殺し合いで始まる異世界転生   作:117

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FGOでは箱イベントで、もうすぐポケモン新作の発売ですね。
それでも時間を見つけて執筆しますので、どうかよろしくお願いします。


092話 首都ペイジン・4~作戦準備・1

 

 6日目が終わる。

 

 何故か唐突にネフェルピトーの円が解除され、罠であることを承知でノヴが宮殿内に潜入。

 決行時に奇襲を仕掛ける為にマンションの出口を仕掛ける事を目的とし、それ自体は成功した。

 ただ、その代償というべきか。宮殿内部で見たシャウアプフのオーラを視て、強力無比で地獄の悪意を煮詰めたようなオーラを感じただけで、ノヴの心が折れてしまった。

 戦えない、抗えない、出会いたくない。

 こう思ってしまった念能力者は無力である。念は心の発露に他ならない。相手に対して心の中で白旗を振っているのに、戦いが成立する訳もない。

 それでもキメラアントが勝てばノヴもあの悪意に晒されながら殺されるのである。それが嫌ならばその前に自殺するしかないが、ノヴの心もそこまでは砕けていなかった。護衛軍の前に立つことこそ出来そうもなかったが、念能力の使用は可能。討伐軍を宮殿の中に送り出すという任務はまだ可能であった。

 更にこの日はマルコスの手引きでパームが敵地に侵入。ビゼフ長官の娼婦という体で内部に潜り込み、護衛軍を()れる状態にして生還するのが任務である。

 一方でモラウはレオルを撃破。敵の師団長級の数が1匹減り、作戦決行時の妨害の可能性が低下した。

 それぞれがそれぞれの役割を果たした大躍進の日であると言えたであろう。だが、ノヴのマンションに集まった一同は喜ぶことなく沈黙している。

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

 生気を喪い、へたり込むノヴ。そんなノヴを悲痛な顔で見る3人。

(あれだけ偉そうなことを言ってこれかよ)

 内心でノヴの事を唾棄しているのはもちろんユアである。とはいえ、そう言っても仕方ない程にノヴは自信満々だったのであり、それを裏切られた側の失望は大きい。

 ポンズとしても、先輩のプロハンターがここまで打ちのめされてしまうのを見ては不安になろうもの。自分が今まで測っていた危険度が間違っていて、絶対的に訪れる失敗と死の予感で背筋に冷たい汗が流れる。

 ノヴのことを総合的に1人のハンターとして信頼していたモラウに与えられた衝撃も少なくない。ノヴが敵のオーラを視ただけで折れてしまうなど、想像さえしていなかったのだ。護衛軍がどこまで恐ろしく悍ましい存在か、その一端にようやく触れた瞬間でもある。

 それを理解したモラウの感想は率直に一言、ヤバいというものである。

「……ポンズ、ユア」

「はい」

「どったの?」

「お前らはペイジンからいったん撤退しろ。ここはオレが受け持つ」

 その言葉に、ぴくりと反応するのはユア。

「どういう意味?」

「護衛軍は想像以上にヤバい敵だったっていうことだ。

 お前らの能力はハマれば格上すら殺しえるタイプ、逆に言えばハマらなければ同格にすら苦戦を強いられる。作戦決行時まで不意に敵と接する機会は排除した方がいい」

「モラウさんは?」

「お前らに心配されるほど耄碌してねぇ」

 モラウはそう言うが、問いかけたポンズは心配そうにモラウとノヴを見る。ノヴが折れたのだ。モラウもまた、と思ってしまうのは仕方ない。

 それを理解したモラウはそれでも力強く頷く。

「問題ねぇ、例えオレがやられてもな。ノヴの能力があれば作戦決行に支障はない筈だ。

 万が一、億が一、オレがやられたら残りのメンバーで作戦を遂行しろ」

「っていうか、後5日も戦い続けてモラウさんは作戦決行時に体力が残ってるの?」

「ま、大して残らないだろうな。だが、それもペイジンを包囲した時に分かっていた事だ。

 これから先のお前らの情報はオレは持っていない方がいい。ナックル達と相談して作戦を練れ」

 モラウの指示に、やや心配そうに頷くユアとポンズ。

 元々そういう話では確かにあった、東ゴルトー共和国の人々を死なせない為にモラウとノヴはその余力を削ると。

 そして宮殿へ突入する目途が立った以上、ペイジンに長居するメリットはほぼない。キメラアントに敵対勢力が居ると知られているということは、間違えて王や護衛軍が出張る可能性するあるのだ。その場合の勝機は皆無であり、死ぬ人数は少ない方がいい。そういう意味でもここはモラウが独りで踏ん張る方が合理的だ。

