殺し合いで始まる異世界転生   作:117

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本当に励みになっています。ありがとうございます。
ちょっと短いですが、最新話をあげさせていただきます。
テンションが上がっている間にどんどん投稿したいと思います。


073話 NGL・2

 

 夕日が差す中、輪になって話をする。

 今回、話を進める役を負ったのはポンズ。インセクトハンターであり、キメラアントに最も詳しいからこその議長役だ。

「まずは普通種のキメラアントの話からね」

 そう口火を切る。

「アリとかハチは一見交尾しないで大量の働きアリや働きバチを産んでいるように見えるけど、実はちゃんと交尾をしているわ。女王アリが成虫になった直後、新天地を探す際にオスと交尾をするの。その一回の交尾で女王アリは一生分の精子を胎に蓄えてちょっとずつ使用する。

 だけどキメラントの女王アリは交尾しないことが確認されているわ」

「摂食交配」

 ユアの言葉にポンズが軽く頷く。

「そう、キメラアントは女王の遺伝子と喰った獲物の遺伝子を掛け合わせて次代のアリを産むの。

 だから兵隊アリは生殖機能はちゃんと残っているわ。生殖本能が抑え込まれているだけで」

「……嫌な話の流れだが、もしもその状態で女王アリが死ぬと?」

「兵隊アリを縛るものはなくなり、群れは四散するわ。その時、兵隊アリは異種のメスと強引に交尾してそこでも次代の女王を孕ます。

 これは王も同じね。違いは王は産まれたらすぐに新天地を目指すのに対し、女王が死んだらその時点で大量にまき散らされるのが兵隊アリ」

「種を守る為とはいえ、傍迷惑が過ぎる種族だな……」

「第一級隔離指定種も納得よね」

 げんなりする俺にポンズが同意する。

 やや雑談も挟みながらも本筋から話はずらさない。

「ということは、結局援軍は必要だな。この7人だけで全てのキメラアントは駆除できん」

「そうなるな。状況を把握して柔軟に動けばいいが、蟻塚を見つけたら一旦撤退してもいいやも知れん」

「ああ、しかし被害を抑える為に牽制役も必要かもな。それは追々見極めて決めればいいが」

 カイトとエミヤが意見を交わす。それを聞きながらポンズは口を開く。

「続けるわね、ここまでが普通のキメラアントの話。

 本題の巨大キメラアントと思われる生物の考察に入るわ」

「う、うん。頑張る……」

「無理すんなよ、後で要点だけ教えてやるからさ」

 頭からブスブス煙を出し始めているゴンにキルアが呆れながら声をかけた。

 ゴンはともかくとして話を続ける。

「極端な例になるけど、大きな生物を喰らえば次代のアリも巨大になるわ。ここまで巨大なキメラアントが産まれた上に、さっき駆除した個体のほとんどは二足歩行で両手を使えた。これで類人猿以上の捕食は確定。

 そしてトドメにこちらを観察して逃げていくトンボ型のキメラアントも確認。あの知能の高さはほぼ間違いなく、今代の女王に人間の遺伝子が組み込まれているわね」

「マジか」

「それ、有り得るのかしら?」

「キメラアントの別名はグルメアント、個体によって食の好みは全く違うわ。とはいえ傾向はある。自分に近い遺伝子を取り込む傾向が強いとも言われているわ。

 逆算すると正規の王族ではないのかもね。女王アリが死んで四散した兵隊アリの子孫のうち一匹が好きでもない人間の死体を見つけて喰らい、その遺伝子を取り込んだ。その系譜がここにいると考えた方が妥当だわ」

「随分と都合のいい話に思えるが」

「私もそう思う。けど、ここで重要なのは人間の能力を取り込んだキメラアントが居る可能性があるってことよ。

 今はその由来はどうでもいいわ。違う?」

 また一段と真剣さが増す話題になってきた。ゴンも真面目な顔で頷く。

「あくまで可能性、だけど否定できない最悪の仮想。

 キメラアントは戦略や戦術はもちろん、武器も念だって使える危険があるわ」

 ポンズの言葉に俺とエミヤ以外は驚きの表情を顔に張り付ける。俺とエミヤはもちろん()()だと知っていたからそれに対する驚きはないが、この仮説に辿り着いたポンズには驚きを以って聞いていた。

