明日は朝からまどかで勝負だ☆
さやかの朝は早い。コッソリ飞腭にご飯をあげたりしている。ちなみに飞腭は獣魔ではないので精の消費はない。
さやかは晴れ晴れとした顔をしていた。憑き物が落ちたとでもいうか、スッキリしていた。元々の性格がウジウジするのは向いてないのだろう。だが女の子なのだ。泣いちゃう時もある。アタックNo.1でもそう言ってる。
「いってきまーす!」
いつものように学校に向かうと、まどかと仁美を見かけた。さやかは仁美を捉えると、前に回り込んで宣言する。
「恋に後とか先とかないかんね!だから仁美も遠慮しないで!どっちが負けても恨みっこなしだからね?」
突然のさやかの行動に目を白黒させるが、元気になったさやかを見て喜ぶ仁美とまどか。ここでも、まどかはちゃんと空気になることを忘れない。
3人はいつものように駄弁り、いつものように昼食をとり、いつものように放課後を迎えたのだった。明日、恭介は退院して学校に復学出来るらしい。今日は最後のお見舞いに行く日だ。
今日の仁美はお稽古がないらしい。
先日の夢遊病の一件でだ。無理が祟ったと考えた志筑家の人々は、過密スケジュールを大幅に調整して、仁美の回復にあてたそうな。
3人でお祝いの花を買って病院へと向かう。
恭介の病室に着くと、看護師さんが掃除をしていて、屋上に来てほしいと伝言を言付かっていた。
早速、屋上に行くとそこにはバイオリンを持った恭介と、両親と数人の医師と看護師が待っていた。恭介の前にはいくつか椅子が並べられており、ちょっとしたコンサート会場を意識した配置になっていた。
「やぁ、さやか。それに鹿目さんと志筑さんも。今日は来てくれてありがとう」
恭介の両親と一緒に、並べられた椅子に座る。そして恭介の復帰初の野外コンサートが始まる。
暫しの間、綺麗な音色に耳を傾ける。やがて演奏が終わると惜しみ無い拍手が恭介に送られていた。
3人も花束を手に恭介に駆け寄ると、花束を渡してお祝いの言葉を口々にしていた。
翌日、時間は流れて放課後になる。
仁美は恭介に告白するらしく、先に宣言してきた。恭介も学校に来ていたが、今は職員室へ呼ばれて行っているので恭介待ちであった。
ベタだが、下駄箱に校舎裏に来て下さいという内容の手紙を入れておいたらしい。そして校舎裏に呼び出されて恭介は行ってしまう。
まどかとさやかは邪魔にならないように校門前にて待っていた。告白が成功したなら二人で下校するだろう。もし見かけてしまったらその場合は先に帰ろうと思っていた。
結果、失敗したらしい。
仁美は一人でトボトボと帰ってきた。
安心する反面、仁美を傷つけられたという二律背反に心を惑わされる。何があったのか聞きたそうにしていると、仁美の方から語られることとなった。
「上条恭介さん、わたくし貴方のことをお慕いしておりました。どうかお付き合いしていただけませんか」
仁美にとって人生で初の一世一代の告白だ。
これより凄いことはまだ経験にない。彼からの返事をドキドキして待っていると、意外な返事が返ってきた。
「僕…いや、俺には関わらないほうがいい。闇の世界の住人と関わると、二度と陽の当たる世界には戻れなくなる」
「は…?え?」
「俺の右手にはとある力が封印されている。クッ!今は制御しているが、暴走すれば世界は闇に包まれるだろう」
仁美は振るなら振るで、ちゃんとした誠意ある言葉が聞きたかった。しかし恭介は至って真剣なのは表情を見ればわかる。それは1つの意味を持つ。本当に右手に何かあると思っちゃってるなら、それは自分には荷が重すぎる案件だと考えた。
仁美は幼馴染みの少女にあとを譲る決心をすると、お大事にと言いその場を去ってしまったのだ。
勿論、右手は假肢蠱のことである。
そして不思議な力は特にない。あるのは体の欠損部分を補ったくらいだ。
事の顛末を聞いて一安心するさやか。
ナンダカンダで譲る気はさらさら無かったのである。その気持ちに気付けたのが、さやかにとって一番の収穫であった。