「……分かったわ。私たちはいったんペイジンから退却してゴンたちと合流します。

 モラウさん、ご武運を」

「ああ、お前らもな」

 そうやって言葉を交わし、ノヴのマンションから退出する2人。残るのは独り立つモラウと、折れてうずくまるノヴのみ。

 護衛軍を、ひいてはその中のネフェルピトーが操る戦力である人形を引きうける役目を負ったモラウは独りで闘志を漲らせるのだった。

 

 ◇

 

「ポンズ、ユア!」

「ゴン、久しぶり!」

「無事でよかったわ」

 ペイジンが6時間程離れた森の中、そこにゴンは潜伏していた。ナックルとシュートも合流し、王を討つ為に動いているメレオロンも一緒である。

 その中でユアはキメラアントの姿を見て視線鋭くする。

「……ゴン、アレは?」

「アレ?」

「そこにいるカメレオンのキメラアントのことよ」

 ユアにとってキメラアントとは兄であるバハトをボロボロにして操作した怨敵である。そのキメラアントが目の前にいれば視線も鋭くなろうものだ。

 しかし、そんなユアを見てなお、ゴンは破顔する。

「元師団長級のキメラアント、メレオロンだよ。王を討伐する目的で仲間になったんだ」

「…………」

 ゴンも護衛軍のネフェルピトーとトトルゥトゥトゥに恩人であるカイトとバハトを無残な姿に変えられた恨みはある。

 しかしそれはネフェルピトーとトトルゥトゥトゥという()であるという認識だ。それが理由でメレオロンや全てのキメラアントを嫌おうとは思わない。

 そもそもとして、コルトといった面々とは敵対することなく接し、そして情報を引き出している。敵でないキメラアントであるならば、ゴンが嫌う理由はない。

 ユアがそこまで割り切れるか否か。

「おう、ユア。テメェの言い分は分かる。

 が、オレの言い分も以前に言ったよな?」

 ナックルがメレオロンの傍に立つ。ナックルはメレオロンと心を交わし、既に仲間の一人と認めている。仲間同士が戦うのは見過ごせないタイプだ。

 更に言うならば。NGLから撤退した後、キメラアント討伐隊をモラウとノヴの弟子から決める際にキメラアントに対する見解を話し合った仲でもあるのだ、ナックルとユアは。

 誰も彼も、キメラアントだからという理由で切り捨てるのは許せない。それがナックルの参戦理由だった。

「そのキメラアント、メレオロンは人は喰わないの?」

「ああ、王を打倒するのと人類の側に付くのは話は違う。コルトたちと同じ約定はしっかりと交わした」

 これはシュートの言葉。

 人間社会に庇護される立場であるというのに、人間を喰らうという存在はそう簡単に認められる訳がない、例外はもちろんあるが。そしてNGLから出てきたキメラアントは元々が人食いだ。人を喰わないという条件を人間側が出すのは当然である。

