理由は貧乏がいけない!よし、お金持ちになろう!
てなわけで、もうすぐ終わりそうな展開に。
「杏子、ここからは私達の出番だよ」
「さやか、危ないから下がってな」
二人の戦い方は後衛さやか、前衛が杏子という布陣だ。さやかを守るという戦い方が最も杏子に力を与えてくれる。无として無限の力を発揮するスタイルがこれだ。
空から風牙を放ち援護するさやか。
地上から走鱗で撹乱しながら攻撃する杏子。
「佐倉杏子の名において命ずる!いでよ、闇魚!」
「続いて命ずる!いでよ、石絲!」
杏子の手持ちの中でも決まれば最速の即死コンボが発動する。俺TUEEEE!!!系ラノベならあっさりと終わりそうな攻撃だ。闇魚で視界を奪い、石絲で石化する。さぁどうだ?
ゆっくりと闇魚による暗闇が晴れてきた。しかし、ワルプルギスはそのままの姿をしていた。
いや、少しだけドレスの一部分が崩れている箇所がある。杏子とアイコンタクトをとると、杏子はもう一度だけ石絲を試みていた。すると、当たった箇所から石化は始まるが、そこから石化が拡がる前にその部分だけ剥がれていった。まるでドレスを部分パージしているように。
「…これは気の遠くなる作業じゃねーか」
杏子が少しだけぼやくと、ワルプルギスからキラキラの夜空みたいなビームが放たれた。直ぐに反応して行動に移る。
「佐倉杏子の名において命ずる!いでよ、鏡蠱(チンクウ)!」
鏡面を持つカブトガニみたいな小さい獣魔を前に出すと、その獣魔で攻撃を受け止める。すると、キラキラの夜空みたいなビームは反射し、そのままワルプルギスへと直撃する。
攻撃を跳ね返されたワルプルギスの一部がボロボロと崩れていた。
「ハンッ!テメーの攻撃でダメージ受けてら!ザマァないね!」
「杏子!次、くるよ!」
ワルプルギスはまたもや甲高い笑い声をあげると、今度は大きい火炎放射器のような炎をこちらに放ってきた。杏子は走鱗で避けながら反撃の一撃を放つ。
「佐倉杏子の名において命ずる!いでよ、光牙(コアンヤア)!」
杏子の前面に光が一筋伸びていく。
光の先端は龍の顔があり、その光が龍の体だというのが解る。光の龍はワルプルギスに当たると、その土手っ腹に少しの風穴を空けていた。ワルプルギスの甲高い笑い声が更に高く悲鳴じみた声に変わる。
「お?これは効いたみたいだナ」
効果があったことに気を良くした杏子。直後にワルプルギスの周囲に大型の竜巻が発生した。近くにあったビルが半ば程から折れて、ビルの半分が杏子に向けて放たれた。
「ちょ、マヂかよ!」
あまりに大きな建造物での攻撃に避けきれずに直撃する。飛んできたビルと背後にあったビルに挟まれてしまう。普通の人間や魔法少女なら絶望的な状況である。瓦礫を撤去するだけでも、時間や人手もかなり必要となるだろう。ましてや生存など見込める筈がなかった。
ワルプルギスが甲高い笑い声をあげながら、さやかに向き直る。次はお前だと言わんばかりに笑い声が大きくなっていった。
キラキラ夜空光線がさやかに向けられて放たれると、さやかは回避に動き始めるが少し掠めたようで苦悶の表情を浮かべる。
「さやかぁぁぁぁ!!!」
辺り一帯に杏子の声が響いた。
直後、ビルが爆発して何かが飛び出してきたかと思うと、さやかの横に杏子が立っていた。杏子は身体中から白い蒸気のようなものを出しており、片腕がげている。右手で千切れた左腕を持っており、首もおかしな曲がりかたをしていた。みるみる内に修復されていき、すっかり綺麗な元の杏子に戻っていた。ちなみに服は所々破れたままだ。
