣りできるかも知れない。諦めるという選択肢は無しだ。

 とはいえ、今は『ザイツ』の操作に精一杯である。ひとまずの思考を棚上げし、アサノーダ組の機密情報を暴いていく。

(とはいえ、暴食餓鬼(グリトニー・オーガ)は使えなかったな……)

 テストは必要だったとはいえ、アレはちょっとやり過ぎたと自分でも思う。キメラアントに有効かとも思ったが、向こうの念能力者にあっさりとやられてしまった。一般人を虐殺するのには有効かもしれないが、念能力者やキメラアントにはそこまで使える能力ではないと証明された。

 二度と使う事はないだろうと思いつつ、俺はマチが淹れてくれた紅茶を口に運ぶのだった。

 




これで今年の更新は最後になるかと思います。
ではでは皆様、良いお年を!

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