一寸先も見えぬなか、辺りは白い世界に覆われている。いまさっき歩いてきた方角すらわからなくなるさまだ。
聞こえるのはザクザクと雪を踏む音しかない。ちょっと前まで明るい会話があったなんて思えないほどだ。
ドサッ
「薫さん。こんなところで寝たら風邪引くよ。」
奥沢が瀬田を担ぐ。
「奥さw……ミッシェル。風邪じゃ住まないと思うよ…」
「細かいことは気にしたら負けです。」
「あんたまでそっち側の人間かよ…」
「風が強くなって来たわね。」
「ちょっとそこで休もっか。」
ちょうどいいサイズの洞窟があるので、そこで休む。
「ごめんね。はぐみが雪がいっぱいの山に行きたいって言ったから。」
「今回に関しては北沢は悪くないと思うぞ?」
「そうよ!それに一面白景色だから楽しいわ!」
「今現在楽しいどころじゃないの理解しようよ弦巻。」
なんでこうなったんだろう?
東京は雪が降ってもそうそう積もることはない。元気印の北沢は「みんなで雪合戦したいな〜」と。そんなの東京で叶えられるのは年に一度あるかないか。
そこでついに「雪山に行きたい!!」と先日のハロハピ会議で話したら、案の定弦巻嬢が、「だったらみんなで行きましょう!」と連れてってくれることに。
俺はあまり乗る気なかったが、断ったところで強制的に連れて行かれる羽目になるので渋々了承。奥沢と松原さんの同情の目が痛かった。
そこまではいい!そこまではよかった!
俺は少し離れたスキー場に行くもんだと思ってた。しかし黒服さんに飛行機乗せられ、知らぬ間に知らぬ山に来ていた。日本ではないのは確かだろうん!
そして素人が生半可な気持ちでやってはいけない雪山登山を決行。最初は晴れていて気持ちいいものだったが、やはり山。曇ってきたと思ったら急な吹雪でご覧のさまだ。
「これじゃあ凍っちまうよ。」
「まぁ……これも…いいじゃ…ないか……儚い…」
「唇紫だけど…」
「あそこ見て!小屋があるよ!」
松原さんが指した先に立派な小屋が…
「んーはぐみには何も見えないよ?」
「確かに俺も見えないな。」
「…え?」
松原さんまで…………いい人でした。
「ふぇぇ〜わたしまだ死んでないよ〜」
「暖取らないと。」
ミッシェルはそう言うものの、燃える木の枝なんてなさそうだし、あったところで火がつくかどうか…
「じゃあ私のこれを…」
「ギターじゃん。」
「なんで雪山に持って来ているの!?」
「はぐみも…」
「ベースじゃん…」
「あ、俺もあるよ。」
「トランペットじゃん。金属製だし。」
「神戸くんも末期だよぉ〜」
だってどうせこの人達のことだから、雪山でライブしたいと言うだろうと。だったら予め持ってきたほうが良さげかなと。実際その考え当たってたみたいだし。
「それはさすがに燃やせないわね。」
「実はわたしも…」
「スティックじゃん。花音さんも持ってきてたんだ。」
みんな常識外れの考えをしてたんだね………あれ?俺もその1人?
「ミッシェルは寒くないのかよ?」
「いやこのなかヒーターで………毛皮ですから」キリッ
今ヒーターって言ったよねヒーターって!!
こっちかてガタガタたけし城並に震えているっていうのに1人だけ極楽しやがって!
まぁ夏は逆に地獄だろうと思うから、これで相殺でいいよもう。
「あ、あったかい〜」
みんなミッシェルに抱きつく。温もりが外からでも伝わるのか。
「カイくんはいいの?」
「いや、異性に抱きつくのはよくないだろ……」
ミッシェルってメスでいいのか?
まぁいいや。俺もそろそろやばいし。
「生理現象には勝てなかった。お、これいいな。」
「神戸くんも結構きてるね〜」
否めない。
グゥ〜
「えへへ〜お腹すいちゃった〜」
「あたしも!」
「ここまで歩き詰めだったからね。」
「そう言っても食料なんて……」
「ちょっと待っててね…ジャーン!」
北沢が取り出したのは、自分家のものだと思うコロッケ。冷凍を超える冷凍化としているが。
「え?これ……このままで……え?」
『いっただきまーす!!おいしい〜』
「嘘だろ?このまま食べれるわけ…あ、おいしいわこれ。」
いつもと変わらないあのうまさ。冷凍しても味が落ちないなんて……
「さすが北沢精肉店のコロッケだ!」
「カイくんも喜んでくれてよかった!ふあぁ〜」
「どうした?」
「眠くなってきちゃった〜」
ちょっとここで眠くなる?!
「食べた後に寝ると太るよ〜」
「太るだけ済めばいいけどな!?おい北沢!!寝たらシャレになんねーよ起きろ!!」
「それなら楽しいこと考えましょう!」
「この際寝なければなんでもいいや。」
「わたし今閃いたわ!こんな歌詞どうかしら!!キラキラ〜カチーン。」
「それならここは〜」
「こりゃ作曲大変そうだな奥さ…ミッシェル。」
「哀れみな目で見ないで。」
これで無事エンドロールが流れる……
「おいおいおいちょっと待て!」
「どうしたのカイくん?」
「どうしたもこうしたもねぇ!エンドロール流していい場所と悪い場所ぐらいあるだろ!?」
「何言ってるの?」
「ここで終わりになったらBADENDになるわ!!」
「快知も面白いこと言うのね!」
「いたって大真面目ですが!?」
「ふぇぇぇぇぇ!神戸くんが寒さでおかしくなっちゃった〜」
「それはここ全員が該当することですよ!」
「普段見れない快知も儚い。」
「儚くなって済むかぁ!誰が助けてくれー!!!」
この後黒服さんの懸命な捜索により、何とか助かって日本に帰れました。
ちなみに場所を聞くと、ヒマラヤ山脈の一部しか教えてくれませんでした。細かくは知らないほうがいいって…それもそうか。
この話を後日高輪に話すと軽く引かれた。なんで?