主がやる気を出し始めたので再開致します
「普通はプリンセスだと思うんですけど...」
「私は王子なのだよ子猫ちゃん。」
「どっからどう見てもヒト科の動物なんですけど俺は。」
「君は比喩って言葉を知ってるかい?」
「あんたは比喩の使い所を知ってるかい?」
こう見えて1つ年上なのが驚きだよ。
前回の前置きと同様、スタジオの外のカフェで一服していると、自称プリンスこと瀬田薫が話しかけてきた。
「あんたが俺に相談とは相当なことだな。まぁ予想はつくけど。」
「ならはぐみから今のハロハピを聴いたのかな?」
「いや、北沢とは相変わらず音信不通だ。」
「では最初から話した方が...「奥沢のことだろ?」なんで...!?」
「本人から聞いた。」
あの演者からの相談、ということは関係が更に悪化してしまったと言うことだ。
北沢も俺に相談してくれればいいものの、俺に気遣ってしないだけか、単に存在を忘れているだけか。
あいつらしいのか、らしくないかは分からないけど。
「ただ、奥沢の相談後は知らない。だからそのことを話して欲しい。」
「分かった。ある日に遊園地についての会議をこころの家でやったんだ。」
瀬田の話をまとめるとこうだ。
相談を受けたあの後、奥沢は自分の悩みをメンバーに打ち明けない方向に決めたらしい。
だけどその胸の詰まりが日に日に溜まっていき、明らかに元気がないことが分かるほどになった。
もちろん何も知らない他の人は奥沢を心配し、声をかけた。
しかし奥沢の心にはもう余裕がなく、『何にも知らないくせに!ほっといてよ!!』と強く当たってしまった。
自分から喋っていないから知らなくて当然だ。そのことを奥沢本人も気づいたのかは分からないが、気まずさからついに会議をバックれたのが今のハロハピの現状だとか。
「快知...なにか知ってることがあったら教えてくれないかい?」
「知らないといえば嘘だが、それを教える訳にはいかない。」
「...」
「俺は今回の企画には携わってない。つまりハロハピとは無関係なことだ。だからメンバー同士で発見すべきだと思う。」
「そうだね。わざわざ付き合ってもらってすまな...「待て」...?」
「何も知らないのを考えろというのも酷な話だ。俺が答えに近いヒントを教えてやる。」
「お願いします。」
「そんな謙虚にならなくても...そうだな。あんたは演劇部で結構な役を演じてるらしいが?」
「そうだね。毎回主役を演じてるさ。」
「ならある舞台でいつも通り主役を引き受けようと思った。しかし他の部員が「瀬田さんはいつも頑張っているから、今回は私がやります。」と、あんたの知らないところで話が進んだ。そして脇役や雑用も埋まってしまい、瀬田の出番どころか用は一切ない。そうなったらどう思う?」
「私の知らないところでか...確かに負担をかけないためとはいえ、私はいらないのかと思ってしまうかもね。」
「その部員達をあんたらハロハピだとして、何か似ていることに心当たりはないか?」
「そんなこと......あ!」
どうやら気づいたようだ。
彼女本人が気づいたならこれ以上は言う必要がない。
「もちろん悪気がないことは俺も知ってるし、奥沢も分かってるはずさ。ただあいつの負の感情が、感謝の気持ちを邪魔しているんだよ。」
「負の感情なんてないはずなのに...」
今の瀬田の言葉であることを確信した。
こいつ...