「その可能性は頭によぎったが。やはりあり得る、か」

「無視して突然念の使い手に出くわす危険性と比べたら、警戒しておくに越したことはないと思う」

「結構絶望的な情報ね。昆虫の外殻に人間の柔軟性、それに念の強化が加わるとなると、私の通常攻撃じゃあダメージを与えられない気がする」

 想像するだけでもイヤだと言わんばかりにユアが顔をしかめる。

 このメンバーは念の系統が程よくばらけているが、肉体的に優れている訳でもない女性に特質系よりの系統が重なっている為、彼女たちでは通常攻撃に不安が残るのは事実だ。

 カイトの系統は具現化系っぽいが、能力の都合上近接戦闘能力は高いしな。

「ところで少し話は変わるが、キメラアントの姿が違い過ぎるように思えた。結局キメラアントの産卵形態はどうなっているのかな?」

 エミヤが疑問を差し込む。それを聞いた一同は答えを持つだろうポンズを見た。その視線を受け止めてポンズが答えを口にする。

「キメラアントの産卵形態はやや迂遠よ。説明するわね。

 まず王は女王が自分の胎で育てる、これは説明はいらないわね。

 王でないそれ以外の兵隊アリは全て女王の劣化コピーである産卵兵が産むわ。

 女王が栄養や遺伝子を蓄えて、それを産卵兵としての卵に付加して産み出す。産まれた産卵兵は託された遺伝子を育てるだけの一生を送るわ。その寿命は僅かなんだけど、ここでグルメアントの異名が生きてくるの。産卵兵それぞれに好みがあり、彼女らが生きている間に摂取した遺伝子も次代に受け継がれるわ。

 女王好みの獲物は優先的に女王に運ばれるし、たくさん捕獲しても他の上級兵が優先的にそれを口にする。結果的に産卵兵が食べるのは女王とは違う獲物。その遺伝子を混ぜ合わせる事により、次代のアリに多様性を生み出しているわ」

「ってことは……」

「私たちが相手にするのは人間とアリと、加えてナニカの遺伝子が混ざったバケモノってことよ」

合成獣の蟻(キメラアント)とはよく言ったものだ……」

 カイトが忌々しそうに吐き捨てた。覚悟していた俺やエミヤでも聞くだけで疲れる情報なのである、情報を集めてようやくその面倒さが見えてきた面々にとっては疲れるでは済まない話だ。

「とはいえここでグチを言っても始まらないだろう。話は一段落したし、今は体を休めることを優先したらどうだ?

 想像よりもタフな明日が待っていそうだ」

「バハトの言う通りだな。順番に体を休めるか」

 俺の提案にカイトが頷き、夕日が沈み始めた今日がようやく終わるのだった。

 

 翌日。

 ポックルから受け取った情報を元に、蟻塚があると思わしき場所へと切り込んでいく。どのタイミングで引くかは問題だが、こちらが壊滅的な被害を受けないのであれば、最低でも敵の拠点くらいは掴まなくては撤退の選択肢はない。

 そうして進む場所は当然キメラアントの拠点であり、すなわち接敵も当然の帰結だった。

 豚や牛といった家畜が木に刺さっている光景が飛び込んできて、ゴンがそれを百舌鳥の早贄のようだと口にする。それで全員が理解する。ここにいるのは百舌鳥のキメラアントであると。

 その想像は半分以上は合っていた結果となった。現れたキメラアントは百舌鳥だけではなく、他にもウサギのような特徴も兼ね揃えていたキメラアントであったから。

 人語が通じるそのキメラアントではあったが、それは会話が成立すると同義ではない。早贄に近づいた俺たちを獲物を奪う外敵だと認識したソイツは有無を言わず強襲してくる。

(兵隊長のキメラアントの身体能力はやはり厄介だな)