 メレオロンとしても肉は食いたくなることはあるが、人間でなければいけない理由はあまりない。我慢が利く範疇である。

「ああ。友人となったゴンにナックル、シュートに誓うぜ。

 オレは金輪際、人間を口にすることはねー」

 メレオロンはユアを真っ直ぐに見て、宣言する。

 それを確認してたじろぐのはユアである。できればキメラアントの仲間なんて認めたくもないが、現実としてノヴが折れた今では尚更人手が足りていない。

 ユア自身も自覚していることであるが、彼女はキメラアントへの恨みが仲間の中で一番深い。冷静な判断ができるかといえば否であることは間違いない。

 ならば信じるかどうかは仲間に託すしかない。そう判断したユアは諦めて首を横に振って、愚かな考えを振り払い、そしてメレオロンに向かって右手を差し出した。

「ユアよ、よろしく」

「メレオロンだ。よろしく頼む」

 しっかりと握手を交わす両者。固唾を呑んで見守っていた面々は、そこで一息。

「私の名前はポンズです。よろしくね、メレオロン」

「オレはメレオロン。仲良くやろうぜ、ポンズ」

 ポンズとも挨拶を交わし、ひとまず場は固まる。

 状況が一段落すれば、ユアがここに居ない仲間を気にするのは当然である。

「それでキルアは?」

「さっき連絡があったよ。病院送りにされていたそうだけど、さっき目覚めたって。

 入院費用は送金したから、今日中には合流できるはずだけど」

「ボッタくられたけどな」

 ちょっと有り得ない費用を請求されたことにシュートが少しだけ遠い目をした。

 とはいえ、独裁国の闇病院である。仕方のない費用と割り切るしかないだろう。幸いプロハンターばかりであるから、法外な請求も簡単に支払える能力があった。金の有無で騒動になるよりかは、金で仲間の危機を救えたとポジティブに考えられる。

「じゃあ後はパームが脱出できれば、現状では最高の結果になる訳ね」

「うん。ノヴさんはリタイアだそうだけど……」

「ま、気にしても仕方がないわ」

 ゴンが痛ましそうに言うが、ユアはケロッとしたもの。彼女はもうノヴになんの期待もしていない。これから5日の間に更に心が折れてマンションが使用不可になっても、なんの感慨も湧かないだろう。シャウアプフのオーラを見ただけで折れてしまったというのは、ネフェルピトーとトトルゥトゥトゥを直に見たユアにとっては失望に値した。

 そんな事を言うユアを咎めるように見るポンズ。彼女たちとて、ネフェルピトーとトトルゥトゥトゥの奇襲に泡を食って逃げ出しただけなのだ。仲間3人を殿に、命だけは拾っただけに等しい。これでなんの成果も出せなければ自殺と同義である。

 そもそもとしてノヴの実力は認めていた筈なのだ。それなのに脱落したとて軽蔑するのは仲間に対する仕打ちではない、ノヴを折ったシャウアプフの恐ろしさを再認識するべきなのだ。

「ま、そこは置いておきましょう」

 ポンズはそう仕切り直す。

 そんな事を言ってユアが聞くとも思えないし、今は折れたノヴよりも敵対する護衛軍との戦いが大事である。

「王と護衛軍に降った元師団長級とユアちゃんが接触したわ。

 私も少しは情報を集めたし、作戦当日の話をしましょう」

「うん。メレオロンの能力も凄く強いし、イケると思う!」

 明るいゴンの声に、メレオロンは自身ありげにニヤリと笑う。

「まっ、失望はさせねぇぜ?」

「弱そうだけど……」

「コラ! 期待しているわ、メレオロン」

 失礼な事を言うユアを叱り、仲間になったばかりのメレオロンに笑いかけるポンズ。

 と、そこで近くの茂みからがさりと音がする。

 全員がそちらを見て臨戦態勢を取る。が、そこから出てきたのは銀髪のツンツン頭。

「キルア!」

「おう、ゴン。久しぶり。

 それにユアとポンズ、ナックルとシュートも」

「イカルゴ!?」

「メレオロン師団長ですか!?」

 キルアが連れてきたタコのキメラアントがメレオロンを見て驚きの声をあげるし、メレオロンも意外な相手を見つけたと目を丸くした。

「お前はハギャに着いていったはずじゃ……」

「へ。キルアがオレをカッコイイと言ってくれたし、ダチだって言ってくれたからな。オレはキルアの仲間さ」

 メレオロンの言葉に胸を張って答えるイカルゴ。

 新しく出てきたキメラアントに、ユアはまたかという感情を隠さずにその感情を口にする。

「それで、ええとこのタコのキメラアントはなに?」

「タコって言うなぁぁぁ!」

「イカルゴ、オレのダチ。

 あと、タコって言われるのは大嫌いだから、もう言ってやるなよ」

 イカルゴの絶叫と、キルアの説明が全員の耳に届く。

 もう今日は日が暮れるところ。5日目が終わる。

 ペイジンの側で、という以前に東ゴルトー共和国の中で不審火を出す訳にもいかない。夜の闇の中で、しかし情報交換をするには問題はない。

 そして順番に体を休めて、翌日の朝から本格的な作戦会議をするべきだろう。

 

 残された時間は短くとも、それらを有効活用するべく準備を始める一同だった。

 

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