「ハロハピの前でも演じてるだろ?」
「な、何を突然?」
「ホントは知ってるだろ?ミッシェルの正体は奥沢だってこと。」
「何を言ってるんだい?ミッシェルはミッシェルじゃないか!」
「無理しなくていいぜ。本当にミッシェルはミッシェルだと思うなら、奥沢が悩む理由が理解出来るはずだ。」
「ど、どういうこと?」
「別々だと思うなら、奥沢の仕事がなくなったからいる意味がないと理解出来る。だけど瀬田は奥沢が悩んでいる理由に疑問を持った。これは奥沢にはまだ仕事があることが分かってるから疑問を持ったんだ。」
「しかし、美咲にはまだ仕事があるってこともあるだろ?」
「それなら奥沢は悩まない。残りの仕事はミッシェルとしての出演だけだから奥沢は悩んでいるんだ。いい加減認めたらどうだ?」
瀬田はしばらく沈黙していたが、演じるのはもう通用しないと悟ったのか、小さくため息ついて話し始めた。
「そうさ、私は学校はもちろんハロハピの前でも演じてる私を演じてたんだ。」
「じゃあミッシェルの正体を知ろうとしないフリをしたのは?」
「単純にこころとはぐみが信じきってるからね。それにそっちの方がハロハピらしいと思ってね。」
恐らくミッシェルはミッシェルと奥沢本人も納得したと解釈したからそう演じてたのだろう。
今まではそれで良かったのだが、『奥沢』という6人目のハロー、ハッピーワールド!のメンバーの仕事を取ってしまった以上それが通用しなくなり、瀬田の選択は外れの方になってしまったのだ。
それにしても北沢と弦巻はガチで信じていたとは......
こんな純粋な高校生が現存していたとは!
「快知。私は美咲にどう接すればいいんだい?もう演じてるのをやめた方が......」
「奥沢は演者の瀬田と、素の瀬田。どっちを知ってるの?」
「それは多分演じてる私かな?」
「ならその瀬田で、あんたらしい励ましをすればいい。そっちの方があんたらしいと奥沢も思って、少しは気が晴れるだろ。」
「快知の言う通りだ。ありがとう、私に付き合ってくれて。」
「気にすんな。じゃあ俺帰るわ。」
伝票持って帰ろうとしたら、瀬田が「待って」といい腕を掴んできた。
「なんだ?まだ用があるのか。」
「最後だけ1つ。なんで私が演じたことが分かったの?」
もう完全に素の瀬田だな。
「パスパレの白鷺さんから聞いた。」
「千聖が!?」
実は個人練習の時にたまたまここで会ったのだ。
その時白鷺さんに、「薫が迷惑掛けてないかしら?」と聞いてきたので、「まぁそこそこ。」と答えたら盛大にため息をし、みんなの前で演じてるいることを教えてくれた。
最初は半信半疑だったけど、さっきの発言で納得するという形になった。
「あともう1つ教えて貰ったなぁ。」
「な、何をだい?」
「すごい顔が引きつってるな。まぁ大したことじゃない。」
「そ、それなら良かった...」
「じゃあ奥沢を頼んだぜかおちゃん!」
「その呼び名はやめてくれ〜!!」
過去に何があったか知らないけど、面白い反応をするのはホントだったんだ...
でも俺も恥ずいから二度と使わないことを静かに誓った。
おまけ〜神戸快知と白鷺千聖〜
「あら?あなたは快知くんかしら?」
「あなたは...パステルパレットの白鷺さん?」
「そうよ。あなたもスタジオに来るってことは、ライブのレッスンなの?」
「いえ、定期的に個人で来ることは前からやってたので。ハロハピもしばらくはライブやらないみたいで。」
「そういえば薫は迷惑掛けてないかしら?」
「なんとも言えないですね......掛けてないと言えば嘘ですけど。」
「薫ったらハロハピまで素を出さないのね。お説教が必要かしら。」
「素?あれがいつもの瀬田じゃないんですか?」
「薫は演劇部ならず、プライベートでも演じてるいるのよ。本当の薫を知ってるのは私ぐらいじゃないかしら。」
「うーん。なんかイメージが湧かないですね。」
「そのうち分かるわよ。あとかおちゃんと呼んであげたら、面白い反応が見れるわよ。」
「かおちゃん!?またすごい呼び名だ......」
「今度会った時にお試しで使ってみなさい。」
「か、考えておきます。」
「それじゃあ私はそろそろ行くわね。またお茶でもしましょ。」
「は、はい...」
(なんか知らないけど、この人だけは敵に回しちゃいけない気がした......)