「ドンドン力が溢れてきやがる…!今なら誰にも負ける気がしねー」
獲物を仕留め損なった事に業を煮やしたのか、ワルプルギスから炎が噴き出される。それらを軽々と走鱗で避けていく。さやかは大人しくお姫様抱っこされている。
「佐倉杏子の名において命ずる!いでよ、光牙!」
ワルプルギスに当たると、そのまま二人は肉薄していく。懐まできたところで、さやかが手を上げて叫ぶ。
「パラス・ヴィダーヒ!」
大きな衝撃波がワルプルギスを破壊していく。既に半壊状態となっている。フラフラと未だに浮いているので、油断は禁物とばかりに杏子が畳み掛ける。
「これで、終わりだぁぁぁ!いでよ、光牙!」
無数の光の龍がガトリングガンのように発射される。幾筋もの光を伸ばし、ワルプルギスを完全に粉砕していた。
「よっしゃ!」
「やったね、杏子!」
二人が勝利の美酒に酔いしれようとしたところで、未だにお姫様抱っこをしているのに二人とも気付いた。さやかは恥ずかしそうに、そそくさと降りるとワルプルギスの消滅を確認しにグリーフシードを探しに行った。
ワルプルギスがいた中央にポツンとグリーフシードが落ちていた。通常の物よりややデカイ。仮にキュウべえに回収してもらおうとすれば、キュウべえは裂けてしまうだろう大きさだ。
「使いどころもないだろうし、貰ってもいいよね?」
先程のお姫様抱っこを有耶無耶にしようと、グリーフシードを獣魔の卵に変えてみる。すると、いつものよりも大きめの卵になった。杏子も興味があるのか、契約してみたいと言った。
「不完全燃焼っつーかさぁ、まだ闘い足りななかったし、ちょっと興味あるよな!」
その言葉に確かにという思いはあった。ワルプルギスほどの魔女ならどんな獣魔になるのだろうと考えてしまう。一応、安全のために陣を張って契約に取り掛かる。杏子が卵に血を垂らすと、大きな魚のようなマンボ~のようなウーパールーパーのようなものがフヨフヨと浮かんでいた。
「さぁ!かかってきやがれ!」
そのフグのようなぬぼーとした物体は、ホエエエと鳴きながらただ浮かんでいるだけだった。恐る恐る近付いた杏子は契約を試みる。アッサリと契約成立。
試しにちょっと召喚してみるも、特に何もなく浮かんでいるだけだった。拍子抜けした二人は三人に合流することにした。寝かせてある転校生を回収して、来た道を戻って行くのであった。
もうワルプルギスの夜も倒したし、使い魔も消えている。街も沿岸部以外はそこまで損害は無いように見えた。むしろ転校生の爆撃のほうが街に被害を出していたんじゃないだろうか?
この後はまどかを迎えに行って、後日祝勝会かなーとか考えていたら、三人の姿が見えてきた。だが何か様子がおかしい事に気付く。
近付いてきて見えた光景は、地面に蹲り苦しむ巴先輩と、その横で見守るように立っている織莉子とキリカだった。
慌てて駆け寄り、何があったのか二人に聞いてみた。
「巴先輩…!二人とも、何があったのか説明してもらってもいいかな?」
巴先輩をよく見ると、普段の魔法少女の格好と少し違っていた。所々破れてはいるが、セーラー服のような格好をしているのが判る。腕にも小さな大砲のような物を装備している。リボンの汎用性高過ぎるだろと思った。
ふと、目についた箇所が気になった。そこだけが異様に黒く、元の宝石をもうすぐ埋め尽くさんかの如く黒く濁っていた。
もしやと思い、織莉子の方に向き直るとそこには神妙な顔をした彼女がいた。そして彼女から告げられた言葉に戦慄することになる。
「巴さんはね、魔力を使い過ぎたのよ。そして、もう……手遅れなのよ………魔女になるわ…」