 その素早さ、その力強さ、その反射神経。どれをとっても並の人間では繰り出すことのできない鋭さを持っていた。

 しかもその上で勘も素晴らしいときている。ゴンやキルアには容赦なく襲い掛かる一方、俺やエミヤにカイトを相手にした時は顔に警戒の色を浮かべて攻撃を中断した。ユアやポンズに攻撃が出来なかったのは俺とエミヤに守られていたからだ。

 キメラアントの挙動を確認した上でカイトはゴンとキルアに指示を出す。コイツはお前らがなんとかしろと。

「ユアとポンズはいいのか?」

「そいつらには肉弾戦の期待はしていない」

 ばっさりと言い切るカイトに、ユアからむかちーんとした雰囲気が漂ってくる。

 それを無視してカイトは言葉を続けた。

「別の役割があるだろうし、奥の手はここで晒すべきじゃない。

 だがゴンとキルアは別だ。強化系に近いあいつらにとって、一体だけ出てきた雑魚ではない敵は格好の練習相手。ここで手こずるようなら話にならん。

 先々、守ってやる余裕はない」

「私とバハトは?」

「あのキメラアントが警戒を露わにした時点で合格だ」

 限りなく上から目線の言い方にユアの機嫌が際限なく悪くなってくる。とはいえ、カイトは俺より一回り以上年上のプロハンターだ。

 経験値も違う為、俺から言える文句はない。っていうか、リーダーなんて疲れる役目を負って貰ってありがたいくらいだ。ここでは誘導は必要ではないしな。

 そう思いつつ場面が進む。纏をしたゴンとキルアを相手に、件のキメラアントであるラモットは一進一退。2対1でありながら互角の戦いを繰り広げる。

 ここで業を煮やしたキルアが発を披露。落雷(ナルカミ)で麻痺させて隙を作り、そこでゴンのグーを当てる。硬の一撃を喰らったラモットは彼方へと吹き飛ぶが、それを森から現れた鳥型のキメラアントであるコルトがキャッチ。

「ぅぉぉぉおおおおお!! お前ら、喰ってやる。絶対に、絶対に、グチャグチャに磨り潰して喰らいつくしてやるぞぉぉぉ!!」

 激怒と憎悪の咆哮をあげながら、身動きの取れないダメージを負ったラモットはコルトに連れられて退散していく。

 その声を聞き、ゴンとキルアは自分の攻撃が効いていないのかと驚きの表情を浮かべていた。

 だから一応フォローはしてやる。

「いや、効いてるよありゃ。運搬役のキメラアントがいなければ地面に叩きつけられて、身動き取れずにトドメを刺すだけだっただろうな」

「引き際も心得ているとは、やはり一筋縄でいく相手ではなさそうだ」

 やれやれとエミヤが首を振る。

 そして一行のリーダーに収まりつつあるカイトは、ゴンとキルアの進軍を許可した。基礎能力は十分以上、後はどれだけ場数を踏むかが問題で、この先は絶好の修羅場だと。

「一歩踏み出せば、歩くも止まるも地獄だぞ」

「……上等」

「行くさ」

 カイトが慈悲ある脅しをかけてくるが、キルアとゴンは折れない。許可された進軍の権利を利用して突き進む。

 ここでは俺も言わねばなるまい。

「ユア、ポンズ。ここが恐らく帰還不能限界点(ポイント・オブ・ノーリターン)だ。ここを通り過ぎれば、戦果をあげるまで撤退はない。

 そしてお前らの戦闘力は残念ながら低い。俺とエミヤが出来る限り守りはするが、それにも限度はある。

 引くなら今ここだ」

「私がお兄ちゃんを信じない訳ないじゃん」

 決意を込めた俺の言葉は、妹によって軽やかに飛び越えられた。極自然に、極あっさりとユアはその境界線を飛び越える。

 一方でポンズはそれよりも熟考したようだが、それでも結論が変わる訳ではない。

「ルビコンの川を渡りましょう。あなただけ危険な目には遭わせないわ」

 微笑みながらポンズはそう告げて、彼女もラインを越えた。

 もう後戻りはできない。

『エミヤ、頼む』

『承知した、マスター。期待に応えるとしよう』

 進む、進む。キメラアントの蟻塚に向かって。

 そしておおよそ半分、キメラアントの領地を踏破した。

 

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