ロゼリアの マークがあの曲しか出ない。パスパレなんて╮( •́ω•̀ )╭ンーワカンネー
俺が入学した学校、青井雲高校はつい最近開校したばっかりの高校だ。つまり先輩はいない。偏差値もそこそこ高いから邪魔な不良もいない。
この高校の教育方針は、副教科を自分で限定して、それを専門的に学ぶ。
今どき珍しい男子校の方針だが、自分はただ一人暮らしのアパートが近いのと、既に蓄積された人間関係は関係ないという意味で入学した。
「神戸くん!何か部活入る?」
隣の席のやつは気さくに声をかける。クラスの連中も悪くなさそうだし、何しろ気軽に話せる仲は必要だろ。
友達が嫌じゃない。ただあまり深い関係になるとトランペットのことがバレる。
中学の時は「この曲吹いて!」とかクソな陽キャにチヤホヤされたことがある。あれはいい苦い思い出だ。
「悪いね。用事があるから俺入らないや。」
彼の名前なんて覚える必要がない。だいたいおい、や、ねぇ、で相手は振り向いてくれる。
ちなみにこの高校の部活は自由。やりたいやつがやればいい。趣味で楽しめる奴や、特技をいい風に活かせる奴がな。
「用事?バイトでもやるの?」
「あーまぁそんな感じ。じゃあ急いでるから!」
「おうまた明日な!」
そして俺はスマホである場所を調べながら帰路についた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「このあたりだとここしか無いのか?」
地図アプリは『Circle』と書かれた店が表示している。
「こうなったら防音付きの郊外にすりゃよかった。ここガールズバンドの聖地じゃねーか。」
男性立ち入り禁止と書かれてないから俺も入れるだろう。ただ気まづいというものがある。
そもそもトランペットの演奏を認めてくれるかどうかだけどな。
「まぁ行くだけ行って、出来たら撮影もするか。」
あの時にバイトと聞かれて、俺は曖昧に答えた。なぜなら半分合って、半分違うから。
俺は大手動画アプリでトランペットを吹いた動画を出している。
仮面をつけ、『高速神戸』というニックネームで色んなジャンルの曲を吹く。
これが酷く受け、視聴者のリクエストに応えればこれまた食いつく。ちょろいものだ。
知らない曲でも、地獄の練習のおかげで耳コピが出来て、1回原曲を聞けば大抵吹ける。
なんで好きでもないことをするかって?単純だよ。金稼ぎ。
広告費が入るからやってるだけ。ただ親戚の仕送りだけだと、スネをかじるだけのぼっちゃんになるからだ。
正直神戸家に生まれた誇りは一切ない。なんなら改名したいぐらいだ。
そんな事情はさておき、Circleは結構明るめで普通のライブハウスだな。
男子には嫌い、女子専用という感じの甘々な雰囲気は一切ない。
俺は受付の人のところに行く。
「いらっしゃいませ!何時間の利用ですか?」
「じゃあ2時間で。」
男性スタッフも働いているのか。なら来やすいなここ。
「ところでここはトランペットの練習もいいのか?」
「はい!楽器ならなんでもOKですよ。ただバンドで使う楽器以外は持参ですが。」
そりゃそうだろうな。ま、使えればいいさ。
「それとルーム内の撮影はいいか?」
「ルーム内の撮影...ですか?」
「そう。演奏中の動画をアプリにあげたいんだ。」
「ちょっと上の者に聞いてきますね。」
撮影がダメなら他をあたるしかない。最悪部屋で...それは近所迷惑だな。
「君が撮影したいっていう子かな?」
「え、あっそうです。」
上司と思われる女性スタッフが来た。プレートには月島と書かれている。
それにしても馴れ馴れしいなおい。
「他の子を映さなかったらいいよ。なんなら三脚も貸せるけど。」
「持参しているので大丈夫です。」
これなら気軽に稼げるな。
さっさと練習しますか。
今回はいい意味でも悪い意味でも社会現象になったアニメの主題歌だ。
聞いた事はないので何回か練習をする。
「まぁこんなもんだろうな。」
完成度はいい。ちゃんと吹ければそれでいいからだ。
つまらない音だと認識してる分こだわる要素がない。逆に気楽でいいのかもしれないな。
「...」ジー
ではカメラをまわして撮影しますか。
「...」ジー
撮影する時はいつもの仮面をつけ、イヤホンで原曲を聞きながら吹く。そうすればズレることなく吹けて、編集は原曲をくっつけるだけで済む。
「じゃあさっそく...」
「...」ジー
「音楽スターt...」
「...」ジー
さっきから視線を感じる。
恐る恐るドアを見ると、1人の少女がこちらを見ている。今どき見ないオレンジ色のボーイッシュな感じの子。
誰にしろあんな見られたら撮影に集中出来ない。
「ったくめんどくせーな!」
少女は突然近づく俺に少しあたふたしていた。
「君、なんか用?」
「あ、えっと...」
少女は言いよどんでいる。あーもうじれったい!
「ないなら邪魔しないでくれる?正直迷惑なんですが。」
「ご、ごめんなさい!君の音がすごいなって...」
さっきの受付の女といいここの女は馴れ馴れしい性格なのか?ウザったらしい。
それに俺の音がすごい!?
「てめぇそんな根拠どこから出てきた!?」
「そ、それは...」
「なんにも知らないお前が俺の音すごい?どこがだ。クソつまんない音をおだてるなんてふざけたマネしやがって!」
「本当だよ!」
なんなんだこいつは...
「どうしたのってあら?隣のトランペットさん!」
また厄介そうなの来たな。今度は金髪?こいつは日本人か?
「あんたもなんの用だ?」
「あなたの音も素敵だわ!なのにどうして浮かない顔をしてるの?」
すごいの次は素敵?ふざけんなよ!!!
「おいお前ら...」
「何やってるの2人とも?」
今度は誰だってなんか真面目そうなのが来たな。
「あんたこいつらの連れか?」
「はいそうですけど...」
「今現在大変迷惑を掛けられているんだ。さっさとお引き取り願いたい。」
「そ、それはすみませんでした!こころ、はぐみ行くよ!」
「待ってよみさき〜!」
面倒い奴らに絡まれたものだ。
ってなんでかなぁ...
「お前もはよ行けよ。」
「あ、うん。」
オレンジの髪の子は名残惜しそうに見つめながら隣の部屋に入っていく。
なんでそんな目で俺を見るのかなぁ...
「時間の無駄だ。一発録りで帰るか。」
さて気を取り直して...
(君の音はすごいなって...)
(あなたの音は素敵だわ!)
どっちがどっちの名前か知らないが、根拠もない褒め言葉が無性にイラつく。
「無理やり作られた音しか出せない俺の気持ちなんて分かるもんか!音楽を目一杯楽しんでる奴らなんかに!!」
これじゃ集中出来ないな。
「しゃーねぇ。帰るか。」
受付のスタッフには「急用が出来たから早く出る」と言ってその場を後にした。
ここにまたこればアイツらに遭遇するかもしれない。だけど所詮学生。時間をずらせば会わないだろう。
うっわー後味悪いぞこれ...
ちなみにこんな小説書いてるクセに僕はトランペットを吹くことが出来ません。トランペットの演奏を解説する描写を書くことになったらどうしよ...
それでは次回もお楽しみに〜